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第六章 エルフ王国編
第231話 ルーナ
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星を見ていた。
まるで碧いシーツに宝石を零したかのように、きらめく星々。
なんてきれいで、壮大なんだ。
あんな星を見ていたら、自分の愚かしさなんてどうでも良くなる。
そう俺の愚かさなんて、どうでも……。
「……ふう」
そして、俺はため息をついた。
……牢屋の中で。
じめじめとした石造りの小さな牢屋。
わずかに空いた小窓からは、辛うじて夜空が見える。
なんで俺はこんな所にいるのか。
答えは簡単で、テロを起こしたのだ。
惚れた女の生まれた国で。
「…………」
よく考えたら、それだけでドン引き案件なのだが、問題なのはそこではない。
テロまで起こして、ルーナを奪い返しに行った。
そして、柄にもなくルーナに想いを伝えた。
32歳にもなって、マジ告白をした。
だがしかし。
「…………ふふ」
なんと全ては私の勘違いだったのです。
思わず自嘲してしまう。
あんだけ緊張したのに!
すげえ恥ずかしかったのに!!
俺は、全然知らない人に告白していたのだ。
「ふは、ふははは!」
思わず大声で笑ってしまった。
自分がアホすぎて。
もう笑うしかない。
よく考えたら、貴族の娘の縁談がそんな超スピードで進むわけ無いじゃんっていうね。
お姫様の結婚式だって言うから勘違いしてしまったのだ。
お姫様って他にいるかもしれないのに。
なんかルーナの事だと思いこんでしまった。
だって、俺のお姫様はルーナだけだから(照)。
覚悟をキメた俺は、こんな惚気だって言える。
あの後。
己の勘違いに気づいた俺が、膝から崩れ落ちて、衛兵さんたちにボコられていた時。
『お、おい! そんなにパカパカ叩くことないじゃないか!』
『ルシアリーナ様!? ……いえ、彼奴がしたことを考えればこれくらい当然かと』
『コウだって反省してるんだから、ちょっとメッてすればわかってくれるはずだ! お、おい! やめろってば!!』
涙目になったルーナは必死にかばってくれた。
まじかわいい。
『ちょっと、ルシア? 貴方、その殿方とお知り合いなの? 早くわたくしに紹介しなさいな』
『あっ……フェルミー。け、結婚おめでとう』
『まだ結婚してませんわ! いいから早くあの方をわたくしに……』
ルーナと俺が勘違いして告った美女が何やら言い合っていた。
気まずそうな表情を浮かべるルーナが気になった。
俺の意識は、その辺りで途切れた。
その後は、当然だけど衛兵さんのキツい取り調べを受けた。
『おい、貴様! な、なんであんな事をした!?』
これまた当然だが、衛兵さんはマジ切れしていた。
そして、ちょっと引いていた。
なんでと聞かれても、全ては俺の勘違いだったのだ。
俺に答えられる事なんて。
『むしゃくしゃしてやった。相手は誰でも良かった』
しかなかった。
『頭がおかしいのか、貴様!?』
衛兵さんは、更にブチギレていた。
いえ、私もちょっと酷いなとは思うんです。
勘違いから始まるテロリズムって聞いたことなかったので。
そんなわけで、俺は今、一人で牢屋に閉じ込められていた。
セレナの鎧も剥ぎ取られて、薄手のインナーしか着ていない。
まだちょっと寒い。
そういえば、ラグニードはエルフの衛兵さんが拾ってくれていた。
『……なんか国宝級の剣が落ちてました』
上司っぽい人にそう報告していた衛兵さんの顔は真っ青だった。
前にもこんなことがあったような気がする。
よく落ちる剣である。
