208 / 299
第五章 領地発展編
第202話 エレイン砲
しおりを挟む
脳内に浮かんだ数字。
それを、おもむろに口にしてしまう。
「……バスト88のEカップ、ウェスト58、ヒップ87」
スタイルが良いと思ってはいたが、ここまでとは……。
「うぇぇえええ!?」
ルーナが恥ずかしそうに両胸を腕で覆う。
ドンピシャで正解だったようだ。
《自動演算》が優秀すぎる件について。
目で見た情報から、なんかを計算してスリーサイズを出したんだろうか。
文系の俺にはどんな計算をしたのかはわからないが。
きっと胸の奥底でずっと思っていた「ルーナのスリーサイズが知りたい!」という無垢な想いを《自動演算》さんが勝手に汲み取って計算してくれたのだろう。
スキルの癖に。
泣かせるじゃねえか!
というか、計算式を知らなくても答えがわかるってすごくない??
「な、なんでそんなの知ってるんだ!?」
ルーナが目に涙を浮かべながら、真っ赤になっている。
恥ずかしがるルーナってエロいよね。
「……まあ、いつも見てるからな。これくらいすぐわかるさ」
言ってみて、気づいた。
俺、すげえキモい事言っている。
ただのストーカーさんですやん。
「……コウ」
しかし、何かがルーナの琴線に触れたようで、俺に熱い視線を向けてくる。
「あ、愛の力かな。えへへ」
ちげえから。
スリーサイズ暴かれて喜ぶとか、どんだけだよ。
「わ、私は別にうらやましいなんて思ってませんよ? コウさんが愛してくださってるのはわかってますし……」
「……私のだっていつも見てるのに……閣下のバカ」
ミレイとエレインが物凄く不満そうな目で見てくる。
わかっている。
この俺がお前達のスリーサイズを知りたくないわけないだろう?
さあ出番ですよ、《自動演算》さん!
「ミレイ、バスト92のFカップ、ウェスト59、ヒップ90」
「エレイン、バスト83のCカップ、ウェスト55、ヒップ86」
「そしてカンナさん、バスト95のGカップ、ウェスト60、ヒップ97」
ズバズバと言い放つ。
とてつもなく気持ち悪い気もするけど。
「ふふふ、正解です! もう、エッチなんだから、コウさんは」
「……ふ、ふーん。せ、セクハラですけど! まあ、愛の力なら仕方ないですが……」
「コウくん? お姉ちゃんのおっぱいはもっと大きいですよ? 姉愛が足りないんじゃないですか? 触って確かめてみます?」
3人ともまんざらでもなく嬉しそうなので良かった。
サラッとカンナさんが盛ろうとしているのが気になるが。
というか、おっぱい揉ませてくれるの? じゃあ、揉むー!
「おい!!! なんでそいつらのもわかるんだ!? お前は私だけを見てないとダメじゃないかー!!! うわああん!」
カンパイを揉もうとしていたら、やっぱりというかルーナに邪魔された。
ぐすぐすと鼻を鳴らしながら俺に抱きついてくる。
めんどくさいけど可愛いEカップめ。
それにしても《自動演算》さんは恐ろしい。
これなら何でもわかってしまいそうだ。
ルーナ潮の噴射角とか。
なんてエロいスキルだ。
オラ、ワクワクすっぞ!
ニャン子とピョン吉がぼーっとこっちを見ているが、2人にはまだ早い。
脳裏に数値は浮かんだが、言わないでおいてあげるのが優しさだろう。
2人とも将来性は十分にある。
特にピョン吉!!
「…………はっ!」
その時、にやにやと嬉しそうにしていたエレインが、何かに気づいたように顔を引き締める。
「閣下、学校作りは?」
「はあ? 学校? 突然何言ってんの、お前?」
「何言ってんのは閣下です! 先ほどまで学校を作ろうとしていたのを忘れちゃったんですか?」
ああ、そうだった。
完全に忘れてた。
学校<スリーサイズが成り立ってしまうのは仕方ない。
「コウくん、学校なんて作ろうとしてたんですか? 本当に建築の好きな子ですね」
匠ですからね! とカンナさんに親指を立てておいた。
とはいえですよ。
なんか学校作るのめんどくさくなってきた。
だって広すぎるし。
いや、ちゃんと作るよ?
