182 / 299
第五章 領地発展編
第177話 幕間 レティシアの見る景色
しおりを挟む
私がいる世界は、彩りが失われて久しい。
見るもの全てが灰色で。
未来には絶望しか待っていないような気がした。
こんな風になってしまったのは、一体いつからだろう。
結婚に失敗してからだろうか。
あれは最悪の記憶だった。
貴族の娘として生まれた以上、親の決めた結婚に従うのは当然だと思っていた。
それでも嫌なものは嫌だった。
私の結婚相手は歳が10以上も離れている上に、醜く太っていて。
その上好色家だった。
欠片ほどの好意すら抱けない相手。
窓一つ無い牢獄のような寝室で、毎晩夫に強引に犯された。
鼻につくのは下品な香水の臭い。
身体中をナメクジの様に這いずり回る夫の舌。
その怖気に思わず呻くと、頬を張られた。
何度も。
何度も。
鋭い痛みに涙が溢れてくる。
痛みは頬だけではなく。
乳房にも、腹部にも、尻や太腿まで……。
夫は私をくまなく痛めつけるのを好んだ。
無慈悲な暴力に、私は叫ぶことしかできなかった。
そんな私の叫びを聞いた夫は、股間を怒張させるのだ。
そして、私を刺し貫く。
それは私と言う人格そのものを内側から破壊するような行為だった。
ただ、ただ辛く。
絶望と嫌悪感に苛まれる行為。
夫は最後に私の首を締めながら達する。
息ができなくて、霞む視界。
そこに写るのは、下卑た笑みを浮かべて涎を垂らす夫の顔。
それが結婚した私を待っていた現実だった。
そんな日々は気の遠くなる程長く続いた。
――そして、私の視界から彩りが失われた。
いや、己の感情すら失われていたかも知れない。
ひたすら苦痛に耐えるだけの毎日。
当時の私にとって、それは地獄だった。
しかし、そんな日々も突然終わりを迎えた。
ある日、夫の母親――私にとっての姑に当たる――に夫と共に呼び出されたのだ。
姑の部屋は贅の限りを尽くされていた。
私が普段閉じ込められている寝室とは雲泥の違いだ。
「……一体、いつになったら孫の顔を見せて貰えるのかしら?」
60歳くらいに見える姑は、華美な扇子で口元を隠しながら、私を蔑んだ目を向ける。
その目元は、嫌になるくらい夫に似ていた。
「ち、違うんだよ、ママ! 僕は頑張っているのに、この女がいつになっても孕まないんだ!」
夫は初めて見る必死な形相で姑に言い訳を始めた。
子供が出来ない事。
地獄の日々にあって、それは唯一の救いだった。
この夫の子供を妊娠するなんて、想像するだけで怖気が走る。
「お前の役目は我がデロニア家の血脈を繋ぐこと。それは判っているのでしょうね?」
姑の私を見る目が鋭さを増す。
貴族の嫁の責務は重々承知しているので、黙って頷いた。
責務を果たせていない事が、救いになっているなんて。
私もいよいよ破綻している。
「子供を産めないお前に価値はないのよ?」
「そうだ! ママの言うとおりだ!! 僕の頑張りを無駄にしやがって! この不生女がっ!!」
夫の手のひらが、容赦なく私を打つ。
顔に焼けるような痛みを感じる。
もう慣れきった感覚だったのに。
「……ごめんなさい」
痛みに耐えられずに、口から情けない声が漏れた。
もう元の形が思い出せない程、私の顔は腫れ上がっているのに。
それだけ打たれても、まだ痛みに耐えられない自分が情けなくて、涙がこぼれた。
「あらやだ、泣きたいのはこっちだわ。……イーサン、お前もお前よ? この娘がダメならさっさと言いなさい。そうすればすぐに代わりを見つけてあげられたのに」
「そうだね、ママ! そろそろこいつにも飽きていた所だったんだ」
そう言いながら夫は私の腹を蹴飛ばす。
鈍い痛みを感じて、思わず床に這いつくばってしまう。
「次は金髪の女がいいなー!」
「まったくもう、仕方のない子ね。ほほほ」
腹部の痛みに、脂汗が滲むのを感じながら、親子の笑い声を聞いていた。
それは酷く歪んで聞こえて、場違いで、気持ち悪くて。
まるで悪夢でも見ているかのような気になった。
でも、もしかしたらこの悪夢はもうすぐ覚めるかもしれない。
どうやらこの親子は次の生贄を探すようだから。
ああ、やっとこの地獄から開放される。
そう思うとふわっと身体が軽くなったような気がして。
まるでもがれていた翼が蘇るような気分になった。
それでも、私の世界は灰色のままだった。
やっとの思いで実家に戻れたのに。
そこは既に私の居場所ではなくなっていた。
唯一の理解者だった母が死別していたのだ。
私が嫁いですぐだったらしい。