まあ、当然ながらラグニードはそのまま没収された。
なので今は丸腰である。
ぐるるーと腹が鳴る。
しかも空腹。
思えば、最後に口に入れたのはミレイの作ってくれたお弁当である。
あれから一週間位経っているだろうか。
空腹耐性のある俺でも、さすがに限界である。
寒いし、ひもじい。
――ガチャリ。
その時、遠くで金属扉の開く音が聞こえた。
「ル、ルシアリーナ様!? こんな場所にお一人でどうされたんですか!?」
「……面会に来た」
「そんな……危険です。御身に何かあったら……」
「心配するな。責任は全てエリシフォン家が取る」
「そ、そうおっしゃられるなら……」
そして、スタスタと歩いてくる音が聞こえる。
「コウ……」
やがて、俺の牢の前に立ったルーナは、黒いローブを被っていた。
「大丈夫?」
そう言って、ローブを取ると美しい金髪がこぼれ出た。
月明かりに照らされたルーナは幻想的なまでに美しい。
涙の浮かんだ青い瞳は、キラキラしていて。
きゅっと結んだ桜色の唇に、細く小さな顎。
ふにゃりと垂れだがった長い耳。
何度見ても、ルーナは美しかった。
「お、おう」
思わず見とれてしまったのが恥ずかしくて、素っ気なく答えた。
しばらく同棲していたのに。
ちょっと会わなかっただけで、なんか緊張する。
「……良かった。あんなに殴られたのに顔が綺麗だ。……いつも通り、かっこいい、えへへ」
そう言って、ルーナは花が咲いたような笑みを浮かべる。
相変わらず目が腐っているが、可愛い。
「…………」
「…………」
そのままルーナと見つめ合ってしまった。
言葉もなく。
先に視線を反らせたのは、ルーナだった。
照れたように顔を赤らめて、くるりと背を向ける。
「ひ、久しぶりに見たから、ちょっと見とれてしまった。えへへ」
それはこっちのセリフなのだが。
そして、俺なんかに見惚れるとか本当に脳が心配になるのだが。
ルーナの仕草が可愛すぎてドキドキした。
くそ、可愛いなこの女。
普段何食ったらこんなに可愛くなるんだ。
ガシャンと、ルーナが牢に背中を押し付ける。
「……それでさ、コウは何しに来たの?」
背中越しにかけられた言葉。
その表情は伺い知れない。
俺が何をしにエルフ王国まで来たのか。
そんなのルーナを連れて帰るために決まっているのだが。
俺が起こした行動を振り返ってみる。
――テロを起こして、知らない女に告白した。
うーん、まずい。
特に後半がまずい。
背中越しで顔は見れないが、ルーナさん怒っているんじゃ……。
いや、怒らないわけないよね。
「ル、ルーナさん、あの告白は違くて……」
「そんなのわかってる!! あの時は慌てたけど! ……後で、冷静になって考えてみたら、あれが誰に向けられた言葉なのかくらい……わかるもん」
次第に声を小さく、ボソボソとさせるルーナ。
その尖った耳は真っ赤だった。
「ルーナ!」
「あっ……」
思わず牢越しに、ルーナを抱きしめる。
可愛くて、愛おしくてたまらなかった。
その小さな肩と、腰に背後から手を回した。
その滑らかな金髪に鼻を押し付けて、思い切りルーナの匂いを嗅いだ。
ここ数日、ずっと嗅ぎたかった匂いに、ホッと安心する。
「……お前を追いかけてきたんだ」
「!?」
そう言葉をかけると、美しいエルフはビクッと肩を震わせる。
そして、小さな手が俺の腕に触れてくる。
やたら熱のこもった、熱い手だった。
「……あの告白」
「ん?」
「私と間違えてフェルミーにした告白、ちゃんと聞かせて欲しいな……」
「…………」
何言ってんだこの女。
俺は一度しか言わないと言ったのに。
あんな恥ずかしいの何度もできるわけないじゃんね。
武士(?)に二言はない!!