ただ今日は《自動演算》さんのお陰でムラムラしちゃったというか。
せっかくカンナさんとミレイも来たんだから、みんなで温泉乱交セックスでもしたいというか。
まあ、エレインがメガネをくいくいさせながら睨んでくるので、少しくらいは作るけど。
とりあえずは基礎工事をする為の穴を掘らなきゃいけない。
何メートルくらい掘るか。
ちなみに俺が作ろうとしている母校の小学校は4階建てだった。
子供が通うので、安全に作りたい。
まあ、10メートルくらい掘ればいいかな(勘)。
いきなり敷地全域に穴を開けると誰かが落ちて大変な事になるので、五メートル四方くらいに抑えておく。
そこに土魔法でドゴンっと穴を掘ってみた。
あれ。
イメージしたより深い気がする。
しかも二倍近く深い。
レベルが上がって知能も増えたせいだろうか。
俺は強すぎたらしい。
ふふふ。
まあ、深すぎて問題はないべ! ということで、掘った穴に石魔法でドバドバと小石を埋めていく。
この作業がめんどくさいんだよな。
あんまし楽しくないし。
でも基礎を疎かにしない所が匠っぽいので、がんばる。
「あ、閣下。ミレイ様もいらして丁度良いので、後で食料倉庫にいらして頂けますか? ちょっと相談したい事がありますので」
「え、私もですか?」
エレインがそんな事を言ってきた。
食糧倉庫で相談? ミレイも一緒に?
3P以外あろうか、いや、ない。
「いいよ。行く行く! すぐこの穴埋めちゃうからちょっと待ってろ」
「いえ、そんなにすぐじゃなくても大丈夫です。閣下の学校作りを邪魔するつもりはありませんので」
「遠慮すんなって! いいよ、学校作り飽きてきたし」
「飽きてきたってなんですか!? もっと尊敬できるとこを見せてください! せっかく普段のクズさを補えそうな善行をしているのに!」
このアサギリコウ、クズを恥じる気などない!
そんなわけで、さっさと穴を埋めた俺達は、ぞろぞろと食料倉庫までやってきた。
俺とミレイだけでいいとエレインは言っていたのだが、なぜかほとんどついてきた。
ルーナがいると大っぴらに3Pできないのに。
ちなみにカンナさんは飽きたとか言って帰っていった。
というか、あの基礎工事。
めちゃくちゃMPを食った。
穴が深すぎたせいもあるが、学校建築は結構苦労しそうである。
まあ、女を抱く以外は暇だしやるけど。
MPだって産廃重力魔法の熟練度上げか、人間ボイラーなどの生活用にしか使ってないし。
「食べ物がいっぱいにゃ!」
「……おいしそう」
初めて食料倉庫に来たニャン子とピョン吉が目をキラキラさせている。
「ここにある食べ物はみんなのものだからな。好きに食べていいぞ」
「良いんですかにゃ!?」
「……じゃあ、食べる」
2人が尻尾をぶんぶん振りながら倉庫に突入していく。
ピョン吉は一心不乱にニンジンをかじっていた。
ニャン子はダークエルフさん達の獲ってきた小魚を丸呑みしている。
さすが兎と猫だな。
ていうか、生魚って丸呑みしていいんだろうか。
まあ、そんな楽しそうな獣娘たちは置いておいて。
「で? 話ってなんだ、エレイン?」
「はい。では失礼して」
メガネをくいっと持ち上げたエレインが、すっと一歩前に出る。
「こちらにある大量の食料は、明らかに村人達の消費量を上回っています。食べきれずに余った食料をどうしているか、閣下はご存知ですか?」
そんなの知らん。
「……もったいないですが、悪くなっちゃったお野菜やお肉とかは捨てています。そんなの食べたらお腹を壊しちゃいますから」
「お腹壊しちゃったら大変だからな!」
