ちょいクズ社畜の異世界ハーレム建国記

油揚メテオ

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第六章 エルフ王国編

第224話 出発

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 家で旅立ちの準備をする。
 外には危険がいっぱいだ。
 念入りに準備しておくに越したことはない。
 そんなわけで、セレナ製の鎧を身にまとい、カンナさんのマントを羽織る。
 背中には王様から貰ったラグニード。
 ありったけのポーションを袋に詰めて背負った。
 よし、これで完璧だ。
 一体、何と戦いに行くんだよって気もするが、外出するのである。
 これくらいの装備じゃないと、外には敵がいっぱいいるかんね!
 まあ、できればお金も持って行きたかったけど。
 残念ながら、一文無しなの……。

 そんなわけで、ガチャガチャと鎧を鳴らしながら家の階段を降りた。
 一階では、ピョン吉とニャン子が不安そうに俺を見つめている。
 俺が家を空けるので、しばらく二人だけにしてしまう。
 子供だけだと不安だけど……でも、大丈夫!

「……ちょっとルーナを迎えに行ってくる。2人の事はカンナさんに頼んでおいたからな」

「ええ!?」 「にゃっ!?」

 頼りになるカンナさんに任せれば安心だと思っていたのだが、なぜか2人は怯えた顔をしていた。
 なぜだ。解せぬ。
 まあ大丈夫だろう。
 カンナさんおっぱい大きいし。

 家の外に出ると、大きなバスケットを持ったミレイが待っていた。
 お弁当でも作ってくれたんだろうか。
 そういえば、食べ物の事を忘れていた。
 ルーナんちまで何日くらいかかるんだろう。
 途中コンビニなんてあるわけないし。
 食事どうしよう。
 これだから、外は……。

「……コウさん、これ途中で食べて下さい」

 そう言いながらミレイがバスケットを渡してくれる。
 やっぱりお弁当だったらしい。
 美女の手作り弁当。
 しかも、ミレイの指には当然のように絆創膏が巻かれている。
 料理下手なのに頑張って作ってくれたようだ。
 嬉しい。テンション上がる。

「ルーナさんの事、よろしくおねがいしますね」

「ああ。……悪いな。身重なのに、一人にしちゃって」

 よく考えたら、妊娠したての女を放置して、別の女を迎えに行くってどうなんだろう。
 いやいや。
 よく考えたら負けである(何に?)。
 クズで結構。
 このままじゃルーナが結婚しちゃうし。
 そんなの許せん。

「いえ、私は大丈夫です」

 そう言いながら、ミレイは厳かに跪く。
 そして両手を組んで祈りを捧げる。

「……天にまします我らの神よ。どうか我が主人にあらん限りの祝福を……。エルフ王国までの道中が無事でありますように。ルーナさんと2人で無事に帰ってこれますように」

 なんというか、堂に入った祈りだった。
 そういえば元シスターだったな。
 目を瞑って、厳かに祈るミレイは美しくて。

「…………」

 俺は思わず押し倒したくなる衝動をぐっとこらえた。
 シスターってなんかエロいじゃんね。(※全国の教会関係者の皆様ごめんなさい)
 今度絶対、シスターの格好してもらってセックスしよう。
 絶対にだ。

「……どさくさに紛れて、コウさんのこと主人って呼んじゃいました。えへへ」

 パンパンと膝を払って立ち上がるミレイはいたずらっぽくチロッと舌を出す。
 可愛い。
 とりあえず、ミレイを抱きしめてキスをする。
 ミレイは嬉しそうに応じてくれた。
 そして、唇を離した時。

「……本当に、2人で無事に戻ってきてくださいね」

 そう小さく呟いて、長いまつげを震わせていた。
 いい女だと思う。
 結婚して良かった。



 ミレイと別れて、村の中を一人で歩きながら思った。
 さて、と。
 ところで、ルーナんちってどこにあるんだろう。
 肝心な事なのに、今更気づいてしまった。
 ちゃんと別れを済ませた分、今からミレイのとこに戻って聞くのは恥ずかしい。
 うーん。
 どうすんべ。