「何言っているんだ!? 他の女に言ったらなんの意味もないじゃないか!!」
至極当然の事を言ったルーナは、背中越しにプンプンと怒っている。
その通りなんだけど。
恥ずかしい。
えーまた言うのアレ。
「ほ、ほら! 早く!!」
ルーナの長耳が嬉しそうにピクピクと動いている。
その仕草に、ため息を一つついて、咳払いをする。
ここまで来たら、もう素直になるしかない。
「ルーナ、愛している。ずっと俺のそばにいてくれ」
耳に直接ささやくように。
誰にも聞かれないように。
今度こそ、間違いなくルーナに伝えた。
「…………ううっ、ぐす」
俺の言葉を聞いたルーナはビクッと震えて、やがて鼻をすすりだした。
なぜ泣く。
「も、もっと早く言ってくれなきゃ駄目じゃないか!!」
一世一代(しかし2回目)の告白に理不尽な文句を言うルーナ。
そのまま振り向くと、顔をぐしゃぐしゃにして涙を流していた。
それでもルーナの美しさは少しも損なわれない。
そんな事を思ってしまうあたり、俺もだいぶ重症なのだが。
「私も! 私も愛してる! 大好きだよ、コウ……んっ」
そのままルーナと唇を重ねた。
もう何度も味わった感覚。
それなのに、なぜこうも俺を昂ぶらせるのか。
「んん……コウ……れろぉ」
ルーナと舌を絡め合いながら、その体を強く抱きしめた。
ガチッとした鉄の牢が俺たちの邪魔をする。
「ちゅぷ……待っててね、すぐにお祖母様に頼んで出してもらうから」
唇を離したルーナがそんな事を言う。
待てるわけねえだろうが。
鉄の格子を両手で掴んで、ねじ開く。
「ええ!?」
こんな牢屋で俺がルーナを抱くのを防げるわけがない。
片腹痛いわ!
「あっ……コウ」
遮るものがなくなって、改めてルーナを抱きしめる。
柔らかい。愛おしい。
今日のルーナは青いドレスを着ていた。
普段とは違った姿に興奮する。
胸元の大きく開いたドレスだった。
とりあえず、そこに手を突っ込む。
固いブラジャーを押しのけて、ルーナの柔らかい乳房を掴んだ。
温かい。
「こ、こんな所で、駄目じゃないか……」
乳を揉まれたルーナは珍しく抵抗していた。
体を強張らせている。
まあ、牢屋で抱かれるのは誰だって嫌だろうが。
俺はもう我慢出来ないのだ。
「……愛しているぜ」
「!?」
耳元で再び囁いた。
とたんにふにゃっと体の力を抜くルーナ。
そしてビクンビクンと痙攣する。
まさかイッたのだろうか。
それはちょっと引くのだが。
「仕方ないじゃないか! ず、ずっと言って欲しかったんだもん! ……なんでもっと早く言ってくれなかったの?」
恨めしそうに俺を見上げるルーナ。
イッた直後で、頬を赤らめ、肩で呼吸する姿が色っぽい。
「そんなセリフ、男が何度も口にできるか!」
「ええ!?」
とりあえず口から出た言葉には、昭和臭が染み付いていた。
そもそもである。
「……好きとか愛してるとか、そんなの一時の感情だ。時間が経てば想いは劣化する。俺はかつて、同じセリフを何度も他の女に言ってきた。その当時は確かに恋愛感情を持っていたが、今はそんなものはない」
ふと真面目に、自分の考えを語っていた。
こんな事を誰かに話すのは初めてで。
キャラじゃないのはわかっている。
俺らしくルーナの乳首でも吸っていればいいのに。
それでもルーナには、言っておくべきな気がしたのだ。
「俺はクズだ。何度も口にした恋愛感情を守りきったことはない。時間が経てば普通に他の女を好きになった。今だってお前を好きになっている。でも、人間ってそういうもんだと思うんだよな。恋愛感情なんてまやかしにすぎないんだ。お前だって時間が経てば――」
「何言ってるんだ!!!」
俺の独白は、しかし、ルーナに遮られた。
「私はいつまで経ってもお前の事を愛している!! そんなの決まってるじゃないか!!!」
「…………」
それは、若いセリフだった。
俺と同い年のくせに。
昔は俺もそんなお花畑みたいな事を考えていたのだ。
それはわかっているのだが。
「私は、何年経っても、それこそお祖母様みたいに千歳になっても、お前のことを愛している!!」
なんでそんな事を言いきれるのか。
こいつはバカだから。
未来のことなんて誰にも――。
「わかっている!! 確かに未来はどうなるかわかんないけど、一つだけ確かな事があるんだ。お前の隣にはずっと私がいる!!!」
本当にバカである。
そんな事を断言しやがった。
ルーナの青い瞳が、まっすぐ俺を見つめる。
一点の曇りもなく、自信に満ちあふれていて。
こいつマジかよと思った。
なんで言い切れるんだよ。
おっぱいポロンとさせてるくせに。
