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第六章 エルフ王国編
第225話 クズの独白
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何もない荒野を一人きりで歩く。
まばらに草の生えた赤土の地面。
枯れて干からびた木々に、よくわからない獣の声。
荒野は見渡す限り続き、先にはぼんやりとした地平線。
赤土と青空のコントラストは美しかった。
広い土地である。
ここが全てセランディア荒野、つまり俺の土地なのだろうか。
全然実感がない。
もう歩き続けて二日目になる。
かつて俺が襲撃したエルベ山はとうに過ぎていた。
トカゲ女が言っていた道というのは、わずかに踏み固められた土の道だった。
もっとでっかい国道みたいなのを想像していたのだが、これがこの世界の道なんだろうか。
車を走らせたら、ものすごくガタンガタンと揺れそうなほど、でこぼこしていた。
水たまりだらけだし。
フェルちゃんは道を北に進めと言っていたが、北ってどっちだろうか。
結構、本気で困って佇んでいたら、何度か道をゆく商隊っぽい人々を見かけた。
その商隊に北ってどっちか聞く――なんて高度なコミュ力は持っていない。
とりあえず、多くの商隊が向かう方向に進んでみた。
みんなエルフ王国に向かうんだろう(勘)
道なき道をとぼとぼと歩く。
朝日が登って、また沈んでいく。
夜は辺りが闇に包まれた。
進む方向すらおぼろげで。
それでも地面を見ながら、歩き続けた。
一人でいるのは、だいぶ久しぶりな気がする。
最近は、いつでも誰かしらが隣にいた。
日本にいた時よりも、ずっと賑やかだった。
寝ている時も、隣には必ずルーナがいた。
ルーナ。
今何をしているんだろう。
もうエルフ王国についたのだろうか。
あの幼なじみのイケメンとセックスしているんだろうか。
そう考えると、ムカムカしてきて。
ずっと歩きづめの疲労も我慢できた。
それにしても、と思う。
このままエルフ王国についたとして、再会したあいつになんて言おう。
素直に好きだと言うべきなんだろうか。
セレナに認めてもらえたお蔭で、今なら自分の気持ちに素直になれる気はする。
悔しいけど。
恥ずかしいけど。
32にもなって、何やってんだという情けなさのような感覚もあるけど。
俺は、あいつが好きなんだろう。
まあ、わかってた。
そんな気はだいぶ前からしていた。
ただなー。
そんな感情はいっときのものだと思うのだ。
かつての、若かりし日の記憶。
中学生の頃に憧れていた女の子。
高校生になって、初めて付き合った彼女。
その後は、だいぶ爛れはしたものの、何人かの女性と付き合って。
好きだなんてセリフは、それこそ何度もほざいてきた。
彼女たちに対して、今はどんな感情を抱いているのか。
答えは、別になんとも、である。
当時は、好きだったにせよ、体目当てだったにせよ、今、ルーナに抱いているのと似たような感情はあったのだ。
でも、長続きはしなかった。
きっと今ルーナに抱いている気持ちだって、長続きはしないのだろう。
数年後には心変わりしているに決まっている。
それは、ルーナにだって当てはまる。
そう思うと、好きだと言い合う行為になんの意味があるのかと思うのだ。
まあ、ルーナが喜ぶなら言ってもいいけどさ。
そもそも俺は、セレナやミレイ、カンナさん、リュディア、エレインにだって似たような感情は抱いている。
俺はクズなのである。
何人もセフレを抱え、働きもせず、他の女を孕ませ……。
ふと足が止まった。
このまま、戻ったほうが良いんじゃなかろうか。
その方が、ルーナのためな気がする。
だけど。
俺は、再び歩き出した。
そんなことは何度も考えたし、わかっていた。
でも、もう分水嶺はとっくに超えていたのだ。
あの女と出会ったばかりの頃だったら、実家に戻ったルーナを追いかけるなんて。
そんな情けない真似はしなかっただろう。
出会ってからいろいろな事があった。
あの美しい背中に消えない傷を残してしまった事。
戦争に行ったら、必死に追いかけてきた事。
熱を出したルーナを見て、肝を冷やした事。
あいつとの思い出は、鮮烈すぎて。
もう俺には、手放すことは出来なかった。
まあ、言ってしまえば執着と嫉妬である。
ダサいとは思うけれど、あの女が他の男に抱かれるとか許せない。
あの女は、俺の女である。
誰にも渡す気はない。
一人でいると思考は堂々巡りをする。
俺は似たような事を何度も考えた。
