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第五章 領地発展編
第198話 フィンデルの贈り物 ④
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風呂上りでホカホカした獣娘たちを、ルーナがタオルで拭いてあげている。
「ほら、さっぽりしただろう? 綺麗になったら2人とも美人じゃないか!」
確かに。
垢の取れた獣娘たちは結構整った顔立ちをしていた。
猫や兎感丸出しであるが、美少女といっても良いかもしれない。
「そんにゃ、照れますにゃん」
「……性奴隷先輩の方が、美人」
なんか性奴隷って名前の先輩みたいになってるのだが。
うちのルーナは確かに美人である。
「い、一応言っておくけど、私は奴隷じゃなくてこいつの妻だからな?」
「し、失礼しましたにゃ!」
「……奥様とは、知らず」
猫娘と兎娘が怯えながら、土下座で頭を下げる。
すぐに土下座する子達だな。
奴隷とはそういうものなのだろうか。
元奴隷と噂のメグが頭を下げてるのとか、めったに見ないのだが。
「い、いや、わかってくれればいいんだ。さあ、コウが服を作ってくれたから着ようか」
俺の作ったシンプルなポンチョパジャマを、ルーナが2人の頭から被せる。
なかなかどうして似合っていた。
裾のふわふわしたパジャマなので、妖精みたいにも見える。
2人がかわいいからだろうか。
「……こ、こんにゃ上等にゃお洋服をわたしにゃんかが着ていいんですかにゃ?」
「最後に服を着たのは……ちょっと思い出せない」
2人とも重い事を言う。
さっき数分で作ったやっつけパジャマなのに。
というか、2人の尻尾がパジャマの裾に隠れているのが気になった。
やっぱり、獣娘が着る服のお尻には尻尾用の穴が開いているべきだろう。
今回は裾がふわふわしているからいいかもだが。
あとでルーナにちゃんとした服を作って貰うときには、言っておかねば。
テーブルの上に、木の皿に盛られた羊肉と野菜のスープを人数分用意しておいた。
まだ出来たてなので、美味しそうに湯気を立てている。
「さて、じゃあ飯にするか」
俺とルーナも夕食はまだだったので、丁度良かった。
いつもルーナに任せきりなので、たまには俺が作るのもいいだろう。
ルーナと2人でテーブルにつくと、少女2人は立ち尽くしていた。
それでも、湯気の立つスープには釘付けな様子。
――ぐるーぐるー。
「ふにゃ!? ご、ごめんなさいですにゃ!!」
「……わ、私たちはお外に出ていた方がいい? に、逃げないよ?」
鳴ってしまった腹の虫に、少女2人がお腹を抑えて慌てている。
腹がなったくらいで外に追い出さないし、仮に出したとしても逃げるのは自由なのだが。
奴隷という存在自体は本当に胸糞が悪い。
「いいから、早く席につきなさい。俺の作ったスープが冷めちゃうだろ」
俺の言葉に、2人はきょとんとした顔を返す。
「……同じテーブルでいいにゃん?」
「……しかも、それ食べていいの?」
2人は涎を垂らして、スープに魅入っていた。
おそるおそるといった具合で、備え付けの椅子に座る。
そして、我慢できなくなったようで、スープに文字通り、かぶりついた。
皿に顔全体を付けて、ふがふがとスープを貪る。
色々飛び散っているし、いただきますも言ってないのだが、この際だ。
猫娘はやっぱり猫舌だったようで、時々「ふにゃ」とか「ぎにゃ」とか言っているが、それでもスープに夢中だった。
兎娘の方は言うまでもない。
黙々とスープをかっこんでいる。
料理をした者としては、一心不乱にスープをすする少女たちに嬉しくなってしまう。
「うまいか?」
スープに顔を付けながら、コクコクと頷く少女たち。
尻尾が嬉しそうに揺れているのが可愛らしい。
「うわ……本当に美味しい。なんだこの深い味わいは」
隣でスープをすすったルーナが悔しそうに呻いていた。
「うう、これじゃあ、私の妻としての威厳が……」
俺が家事をするといつもこの台詞を言うのだが。
威厳とかいる? と思ってしまう。
「何を言ってるんだ!? いるに決まってるじゃないかー! コウの衣食住全部依存させて、私がいないと生きていけないよーって言わせてやりたいんだ!! そ、そうすれば、もう私から離れられないでしょ? えへへ」
意外と邪悪な事を考えていた。
そういう意味ならすでに依存(肉体的に)しているので、何の心配もいらないのに。
「ふにゃあ! おいしかったにゃあ」
「……満足」
皿まで綺麗にぺろぺろと舐めていた2人が満足そうに顔を上げる。
その顔はスープまみれになっていたが、2人は片手を舐めて湿らせて、器用に顔を洗っていた。
さすが猫と兎である。
スープに満足して貰えたようで良かった。
まあ、そんなに本気で作ったわけじゃないのだが。
「君たち普段何食べてたんだ?」
「……え? 腐った肉ですかにゃー」
「……あと吐瀉物みたいな何か」
ドン引きである。
ちょっとこの子たちを早く何とかしてやらないとと思った。
ガマガエルは後でぶん殴る。
食事を終えて、ひと心地ついたところで、改めて2人に話をする。
今後の身の振り方などを決めておかなければならない。
「さて、最初に言っておくが、俺は君たちを奴隷として扱う気はない」
「うんうん」
俺の言葉に、ルーナが満足そうに頷く。
獣娘たちは、戸惑った表情を浮かべていた。
「奴隷じゃにゃいってことは……もっと酷い身分ですかにゃ?」
「……に、肉便器とか?」
なぜか2人はガタガタと怯えだす。
というか兎娘はどこでそんな言葉を覚えたんだ。
「ちげーよ! 普通に年相応の子供として、自由に暮らせって言ってんだよ! あ、でも奴隷じゃないって言っても嫁にはしないからな?」
「うんうん!」
メグの件があったので、そこは強調しておいた。
ルーナも激しく同意してくれる。
嫁にはしないってどんだけ自意識過剰なんだよ、という気もするが。
「……ジユウ? そんにゃ言葉初めて聞きましたにゃん」
「……あ、新しい拷問、かな?」
再びガタガタと怯えだす少女たち。
どんだけ不幸な暮らしをしてたというのか。
「なんというか、自由って言うのはだな。誰にも束縛されずに、毎日起きたい時間に起き、好きなものを食べ、何が何でも働かずに、遊んで暮らす事だ。君たちも明日からそうやって生きなさい」
「うんうん……うん?」
今更だが、うちの村のスタンダードを紹介してみる。
自分でもなかなかいい村だと思う。
「……そんにゃ夢のような事を言われても、信じられませんにゃ」
「……もしかして、ご主人様は私たちにエッチな事をするの嫌なの?」
兎娘が不安そうな顔でありえない事を聞く。
バカやろう!
俺を誰だと思ってるんだ。
「いや、お前たちの年齢が足りてないってだけだ。10年、いや5年くらいしたら女に産まれたことを後悔するほど犯してあげるよ?」
できるだけ優しく言ってみたのだが、もっといい台詞はないだろうか。
あと数年したら2人はきっと美人になるだろう。
ケモ耳美人とか。
絶対に犯すから!!!
獣娘たちは真っ青になっていた。
「うんうん――っておい!! 5年後も私だけを抱いてないとダメじゃないか!!!」
ひたすら頷いてくれていたルーナが見事なノリ突込みを入れてくる。。
ルーナも腕を上げたものである。
ちなみに、俺は冗談を言ったつもりは無い。
めんどくさいので言わないが。
「……とりあえず、しばらくは好きなことしてていいって事ですかにゃ?」
「いきなりそんな事を言われても、困る」
しばらくっていうかずっと好きな事してていいのだが。
2人は戸惑っているようだった。
まあ、おいおい慣れていけば良いだろう。
それよりもである。
「君たち、名前はなんていうの?」
まだそんな基本的なことすら聞いていなかったのだ。
「……にゃまえなんてありませんにゃん」
「……呼ばれるときは、おい、とか、そこの、とか」
まじかよ。
気まずくなったので、ルーナの方を見ると、悲しそうに頷いていた。
奴隷とはそういうものらしい。
しかし、まあ名前は必要だろう。
「よし、俺がつけてやんよ」
「ホントですかにゃ!?」
「……うれしい」
2人は目をキラキラさせて尻尾をぶんぶん振っている。
よほど嬉しいらしい。
まあ、俺に任せておきたまえってな所である。
ええと、まずは猫娘かな。
うーん、ねこ……? にゃん……?
「命名、ニャン子!!!」
「ありがとうございますにゃ!!!!」
ものの数秒で閃いた俺は、即座にニャン子の命名を終える。
「っておい!!! 安直過ぎるだろう!?」
しかし、ルーナの待ったがかかる。
安直かと聞かれれば、そうですねとしか言えないのだが。
「だいたいわかっているのか!? いずれお前はこの子の父親になるんだぞ? もっと名付けのセンスを磨かなきゃダメだ! じゃないと、私が子供の名前つけちゃうんだからな!!」
下腹をさすったルーナが不穏な事を言っている。
いやいや冗談きついっすわ、ルーナさん。
が、しかしである。
「……ちなみにルーナならなんて付けるんだ? この子に」
「ええ!?」
そう聞いてみると、ルーナは激しく動揺した。
なんという小物感。
「……にゃん? にゃん……ニャンダム?」
「ということで、よろしくな、ニャン子!」
「はいですにゃ!」
「あああっ! 私のニャンダムはどうなったんだー!?」
そんなの当然の如く無視である。
どんなセンスしてんだよ!
ニャンダムて。
どこの機動戦士だよと言いたい。
さて、次は兎娘の番である。
兎娘は嬉しそうに俺に期待の目を向ける。
ニャン子より口数が少ないんだよなー。
というか。
「君、特徴少ないよね?」
「ええ!?」
ニャン子みたいに語尾ににゃんとか付けるならすぐに思いつくのだが。
「お恥ずかしいですにゃ。私はまだ方言が抜けてにゃいですにゃ」
あ、方言って扱いなんだ。
方言は萌えるというが、まさにである。
「……年配の兎族の奴隷は、うしろにぴょんってつけてるよ?」
兎娘がそんな事を教えてくれる。
ぴょんとは、また濃ゆいな。
しかし、ぴょんか。
ぴょん……ぴょん……。
そして俺はとあるキャラTシャツが脳裏に浮かんだ。
「命名、ピョン吉!!!」
ってさすがにナイのはわかる。
女の子に吉とか。
「ぴょん……ぴょん……ピョルゲリ-タ? ピョンタコス?」
しかし、ぶつぶつと呟くルーナはまったくあてにならない。
仮に子供が出来ちゃったとしても、こいつには絶対に名付けを任せないと心に決めた。
でも、ピョン吉はなー。
「……ピョン吉……へ、へへへ」
しかし、兎娘はめちゃくちゃ嬉しそうにはにかんでいた。
兎耳をぴくぴく動かしながら、頬を赤らめている。
命名が完了しちゃったみたいで、胸が痛む。
「ま、まあ、よろしくなピョン吉」
「はい! へへへ」
ピョン吉が気に入ったみたいなので、まあいいのかな。
「素敵なにゃまえを付けてくださって、ありがとうございますにゃ!」
「本当にありがとう」
そんなわけで、我が村に2人の獣人が加わることになった。
2人はまだ幼いので、我が家に住まわせる事にした。
まだ大人が傍にいてやらなきゃいけない年齢だろう。
メグもそんな年齢なのだが、あいつは意外と生活力が高い。
セレナんちの方が広いので迷ったのだが、「お化けとか大丈夫?」と2人に聞くと、全力で首を振っていたので諦めた。
子供にはセレナんとこのビックリ人間たちはきついだろう。
動く骸骨とか腐った死体とかだし。
まあ、意外といい奴らではあるのだが。
そんなわけで、うちのダイニング兼リビングを拡張して、6畳くらいの子供部屋を作ってみた。
初めは別々の部屋を与えようとしたのだが、2人一緒が良いというので一部屋だ。
おいおいもう少し大きくなったらもう一部屋作るのもいいだろう。
魔法のお陰で、数分で出来るし。
子供部屋には、2人で寝れる大き目のベッドをルーナと協力して作った。
他にも必要なものはあるだろうが、今夜はベッドだけで我慢して貰おう。
「それでは、おやすみにゃさいですにゃ! だんにゃさま、奥さま!」
「……おやすみなさい」
「ちょっと待った」
寝ようとした二人を呼び止める。
「俺たちのことをそんな風に呼ばなくていいぞ? 別に主従関係なんてないんだから」
「そうだぞ? え、えへへ。私たちのことはママとパパって――」
「コウとルーナでいい」
ルーナが頭のおかしい事を言い出したので、阻止しておいた。
そんな呼ばれ方をしたら色々と確定しちゃうだろうが。
「わかりましたにゃ! コウにゃん! ルーにゃん!」
ニャン子の呼び方はちょっと違うが、まあいいか。
「……こ、コウぴょん、ルーぴょん」
ピョン吉がニャン子を見て、おどおどとそんな呼び方をするが、無理してキャラ付けする必要ないからね?
そう注意すると。
「……コウ! ルーナ! へへへ」
少し照れながらもそう呼んでくれた。
2人とも可愛い。
子供部屋に入っていく2人を見送りながら、俺はある懸念を抱いた。
ついついノリと勢いで子供を引き取ってしまったわけだが。
「子供ってかわいいな。えへへ」
ルーナとの性生活は控えたほうがいいのだろうか。
どう考えても子供の教育に良くない。
ルーナもその辺はわかって――。
「さて、お待たせ、コウ! さっきの続きしよう?」
――いなかったようで、着ていた服を豪快にポイポイと脱ぐ。
っておい!! と突っ込みたくなるが。
ルーナの極上の身体を目の当たりにすると、ぐらりと意思が揺らぐ。
「……コウ」
切ない顔をしたルーナが抱きついてくる。
全てが吹き飛んだ俺は、そのままルーナを押し倒した。
まあ、この村が教育に悪いのなんて今更だしね。
そんなわけでその夜はいつもどおりルーナをイカセまくった。
背徳感が増したせいで、むしろいつもより燃えたのだった。
「ほら、さっぽりしただろう? 綺麗になったら2人とも美人じゃないか!」
確かに。
垢の取れた獣娘たちは結構整った顔立ちをしていた。
猫や兎感丸出しであるが、美少女といっても良いかもしれない。
「そんにゃ、照れますにゃん」
「……性奴隷先輩の方が、美人」
なんか性奴隷って名前の先輩みたいになってるのだが。
うちのルーナは確かに美人である。
「い、一応言っておくけど、私は奴隷じゃなくてこいつの妻だからな?」
「し、失礼しましたにゃ!」
「……奥様とは、知らず」
猫娘と兎娘が怯えながら、土下座で頭を下げる。
すぐに土下座する子達だな。
奴隷とはそういうものなのだろうか。
元奴隷と噂のメグが頭を下げてるのとか、めったに見ないのだが。
「い、いや、わかってくれればいいんだ。さあ、コウが服を作ってくれたから着ようか」
俺の作ったシンプルなポンチョパジャマを、ルーナが2人の頭から被せる。
なかなかどうして似合っていた。
裾のふわふわしたパジャマなので、妖精みたいにも見える。
2人がかわいいからだろうか。
「……こ、こんにゃ上等にゃお洋服をわたしにゃんかが着ていいんですかにゃ?」
「最後に服を着たのは……ちょっと思い出せない」
2人とも重い事を言う。
さっき数分で作ったやっつけパジャマなのに。
というか、2人の尻尾がパジャマの裾に隠れているのが気になった。
やっぱり、獣娘が着る服のお尻には尻尾用の穴が開いているべきだろう。
今回は裾がふわふわしているからいいかもだが。
あとでルーナにちゃんとした服を作って貰うときには、言っておかねば。
テーブルの上に、木の皿に盛られた羊肉と野菜のスープを人数分用意しておいた。
まだ出来たてなので、美味しそうに湯気を立てている。
「さて、じゃあ飯にするか」
俺とルーナも夕食はまだだったので、丁度良かった。
いつもルーナに任せきりなので、たまには俺が作るのもいいだろう。
ルーナと2人でテーブルにつくと、少女2人は立ち尽くしていた。
それでも、湯気の立つスープには釘付けな様子。
――ぐるーぐるー。
「ふにゃ!? ご、ごめんなさいですにゃ!!」
「……わ、私たちはお外に出ていた方がいい? に、逃げないよ?」
鳴ってしまった腹の虫に、少女2人がお腹を抑えて慌てている。
腹がなったくらいで外に追い出さないし、仮に出したとしても逃げるのは自由なのだが。
奴隷という存在自体は本当に胸糞が悪い。
「いいから、早く席につきなさい。俺の作ったスープが冷めちゃうだろ」
俺の言葉に、2人はきょとんとした顔を返す。
「……同じテーブルでいいにゃん?」
「……しかも、それ食べていいの?」