一応、元夫に報せたらしいが、それが私の耳に入ることはなかった。
そんな元夫への怒りよりも何よりも――。
ただ悲しくて、虚しかった。
どんなに傷ついていようとも。
実家に帰れば、母が温かい笑顔で迎えてくれると思っていたのに。
しかし、実家で私を待っていたのは、父の侮蔑だった。
私が物心ついた頃から、父はずっとこうだ。
とても実の娘に向けているとは思えないような目で、私を見る。
酷く無関心で、諦めに似た色を帯びた眼差しで。
「……全く困った事をしてくれたものだ。お前のせいでフィンデル家の名声に泥が着いたぞ。先方はお前が不妊であることをあちこちで言いふらして回っているそうだ。これでは次の貰い手など望めぬわ」
「……申し訳ありません、父上」
「もっとお前の器量が良ければ大貴族の妾にでも差し出すのだが、お前など欲しがる貴族はおるまいて」
「…………申し訳ありません」
私は、ただ父に頭を下げ続けた。
あの過酷な結婚生活のお陰で、この程度の嫌味は聞き流せるようになっていた。
それどころか、もう嫁に行かなくていいのだと思うと安堵する自分がいた。
もうあんな経験は二度としたくない。
例え蔑まれようとも、実家でひっそりと暮らして生きたかった。
でも、そんなささやかな願いすら、叶う事はなかった。
「お前には次の魔族侵攻戦で我がフィンデル家の軍を率いて貰おうと思っておる」
最初は父が何を言っているのか、理解できなかった。
軍を率いる? 私が?
そんな事が出来るわけがない。
花嫁修業しかしてこなかったのだ。
「ぐ、軍隊なんて私には無理です。大体、父上や兄上がいらっしゃるじゃないですか……?」
私には父の他にも年の離れた兄がいる。
軍隊を指揮するのは、領主である父やその後継者である兄の仕事だ。
だと言うのに、私が軍を率いる意味がわからない。
「お前は何を言っておるんだ? 戦に行く以上、何らかの危険が付きまとうものだ。儂やイーノックに何かあったら大変であろう? その点、お前ならば何があっても大丈夫だ。我がフィンデル家には何の支障もないわい」
父は大きくたるんだ顎を掻きながら、なんでもない事のように言った。
身体の奥から震えが来るのを必死に堪えながら。
父の言っている言葉の意味を深く考えてはいけないと、必死に自分に言い聞かせた。
だって、それではまるで……。
「……なんだ、不満なのか? フィンデル家の一員として、最低限の働きはせよ」
女の身で軍隊を率いる事は、最低限の働きなのだろうか。
そんな不満が頭をよぎる。
「まさかタダ飯を食らって生きていこうなどと考えてはおるまいな? 出戻りのくせに厚かましい」
「い、いえ! そんなことは…………軍隊の件、お引き受けします」
父にああ言われては、こう答えることしか出来なかった。
私の人生は川を下っていく小舟のようなもので。
ただ、ただ低いところに向かって流されていくことしか出来ないのだと思った。
そんな私にも救いはあった。
父が相談役として、年老いた剣士を一人、私に付けてくれたのだ。
さすがに私だけで軍隊の指揮官が務まるとは父も思っていなかったらしい。
相談役の剣士は、ヴァンダレイと言う名前だった。
すみれ色のその瞳は、今まで見たことのない程、鋭くて。
痩躯で長身の老人は危険な雰囲気を放っていた。
最初、私はヴァンダレイが怖かった。
「……は、始めまして。レティシアと申します。……そ、その戦ったりしたこと無いので、足を引っ張っちゃうかもしれませんが、よろしくおねがいします……」
自分でも情けなくなる程、怯えながらヴァンダレイに話しかけた。
ヴァンダレイはその鋭い眼光を一瞬弱める。
そして、浮かび上がるのは悲しみの色。
「……この老骨に全てお任せ下さい」
そう言って、ヴァンダレイは私の手を優しく握ってくれた。
もしかしたら、思ったよりもいい人なのかも知れない。
結果的に、ヴァンダレイは私にとって数少ない頼れる大人になってくれた。
しばらくは、軍隊の訓練をするヴァンダレイの横にただ立っているだけの毎日だった。
眼の前では、大勢の大人たちが汗を流しながら、鋭く槍を突いている。
一応、私が指揮官でヴァンダレイが補佐という形になるのだが、ここにいる誰も私を指揮官として認めてはいないだろう。
出来上がったばかりの鎧が重くて、立っているのがやっとだった。
鎧は領地の職人が限界まで軽くして作ってくれたそうだ。
それでも、私には重く感じられた。
指揮官という立場と同じ様に。
「軍人にとって、最も重要なのは練兵です。日々を鍛えて、鍛えて、鍛え抜けば、戦場で死ぬ事もぐっと減りますからのう」