ミレイとルーナがそんな事を言っていた。
そういえば、収穫の終えた畑に残った茎とかを焼き払う時に、一緒に野菜とか肉とかも燃やしてたかも。
気にせずガンガン火魔法をかけていたが、あれって腐ったやつだったのか。
「そう。腐った食料は捨てるしかありません。かつては、どんなに豊作になろうとも食べきれない分は捨てなければなりませんでした。食料の弱点は貯めておけない事です。しかし、人類はとある発明をしたのです」
エレインはそう言って、懐から1枚の金貨を取り出す。
その金貨を見て、なぜかルーナが食いついた。
「あっ! 私の金貨だ!」
「違います! これは村の予算です」
「もともとは私の金貨なのに……ところで、お小遣いもっと増やしてほしいな?」
「ダメです! ちゃんと週に銀貨1枚あげているでしょう? あれでやりくりして下さい」
「何を食べたらそんなにケチになれるんだ……」
「あなたと同じくここにある食材ですよ!! というか、何の話をしているんですか!? 今閣下と大切な話をしているんですから、黙っててください! さもないとぶちますよ?」
「うう……コウ! エレインが!」
あっさりと口喧嘩に負けたルーナが抱きついてくる。
可愛いので甘やかしたくなってしまう。
でも、ごめんなルーナ。
俺のお小遣いも銀貨1枚なんだ。
「……こほん、ルーナ様のせいで話がそれましたが……いいですか? 先人は収穫物を貨幣に変えることによって、蓄財を可能としたのです」
なんか当たり前な事をドヤ顔で言っているが。
結局何が言いたいのか良くわからない。
「だから、余剰な食材を腐らす前に売りましょうよっていう提案をしているんです! ここ数日でどれくらいの食料が余るのかちゃんと割り出してありますので!」
ああ、そういうこと?
例えるなら、クリア済みのゲームやもう飽きた漫画なんかはさっさと売っちゃえよ的な?
だったら、早くそう言ってくれればいいのに。
エレインってこういうとこあるよね。
「どこかの困った夫婦が散在したせいで困窮した村の財政を上向かせる事につながりますので」
まじかよ。
俺達のお小遣いが銀貨1枚なのはそいつらのせいってことじゃねえか。
「迷惑な夫婦もいたもんだ」
「ほんとになー!」
ルーナと2人で頷いていたら、エレインにすごい目で睨まれた。
なぜ。
「……捨てるよりも売ったほうがいいのはわかりますが、どうやって売るんですか?」
ちゃんと話を聞いていたらしいミレイがそんな疑問を口にする。
「販路はこの方にお任せしようと思います。 ちょっといいですかー?」
エレインが倉庫の奥に声をかける。
すると、人当たりの良い笑顔を浮かべたケイトさんが倉庫から顔を出した。
その手には、薄い木板に乗せられた書類を持っている。
「あら、みなさんお揃いで。こんにちは」
ケイトさんがにっこりと挨拶してくれるので、全員でぺこりと頭を下げた。
さすがケイトさんだ。
コンビ二の美人店員さんの笑顔の破壊力は半端ない。
ぜひ買った商品と一緒にケイトさんもお持ち帰りしたい。
「ケイトさんには今朝から、食料の見積もりをして貰っていました。食料は彼女が所属する商人ギルドの流通経路にこの村も加えて頂くことで、売りさばこうと思っています」
「ふふふ。この量なら結構な利益を見込めると思いますよ。今、王国全土で食糧不足ですし」
ケイトさんは貪欲な笑みを浮かべているのだが。
「店の方、留守にしちゃっていいんですか?」
ふとそんな事が気になったので聞いてみた。
「ええ。店は主人に任せて来ました。2徹までなら大丈夫と申しておりましたので」
シュジン?