悶々としながら、恥ずかしさに身を焦がしながら。
密かに覚悟を決めながら。
俺はひたすら荒野を歩いた。
まばらに草の生えた赤土の地面。
枯れて干からびた木々に、よくわからない獣の声。
荒野は見渡す限り続き、先にはぼんやりとした地平線。
赤土と青空のコントラストは美しかった。
広い土地である。
ここが全てセランディア荒野、つまり俺の土地なのだろうか。
全然実感がない。
もう歩き続けて二日目になる。
かつて俺が襲撃したエルベ山はとうに過ぎていた。
トカゲ女が言っていた道というのは、わずかに踏み固められた土の道だった。
もっとでっかい国道みたいなのを想像していたのだが、これがこの世界の道なんだろうか。
車を走らせたら、ものすごくガタンガタンと揺れそうなほど、でこぼこしていた。
水たまりだらけだし。
フェルちゃんは道を北に進めと言っていたが、北ってどっちだろうか。
結構、本気で困って佇んでいたら、何度か道をゆく商隊っぽい人々を見かけた。
その商隊に北ってどっちか聞く――なんて高度なコミュ力は持っていない。
とりあえず、多くの商隊が向かう方向に進んでみた。
みんなエルフ王国に向かうんだろう(勘)
道なき道をとぼとぼと歩く。
朝日が登って、また沈んでいく。
夜は辺りが闇に包まれた。
進む方向すらおぼろげで。
それでも地面を見ながら、歩き続けた。
一人でいるのは、だいぶ久しぶりな気がする。
最近は、いつでも誰かしらが隣にいた。
日本にいた時よりも、ずっと賑やかだった。
寝ている時も、隣には必ずルーナがいた。
ルーナ。
今何をしているんだろう。
もうエルフ王国についたのだろうか。
あの幼なじみのイケメンとセックスしているんだろうか。
そう考えると、ムカムカしてきて。
ずっと歩きづめの疲労も我慢できた。
それにしても、と思う。
このままエルフ王国についたとして、再会したあいつになんて言おう。
素直に好きだと言うべきなんだろうか。
セレナに認めてもらえたお蔭で、今なら自分の気持ちに素直になれる気はする。
悔しいけど。
恥ずかしいけど。
32にもなって、何やってんだという情けなさのような感覚もあるけど。
俺は、あいつが好きなんだろう。
まあ、わかってた。
そんな気はだいぶ前からしていた。
ただなー。
そんな感情はいっときのものだと思うのだ。
かつての、若かりし日の記憶。
中学生の頃に憧れていた女の子。
高校生になって、初めて付き合った彼女。
その後は、だいぶ爛れはしたものの、何人かの女性と付き合って。
好きだなんてセリフは、それこそ何度もほざいてきた。
彼女たちに対して、今はどんな感情を抱いているのか。
答えは、別になんとも、である。
当時は、好きだったにせよ、体目当てだったにせよ、今、ルーナに抱いているのと似たような感情はあったのだ。
でも、長続きはしなかった。
きっと今ルーナに抱いている気持ちだって、長続きはしないのだろう。
数年後には心変わりしているに決まっている。
それは、ルーナにだって当てはまる。
そう思うと、好きだと言い合う行為になんの意味があるのかと思うのだ。
まあ、ルーナが喜ぶなら言ってもいいけどさ。
そもそも俺は、セレナやミレイ、カンナさん、リュディア、エレインにだって似たような感情は抱いている。
俺はクズなのである。
何人もセフレを抱え、働きもせず、他の女を孕ませ……。
ふと足が止まった。
このまま、戻ったほうが良いんじゃなかろうか。
その方が、ルーナのためな気がする。
だけど。
俺は、再び歩き出した。
そんなことは何度も考えたし、わかっていた。
でも、もう分水嶺はとっくに超えていたのだ。
あの女と出会ったばかりの頃だったら、実家に戻ったルーナを追いかけるなんて。
そんな情けない真似はしなかっただろう。
出会ってからいろいろな事があった。
あの美しい背中に消えない傷を残してしまった事。
戦争に行ったら、必死に追いかけてきた事。
熱を出したルーナを見て、肝を冷やした事。
あいつとの思い出は、鮮烈すぎて。
もう俺には、手放すことは出来なかった。
まあ、言ってしまえば執着と嫉妬である。
ダサいとは思うけれど、あの女が他の男に抱かれるとか許せない。
あの女は、俺の女である。
誰にも渡す気はない。
一人でいると思考は堂々巡りをする。
俺は似たような事を何度も考えた。
悶々としながら、恥ずかしさに身を焦がしながら。
密かに覚悟を決めながら。
俺はひたすら荒野を歩いた。
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