ヴァンダレイはよくこうして軍人としての心構えのようなモノを教えてくれた。
でも、自分が軍人になったという自覚がまだない私は、上手く頭に入って来ない。
それが少し申し訳なかった。
「……だというのに、お父上は魔族侵攻戦にはこの私軍を連れて行くなとおっしゃる。消耗が激しい魔族侵攻戦には徴兵した者だけで臨めと……まったく戦をなんだと思っておられるのか……これは、失礼」
父への文句を言っていたヴァンダレイは私に頭を下げる。
そんなの気にしなくていいのに。
ヴァンダレイの不満の中身はよく判らなかったが、父を良く思っていないのは判った。
もしかして、その不満の中には指揮官が頼りにならない私であると言うことも含まれているのだろうか。
そう思うと、こっちが頭を下げたくなるのだ。
そんな新しい生活には、戸惑うばかりだった。
しかし、戦場に赴く日は、あっと言う間に訪れた。
初めての戦場は、それはもう酷いものだった。
驚く程の軽さで、人の命が散ってゆく。
まるで晩春の花びらのように。
私はただ、ただ自軍の後ろでガタガタと震えている事しか出来なかった。
最後まで私を庇ってくれたのは、幼馴染のピートの背中だった。
庭師の息子で、私と同じくらい戦とは無関係だった少年。
そんな彼がなぜ戦場にいて、私の傍にいてくれるのか。
少し考えただけでも涙が出そうになる。
戦場の遥か先頭では、ヴァンダレイと知り合ったばかりの少年が鬼のような剣さばきでオークを屠っていた。
あまりに現実離れした2人の活躍は、まるで物語を読んでいるようで。
私の灰色の世界の中にあってなお、2人は鮮烈だった。
特に知り合ったばかりの少年。
私よりも年下なのに。
なぜああも力強く輝けるのか。
私も彼のようであれば、今の状況は変わっていたのかもしれない。
いや、もしかして彼ならば私を――。
そのコウ・アサギリという少年に、少し憧れた。
初めての戦を終えて、フィンデル家の軍隊の生存者はたった数人だった。
数人生き残っていようとも、被害区分としては全滅になるとヴァンダレイが教えてくれた。
つまり私は軍を全滅させた指揮官と言うことになる。
屋敷に帰ってきて、ヴァンダレイと共に父の居室に呼び出された時は、お腹に鈍い痛みを感じた。
きっと散々嫌味を言われて叱責されるのだろう。
「これはこれは! 待っておりましたぞ、ヴァンダレイ殿! 先の戦では物凄い戦果を上げられたとか」
しかし、父は満面の笑みで私たちを迎えてくれた。
いや、正確にはヴァンダレイを、だ。
ヴァンダレイはかなり有名な剣士だったらしく、父はこの老人を家臣に出来たことを何度も自慢していたのだ。
「いや、一番の戦功を上げたのは儂ではなく、まだ若い領民の小僧じゃ。儂などは油断してこの有様ですじゃ」
そう言って、ヴァンダレイは眼帯に覆われた右目に触れる。
あの戦で、この老人は利目を失っていた。
「おお! その少年の噂も聞きましたぞ。なんでも敵将の首を獲ったとか。いやあ、儂も領主として鼻が高いわい。ちゃんと報いてやらねば――」
その時、上機嫌に話していた父と目が合った。
瞬間、父の目がすっと細められる。
「……なんだお前も生き残っていたのか」
「は、はい。ただいま帰りました、父上……」
父の雰囲気は途端に変わり、体から滲み出る悪意が目に見えるような気がした。
「ふん、戦功の一つも上げられず、徴兵した軍を全滅させて戻ってくるとはな。フィンデル家の名に何度泥を塗れば気が済むのだ? いっそ、お前など戦で……」
「そこまでにされよ」
淀み出る父の悪言に身を固くしていると、スッとヴァンダレイが私と父の間に入ってくれた。
ヴァンダレイの背中で、父の姿が見えなくなってホッとする。
「お、おおヴァンダレイ殿、申し訳ない。ヴァンダレイ殿の前で身内の恥を晒してしまいました。まったく恥ずかしい愚女でして……今回の戦もヴァンダレイ殿がいらっしゃらなかったらどうなっていたことやら……」
父は気持ち悪い程、ヴァンダレイにへりくだっていた。
油汗が顔全体を覆ってテカテカしている。
そんな時、ヴァンダレイは振り返って、私に目配せをした。
そして、再び父に目線を移すと嘲笑を浮かべた。
「まったくその通りですな。お嬢様には軍を指揮する才などない」
「で、でしょう? まったく役立たずで……」
「しかし、お嬢様は優しく気丈で、人間としては素晴らしいお方ですじゃ。貴族の娘としては何の問題もない。領民からも慕われるじゃろう。問題があるのは、そんなお嬢様を戦場に立たせる貴方にある! ご自分で軍隊を指揮すればよろしかろう!?」