そんな奴いたっけか。
ちょっと主人に聞こえて、俺のケイトさんが既婚者みたいな錯覚を覚えてしまうのでやめて欲しい。
「ケイトさんには、食料の出所の隠蔽策も伝えておりますので税対策もばっちりです」
「脱税はなかなか危険な橋を渡ることになりますので、私どもの取り分の方、よろしくお願いしますよ?」
「ええ。わかってますとも」
エレインとケイトさんが悪い笑みを浮かべている。
「そんなわけで閣下。段取りは全て整っておりますので、余った食料を売ってしまってもよろしいでしょうか?」
「いいよー」
王国に税として取られるのはなんか嫌だったが、金に換えるなら大歓迎だ。
それにしても。
ちょっと前まで税金税金うるさかったエレインが脱税とか。
人間変わるときは変わるものである。
「……つまりお金がたくさん増えるってことだよな? そうしたら私のお小遣いも増やしてくれるか?」
「はあ? 増えるわけないでしょう!? 冗談は空っぽの頭をなんとかしてから言ってください」
「わああああ! コウ! エレインが私の悪口言ったあああ!」
またしてもあっさりと口喧嘩に負けたルーナが泣きついてくる。
空っぽでもいいじゃない。かわいければ。
「あ、そうだ。ケイトさん。売上金なんですが、エルフ王国貨幣で頂けますか?」
「は、はあ。信頼度の高いエルフ王国貨幣で取引を行うのは、私ども商人の間では基本ですが……ラグニード王国の内政官様がおっしゃるとは思いませんでしたわ」
「え、ええ!? ……そ、それは質の悪いラグニード貨幣を頂くより長期的には利益が出るからであって……」
なぜか慌てたエレインが、恥ずかしそうに俺をちらちら見てくる。
言っている事はよくわかんないけど、可愛かった。
「ふふふ。うちの上客だったルーナ様の狂った金銭感覚を管理された時には忌々しいと思っておりましたが、ちょっとずつエレイン様のことが好きになってまいりましたわ」
朗らかな笑顔で毒を吐くケイトさん。
「……そういうこと、私に言います?」
「正直な気持ちを申し上げたのは、信頼の証と思って頂ければ幸いですわ。……今後ともよしなに」
そして、エレインとケイトさんが握手を交わしていた。
美人同士の握手とか。
胸アツな展開に、俺はドキドキした。
こうして、エレインの経済政策――通称エレイン砲によって、うちの村の経済状況は上向いた。
しかし、残念な事に俺とルーナのお小遣いが増える事はなかった。
それを、おもむろに口にしてしまう。
「……バスト88のEカップ、ウェスト58、ヒップ87」
スタイルが良いと思ってはいたが、ここまでとは……。
「うぇぇえええ!?」
ルーナが恥ずかしそうに両胸を腕で覆う。
ドンピシャで正解だったようだ。
《自動演算》が優秀すぎる件について。
目で見た情報から、なんかを計算してスリーサイズを出したんだろうか。
文系の俺にはどんな計算をしたのかはわからないが。
きっと胸の奥底でずっと思っていた「ルーナのスリーサイズが知りたい!」という無垢な想いを《自動演算》さんが勝手に汲み取って計算してくれたのだろう。
スキルの癖に。
泣かせるじゃねえか!
というか、計算式を知らなくても答えがわかるってすごくない??
「な、なんでそんなの知ってるんだ!?」
ルーナが目に涙を浮かべながら、真っ赤になっている。
恥ずかしがるルーナってエロいよね。
「……まあ、いつも見てるからな。これくらいすぐわかるさ」
言ってみて、気づいた。
俺、すげえキモい事言っている。
ただのストーカーさんですやん。
「……コウ」
しかし、何かがルーナの琴線に触れたようで、俺に熱い視線を向けてくる。
「あ、愛の力かな。えへへ」
ちげえから。
スリーサイズ暴かれて喜ぶとか、どんだけだよ。
「わ、私は別にうらやましいなんて思ってませんよ? コウさんが愛してくださってるのはわかってますし……」
「……私のだっていつも見てるのに……閣下のバカ」
ミレイとエレインが物凄く不満そうな目で見てくる。
わかっている。
この俺がお前達のスリーサイズを知りたくないわけないだろう?
さあ出番ですよ、《自動演算》さん!