「……なんでそんなに私を信じられないんだ? 今回だって、普通に考えればわかるだろう? 私が他の男と結婚するわけないじゃないか」
ルーナは諭すように言った。
涙を浮かべながら。
人の気持ちほど、あやふやなものはない。
信じられるわけないのに。
「何度も言うぞ? コウ、大好きだよ! ずっと、ずっと愛してる!!」
その言葉には、来るものがあった。
意味などないとわかっているのに。
やたら心を揺さぶられる。
なんなんだよ、この女は。
こんな女は今までいなかった。
なんでだ。
なんで、こいつは。
だいたい、俺達の出会いは……。
「……わかっているのか? お前は俺に犯されたんだぞ?」
「私はお前に犯された事なんてない! お前とは、いつも愛し合ってただけだ!!」
そんな綺麗な言葉で片付けるな。
都合が良すぎるだろ。
だから俺みたいなクズに引っかかるのだ。
「なんでそこまで愛せる? 俺はク――」
「お前はクズなんかじゃない!!」
言葉に抉られた。
「ずっと気になってたんだ。お前が自分をクズだって言うのを。お前は全然クズじゃない! 私の愛する男を、クズ呼ばわりなんてするな!!」
何言ってんだこのバカ。
俺がクズじゃない?
…………。
ふと自分の行いを思い出してみた。
いやいやどう考えてもクズだから。
「お前は人一倍優しくて、思いやりがあって、義理に厚くて、勇敢じゃないか!!! どこがクズなんだ!?」
「ギャンブルに狂って、風俗に通って」
「そんなの男なら誰だってする!!」
「実は借金まみれで」
「だから何だ!? 返していけばいいじゃないか!」
「浮気しまくってて」
「…………それは嫌だけど……でも、それはコウの愛情が大きいからだ! 皆を愛せるってことだろう? ミレイなんてすごく幸せそうじゃないか!」
俺のクズ主張をルーナが次々に全肯定して行く。
クズ主張ってなんだよ、と思うのだが。
俺は、いまだかつてないほど、動揺していた。
いや、どう考えてもクズなんだが。
誰がどう見たってクズなんだが。
「他人なんて関係ないじゃないか! 誰がなんと言おうと、コウはクズじゃない! 私だけはずっとそう言い続ける!!」
バカは自信満々にそう言い放つ。
綺麗で真っ直ぐな瞳で。
「コウ……」
ルーナは優しく俺の頭を抱きしめる。
その柔らかい乳房に顔を埋めていると。
クソ……。
悔しいけど、心が軽くなった。
こんないい乳に顔ズリされてるのに、エロさではなく、安心感を覚えてしまう。
アサギリ・コウ、一生の不覚。
「コウはね、クズなんかじゃなくて、私の自慢の旦那様だよ? 大好き……」
優しくそんな言葉をかけられれば。
不覚にも満たされてしまって。
長年積み重ねた何かが、すうっと成仏していくような錯覚を感じた。
ああ、駄目だ。
もう一生こいつに勝てる気がしない。
「じゃあ、もう結婚しろよ、俺と」
それは俺の敗北宣言だった。
ルーナはくすっと小さく笑う。
「もうとっくに結婚しているじゃないか……でも……」
俺の顔を胸から離したルーナは、優しく俺を覗き込む。
この顔を俺は一生忘れないだろう。
今日のルーナは、今まで見た中で、一番美しかった。
そして、何よりも愛おしい。
「喜んで、お嫁さんになります……あなた」
そして、ルーナと口吻をした。
こみ上げてくる熱いものをなんとか堪えながら。
そのままルーナを石造りの床に押し倒す。
ルーナが欲しくて仕方がなかった。
邪魔な青いドレスを、強引に脱がせる。
そんな俺を、ルーナはただ優しく、慈愛に満ち溢れた顔で見守っていた。
俺は愛する女と、ただ満たし合うだけのセックスをした。
何回も、何回も。
お互いの愛情を確かめるようなセックスは、優しくて。
目頭が熱くなるのを感じたのだった。
まるで碧いシーツに宝石を零したかのように、きらめく星々。
なんてきれいで、壮大なんだ。
あんな星を見ていたら、自分の愚かしさなんてどうでも良くなる。
そう俺の愚かさなんて、どうでも……。
「……ふう」
そして、俺はため息をついた。
……牢屋の中で。
じめじめとした石造りの小さな牢屋。
わずかに空いた小窓からは、辛うじて夜空が見える。
なんで俺はこんな所にいるのか。
答えは簡単で、テロを起こしたのだ。
惚れた女の生まれた国で。
「…………」
よく考えたら、それだけでドン引き案件なのだが、問題なのはそこではない。
テロまで起こして、ルーナを奪い返しに行った。
そして、柄にもなくルーナに想いを伝えた。
32歳にもなって、マジ告白をした。
だがしかし。
「…………ふふ」
なんと全ては私の勘違いだったのです。
思わず自嘲してしまう。
あんだけ緊張したのに!