2人は涎を垂らして、スープに魅入っていた。
おそるおそるといった具合で、備え付けの椅子に座る。
そして、我慢できなくなったようで、スープに文字通り、かぶりついた。
皿に顔全体を付けて、ふがふがとスープを貪る。
色々飛び散っているし、いただきますも言ってないのだが、この際だ。
猫娘はやっぱり猫舌だったようで、時々「ふにゃ」とか「ぎにゃ」とか言っているが、それでもスープに夢中だった。
兎娘の方は言うまでもない。
黙々とスープをかっこんでいる。
料理をした者としては、一心不乱にスープをすする少女たちに嬉しくなってしまう。
「うまいか?」
スープに顔を付けながら、コクコクと頷く少女たち。
尻尾が嬉しそうに揺れているのが可愛らしい。
「うわ……本当に美味しい。なんだこの深い味わいは」
隣でスープをすすったルーナが悔しそうに呻いていた。
「うう、これじゃあ、私の妻としての威厳が……」
俺が家事をするといつもこの台詞を言うのだが。
威厳とかいる? と思ってしまう。
「何を言ってるんだ!? いるに決まってるじゃないかー! コウの衣食住全部依存させて、私がいないと生きていけないよーって言わせてやりたいんだ!! そ、そうすれば、もう私から離れられないでしょ? えへへ」
意外と邪悪な事を考えていた。
そういう意味ならすでに依存(肉体的に)しているので、何の心配もいらないのに。
「ふにゃあ! おいしかったにゃあ」
「……満足」
皿まで綺麗にぺろぺろと舐めていた2人が満足そうに顔を上げる。
その顔はスープまみれになっていたが、2人は片手を舐めて湿らせて、器用に顔を洗っていた。
さすが猫と兎である。
スープに満足して貰えたようで良かった。
まあ、そんなに本気で作ったわけじゃないのだが。
「君たち普段何食べてたんだ?」
「……え? 腐った肉ですかにゃー」
「……あと吐瀉物みたいな何か」
ドン引きである。
ちょっとこの子たちを早く何とかしてやらないとと思った。
ガマガエルは後でぶん殴る。
食事を終えて、ひと心地ついたところで、改めて2人に話をする。
今後の身の振り方などを決めておかなければならない。
「さて、最初に言っておくが、俺は君たちを奴隷として扱う気はない」
「うんうん」
俺の言葉に、ルーナが満足そうに頷く。
獣娘たちは、戸惑った表情を浮かべていた。
「奴隷じゃにゃいってことは……もっと酷い身分ですかにゃ?」
「……に、肉便器とか?」
なぜか2人はガタガタと怯えだす。
というか兎娘はどこでそんな言葉を覚えたんだ。
「ちげーよ! 普通に年相応の子供として、自由に暮らせって言ってんだよ! あ、でも奴隷じゃないって言っても嫁にはしないからな?」
「うんうん!」
メグの件があったので、そこは強調しておいた。
ルーナも激しく同意してくれる。
嫁にはしないってどんだけ自意識過剰なんだよ、という気もするが。
「……ジユウ? そんにゃ言葉初めて聞きましたにゃん」
「……あ、新しい拷問、かな?」
再びガタガタと怯えだす少女たち。
どんだけ不幸な暮らしをしてたというのか。
「なんというか、自由って言うのはだな。誰にも束縛されずに、毎日起きたい時間に起き、好きなものを食べ、何が何でも働かずに、遊んで暮らす事だ。君たちも明日からそうやって生きなさい」
「うんうん……うん?」
今更だが、うちの村のスタンダードを紹介してみる。
自分でもなかなかいい村だと思う。
「……そんにゃ夢のような事を言われても、信じられませんにゃ」
「……もしかして、ご主人様は私たちにエッチな事をするの嫌なの?」
兎娘が不安そうな顔でありえない事を聞く。
バカやろう!