「あるじ! あるじー!」

 どこからともなくそんな声が聞こえてきた。
 振り返れば、かつてトカゲだったけど女体化したやつが宙を飛んでくる。
 背中の小さな羽をパタパタさせて。
 青色の髪を棚引かせながら、整いすぎた美顔を機嫌良さそうに、ニコニコと。

「やったー! 主に会えるなんて今日は運がいい!」

 女体化トカゲのフェルちゃんが嬉しそうに抱きついてきた。
 元を知っているだけに、悔しいのだが……可愛い。

 フェルちゃんは俺の完全武装を目にすると、不思議そうに小首をかしげた。

「お出かけですか?」

 レレレのレーと言いたくなったのを我慢する。
 そういえば、こいつならルーナんちの場所を知っているんじゃなかろうか。
 そんなわけで聞いてみた。

「ルーナ? あのエルフの娘か? エルフの住む場所といえばエルフィニアか。うむ! その場所なら心得ている! 我は悠久の時を生きるドラゴンだ。知らないものなどありはせぬ!」

 そう言いながらフェルちゃんは空中でパタパタと胸を張った。
 偉そうな事を言っているが、だいぶ可愛い。
 威厳ゼロだった。
 ドラゴンかどうかはおいておいて、このトカゲには王都とかにも送ってもらった事がある。
 この辺の地理には強いのだろう。
 年季の入ったタクシー運転手さんみたいなものである。
 道を聞くには丁度良い。

「場所を教えてくれないか?」

「うむ。もちろんいいのだが……送っていこうか?」

 そう言いながらフェルちゃんが自分の小さな背中を指差す。
 あ、その手があった。
 こいつの本質は空中大型輸送バスである。
 こんな時にしか役に立たないのだった。
 とはいえですよ。

「お前って前の姿になれるのか?」

 確か人間に進化したとか言っていた気がする。
 進化ということは、元の姿には戻れないのではと思ったのだ。

「うむ。もちろんなれるぞ。ならぬがな!!」

 ってならぬのかよ。
 フェルちゃんはなぜかぷいっと顔を背けていた。
 イラッとするが可愛い。

「あの姿では主がかまってくれない。だからずっとこのままでいる!」

 トカゲを構う意味がわからないので、そのままで良いのだが。
 じゃあ、どうやって俺を乗せるというのか。

「……こ、こうして我が主を抱っこしていけば良いのではないか? ほ、ほら?」

 フェルちゃんがにへらっと笑いながら、俺に両手を差し出してきた。
 美女に抱かれて飛んでいくのもまた一興。
 なのだが。

「あ、あるじ? だっこお!」

 何やら期待しまくったフェルちゃんは、たらりと涎を垂らしていた。
 元が爬虫類だから仕方ないのだが、美女の姿でやられるとちょっと怖い。
 ただエロい。
 そもそもですよ。
 ルーナを迎えに行くのに、トカゲ女に抱っこされて行くってどうなんだろう。
 俺がやられたら、帰れと言う。
 うーん。
 やっぱないな。

「道だけ教えてくれればいいや。悪いなトカ子」

「トカ子!?」

 俺の女を迎えに行くのだ。
 やっぱり一人で行くべきだろう。
 その分時間はかかるだろうが、どうせ暇だし。

 フェルちゃんが言うには、エルフ王国(エルフィニアというらしい)は、ここから北東の方角にあるらしい。
 以前、俺が襲撃した山賊たちの住処、エルベ山を超えた辺りから道があるので、その道に沿って北に向かえば一週間ほどで着くとのこと。
 徒歩、一週間とか萎える。
 そういえば、ファラチオなんて馬もいたのだが、最近ずっと見ていない。
 逃げたんだろうか。
 まあ、歩いていくしかないか。

 ルーナは今まさに歩いている最中だろうか。
 イケメンと2人きりで。
 セックス三昧なんだろうか。
 許せん。
 俺の穴なのだ。
 睡眠耐性なんかを駆使して、不眠不休で追ってやる。

 そんな嫉妬に身を焦がしながら、俺はずんずんと歩き出したのだった。
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