徐々にヴァンダレイの額に血管が浮かび上がってくる。
「ヴァ、ヴァンダレイ殿……?」
「戦場に立つのは貴族の義務じゃ! それをせずに、うら若き乙女を代わりに戦地に向かわせるなぞ、なんたる……ぬぁあんたるうううっ!! 男の風上にもおけぬ下衆がああ!!」
ヴァンダレイは腰の剣を一瞬で引き抜く。
すると父の衣服がはらりはらりと床に落ちていく。
「ひ、ひいいいい!」
あっと言う間に全裸になってしまった父が床にへたりこんだ。
醜く太り尽くしただらし無い身体の下からは、臭い液体が広がっていく。
「もう二度とお嬢様を戦場になぞ連れて行くでないぞ!? 次は貴様が軍を率いるのじゃ! お嬢様にはまっとうな暮らしをさせて差し上げるんじゃ! 良いな?」
ヴァンダレイが顔を真っ赤にしながら凄むと、父はコクコクと何度も頷いた。
「ちゃんと答えんか! 返事はハイじゃろうが!!」
「は、はいいい!!」
「……うむ。よし、その言葉、努々忘れるでないぞ。……あと、儂は利き目を亡くしてしまったし、もう歳なのでな、引退することにする。今まで世話になったのう」
そう言って、ヴァンダレイはくるっと踵を返す。
「さあ、帰りましょう」
そう言ってくれたヴァンダレイの後について、父の居室を後にした。
部屋の扉を閉める際に、床にへたりこんだ父は、私を物凄い目で睨んでいた。
正直に言って、胸がスッとした。
私の為に怒ってくれた人は初めてだ。
私の味方をしてくれていた母も、父には頭が上がらなかったのだ。
「……あれで少しはお嬢様の扱いがまともになればいいんじゃがのう」
屋敷の廊下を2人で歩いていると、ヴァンダレイがボソッと呟いた。
最後に私を睨みつけた父の姿を思い出す。
おそらく、私の扱いは変わらないだろう。
それでも、嬉しかったのだ。
ただ、一つ気になることがあった。
「あ、あのう……ヴァンダレイ? ……フィンデル家から出ていってしまうのですか?」
ヴァンダレイが引退すると言っていたのは、そういうことだろう。
「……人生の最期にやらなきゃならない事が出来ましてな。あのコウというクソガキを一人前の騎士にしてやろうと思うのですじゃ」
「……そうですか。コウの所に」
それは嫌だ。
切なくて。
寂しくて。
できれば、このままずっと傍にいて、私のことを守ってほしかったのだが。
…………。
いや、それが難しい事は判っている。
この老剣士にとって、私の傍にいることなど何の利点もないのだから。
ここで我儘を言って、ヴァンダレイを困らせてはいけない。
「……元気でいてくださいね? 今まで本当にお世話になりました」
必死に笑顔を作りながら、ヴァンダレイに頭を下げた。
今、ヴァンダレイに言うべきなのは精一杯の感謝だと思うから。
「……申し訳ありませんのう、お嬢様。このままここに残って、お嬢様をお守りするべきじゃとも思ったのじゃが……」
それなら――。
ヴァンダレイは私に顔を上げさせると、窓の外を眺めた。
「この歳になると、自分に出来る事と出来ない事がはっきり判ってしまいますのじゃ。老い先短い人生で束の間の間、お嬢様を庇って差し上げる事はできるかもしれませぬ。でも、ほんの束の間ですじゃ。死んだ後はどうなることやら…………お嬢様を本当に救って差し上げるのは、儂ではありませぬ」
じゃあ、一体誰が救ってくれるのだろう。
そんな人、今までいなかったのに。
気づくと、頬を涙が伝っていた。
そんな涙をヴァンダレイが拭ってくれる。
「大丈夫です。貴女は素敵な女性ですじゃ。……どうか幸せになられますよう」
「……ええ。ありがとう」
ヴァンダレイは、そのすみれ色の瞳に悲しみを混じらせる。
そして、ヴァンダレイは孫娘と一緒に領地を出ていった。
私がいる世界は灰色で。
夢も希望もなく。
ただ行く先は暗澹としている。
心の拠り所にしていた母は死に、頼りにしていたヴァンダレイは去った。
気心の知れた唯一の友達だったピートもいなくなり、密かに憧れていたコウにも受け入れてもらえなかった。
私を取り巻く環境は全く変わらない。
今日も領地で徴兵した老兵達を率いて、戦場に立つ。
以前と違って、ヴァンダレイもピートもコウもいない。
かつてヴァンダレイが言っていた私を救う人など現れるはずもなく。
私は、ただ迫り来るオークの群れを眺めた。
もしかしたら、今日で全てが終わるのかも知れない。
もはやそれが、私にとっての救いなのだろう。
見るもの全てが灰色で。
未来には絶望しか待っていないような気がした。
こんな風になってしまったのは、一体いつからだろう。
結婚に失敗してからだろうか。
あれは最悪の記憶だった。
貴族の娘として生まれた以上、親の決めた結婚に従うのは当然だと思っていた。
それでも嫌なものは嫌だった。
私の結婚相手は歳が10以上も離れている上に、醜く太っていて。
その上好色家だった。
欠片ほどの好意すら抱けない相手。
窓一つ無い牢獄のような寝室で、毎晩夫に強引に犯された。
鼻につくのは下品な香水の臭い。
身体中をナメクジの様に這いずり回る夫の舌。
その怖気に思わず呻くと、頬を張られた。
何度も。
何度も。
鋭い痛みに涙が溢れてくる。
痛みは頬だけではなく。
乳房にも、腹部にも、尻や太腿まで……。
夫は私をくまなく痛めつけるのを好んだ。
無慈悲な暴力に、私は叫ぶことしかできなかった。
そんな私の叫びを聞いた夫は、股間を怒張させるのだ。
そして、私を刺し貫く。
それは私と言う人格そのものを内側から破壊するような行為だった。
ただ、ただ辛く。
絶望と嫌悪感に苛まれる行為。
夫は最後に私の首を締めながら達する。
息ができなくて、霞む視界。
そこに写るのは、下卑た笑みを浮かべて涎を垂らす夫の顔。
それが結婚した私を待っていた現実だった。
そんな日々は気の遠くなる程長く続いた。
――そして、私の視界から彩りが失われた。
いや、己の感情すら失われていたかも知れない。
ひたすら苦痛に耐えるだけの毎日。
当時の私にとって、それは地獄だった。
しかし、そんな日々も突然終わりを迎えた。
ある日、夫の母親――私にとっての姑に当たる――に夫と共に呼び出されたのだ。
姑の部屋は贅の限りを尽くされていた。
私が普段閉じ込められている寝室とは雲泥の違いだ。
「……一体、いつになったら孫の顔を見せて貰えるのかしら?」
60歳くらいに見える姑は、華美な扇子で口元を隠しながら、私を蔑んだ目を向ける。
その目元は、嫌になるくらい夫に似ていた。
「ち、違うんだよ、ママ! 僕は頑張っているのに、この女がいつになっても孕まないんだ!」
夫は初めて見る必死な形相で姑に言い訳を始めた。
子供が出来ない事。
地獄の日々にあって、それは唯一の救いだった。
この夫の子供を妊娠するなんて、想像するだけで怖気が走る。
「お前の役目は我がデロニア家の血脈を繋ぐこと。それは判っているのでしょうね?」
姑の私を見る目が鋭さを増す。
貴族の嫁の責務は重々承知しているので、黙って頷いた。
責務を果たせていない事が、救いになっているなんて。
私もいよいよ破綻している。
「子供を産めないお前に価値はないのよ?」
「そうだ! ママの言うとおりだ!! 僕の頑張りを無駄にしやがって! この不生女がっ!!」
夫の手のひらが、容赦なく私を打つ。
顔に焼けるような痛みを感じる。
もう慣れきった感覚だったのに。
「……ごめんなさい」
痛みに耐えられずに、口から情けない声が漏れた。
もう元の形が思い出せない程、私の顔は腫れ上がっているのに。
それだけ打たれても、まだ痛みに耐えられない自分が情けなくて、涙がこぼれた。
「あらやだ、泣きたいのはこっちだわ。……イーサン、お前もお前よ? この娘がダメならさっさと言いなさい。そうすればすぐに代わりを見つけてあげられたのに」
「そうだね、ママ! そろそろこいつにも飽きていた所だったんだ」
そう言いながら夫は私の腹を蹴飛ばす。
鈍い痛みを感じて、思わず床に這いつくばってしまう。
「次は金髪の女がいいなー!」
「まったくもう、仕方のない子ね。ほほほ」
腹部の痛みに、脂汗が滲むのを感じながら、親子の笑い声を聞いていた。
それは酷く歪んで聞こえて、場違いで、気持ち悪くて。
まるで悪夢でも見ているかのような気になった。
でも、もしかしたらこの悪夢はもうすぐ覚めるかもしれない。
どうやらこの親子は次の生贄を探すようだから。
ああ、やっとこの地獄から開放される。
そう思うとふわっと身体が軽くなったような気がして。
まるでもがれていた翼が蘇るような気分になった。
それでも、私の世界は灰色のままだった。
やっとの思いで実家に戻れたのに。
そこは既に私の居場所ではなくなっていた。
唯一の理解者だった母が死別していたのだ。
私が嫁いですぐだったらしい。
一応、元夫に報せたらしいが、それが私の耳に入ることはなかった。
そんな元夫への怒りよりも何よりも――。
ただ悲しくて、虚しかった。
どんなに傷ついていようとも。