「ミレイ、バスト92のFカップ、ウェスト59、ヒップ90」
「エレイン、バスト83のCカップ、ウェスト55、ヒップ86」
「そしてカンナさん、バスト95のGカップ、ウェスト60、ヒップ97」
ズバズバと言い放つ。
とてつもなく気持ち悪い気もするけど。
「ふふふ、正解です! もう、エッチなんだから、コウさんは」
「……ふ、ふーん。せ、セクハラですけど! まあ、愛の力なら仕方ないですが……」
「コウくん? お姉ちゃんのおっぱいはもっと大きいですよ? 姉愛が足りないんじゃないですか? 触って確かめてみます?」
3人ともまんざらでもなく嬉しそうなので良かった。
サラッとカンナさんが盛ろうとしているのが気になるが。
というか、おっぱい揉ませてくれるの? じゃあ、揉むー!
「おい!!! なんでそいつらのもわかるんだ!? お前は私だけを見てないとダメじゃないかー!!! うわああん!」
カンパイを揉もうとしていたら、やっぱりというかルーナに邪魔された。
ぐすぐすと鼻を鳴らしながら俺に抱きついてくる。
めんどくさいけど可愛いEカップめ。
それにしても《自動演算》さんは恐ろしい。
これなら何でもわかってしまいそうだ。
ルーナ潮の噴射角とか。
なんてエロいスキルだ。
オラ、ワクワクすっぞ!
ニャン子とピョン吉がぼーっとこっちを見ているが、2人にはまだ早い。
脳裏に数値は浮かんだが、言わないでおいてあげるのが優しさだろう。
2人とも将来性は十分にある。
特にピョン吉!!
「…………はっ!」
その時、にやにやと嬉しそうにしていたエレインが、何かに気づいたように顔を引き締める。
「閣下、学校作りは?」
「はあ? 学校? 突然何言ってんの、お前?」
「何言ってんのは閣下です! 先ほどまで学校を作ろうとしていたのを忘れちゃったんですか?」
ああ、そうだった。
完全に忘れてた。
学校<スリーサイズが成り立ってしまうのは仕方ない。
「コウくん、学校なんて作ろうとしてたんですか? 本当に建築の好きな子ですね」
匠ですからね! とカンナさんに親指を立てておいた。
とはいえですよ。
なんか学校作るのめんどくさくなってきた。
だって広すぎるし。
いや、ちゃんと作るよ?
ただ今日は《自動演算》さんのお陰でムラムラしちゃったというか。
せっかくカンナさんとミレイも来たんだから、みんなで温泉乱交セックスでもしたいというか。
まあ、エレインがメガネをくいくいさせながら睨んでくるので、少しくらいは作るけど。
とりあえずは基礎工事をする為の穴を掘らなきゃいけない。
何メートルくらい掘るか。
ちなみに俺が作ろうとしている母校の小学校は4階建てだった。
子供が通うので、安全に作りたい。
まあ、10メートルくらい掘ればいいかな(勘)。
いきなり敷地全域に穴を開けると誰かが落ちて大変な事になるので、五メートル四方くらいに抑えておく。
そこに土魔法でドゴンっと穴を掘ってみた。
あれ。
イメージしたより深い気がする。
しかも二倍近く深い。
レベルが上がって知能も増えたせいだろうか。
俺は強すぎたらしい。
ふふふ。
まあ、深すぎて問題はないべ! ということで、掘った穴に石魔法でドバドバと小石を埋めていく。
この作業がめんどくさいんだよな。
あんまし楽しくないし。
でも基礎を疎かにしない所が匠っぽいので、がんばる。
「あ、閣下。ミレイ様もいらして丁度良いので、後で食料倉庫にいらして頂けますか? ちょっと相談したい事がありますので」
「え、私もですか?」
エレインがそんな事を言ってきた。
食糧倉庫で相談? ミレイも一緒に?
3P以外あろうか、いや、ない。
「いいよ。行く行く! すぐこの穴埋めちゃうからちょっと待ってろ」
「いえ、そんなにすぐじゃなくても大丈夫です。閣下の学校作りを邪魔するつもりはありませんので」
「遠慮すんなって! いいよ、学校作り飽きてきたし」
「飽きてきたってなんですか!? もっと尊敬できるとこを見せてください! せっかく普段のクズさを補えそうな善行をしているのに!」
このアサギリコウ、クズを恥じる気などない!