すげえ恥ずかしかったのに!!
俺は、全然知らない人に告白していたのだ。
「ふは、ふははは!」
思わず大声で笑ってしまった。
自分がアホすぎて。
もう笑うしかない。
よく考えたら、貴族の娘の縁談がそんな超スピードで進むわけ無いじゃんっていうね。
お姫様の結婚式だって言うから勘違いしてしまったのだ。
お姫様って他にいるかもしれないのに。
なんかルーナの事だと思いこんでしまった。
だって、俺のお姫様はルーナだけだから(照)。
覚悟をキメた俺は、こんな惚気だって言える。
あの後。
己の勘違いに気づいた俺が、膝から崩れ落ちて、衛兵さんたちにボコられていた時。
『お、おい! そんなにパカパカ叩くことないじゃないか!』
『ルシアリーナ様!? ……いえ、彼奴がしたことを考えればこれくらい当然かと』
『コウだって反省してるんだから、ちょっとメッてすればわかってくれるはずだ! お、おい! やめろってば!!』
涙目になったルーナは必死にかばってくれた。
まじかわいい。
『ちょっと、ルシア? 貴方、その殿方とお知り合いなの? 早くわたくしに紹介しなさいな』
『あっ……フェルミー。け、結婚おめでとう』
『まだ結婚してませんわ! いいから早くあの方をわたくしに……』
ルーナと俺が勘違いして告った美女が何やら言い合っていた。
気まずそうな表情を浮かべるルーナが気になった。
俺の意識は、その辺りで途切れた。
その後は、当然だけど衛兵さんのキツい取り調べを受けた。
『おい、貴様! な、なんであんな事をした!?』
これまた当然だが、衛兵さんはマジ切れしていた。
そして、ちょっと引いていた。
なんでと聞かれても、全ては俺の勘違いだったのだ。
俺に答えられる事なんて。
『むしゃくしゃしてやった。相手は誰でも良かった』
しかなかった。
『頭がおかしいのか、貴様!?』
衛兵さんは、更にブチギレていた。
いえ、私もちょっと酷いなとは思うんです。
勘違いから始まるテロリズムって聞いたことなかったので。
そんなわけで、俺は今、一人で牢屋に閉じ込められていた。
セレナの鎧も剥ぎ取られて、薄手のインナーしか着ていない。
まだちょっと寒い。
そういえば、ラグニードはエルフの衛兵さんが拾ってくれていた。
『……なんか国宝級の剣が落ちてました』
上司っぽい人にそう報告していた衛兵さんの顔は真っ青だった。
前にもこんなことがあったような気がする。
よく落ちる剣である。
まあ、当然ながらラグニードはそのまま没収された。
なので今は丸腰である。
ぐるるーと腹が鳴る。
しかも空腹。
思えば、最後に口に入れたのはミレイの作ってくれたお弁当である。
あれから一週間位経っているだろうか。
空腹耐性のある俺でも、さすがに限界である。
寒いし、ひもじい。
――ガチャリ。
その時、遠くで金属扉の開く音が聞こえた。
「ル、ルシアリーナ様!? こんな場所にお一人でどうされたんですか!?」
「……面会に来た」
「そんな……危険です。御身に何かあったら……」
「心配するな。責任は全てエリシフォン家が取る」