実家に帰れば、母が温かい笑顔で迎えてくれると思っていたのに。
しかし、実家で私を待っていたのは、父の侮蔑だった。
私が物心ついた頃から、父はずっとこうだ。
とても実の娘に向けているとは思えないような目で、私を見る。
酷く無関心で、諦めに似た色を帯びた眼差しで。
「……全く困った事をしてくれたものだ。お前のせいでフィンデル家の名声に泥が着いたぞ。先方はお前が不妊であることをあちこちで言いふらして回っているそうだ。これでは次の貰い手など望めぬわ」
「……申し訳ありません、父上」
「もっとお前の器量が良ければ大貴族の妾にでも差し出すのだが、お前など欲しがる貴族はおるまいて」
「…………申し訳ありません」
私は、ただ父に頭を下げ続けた。
あの過酷な結婚生活のお陰で、この程度の嫌味は聞き流せるようになっていた。
それどころか、もう嫁に行かなくていいのだと思うと安堵する自分がいた。
もうあんな経験は二度としたくない。
例え蔑まれようとも、実家でひっそりと暮らして生きたかった。
でも、そんなささやかな願いすら、叶う事はなかった。
「お前には次の魔族侵攻戦で我がフィンデル家の軍を率いて貰おうと思っておる」
最初は父が何を言っているのか、理解できなかった。
軍を率いる? 私が?
そんな事が出来るわけがない。
花嫁修業しかしてこなかったのだ。
「ぐ、軍隊なんて私には無理です。大体、父上や兄上がいらっしゃるじゃないですか……?」
私には父の他にも年の離れた兄がいる。
軍隊を指揮するのは、領主である父やその後継者である兄の仕事だ。
だと言うのに、私が軍を率いる意味がわからない。
「お前は何を言っておるんだ? 戦に行く以上、何らかの危険が付きまとうものだ。儂やイーノックに何かあったら大変であろう? その点、お前ならば何があっても大丈夫だ。我がフィンデル家には何の支障もないわい」
父は大きくたるんだ顎を掻きながら、なんでもない事のように言った。
身体の奥から震えが来るのを必死に堪えながら。
父の言っている言葉の意味を深く考えてはいけないと、必死に自分に言い聞かせた。
だって、それではまるで……。
「……なんだ、不満なのか? フィンデル家の一員として、最低限の働きはせよ」
女の身で軍隊を率いる事は、最低限の働きなのだろうか。
そんな不満が頭をよぎる。
「まさかタダ飯を食らって生きていこうなどと考えてはおるまいな? 出戻りのくせに厚かましい」
「い、いえ! そんなことは…………軍隊の件、お引き受けします」
父にああ言われては、こう答えることしか出来なかった。
私の人生は川を下っていく小舟のようなもので。
ただ、ただ低いところに向かって流されていくことしか出来ないのだと思った。
そんな私にも救いはあった。
父が相談役として、年老いた剣士を一人、私に付けてくれたのだ。
さすがに私だけで軍隊の指揮官が務まるとは父も思っていなかったらしい。
相談役の剣士は、ヴァンダレイと言う名前だった。
すみれ色のその瞳は、今まで見たことのない程、鋭くて。
痩躯で長身の老人は危険な雰囲気を放っていた。
最初、私はヴァンダレイが怖かった。
「……は、始めまして。レティシアと申します。……そ、その戦ったりしたこと無いので、足を引っ張っちゃうかもしれませんが、よろしくおねがいします……」
自分でも情けなくなる程、怯えながらヴァンダレイに話しかけた。
ヴァンダレイはその鋭い眼光を一瞬弱める。
そして、浮かび上がるのは悲しみの色。
「……この老骨に全てお任せ下さい」
そう言って、ヴァンダレイは私の手を優しく握ってくれた。
もしかしたら、思ったよりもいい人なのかも知れない。
結果的に、ヴァンダレイは私にとって数少ない頼れる大人になってくれた。
しばらくは、軍隊の訓練をするヴァンダレイの横にただ立っているだけの毎日だった。
眼の前では、大勢の大人たちが汗を流しながら、鋭く槍を突いている。
一応、私が指揮官でヴァンダレイが補佐という形になるのだが、ここにいる誰も私を指揮官として認めてはいないだろう。
出来上がったばかりの鎧が重くて、立っているのがやっとだった。
鎧は領地の職人が限界まで軽くして作ってくれたそうだ。
それでも、私には重く感じられた。
指揮官という立場と同じ様に。
「軍人にとって、最も重要なのは練兵です。日々を鍛えて、鍛えて、鍛え抜けば、戦場で死ぬ事もぐっと減りますからのう」
ヴァンダレイはよくこうして軍人としての心構えのようなモノを教えてくれた。