そんなわけで、さっさと穴を埋めた俺達は、ぞろぞろと食料倉庫までやってきた。
俺とミレイだけでいいとエレインは言っていたのだが、なぜかほとんどついてきた。
ルーナがいると大っぴらに3Pできないのに。
ちなみにカンナさんは飽きたとか言って帰っていった。
というか、あの基礎工事。
めちゃくちゃMPを食った。
穴が深すぎたせいもあるが、学校建築は結構苦労しそうである。
まあ、女を抱く以外は暇だしやるけど。
MPだって産廃重力魔法の熟練度上げか、人間ボイラーなどの生活用にしか使ってないし。
「食べ物がいっぱいにゃ!」
「……おいしそう」
初めて食料倉庫に来たニャン子とピョン吉が目をキラキラさせている。
「ここにある食べ物はみんなのものだからな。好きに食べていいぞ」
「良いんですかにゃ!?」
「……じゃあ、食べる」
2人が尻尾をぶんぶん振りながら倉庫に突入していく。
ピョン吉は一心不乱にニンジンをかじっていた。
ニャン子はダークエルフさん達の獲ってきた小魚を丸呑みしている。
さすが兎と猫だな。
ていうか、生魚って丸呑みしていいんだろうか。
まあ、そんな楽しそうな獣娘たちは置いておいて。
「で? 話ってなんだ、エレイン?」
「はい。では失礼して」
メガネをくいっと持ち上げたエレインが、すっと一歩前に出る。
「こちらにある大量の食料は、明らかに村人達の消費量を上回っています。食べきれずに余った食料をどうしているか、閣下はご存知ですか?」
そんなの知らん。
「……もったいないですが、悪くなっちゃったお野菜やお肉とかは捨てています。そんなの食べたらお腹を壊しちゃいますから」
「お腹壊しちゃったら大変だからな!」
ミレイとルーナがそんな事を言っていた。
そういえば、収穫の終えた畑に残った茎とかを焼き払う時に、一緒に野菜とか肉とかも燃やしてたかも。
気にせずガンガン火魔法をかけていたが、あれって腐ったやつだったのか。
「そう。腐った食料は捨てるしかありません。かつては、どんなに豊作になろうとも食べきれない分は捨てなければなりませんでした。食料の弱点は貯めておけない事です。しかし、人類はとある発明をしたのです」
エレインはそう言って、懐から1枚の金貨を取り出す。
その金貨を見て、なぜかルーナが食いついた。
「あっ! 私の金貨だ!」
「違います! これは村の予算です」
「もともとは私の金貨なのに……ところで、お小遣いもっと増やしてほしいな?」
「ダメです! ちゃんと週に銀貨1枚あげているでしょう? あれでやりくりして下さい」
「何を食べたらそんなにケチになれるんだ……」
「あなたと同じくここにある食材ですよ!! というか、何の話をしているんですか!? 今閣下と大切な話をしているんですから、黙っててください! さもないとぶちますよ?」
「うう……コウ! エレインが!」
あっさりと口喧嘩に負けたルーナが抱きついてくる。
可愛いので甘やかしたくなってしまう。
でも、ごめんなルーナ。
俺のお小遣いも銀貨1枚なんだ。
「……こほん、ルーナ様のせいで話がそれましたが……いいですか? 先人は収穫物を貨幣に変えることによって、蓄財を可能としたのです」
なんか当たり前な事をドヤ顔で言っているが。
結局何が言いたいのか良くわからない。
「だから、余剰な食材を腐らす前に売りましょうよっていう提案をしているんです! ここ数日でどれくらいの食料が余るのかちゃんと割り出してありますので!」
ああ、そういうこと?
例えるなら、クリア済みのゲームやもう飽きた漫画なんかはさっさと売っちゃえよ的な?