「そ、そうおっしゃられるなら……」
そして、スタスタと歩いてくる音が聞こえる。
「コウ……」
やがて、俺の牢の前に立ったルーナは、黒いローブを被っていた。
「大丈夫?」
そう言って、ローブを取ると美しい金髪がこぼれ出た。
月明かりに照らされたルーナは幻想的なまでに美しい。
涙の浮かんだ青い瞳は、キラキラしていて。
きゅっと結んだ桜色の唇に、細く小さな顎。
ふにゃりと垂れだがった長い耳。
何度見ても、ルーナは美しかった。
「お、おう」
思わず見とれてしまったのが恥ずかしくて、素っ気なく答えた。
しばらく同棲していたのに。
ちょっと会わなかっただけで、なんか緊張する。
「……良かった。あんなに殴られたのに顔が綺麗だ。……いつも通り、かっこいい、えへへ」
そう言って、ルーナは花が咲いたような笑みを浮かべる。
相変わらず目が腐っているが、可愛い。
「…………」
「…………」
そのままルーナと見つめ合ってしまった。
言葉もなく。
先に視線を反らせたのは、ルーナだった。
照れたように顔を赤らめて、くるりと背を向ける。
「ひ、久しぶりに見たから、ちょっと見とれてしまった。えへへ」
それはこっちのセリフなのだが。
そして、俺なんかに見惚れるとか本当に脳が心配になるのだが。
ルーナの仕草が可愛すぎてドキドキした。
くそ、可愛いなこの女。
普段何食ったらこんなに可愛くなるんだ。
ガシャンと、ルーナが牢に背中を押し付ける。
「……それでさ、コウは何しに来たの?」
背中越しにかけられた言葉。
その表情は伺い知れない。
俺が何をしにエルフ王国まで来たのか。
そんなのルーナを連れて帰るために決まっているのだが。
俺が起こした行動を振り返ってみる。
――テロを起こして、知らない女に告白した。
うーん、まずい。
特に後半がまずい。
背中越しで顔は見れないが、ルーナさん怒っているんじゃ……。
いや、怒らないわけないよね。
「ル、ルーナさん、あの告白は違くて……」
「そんなのわかってる!! あの時は慌てたけど! ……後で、冷静になって考えてみたら、あれが誰に向けられた言葉なのかくらい……わかるもん」
次第に声を小さく、ボソボソとさせるルーナ。
その尖った耳は真っ赤だった。
「ルーナ!」
「あっ……」
思わず牢越しに、ルーナを抱きしめる。
可愛くて、愛おしくてたまらなかった。
その小さな肩と、腰に背後から手を回した。
その滑らかな金髪に鼻を押し付けて、思い切りルーナの匂いを嗅いだ。
ここ数日、ずっと嗅ぎたかった匂いに、ホッと安心する。
「……お前を追いかけてきたんだ」
「!?」
そう言葉をかけると、美しいエルフはビクッと肩を震わせる。
そして、小さな手が俺の腕に触れてくる。
やたら熱のこもった、熱い手だった。
「……あの告白」
「ん?」
「私と間違えてフェルミーにした告白、ちゃんと聞かせて欲しいな……」
「…………」
何言ってんだこの女。
俺は一度しか言わないと言ったのに。
あんな恥ずかしいの何度もできるわけないじゃんね。
武士(?)に二言はない!!
「何言っているんだ!? 他の女に言ったらなんの意味もないじゃないか!!」
至極当然の事を言ったルーナは、背中越しにプンプンと怒っている。
その通りなんだけど。
恥ずかしい。
えーまた言うのアレ。
「ほ、ほら! 早く!!」
ルーナの長耳が嬉しそうにピクピクと動いている。
その仕草に、ため息を一つついて、咳払いをする。
ここまで来たら、もう素直になるしかない。
「ルーナ、愛している。ずっと俺のそばにいてくれ」
耳に直接ささやくように。
誰にも聞かれないように。
今度こそ、間違いなくルーナに伝えた。
「…………ううっ、ぐす」
俺の言葉を聞いたルーナはビクッと震えて、やがて鼻をすすりだした。
なぜ泣く。
「も、もっと早く言ってくれなきゃ駄目じゃないか!!」
一世一代(しかし2回目)の告白に理不尽な文句を言うルーナ。
そのまま振り向くと、顔をぐしゃぐしゃにして涙を流していた。
それでもルーナの美しさは少しも損なわれない。
そんな事を思ってしまうあたり、俺もだいぶ重症なのだが。
「私も! 私も愛してる! 大好きだよ、コウ……んっ」
そのままルーナと唇を重ねた。
もう何度も味わった感覚。
それなのに、なぜこうも俺を昂ぶらせるのか。
「んん……コウ……れろぉ」
ルーナと舌を絡め合いながら、その体を強く抱きしめた。
ガチッとした鉄の牢が俺たちの邪魔をする。
「ちゅぷ……待っててね、すぐにお祖母様に頼んで出してもらうから」
唇を離したルーナがそんな事を言う。
待てるわけねえだろうが。
鉄の格子を両手で掴んで、ねじ開く。
「ええ!?」
こんな牢屋で俺がルーナを抱くのを防げるわけがない。
片腹痛いわ!
「あっ……コウ」
遮るものがなくなって、改めてルーナを抱きしめる。
柔らかい。愛おしい。
今日のルーナは青いドレスを着ていた。
普段とは違った姿に興奮する。
胸元の大きく開いたドレスだった。
とりあえず、そこに手を突っ込む。
固いブラジャーを押しのけて、ルーナの柔らかい乳房を掴んだ。
温かい。
「こ、こんな所で、駄目じゃないか……」
乳を揉まれたルーナは珍しく抵抗していた。
体を強張らせている。
まあ、牢屋で抱かれるのは誰だって嫌だろうが。
俺はもう我慢出来ないのだ。
「……愛しているぜ」
「!?」
耳元で再び囁いた。
とたんにふにゃっと体の力を抜くルーナ。
そしてビクンビクンと痙攣する。
まさかイッたのだろうか。
それはちょっと引くのだが。
「仕方ないじゃないか! ず、ずっと言って欲しかったんだもん! ……なんでもっと早く言ってくれなかったの?」
恨めしそうに俺を見上げるルーナ。
イッた直後で、頬を赤らめ、肩で呼吸する姿が色っぽい。
「そんなセリフ、男が何度も口にできるか!」
「ええ!?」
とりあえず口から出た言葉には、昭和臭が染み付いていた。
そもそもである。
「……好きとか愛してるとか、そんなの一時の感情だ。時間が経てば想いは劣化する。俺はかつて、同じセリフを何度も他の女に言ってきた。その当時は確かに恋愛感情を持っていたが、今はそんなものはない」
ふと真面目に、自分の考えを語っていた。
こんな事を誰かに話すのは初めてで。
キャラじゃないのはわかっている。
俺らしくルーナの乳首でも吸っていればいいのに。
それでもルーナには、言っておくべきな気がしたのだ。
「俺はクズだ。何度も口にした恋愛感情を守りきったことはない。時間が経てば普通に他の女を好きになった。今だってお前を好きになっている。でも、人間ってそういうもんだと思うんだよな。恋愛感情なんてまやかしにすぎないんだ。お前だって時間が経てば――」
「何言ってるんだ!!!」
俺の独白は、しかし、ルーナに遮られた。
「私はいつまで経ってもお前の事を愛している!! そんなの決まってるじゃないか!!!」
「…………」
それは、若いセリフだった。
俺と同い年のくせに。
昔は俺もそんなお花畑みたいな事を考えていたのだ。
それはわかっているのだが。
「私は、何年経っても、それこそお祖母様みたいに千歳になっても、お前のことを愛している!!」
なんでそんな事を言いきれるのか。
こいつはバカだから。
未来のことなんて誰にも――。