俺を誰だと思ってるんだ。
「いや、お前たちの年齢が足りてないってだけだ。10年、いや5年くらいしたら女に産まれたことを後悔するほど犯してあげるよ?」
できるだけ優しく言ってみたのだが、もっといい台詞はないだろうか。
あと数年したら2人はきっと美人になるだろう。
ケモ耳美人とか。
絶対に犯すから!!!
獣娘たちは真っ青になっていた。
「うんうん――っておい!! 5年後も私だけを抱いてないとダメじゃないか!!!」
ひたすら頷いてくれていたルーナが見事なノリ突込みを入れてくる。。
ルーナも腕を上げたものである。
ちなみに、俺は冗談を言ったつもりは無い。
めんどくさいので言わないが。
「……とりあえず、しばらくは好きなことしてていいって事ですかにゃ?」
「いきなりそんな事を言われても、困る」
しばらくっていうかずっと好きな事してていいのだが。
2人は戸惑っているようだった。
まあ、おいおい慣れていけば良いだろう。
それよりもである。
「君たち、名前はなんていうの?」
まだそんな基本的なことすら聞いていなかったのだ。
「……にゃまえなんてありませんにゃん」
「……呼ばれるときは、おい、とか、そこの、とか」
まじかよ。
気まずくなったので、ルーナの方を見ると、悲しそうに頷いていた。
奴隷とはそういうものらしい。
しかし、まあ名前は必要だろう。
「よし、俺がつけてやんよ」
「ホントですかにゃ!?」
「……うれしい」
2人は目をキラキラさせて尻尾をぶんぶん振っている。
よほど嬉しいらしい。
まあ、俺に任せておきたまえってな所である。
ええと、まずは猫娘かな。
うーん、ねこ……? にゃん……?
「命名、ニャン子!!!」
「ありがとうございますにゃ!!!!」
ものの数秒で閃いた俺は、即座にニャン子の命名を終える。
「っておい!!! 安直過ぎるだろう!?」
しかし、ルーナの待ったがかかる。
安直かと聞かれれば、そうですねとしか言えないのだが。
「だいたいわかっているのか!? いずれお前はこの子の父親になるんだぞ? もっと名付けのセンスを磨かなきゃダメだ! じゃないと、私が子供の名前つけちゃうんだからな!!」
下腹をさすったルーナが不穏な事を言っている。
いやいや冗談きついっすわ、ルーナさん。
が、しかしである。
「……ちなみにルーナならなんて付けるんだ? この子に」
「ええ!?」
そう聞いてみると、ルーナは激しく動揺した。
なんという小物感。
「……にゃん? にゃん……ニャンダム?」
「ということで、よろしくな、ニャン子!」
「はいですにゃ!」
「あああっ! 私のニャンダムはどうなったんだー!?」
そんなの当然の如く無視である。
どんなセンスしてんだよ!
ニャンダムて。
どこの機動戦士だよと言いたい。
さて、次は兎娘の番である。
兎娘は嬉しそうに俺に期待の目を向ける。
ニャン子より口数が少ないんだよなー。
というか。
「君、特徴少ないよね?」
「ええ!?」
ニャン子みたいに語尾ににゃんとか付けるならすぐに思いつくのだが。
「お恥ずかしいですにゃ。私はまだ方言が抜けてにゃいですにゃ」
あ、方言って扱いなんだ。
方言は萌えるというが、まさにである。
「……年配の兎族の奴隷は、うしろにぴょんってつけてるよ?」
兎娘がそんな事を教えてくれる。
ぴょんとは、また濃ゆいな。
しかし、ぴょんか。
ぴょん……ぴょん……。
そして俺はとあるキャラTシャツが脳裏に浮かんだ。
「命名、ピョン吉!!!」
ってさすがにナイのはわかる。
女の子に吉とか。
「ぴょん……ぴょん……ピョルゲリ-タ? ピョンタコス?」
しかし、ぶつぶつと呟くルーナはまったくあてにならない。
仮に子供が出来ちゃったとしても、こいつには絶対に名付けを任せないと心に決めた。
でも、ピョン吉はなー。
「……ピョン吉……へ、へへへ」
しかし、兎娘はめちゃくちゃ嬉しそうにはにかんでいた。
兎耳をぴくぴく動かしながら、頬を赤らめている。
命名が完了しちゃったみたいで、胸が痛む。
「ま、まあ、よろしくなピョン吉」
「はい! へへへ」
ピョン吉が気に入ったみたいなので、まあいいのかな。
「素敵なにゃまえを付けてくださって、ありがとうございますにゃ!」
「本当にありがとう」
そんなわけで、我が村に2人の獣人が加わることになった。
2人はまだ幼いので、我が家に住まわせる事にした。
まだ大人が傍にいてやらなきゃいけない年齢だろう。
メグもそんな年齢なのだが、あいつは意外と生活力が高い。
セレナんちの方が広いので迷ったのだが、「お化けとか大丈夫?」と2人に聞くと、全力で首を振っていたので諦めた。
子供にはセレナんとこのビックリ人間たちはきついだろう。
動く骸骨とか腐った死体とかだし。
まあ、意外といい奴らではあるのだが。
そんなわけで、うちのダイニング兼リビングを拡張して、6畳くらいの子供部屋を作ってみた。
初めは別々の部屋を与えようとしたのだが、2人一緒が良いというので一部屋だ。
おいおいもう少し大きくなったらもう一部屋作るのもいいだろう。
魔法のお陰で、数分で出来るし。
子供部屋には、2人で寝れる大き目のベッドをルーナと協力して作った。
他にも必要なものはあるだろうが、今夜はベッドだけで我慢して貰おう。
「それでは、おやすみにゃさいですにゃ! だんにゃさま、奥さま!」
「……おやすみなさい」
「ちょっと待った」
寝ようとした二人を呼び止める。
「俺たちのことをそんな風に呼ばなくていいぞ? 別に主従関係なんてないんだから」
「そうだぞ? え、えへへ。私たちのことはママとパパって――」
「コウとルーナでいい」
ルーナが頭のおかしい事を言い出したので、阻止しておいた。
そんな呼ばれ方をしたら色々と確定しちゃうだろうが。
「わかりましたにゃ! コウにゃん! ルーにゃん!」
ニャン子の呼び方はちょっと違うが、まあいいか。
「……こ、コウぴょん、ルーぴょん」
ピョン吉がニャン子を見て、おどおどとそんな呼び方をするが、無理してキャラ付けする必要ないからね?
そう注意すると。
「……コウ! ルーナ! へへへ」
少し照れながらもそう呼んでくれた。
2人とも可愛い。
子供部屋に入っていく2人を見送りながら、俺はある懸念を抱いた。
ついついノリと勢いで子供を引き取ってしまったわけだが。
「子供ってかわいいな。えへへ」
ルーナとの性生活は控えたほうがいいのだろうか。
どう考えても子供の教育に良くない。
ルーナもその辺はわかって――。
「さて、お待たせ、コウ! さっきの続きしよう?」
――いなかったようで、着ていた服を豪快にポイポイと脱ぐ。
っておい!! と突っ込みたくなるが。
ルーナの極上の身体を目の当たりにすると、ぐらりと意思が揺らぐ。
「……コウ」
切ない顔をしたルーナが抱きついてくる。
全てが吹き飛んだ俺は、そのままルーナを押し倒した。
まあ、この村が教育に悪いのなんて今更だしね。
そんなわけでその夜はいつもどおりルーナをイカセまくった。
背徳感が増したせいで、むしろいつもより燃えたのだった。
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