だったら、早くそう言ってくれればいいのに。
エレインってこういうとこあるよね。
「どこかの困った夫婦が散在したせいで困窮した村の財政を上向かせる事につながりますので」
まじかよ。
俺達のお小遣いが銀貨1枚なのはそいつらのせいってことじゃねえか。
「迷惑な夫婦もいたもんだ」
「ほんとになー!」
ルーナと2人で頷いていたら、エレインにすごい目で睨まれた。
なぜ。
「……捨てるよりも売ったほうがいいのはわかりますが、どうやって売るんですか?」
ちゃんと話を聞いていたらしいミレイがそんな疑問を口にする。
「販路はこの方にお任せしようと思います。 ちょっといいですかー?」
エレインが倉庫の奥に声をかける。
すると、人当たりの良い笑顔を浮かべたケイトさんが倉庫から顔を出した。
その手には、薄い木板に乗せられた書類を持っている。
「あら、みなさんお揃いで。こんにちは」
ケイトさんがにっこりと挨拶してくれるので、全員でぺこりと頭を下げた。
さすがケイトさんだ。
コンビ二の美人店員さんの笑顔の破壊力は半端ない。
ぜひ買った商品と一緒にケイトさんもお持ち帰りしたい。
「ケイトさんには今朝から、食料の見積もりをして貰っていました。食料は彼女が所属する商人ギルドの流通経路にこの村も加えて頂くことで、売りさばこうと思っています」
「ふふふ。この量なら結構な利益を見込めると思いますよ。今、王国全土で食糧不足ですし」
ケイトさんは貪欲な笑みを浮かべているのだが。
「店の方、留守にしちゃっていいんですか?」
ふとそんな事が気になったので聞いてみた。
「ええ。店は主人に任せて来ました。2徹までなら大丈夫と申しておりましたので」
シュジン?
そんな奴いたっけか。
ちょっと主人に聞こえて、俺のケイトさんが既婚者みたいな錯覚を覚えてしまうのでやめて欲しい。
「ケイトさんには、食料の出所の隠蔽策も伝えておりますので税対策もばっちりです」
「脱税はなかなか危険な橋を渡ることになりますので、私どもの取り分の方、よろしくお願いしますよ?」
「ええ。わかってますとも」
エレインとケイトさんが悪い笑みを浮かべている。
「そんなわけで閣下。段取りは全て整っておりますので、余った食料を売ってしまってもよろしいでしょうか?」
「いいよー」
王国に税として取られるのはなんか嫌だったが、金に換えるなら大歓迎だ。
それにしても。
ちょっと前まで税金税金うるさかったエレインが脱税とか。
人間変わるときは変わるものである。
「……つまりお金がたくさん増えるってことだよな? そうしたら私のお小遣いも増やしてくれるか?」
「はあ? 増えるわけないでしょう!? 冗談は空っぽの頭をなんとかしてから言ってください」
「わああああ! コウ! エレインが私の悪口言ったあああ!」
またしてもあっさりと口喧嘩に負けたルーナが泣きついてくる。
空っぽでもいいじゃない。かわいければ。
「あ、そうだ。ケイトさん。売上金なんですが、エルフ王国貨幣で頂けますか?」
「は、はあ。信頼度の高いエルフ王国貨幣で取引を行うのは、私ども商人の間では基本ですが……ラグニード王国の内政官様がおっしゃるとは思いませんでしたわ」
「え、ええ!? ……そ、それは質の悪いラグニード貨幣を頂くより長期的には利益が出るからであって……」
なぜか慌てたエレインが、恥ずかしそうに俺をちらちら見てくる。
言っている事はよくわかんないけど、可愛かった。
「ふふふ。うちの上客だったルーナ様の狂った金銭感覚を管理された時には忌々しいと思っておりましたが、ちょっとずつエレイン様のことが好きになってまいりましたわ」
朗らかな笑顔で毒を吐くケイトさん。
「……そういうこと、私に言います?」
「正直な気持ちを申し上げたのは、信頼の証と思って頂ければ幸いですわ。……今後ともよしなに」
そして、エレインとケイトさんが握手を交わしていた。
美人同士の握手とか。
胸アツな展開に、俺はドキドキした。
こうして、エレインの経済政策――通称エレイン砲によって、うちの村の経済状況は上向いた。
しかし、残念な事に俺とルーナのお小遣いが増える事はなかった。
2
お気に入りに追加
1,238
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる