ちょいクズ社畜の異世界ハーレム建国記

油揚メテオ

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第六章 エルフ王国編

第222話 王都プライム

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 どうもクズです。
 今朝起きたら、同棲していた女が実家に帰っていました。
 え、原因?
 そんなの浮気がバレた上に逆ギレしたからに決まってるじゃないですか。
 え、当たり前?
 ですよね!!!

「……はあ」

 そんなわけで、俺は何度目になるかわからないため息をついた。
 テーブルの上に突っ伏しながら。
 ルーナの手紙を枕に。

 ルーナの置き手紙。
 ほんのりといい匂いがする気がする。
 ルーナ……。
 なにも帰んなくたっていいじゃんね。
 しかもイケメンと二人で帰るとか。

「……はっ!?」

 あることに気づいてしまった。
 ちょっと待ってほしい。
 ルーナとイケメンは二人で帰ったという。
 ルーナんちまで徒歩でどれくらいかかるんだろうか。
 少なくとも数日?
 俺がルーナと初めて出会ってから押し倒すまでどれくらいかかった?
 出会って数秒で合体シリーズのAV出せちゃうレベルだった気がする。
 そんなルーナが?
 イケメンと?
 数日二人きり!?

「絶対セックスするじゃねえか!!!」

 思わず立ち上がっていた。

『うわ! いきなり何するんだ!? や、やめろー(ぱっかん)』

 悲しいくらい簡単にその状況が想像できてしまった。
 そしてなんだかんだ言いつつ、チョロさの権化なので。

『あん……コウのよりおっきくて気持ちい♡♡♡』

「くそがああああああああ!!!」

 思わずルーナの手紙をぐしゃぐしゃにして火魔法で燃やしてしまった。
 あの女は俺のなのに!!
 イケメンめっ!!
 しねっ! しねええええっ!!!

「コウ……」「コウニャン」

 嫉妬に狂っていたら、ピョン吉とニャン子が後ろに立っていた。

「お腹が空きましたにゃー」

「……ぺこぺこ」

 ああ。
 そういえば朝ご飯がまだだったな。
 ピョン吉とニャン子がお腹をグーと言わせて、耳をふにゃんと垂れさせる。
 いつもはルーナが用意していたから……。
 というか、なんだろう。
 この妻に逃げられた男やもめ感。

 とりあえず、朝飯を作った。
 そういえばすっかり忘れていたのだが、スキルのおかげで俺も料理が出来るのだ。

 厚切りにしたベーコンを焼く。
 ジュクジュクと肉汁が溢れてきたので、そこにソフィさんから貰った卵を落とした。
 優しく黄身を崩れさせて、プルプルのスクランブルエッグを作った。
 後は簡単なサラダと焼いたトースト。
 和食の知識しかないが、これくらいは作れる。
 こんなもんだろうか。
 ルーナだったらスープもつけるんだろうが……あいついないし。

 テーブルの上に出来たばかりの朝食を並べる。
 ニャン子とピョン吉は、ガツガツと貪るように朝飯をかっこんでいく。
 見ていて気持ちいいくらいだった。

「美味しいですにゃ! 絶品ですにゃ!」

「コウも料理、上手だね」

 嬉しいことを言ってくれる猫と兎である。
 自分で作った料理を美味しいと言ってもらえるのは、嬉しかった。
 ルーナは毎日こんな事を思っていたのだろうか。
 べ、別にあの女が何を考えていたかなんてどうでもいいんだけどね!


 朝食の後片付けをしていたら、エレインがやってきた。
 何の用だろう。
 今日のエレインは、高い襟付きの白シャツをパリッと着こなし、下は紺色のタイトスカート。
 ビシッと結い上げた金髪に、ピカピカに磨き上げられたインテリメガネ。
 相変わらずのキャリアウーマンルックだった。

「おはようございます、閣下」

 メガネをキラリとさせるエレイン。
 ベッドの上で悶えるエレインもいいが、こういうキリッとしたエレインもいい。
 エロい。
 めちゃくちゃにしてやりたくなる。
 は! もしや誘っている!?