「わかっている!! 確かに未来はどうなるかわかんないけど、一つだけ確かな事があるんだ。お前の隣にはずっと私がいる!!!」
本当にバカである。
そんな事を断言しやがった。
ルーナの青い瞳が、まっすぐ俺を見つめる。
一点の曇りもなく、自信に満ちあふれていて。
こいつマジかよと思った。
なんで言い切れるんだよ。
おっぱいポロンとさせてるくせに。
「……なんでそんなに私を信じられないんだ? 今回だって、普通に考えればわかるだろう? 私が他の男と結婚するわけないじゃないか」
ルーナは諭すように言った。
涙を浮かべながら。
人の気持ちほど、あやふやなものはない。
信じられるわけないのに。
「何度も言うぞ? コウ、大好きだよ! ずっと、ずっと愛してる!!」
その言葉には、来るものがあった。
意味などないとわかっているのに。
やたら心を揺さぶられる。
なんなんだよ、この女は。
こんな女は今までいなかった。
なんでだ。
なんで、こいつは。
だいたい、俺達の出会いは……。
「……わかっているのか? お前は俺に犯されたんだぞ?」
「私はお前に犯された事なんてない! お前とは、いつも愛し合ってただけだ!!」
そんな綺麗な言葉で片付けるな。
都合が良すぎるだろ。
だから俺みたいなクズに引っかかるのだ。
「なんでそこまで愛せる? 俺はク――」
「お前はクズなんかじゃない!!」
言葉に抉られた。
「ずっと気になってたんだ。お前が自分をクズだって言うのを。お前は全然クズじゃない! 私の愛する男を、クズ呼ばわりなんてするな!!」
何言ってんだこのバカ。
俺がクズじゃない?
…………。
ふと自分の行いを思い出してみた。
いやいやどう考えてもクズだから。
「お前は人一倍優しくて、思いやりがあって、義理に厚くて、勇敢じゃないか!!! どこがクズなんだ!?」
「ギャンブルに狂って、風俗に通って」
「そんなの男なら誰だってする!!」
「実は借金まみれで」
「だから何だ!? 返していけばいいじゃないか!」
「浮気しまくってて」
「…………それは嫌だけど……でも、それはコウの愛情が大きいからだ! 皆を愛せるってことだろう? ミレイなんてすごく幸せそうじゃないか!」
俺のクズ主張をルーナが次々に全肯定して行く。
クズ主張ってなんだよ、と思うのだが。
俺は、いまだかつてないほど、動揺していた。
いや、どう考えてもクズなんだが。
誰がどう見たってクズなんだが。
「他人なんて関係ないじゃないか! 誰がなんと言おうと、コウはクズじゃない! 私だけはずっとそう言い続ける!!」
バカは自信満々にそう言い放つ。
綺麗で真っ直ぐな瞳で。
「コウ……」
ルーナは優しく俺の頭を抱きしめる。
その柔らかい乳房に顔を埋めていると。
クソ……。
悔しいけど、心が軽くなった。
こんないい乳に顔ズリされてるのに、エロさではなく、安心感を覚えてしまう。
アサギリ・コウ、一生の不覚。
「コウはね、クズなんかじゃなくて、私の自慢の旦那様だよ? 大好き……」
優しくそんな言葉をかけられれば。
不覚にも満たされてしまって。
長年積み重ねた何かが、すうっと成仏していくような錯覚を感じた。
ああ、駄目だ。
もう一生こいつに勝てる気がしない。
「じゃあ、もう結婚しろよ、俺と」
それは俺の敗北宣言だった。
ルーナはくすっと小さく笑う。
「もうとっくに結婚しているじゃないか……でも……」
俺の顔を胸から離したルーナは、優しく俺を覗き込む。
この顔を俺は一生忘れないだろう。
今日のルーナは、今まで見た中で、一番美しかった。
そして、何よりも愛おしい。
「喜んで、お嫁さんになります……あなた」
そして、ルーナと口吻をした。
こみ上げてくる熱いものをなんとか堪えながら。
そのままルーナを石造りの床に押し倒す。
ルーナが欲しくて仕方がなかった。
邪魔な青いドレスを、強引に脱がせる。
そんな俺を、ルーナはただ優しく、慈愛に満ち溢れた顔で見守っていた。
俺は愛する女と、ただ満たし合うだけのセックスをした。
何回も、何回も。
お互いの愛情を確かめるようなセックスは、優しくて。
目頭が熱くなるのを感じたのだった。
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