でも、自分が軍人になったという自覚がまだない私は、上手く頭に入って来ない。
それが少し申し訳なかった。
「……だというのに、お父上は魔族侵攻戦にはこの私軍を連れて行くなとおっしゃる。消耗が激しい魔族侵攻戦には徴兵した者だけで臨めと……まったく戦をなんだと思っておられるのか……これは、失礼」
父への文句を言っていたヴァンダレイは私に頭を下げる。
そんなの気にしなくていいのに。
ヴァンダレイの不満の中身はよく判らなかったが、父を良く思っていないのは判った。
もしかして、その不満の中には指揮官が頼りにならない私であると言うことも含まれているのだろうか。
そう思うと、こっちが頭を下げたくなるのだ。
そんな新しい生活には、戸惑うばかりだった。
しかし、戦場に赴く日は、あっと言う間に訪れた。
初めての戦場は、それはもう酷いものだった。
驚く程の軽さで、人の命が散ってゆく。
まるで晩春の花びらのように。
私はただ、ただ自軍の後ろでガタガタと震えている事しか出来なかった。
最後まで私を庇ってくれたのは、幼馴染のピートの背中だった。
庭師の息子で、私と同じくらい戦とは無関係だった少年。
そんな彼がなぜ戦場にいて、私の傍にいてくれるのか。
少し考えただけでも涙が出そうになる。
戦場の遥か先頭では、ヴァンダレイと知り合ったばかりの少年が鬼のような剣さばきでオークを屠っていた。
あまりに現実離れした2人の活躍は、まるで物語を読んでいるようで。
私の灰色の世界の中にあってなお、2人は鮮烈だった。
特に知り合ったばかりの少年。
私よりも年下なのに。
なぜああも力強く輝けるのか。
私も彼のようであれば、今の状況は変わっていたのかもしれない。
いや、もしかして彼ならば私を――。
そのコウ・アサギリという少年に、少し憧れた。
初めての戦を終えて、フィンデル家の軍隊の生存者はたった数人だった。
数人生き残っていようとも、被害区分としては全滅になるとヴァンダレイが教えてくれた。
つまり私は軍を全滅させた指揮官と言うことになる。
屋敷に帰ってきて、ヴァンダレイと共に父の居室に呼び出された時は、お腹に鈍い痛みを感じた。
きっと散々嫌味を言われて叱責されるのだろう。
「これはこれは! 待っておりましたぞ、ヴァンダレイ殿! 先の戦では物凄い戦果を上げられたとか」
しかし、父は満面の笑みで私たちを迎えてくれた。
いや、正確にはヴァンダレイを、だ。
ヴァンダレイはかなり有名な剣士だったらしく、父はこの老人を家臣に出来たことを何度も自慢していたのだ。
「いや、一番の戦功を上げたのは儂ではなく、まだ若い領民の小僧じゃ。儂などは油断してこの有様ですじゃ」
そう言って、ヴァンダレイは眼帯に覆われた右目に触れる。
あの戦で、この老人は利目を失っていた。
「おお! その少年の噂も聞きましたぞ。なんでも敵将の首を獲ったとか。いやあ、儂も領主として鼻が高いわい。ちゃんと報いてやらねば――」
その時、上機嫌に話していた父と目が合った。
瞬間、父の目がすっと細められる。
「……なんだお前も生き残っていたのか」
「は、はい。ただいま帰りました、父上……」
父の雰囲気は途端に変わり、体から滲み出る悪意が目に見えるような気がした。
「ふん、戦功の一つも上げられず、徴兵した軍を全滅させて戻ってくるとはな。フィンデル家の名に何度泥を塗れば気が済むのだ? いっそ、お前など戦で……」
「そこまでにされよ」
淀み出る父の悪言に身を固くしていると、スッとヴァンダレイが私と父の間に入ってくれた。
ヴァンダレイの背中で、父の姿が見えなくなってホッとする。
「お、おおヴァンダレイ殿、申し訳ない。ヴァンダレイ殿の前で身内の恥を晒してしまいました。まったく恥ずかしい愚女でして……今回の戦もヴァンダレイ殿がいらっしゃらなかったらどうなっていたことやら……」
父は気持ち悪い程、ヴァンダレイにへりくだっていた。
油汗が顔全体を覆ってテカテカしている。
そんな時、ヴァンダレイは振り返って、私に目配せをした。
そして、再び父に目線を移すと嘲笑を浮かべた。
「まったくその通りですな。お嬢様には軍を指揮する才などない」
「で、でしょう? まったく役立たずで……」
「しかし、お嬢様は優しく気丈で、人間としては素晴らしいお方ですじゃ。貴族の娘としては何の問題もない。領民からも慕われるじゃろう。問題があるのは、そんなお嬢様を戦場に立たせる貴方にある! ご自分で軍隊を指揮すればよろしかろう!?」
徐々にヴァンダレイの額に血管が浮かび上がってくる。