「今朝、王都から辞令が届きました。先日の戦での活躍が評価されて、近く伯爵への陞爵しょうしゃくが決まったそうです。おめでとうございます」

 望むところだ! と股間を固くしていたら、エレインがどうでもいい事を言っていた。

「お、おう」

 正直、今自分がなんなのかすら覚えていない。
 なんとかシャクだったのはわかるのだが。
 うーん、シャクハチ? シャクハチだった気がする。 
 なんかエロい。
 とりあえず、エレインに尺八ふぇらちおしてもらいたい。

「それからこちらを……」

 そう言いながら、エレインが美しい小箱を差し出してきた。
 なんだれ。
 受け取ってみると、その表面に滑らかな肌触りの布が張られているのがわかる。
 ビロードっていうやつだろうか。
 大きさは箱ティッシュくらい。
 長方形の高級そうな箱だった。

「……そちらも今朝方、王都から届きました」

 箱を開けてみると、比喩ではなく、光が溢れだした。

「…………」

 まず目に入ったのは、今まで見たことのない程、美しい青い宝石だった。
 ひし形にカッティングされ、幾重もの光をその内に閉じ込めた宝石。
 目が潰れそうな程の眩さを放っているのに、見つめずにいられない。
 強烈な魅力を放つ宝石だった。
 そんな青い宝石――たしかブルーダイヤモンドとか言っていただろうか、それを掲げるように比翼の天使が銀細工で作られている。
 恐ろしいまでに精緻な彫刻だった。
 そして、宝石と天使を包み込むように繁った緑色の蔦。
 リングをかたちどるように伸びたその蔦は、不思議な温かみを持つ金属で出来ていた。
 これがオリハルコンだろうか。
 そう。
 箱に収められていたのは、かつて俺たちが王都で注文した結婚指輪だった。
 結婚指輪の両脇には、同じくオリハルコン製の大小の指輪が収めれている。
 シンプルながらも、よく見ればこちらも呆れるくらい精緻な彫刻が金属に施されている。
 長方形の箱には、そんな3つの指輪が丁寧に飾られていた。
 どれも見事すぎる品だった。
 納期をだいぶ過ぎている気がするが、文句を言う気にもならないクオリティである。
 まあ、問題は。

「おうふっ」

 思わず指輪ケースを持ったまま、膝から崩れ落ちていた。
 このタイミング何!?
 ルーナが家出した直後に指輪届くとか!?
 偶然なんだろうけど、悪意すら感じる。
 これ見たら喜んだろうな、あいつ……。

「……綺麗」

 頭上でエレインがぼそっと呟く。

「そちらが金貨千枚で買ったっていう指輪ですか? 最初は、何考えてるのかしらこのバカ夫婦って思ってましたけど……それだけ綺麗ならちょっと納得してしまいますね」

 正確には金貨3千枚なんだが。
 借金が、エレインにバレたら怒られそうなので黙っておく。
 そういえば、こないだケイトさんにも借金したっけ。
 一体俺は今いくらの借金があるのか。
 わかんないけど、いっぱい!
 借金いっぱい! おっぱい!
 今おっぱいって言う必要はなかった気もするが、言いたかったので仕方ない。

「……そ、その……ルーナ様は残念でしたね」

 エレインが気まずそうな顔をしていた。
 ば、ばれてる!?
 ルーナ出奔が判明してからまだ1時間くらいしか経っていない気がするのだが。
 ……そういえばさっきまでいたメグの姿が見えなかった。
 しゅひぎむー? なんですかそれ!? たべられるんですかー!?
 そんな台詞を能天気に言うメグが脳裏に浮かんだ。
 想像しただけなのにイラッとする。
 あいつにセキュリティ研修受けさせたい。
 まあ、メグのことだ。
 木を見て森を見ずというか、表面的なことしかわかってないだろう。
 バカだし。
 ルーナが実家に帰ったって言いふらされても痛くもかゆくもない。
 ウルトラマンだって帰ってきたんだから、ルーナだって帰ってくるってみんな思うじゃんね。

「……閣下がミレイ様を妊娠させたあげくに、寛大にも理解を示したルーナ様と、なぜか、気でも触れたのかと思うようなケンカをされて、悲しんだルーナ様が実家に帰ったと聞きました」

 完璧かよ!?
 一言一句間違ってねえよ!!!
 全てがバレすぎてぐうの音も出ない。
 なんなのメグって。実はCIA職員なの?

「さすがにクズすぎてどうしようって思いますが……私から言えることは、そ、その……」

 急に頬を赤らめたエレインが、もじもじしだす。
 タイトスカートに覆われたむっちり太ももをもじもじ。
 エロい。
 びりーっと破りたい。

「……閣下には私がいるんだから、いいじゃないですか」

 蚊の鳴くような声だった。
 はしばみ色の瞳をぷいっとそらしながら、真っ赤な顔でぼそっと。
 可愛すぎて頭がクラクラした。
 エレインにこう言ってもらえたのだ。
 クズで良かったと心から思った。
 たまらん。
 思わず立ち上がって、エレインを抱きしめる。

「……閣下」

 無抵抗で抱き寄せられたままになっているエレインは、俺に潤んだ瞳を向けてくる。
 エレインの唇がわなわなと震えていた。
 薄くリップが塗られている。
 完璧なまでに、手入れの行き届いた唇。
 腫れ上がるまで、むちゃくちゃに貪り尽くしてやる。
 そんな時だった。

「ダメですにゃ!!」

 背後で真っ赤な顔をしたニャン子が、両手を握りしめて叫んでいた。
 そういえばいたな。

「ここでエレニャンとエッチなことするとか! ルーニャンがあまりに可愛そすぎますにゃ!!!」

 そういえばここはルーナの家でもあるのだ。

「……うっ」

 さすがにまずいと思ったのか、エレインが呻いていた。

「だいたいコウニャンのクズっぷりを聞いて、なんでそんなにメロメロな顔ができるんですかにゃ!?」

「……ううっ」

 エレインの心にグサグサと何かが刺さっていた。
 猫耳少女にやり込められる、出来る感じのお姉さん。
 シュールだった。
 たしかにエレインは、女を孕ませて女に逃げられた俺に抱かれようとしていた。
 よく考えると、なんで?? と思ってしまう。
 おじさん、心配だな。
 エレインが将来悪い男に騙されそうで。

「なんでそんなに他人事なんですか!! 私をこんなふうにしたのは閣下なんですからねっ! 責任とって下さい!!!」

 責任は先日とったばかりなので、今後10年くらいはとりたくない。

「……でもコウがエッチを我慢できるとは思えない」

 ピョン吉が心配そうな顔をしていた。
 そういえばこいつもいたな。

「それはそうかもしれにゃいけど……」

 少女2人にエッチが我慢できないと心配される32歳アサギリコウ。
 ちょっと自分の人生が不安になってきた。

「わ、私がしようか? エッチなこと。そ、そのルーナの代わりに……」

「なんでそうなるにゃ!?」

 ピョン吉は妙にエロい顔をしていた。
 さすがプレイボーイのトレードマークなだけはある。
 ウサギはエロい。

「……許しません」

 それは、底冷えのするような声だった。
 ひえ!?

「なんですか、あなた? 子供のくせにそんなおっきなおっぱいをして。私の閣下を誘惑しないでもらえます?」

「ご、ごめんなさい。もうしないから耳をギュッとしないで……」

 静かにゴゴゴと怒ったエレインがピョン吉の両ウサ耳を握っていた。
 幼い女の子が、ウサギのぬいぐるみを連れ歩くみたいな持ち方で、そこだけ見るとほっこりするのだが。
 普通に美少女を恫喝する美女の図は恐怖しか感じなかった。

「他の子には優しいのに、なんでエレニャンはピョン吉にだけ怖くするんですにゃ……?」

 エレインの剣幕にニャン子までもがガタガタと怯えていた。

 そういえば、ピョン吉ってエレインよりおっぱい大きいかも。
 末恐ろしい少女である。
 俺ならどちらも等しく愛せるけどね。

「ご、ごほん……それで、閣下? 今日のご予定なのですが」

 何事もなかったかのようにエレインはすまし顔を浮かべるのだが。
 その後ろでウサ耳をさすさすしているピョン吉が見え隠れして、肝が冷える。

「どうです? ルーナ様のことは悩んでも仕方ないので、気分転換に……お、お仕事なんかをされてみては?」

 やたら期待を込めた目で、エレインがチラチラと見てくる。
 なるほど。
 仕事に没頭すれば気が紛れるかもしれない。
 そこはかとなくブラックなセリフで気になるが。
 うーん。

「……やめとくわ! ミレイが妊娠したばかりだからな。仕事なんかしてる場合じゃないと思うんだよね」

「ええええええ!? 場合ですよ!! 今こそお父さんとしてがんばる時期ですよ!?」

 何を言っているんだエレインは。

「今頑張らないでいつ頑張るんですか!? 生まれてくるお子さんのために頑張って働きましょう!」

「だが断る」

「えええええええええ!? 今断ったら、一生働く機会ないですよ!? 私の番だって来るんですから、心を入れ替えて下さい!」

 妙な事を言いだしたエレインを無視して、俺は家を後にした。
 ミレイの様子でも見てこようと思う。

「閣下!? どこ行くんですか、閣下ー!? 諦めませんからかね! 私が赤ちゃんを産むときまでには真人間にさせてみせますからねー!!!」

 そんなにポコポコ子供なんて出来るはずがあろうか、いやない。
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