「ヴァ、ヴァンダレイ殿……?」
「戦場に立つのは貴族の義務じゃ! それをせずに、うら若き乙女を代わりに戦地に向かわせるなぞ、なんたる……ぬぁあんたるうううっ!! 男の風上にもおけぬ下衆がああ!!」
ヴァンダレイは腰の剣を一瞬で引き抜く。
すると父の衣服がはらりはらりと床に落ちていく。
「ひ、ひいいいい!」
あっと言う間に全裸になってしまった父が床にへたりこんだ。
醜く太り尽くしただらし無い身体の下からは、臭い液体が広がっていく。
「もう二度とお嬢様を戦場になぞ連れて行くでないぞ!? 次は貴様が軍を率いるのじゃ! お嬢様にはまっとうな暮らしをさせて差し上げるんじゃ! 良いな?」
ヴァンダレイが顔を真っ赤にしながら凄むと、父はコクコクと何度も頷いた。
「ちゃんと答えんか! 返事はハイじゃろうが!!」
「は、はいいい!!」
「……うむ。よし、その言葉、努々忘れるでないぞ。……あと、儂は利き目を亡くしてしまったし、もう歳なのでな、引退することにする。今まで世話になったのう」
そう言って、ヴァンダレイはくるっと踵を返す。
「さあ、帰りましょう」
そう言ってくれたヴァンダレイの後について、父の居室を後にした。
部屋の扉を閉める際に、床にへたりこんだ父は、私を物凄い目で睨んでいた。
正直に言って、胸がスッとした。
私の為に怒ってくれた人は初めてだ。
私の味方をしてくれていた母も、父には頭が上がらなかったのだ。
「……あれで少しはお嬢様の扱いがまともになればいいんじゃがのう」
屋敷の廊下を2人で歩いていると、ヴァンダレイがボソッと呟いた。
最後に私を睨みつけた父の姿を思い出す。
おそらく、私の扱いは変わらないだろう。
それでも、嬉しかったのだ。
ただ、一つ気になることがあった。
「あ、あのう……ヴァンダレイ? ……フィンデル家から出ていってしまうのですか?」
ヴァンダレイが引退すると言っていたのは、そういうことだろう。
「……人生の最期にやらなきゃならない事が出来ましてな。あのコウというクソガキを一人前の騎士にしてやろうと思うのですじゃ」
「……そうですか。コウの所に」
それは嫌だ。
切なくて。
寂しくて。
できれば、このままずっと傍にいて、私のことを守ってほしかったのだが。
…………。
いや、それが難しい事は判っている。
この老剣士にとって、私の傍にいることなど何の利点もないのだから。
ここで我儘を言って、ヴァンダレイを困らせてはいけない。
「……元気でいてくださいね? 今まで本当にお世話になりました」
必死に笑顔を作りながら、ヴァンダレイに頭を下げた。
今、ヴァンダレイに言うべきなのは精一杯の感謝だと思うから。
「……申し訳ありませんのう、お嬢様。このままここに残って、お嬢様をお守りするべきじゃとも思ったのじゃが……」
それなら――。
ヴァンダレイは私に顔を上げさせると、窓の外を眺めた。
「この歳になると、自分に出来る事と出来ない事がはっきり判ってしまいますのじゃ。老い先短い人生で束の間の間、お嬢様を庇って差し上げる事はできるかもしれませぬ。でも、ほんの束の間ですじゃ。死んだ後はどうなることやら…………お嬢様を本当に救って差し上げるのは、儂ではありませぬ」
じゃあ、一体誰が救ってくれるのだろう。
そんな人、今までいなかったのに。
気づくと、頬を涙が伝っていた。
そんな涙をヴァンダレイが拭ってくれる。
「大丈夫です。貴女は素敵な女性ですじゃ。……どうか幸せになられますよう」
「……ええ。ありがとう」
ヴァンダレイは、そのすみれ色の瞳に悲しみを混じらせる。
そして、ヴァンダレイは孫娘と一緒に領地を出ていった。
私がいる世界は灰色で。
夢も希望もなく。
ただ行く先は暗澹としている。
心の拠り所にしていた母は死に、頼りにしていたヴァンダレイは去った。
気心の知れた唯一の友達だったピートもいなくなり、密かに憧れていたコウにも受け入れてもらえなかった。
私を取り巻く環境は全く変わらない。
今日も領地で徴兵した老兵達を率いて、戦場に立つ。
以前と違って、ヴァンダレイもピートもコウもいない。
かつてヴァンダレイが言っていた私を救う人など現れるはずもなく。
私は、ただ迫り来るオークの群れを眺めた。
もしかしたら、今日で全てが終わるのかも知れない。
もはやそれが、私にとっての救いなのだろう。
2
お気に入りに追加
1,223
あなたにおすすめの小説
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる