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第五章 領地発展編
第164話 エレインの猛威 ①
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俺はすこぶる気分が良かった。
ケイトさんの店がなぜ儲からないのかのリサーチをしていたら、美女を拾ったのだ。
それも2人も!
いやはや、良い事はするものである。
きっとケイトさんの店のために頑張ったご褒美だと思う。
ちなみに、ケイトさんの店はもうダメだろう。
あそこは詰んでいる。
だって客が一文なしばかりなんだもん。
きっとあの店は遠くない未来に潰れるだろうが、そうしたらケイトさんは俺が貰えばいいのだ。
なんの問題もない。
…………。
何かを忘れている気もするが、きっと気のせいだろう。
そんなわけで、今は拾った二人の美女を家に招いておもてなしをしているところだった。
うちの一階のリビングにあるテーブルに座ってもらって、ルーナ茶を出した所だ。
「ウチは魔術師のヒルダでーす」
魔女っぽい黒いフード付きのローブを着た美女はそう自己紹介してくれた。
ヒルダさんと言うらしい。
ヒルダさんは、派手なピンク色の髪をツインテールにしていて、瞳は淡いグリーンだった。
隈取りかと思うほど濃いアイシャドウが印象的で、唇には光沢のある真っ赤な紅が塗られている。
肌は日焼けしたような小麦色で、何よりもポイントが高いのは、その見事な谷間が覗く胸元にちらちらと日焼けしていない真っ白な肌が垣間見えることである。
メグやリュディア達と違って、この人の肌は作られた小麦色で、きっと脱がせたら乳や尻は白いに違いない。
そのコントラストを想像しただけで股間がズクンと疼いた。
日焼け肌はエロい。
全体的にグラマラスな体つきだが、引き締まるところは引きしまってる点も素晴らしい。
メイクが濃いのでよくわからないが、ヒルダさんの顔にはアドけなさが残っている気がする。
二十歳くらいだろうか。
ピアスやネックレス、ブレスレット等、大量のシルバーアクセを身に着けていて、ギャルっぽい雰囲気がたまらない。
簡単にやらせてくれそうなので! ※全国のギャルの皆様ごめんなさい。
ヒルダさんは普通に美人なので、それだけで俺は脳内ギャル祭りを開催しそうになるのだが。
ヒルダさんの隣にはとんでもないもない逸材が座っているのだ。
「……内政官として派遣されたエレインと申します」
どこか不機嫌そうに自己紹介してくれた美女はエレインさんと言うらしい。
エレインさんは、一言で言うと眩しかった。
ほとばしる美女オーラが半端ない。
ミレイやゼービアさんに匹敵する正統派美人だ。
ルーナやセレナはバグってるので比較はしない。
エレインさんは蜂蜜を溶かしたような優しい色の金髪をビシっと纏め上げ、綺麗な榛色の瞳をしていた。
整った鼻梁に涼やかな目下。
淡いルージュを引いた口元には色っぽいホクロがあり、キュッと引き締まった小さな顎をしている。
輝かんばかりの白い肌はきめ細やかで、触り心地が良さそうだ。
そして。
なんと言っても。
彼女、メガネをかけているのである。
やや細めのインテリメガネだった。
メガネとか。
その存在をすっかり忘れていた。
てっきり異世界にはないものと思い込んでいた。
いや、別にね。
メガネフェチってわけではないんですよ。
だが、あえて言わせて貰えるなら。
「メガネに精子ぶっかけてえ!!!」
思わず口から出ていた。
やっべ。
自分で言っといてなんだが、ドン引きである。
思ったよりもテンションが上っていたらしい。
だってぶっかけたかったんだもん。
「…………」
案の定、エレインさんは真っ青な顔でドン引きしていた。
いかん! 俺の好感度が!!
「いえ、うちの地方の方言で、ようこそいらっしゃいました的な意味の言葉です」
とっさに苦しい言い訳をしてみた。
「……あ、ああ。なるほど……さすがにそこまでクズ野郎じゃないですよね……」
エレインさんは一応納得してくれたみたいだが、その顔色は青いままだった。
クズ野郎とか聞こえたが、聞き間違いだろうか。
エレインさんの年齢は20代中盤くらいだろうか。
女盛りの色気を感じる。
言うなれば抱き頃だ。
エレインさんはまるでリクルートスタイルのような、開襟シャツと紺色のスーツを着ていて、それがまた眼鏡によく似合っている。
膝上くらいできゅっと絞られた中丈スカートがたまらない。
脱がせたい。
胸はあまり大きくないが、いわゆるスレンダーな体つきはきっと美味に違いない。
早く食べたい。
というか、エレインさんはナイセイカンとか言っていたが、聞きなれない言葉だった。
ナイセイ?
なんか卑猥な響きがする。
シモネタだろうか。
「お前がハイランダーになった時に、陛下が文官を派遣してくれるって言っていたじゃないか。……望みどおりの美人が来てくれて良かったな……ばか!」
隣に座ったルーナがプイッと背を向けながら教えてくれた。
あー。
そういえば、王様が美人を派遣してくれるとか言ってたな。
2人も美人を派遣してくれるなんて。
王様マジで太っ腹。
お歳暮にハムを贈ってくれるようなものだろうか。
ありがたく召し上がろうと思う。
というかですよ。
「なんだなんだ! 鼻の下伸ばしちゃって! ばか!」
さっきからルーナの機嫌が物凄く悪い。
俺の分だけお茶を出してくれてないし。
俺がヒルダさんとエレインさんをねっとりと視姦してたからだろうけど。
めんどくさい女だ。
まあ、ルーナの機嫌を治すなんて赤子の手をひねるより簡単なのだが。
「……俺が一番綺麗だと思っているのは、お前なんだぞ?」
そんな恥ずかしいセリフを耳元で囁いてみた。
お世辞というわけでもなく結構本気で思っている。
まあ、これでルーナなんてイチコロだろう。
「そんなおためごかしが通用すると思っているのか!?」
しかし、ルーナはそんなことを言いながらすくっと立ち上がった。
ば、馬鹿な。
マリオの1面よりチョロいと噂のルーナの機嫌が直らないなんて。
「……お茶飲む?」
しかし、ルーナは赤くなった顔でそんな事を言いながら、素早くお茶を淹れてくれた。
「……もー! 人前で私を綺麗とか言っちゃダメじゃないか! お前が私にベタ惚れなのがバレちゃったらどうするんだ? えへへ」
お茶を淹れてくれたルーナは自分の席に戻らず、俺の膝の上に座ってくる。
機嫌は完全に直ったらしい。
相変わらずチョロくて結構なのだが。
「…………」
「…………」
ヒルダさんとエレインさんがドン引きしているのでやめて欲しい。
「自己紹介がまだだったな。コウの妻のルーナだ。こいつはかっこいいけど、私という妻がいるんだから、好きになっちゃダメだぞ?」
俺に抱きついてニコニコしながら2人に自己紹介をするルーナ。
ついでに釘を刺したつもりなのだろうが、かっこいいとか言われるとこっちが恥ずかしくなるのでやめて欲しい。
ルーナは目が腐っているのだ。
俺の見た目が十人並みなのはちゃんと理解している。
「…………この人も、何を飲まされたのかしら……外道め」
なぜかエレインさんに鋭い目を向けられた。
ボソボソと何かを喋っていたが、よく聞こえなかった。
「ごほん、とりあえず自己紹介も済んだ所で、アサギリ卿?」
エレインさんは咳払いをしてから、メガネをクイッと上げて俺を見た。
メガネクイッてセックスアピールだろうか。
すげえそそるんだけど。
「先程、村人たちが貧困に喘いでおりましたが、その原因に心当たりはありますか?」
エレインさんにそんなことを聞かれた。
村人たちの貧困?
野球バカたちが一文無しという件だろうか。
そんなの原因は一つしか無い。
「あいつらがダメ人間だからだ」
俺の答えを聞いたエレインさんは目を丸くしてから、テーブルをバンッと叩く。
ちょっとビクッとした。
「なんですかその答えは!? 一体、あなたは民をなんだと思ってるんですか!?」
なぜかエレインさんはキレていた。
綺麗な顔を怒りに染めている。
美人の怒り顔は怖い。
そそるけど。
というか、キレてる理由がわからない。
民をなんだと思ってるかって言われても――。
「他人かな」
――としか答えられない。
「他人とはなんですか!? 思い切り他人事じゃないですか! あなたの民なんですよ!?」
いやいや、あいつらはあいつらであって、決して俺のものではないと思うのだが。
とはいえ、これは何を言っても怒られるパターンな気がする。
長い社畜経験の勘がそう告げていた。
エレインさんはめんどくさいクライアントと同じ臭いがした。
ここは俺の108の社畜スキルの一つ、全然悪いと思ってないけど、心の底から後悔している感じの謝り方を披露するとするか。
まずは背筋をピンと伸ばす。
両手は膝の上で固く握る。
そして、歯を食いしばり、歯と歯の間で音を立てるように息を吸い込む。
「……本当に……すみませんでした!!」
謝罪の前に音を立てて息を吸い込むのがポイントだ。
「……まあ、判って頂けたならいいですが」
そう言って、エレインさんは深く息をついた。
社畜謝罪が効いたようだ。
ふふふ、俺が何度クライアントに頭を下げてきたと思っているのだ。
多分数千回は謝っている。
謝りまくっていると卑屈な人間になってしまうので、心の中ではうるせえ馬鹿野郎と思っておくのがコツだ。
エレインさんは野郎ではないので、うるせえさっさとヤらせろと思っておいた。
「……それで、普段、民にはどんな仕事を与えているのですか?」
エレインさんは不思議な事を聞いてきた。
仕事……?
仕事とはアレだろうか。
出勤したが最後、一秒たりともオフィスを出ることは許されず、唯一終電の時間だけがワンチャンスあるかもという過酷な囚人生活を強いる行為のことを言っているのだろうか。
そんなに仕事ばかりして……身体には気をつけてくださいね?
そんな優しい言葉をかけてくれるのは、会社の人間ではなく、夜間の見回りに来たガードマンのおじさんだけという。
そんな血も涙もない過酷な行為の事だろうか!?
「…………仕事を与えるなんて、残酷な行為は俺には出来ない」
「どこが残酷なんですか!? 適度な仕事を与えて、然るべき報酬を払う。まずはそうやって経済を回して行くのです! 見たところ、この村にはモンスターの侵入を防ぐ外壁もなければ、道も舗装されていない様子。与える仕事なんていくらでもあるでしょう!?」
あーそういう仕事か。
モンスターは見つけ次第殺しているし、人間が住んでいればそのうち出てこなくなるとか言っていた気がするのだが。
そんな疑問を口にしてみると。
「スライムのような弱いモンスターは人間を避けますが、たまに出現する強力なモンスターを想定して、柵等は作って置いたほうがいいです。魔族がここまで侵攻してくることも想定しなければなりませんし」
エレインさんがそう教えてくれた。
ふむ。
そう言われると確かに柵は必要かもしれない。
いや、こうなったらサーガットの街みたいな立派な外壁を作ってみようか。
あれは良い壁だった。
黒曜石で黒光りした固いのを作ろう。
道も土魔法で舗装すればいいだろう。
というか、外壁も道も作るの楽しそうだ。
「わかりました。今度、俺が作っときますよ」
そう言いながらドヤ顔を決めてみた。
「なんで領主様自ら作ろうとなさるんですか!? そういうのを村人たちに作らせて報酬を払えと言っているんです! 私の話を聞いてましたか!? 大体、一人で外壁や道なんて作れるわけ無いでしょう!?」
作れるのに……。
せっかくドヤ顔まで決めたのに不発でしょんぼりである。
「き、急にかっこいい顔をするな! ドキドキしちゃうじゃないか……」
ドヤ顔は膝に座ったルーナに誤爆していた。
オウンゴールも甚だしい。
「もういいです。私が来た以上、領地の経済を健全化させてみせます。村人たちの仕事は私が割り当てますので。……ちなみに、仕事の報酬を払うに当たって、アサギリ卿の資産を確認したいです。今、どのくらいのお金をお持ちですか?」
今度はそんなことを聞かれた。
プライベートなことなので答えたくはないが、エレインさんは美人だし、まあいいか。
だが、しかし。
残念な事に、俺は俺がいくらの金を持っているか知らん!
そういうことは全部ルーナ任せだ。
なのでルーナに聞いてみた。
「ええと、金貨300枚くらいかな」
金貨300枚は日本円にして3000万円くらいだろうか。
どうしよう。
超金持ちじゃん。
「……たったそれだけですか?」
3000万円をたった呼ばわりするエレインさん。
これだから美人は!!
エレインさんほどの美人なら、楽勝でパパにマンションとか買ってもらえるのだろう。
「ハイランダーになられた時に、陛下から金貨1000枚賜ったと伺いましたが、そのお金はどうしたんですか!?」
あー。
そういえばそんなこともあったかな。
でも、あのお金は……。
言うのちょっと恥ずかしいな。
「……こいつの指輪買うのに使っちった」
「……えへへ。早く出来ないかな」
ルーナと2人で照れた。
ちなみに、正確には指輪を買おうとしたけど足りなくて金貨3000枚は借金になった。
指輪は一月くらいで完成すると言っていたので、そろそろ届くはずだ。
「なんでそんなものに使っちゃったんですか!? あれは領地経営をするためのお金でしょう!?」
そ、そうだったのか。
初めて知った。
突然、降って湧いた金だったので、スロットの勝ち分と同じアブク銭的なノリだと思っていたのだが。
「そ、そんなものとはなんだ!? あれはコウと私の愛の証なのに……」
ルーナがそう言って凹んでいたが、愛とか恥ずかしい言葉使わないで欲しい。
「……もういいです。今月分のお給金として金貨50枚を預かって来ましたので、それと合わせて金貨350枚はこれから私が管理します」
頭を抱えたエレインさんがため息をつきながら言った。
「なっ!? だ、ダメだ! あのお金は私たちの子供の養育費に使うんだ!」
意義を唱えたルーナが俺の膝から立ち上がる。
そういえば、前からそんなことを言ってたな。
子供とかリアルな事を言われると胃が痛くなるのでやめてほしいのだが。
「養育費にどれだけかけるつもりですか!? 金貨300枚ないと育てられない子供なんておりません! 奥様は計算もできないんですか!?」
「な、な……!? エルフ学院主席卒業の私に向かってなんて事を言うんだ!? 計算くらいできるもん!」
突然、学歴を自慢しだした小物なルーナ。
以前、フィリスと喧嘩した際にもそんなことを言っていたが。
長い事一緒に暮らしている俺からすると、ちょっと疑ってしまう。
ルーナが主席になれるわけないよね。
「子供の衣食費が多く見積もって年間金貨4枚。王都でも一番の学校に入れたとして学費が年間金貨10枚。学校には3年通わせて、子供を20歳まで育てたとして、全部で金貨何枚になるでしょう?」
「え? ええと……」
エレインさんから算数の問題のような質問を聞かれて、両手の指を立てて計算しだすルーナ。
掛け算が必要な問題で、指を使っている時点でもうダメだと思うのだが。
「計算が遅いです。答えは金貨110枚です。300枚には到底及びません」
「も、もうちょっとでわかったのに!」
嘘だろう。
涙目になっているのがいい証拠だ。
いや、いいのだ。
例えバカでも、主席卒業を金で買っていようともルーナは可愛いからいいのだ。
そんなわけで、その頭を優しく撫でてやった。
「うう、コウ! あの女がいじめるんだ!」
ルーナが泣きながら抱きついてくる。
よしよし、可愛い奴め。
「なんでそこで抱き合っているんですか!? 公序良俗に反します! アサギリ卿も奥様の尻を撫で回すのはやめて下さい!」
え? 尻なんか撫でて……。
ふとルーナの形の良い尻に目を落としてみると、俺の手が思い切り食い込んでモミモミしていた。
道理で柔らかくて気持ちいいと思った。
俺の手が呪われている事をすっかり忘れていた。
とはいえ、これは俺の尻なのだ。
モミモミして何が悪いというのか。
公序良俗なんて都市伝説だろうに。
「……何もお金を全部取り上げようと言っているのではありません。お金が必要な時は、言って頂ければお渡ししますので」
エレインさんは深くため息をついていた。
そもそも俺の金だしな。
「あ、そういえばケイトの店にお菓子の材料を買いに行こうと思ってたんだ」
ルーナが思い出したように言った。
そういえば、ルーナはケイトさんの店の唯一の客だった。
「……まあ、それくらいの出費ならいいでしょう。おいくら程、御入り用ですか?」
「うーんと……金貨100枚くらいあれば足りるかな」
「バカですか!?」
顎に指を当てながら答えたルーナにエレインさんの無慈悲なツッコミが入る。
「うう、バカって言われた……私はバカじゃないのに……うわーん! コウ!」
泣きついてくるルーナの頭を撫でながら、俺は必死にルーナをフォローする言葉を探した。
しかし残念な事に何も見つからなかった。
コンビニに1千万持ってくのはないわ。
以前、王都に行った時も家が買えるくらい持って来てたし。
お嬢様だからだろうか。
この女の金銭感覚は大分ラリっている。
「……ものすごく傷ついたから、ギュッとして慰めて欲しいな?」
目を潤ませながら上目遣いでそんな事を言うルーナ。
可愛かった!
ラリってるけれども!
なので、ぎゅーっと思い切り抱きしめてやった。
「えへへ……コウ……」
柔らかくて、いい匂いのするルーナを全身で感じる。
「だから、なんで人前で抱き合うんですか!? 領主夫婦が率先して風紀を乱すとは何事ですか!? ふしだらな!」
エレインさんが机をばんばん叩きながら怒っていた。
風紀が乱れても俺はかまわないので、エレインさんがなぜそんなに怒っているのかわからないのだが。
むしろ、外でセレナやミレイの乳をもんだり、セックスしたりしているので、抱き合うのなんてアンに見せてもOKなくらい軽い行為だと思う。
それなのに、ふしだらとか言われるのは遺憾だった。
「……はあ、とりあえず、お買い物でしたらこれで済ませて下さい、奥様」
ため息をついたエレインさんはルーナに銀貨を1枚渡す。
銀貨は日本円にして1000円くらいだ。
どんなのを作ろうとしているのかは知らないが、お菓子の材料を買うくらいなら足りるだろう。
「たった……これだけ……他に欲しいものができちゃったらどうするんだ……」
銀貨を受け取ったルーナは信じられないものを見るようなりアクションで不満を言い出した。
「我慢してください」
「……我慢は好きじゃないのに……うう、コウ!」
そういえば我慢をしているのをあまり見たことがないルーナが泣きついてくる。
今まで、なんだかんだでルーナのわがままをずっと聞いてきてしまった俺も悪いのだろうか。
でも、俺をうるうるしながら見つめるルーナは。
「……私がちゃんと我慢できるように頭をなでなでして欲しいな?」
有無を言わさぬほど可愛かった。
とりあえず、ルーナの頭をなでなでしながらエレインさんに目を向ける。
「あの、せめて金貨1枚くらい持たせてあげても……」
「ダメです」
ダメらしい。
俺だけだったらルーナのおつかいに預金通帳と印鑑を持たせるのに。
「さて、それでは村の視察に参りましょうか。実際に民の暮らしを見て、問題点を上げていこうと思います。食料の備蓄なども視察したいですし」
そう言いながら立ち上がるエレインさん。
参りましょうかって俺も行かなきゃダメなんだろうか。
そろそろミレイを抱きに行こうと思っていたのだが。
「コウも行くなら私も行く!」
「なんでですか!? お買い物に行くって言ってたじゃないですか!? さっさと行ってきて下さい!」
「うう、もっとコウと一緒にいたいのに……」
そんなことを言いながら、お買い物バックを持ったルーナがすごすごと出ていった。
ちょっとかわいそうだが、これはいい機会だ。
エレインさんと二人きりなら、おっぱいくらい揉ませてくれるかもしれない。
エレインさんのスーツに包まれたツンとしたおっぱいを見つめながら、生唾を飲み込んだ。
「どこ見てるんですか!? 変態!」
胸を隠したエレインさんに叱られてしまった。
その表情はどこか恥ずかしそうで……もなく、普通に嫌悪感が浮かんでいた。
どうしよう。
おっぱい揉める気がしない。
だが、野球は9回の裏2アウトからが本番だ。
ここから逆転サヨナラホームランを打ってみせる!
というかですよ。
俺とルーナがエレインさんに叱られている間、一言も発していない人がいるのだが。
「…………」
ずっと黙って指にマニキュアをつけていたヒルダさんが、ふーふーしながら乾かしていた。
「……ひ、ヒルダさんも一緒に行きます? 村を案内しますよ」
とりあえず、そんな声をかけてみた。
「あ、ウチはいいでーす。外寒いんで。ここでお茶してまーす」
ここは俺んちで、俺とエレインさんが外に行っちゃったらヒルダさん一人になっちゃうのだが。
まあ、盗られるものもないのでいいけど。
「……ずっと気になってたんですが、あなたは何のためにこの村に派遣されたんですか?」
エレインさんはヒルダさんを胡散臭そうに見つめている。
ヒルダさんは目線をネイルからエレインさんに移すと。
「…………さあ?」
そう言って首をかしげた。
「…………」
「…………」
俺とエレインさんは押し黙るしかなかった。
ヒルダさんからは、そこはかとなくダメな人の臭いがした。
#############################################
【居住地】
名称:名も無き村
人口:約230人。
コウ、ルーナ、ミレイ、メグ、セレナ、カンナ、フィリス、アン、リュディア、キリア、ダナン、ヴァンダレイ、ピート、カー坊、ソフィ、ダン、ポール、ロビン、マリー、クルガン、ハンス、ケイト、エレイン(New!)、ヒルダ(New!)。
ラッセルズ(×14)
ロビンの村の住人(×100)。
竜騎士(×100)。
フェルナノーグ。
※カレリアと数名のメイド、グラードは森の城に住んでいるため、計上せず。
戦力:竜騎士100名、フェルナノーグ(戦略破壊兵器)
農業:ミレイ農園(様々な野菜の収穫が短時間で可能)
ラッセルきのこ園(なんかキノコ作ってる)
商業:コンビニ
治安:なし
レジャー施設:公衆温泉
ケイトさんの店がなぜ儲からないのかのリサーチをしていたら、美女を拾ったのだ。
それも2人も!
いやはや、良い事はするものである。
きっとケイトさんの店のために頑張ったご褒美だと思う。
ちなみに、ケイトさんの店はもうダメだろう。
あそこは詰んでいる。
だって客が一文なしばかりなんだもん。
きっとあの店は遠くない未来に潰れるだろうが、そうしたらケイトさんは俺が貰えばいいのだ。
なんの問題もない。
…………。
何かを忘れている気もするが、きっと気のせいだろう。
そんなわけで、今は拾った二人の美女を家に招いておもてなしをしているところだった。
うちの一階のリビングにあるテーブルに座ってもらって、ルーナ茶を出した所だ。
「ウチは魔術師のヒルダでーす」
魔女っぽい黒いフード付きのローブを着た美女はそう自己紹介してくれた。
ヒルダさんと言うらしい。
ヒルダさんは、派手なピンク色の髪をツインテールにしていて、瞳は淡いグリーンだった。
隈取りかと思うほど濃いアイシャドウが印象的で、唇には光沢のある真っ赤な紅が塗られている。
肌は日焼けしたような小麦色で、何よりもポイントが高いのは、その見事な谷間が覗く胸元にちらちらと日焼けしていない真っ白な肌が垣間見えることである。
メグやリュディア達と違って、この人の肌は作られた小麦色で、きっと脱がせたら乳や尻は白いに違いない。
そのコントラストを想像しただけで股間がズクンと疼いた。
日焼け肌はエロい。
全体的にグラマラスな体つきだが、引き締まるところは引きしまってる点も素晴らしい。
メイクが濃いのでよくわからないが、ヒルダさんの顔にはアドけなさが残っている気がする。
二十歳くらいだろうか。
ピアスやネックレス、ブレスレット等、大量のシルバーアクセを身に着けていて、ギャルっぽい雰囲気がたまらない。
簡単にやらせてくれそうなので! ※全国のギャルの皆様ごめんなさい。
ヒルダさんは普通に美人なので、それだけで俺は脳内ギャル祭りを開催しそうになるのだが。
ヒルダさんの隣にはとんでもないもない逸材が座っているのだ。
「……内政官として派遣されたエレインと申します」
どこか不機嫌そうに自己紹介してくれた美女はエレインさんと言うらしい。
エレインさんは、一言で言うと眩しかった。
ほとばしる美女オーラが半端ない。
ミレイやゼービアさんに匹敵する正統派美人だ。
ルーナやセレナはバグってるので比較はしない。
エレインさんは蜂蜜を溶かしたような優しい色の金髪をビシっと纏め上げ、綺麗な榛色の瞳をしていた。
整った鼻梁に涼やかな目下。
淡いルージュを引いた口元には色っぽいホクロがあり、キュッと引き締まった小さな顎をしている。
輝かんばかりの白い肌はきめ細やかで、触り心地が良さそうだ。
そして。
なんと言っても。
彼女、メガネをかけているのである。
やや細めのインテリメガネだった。
メガネとか。
その存在をすっかり忘れていた。
てっきり異世界にはないものと思い込んでいた。
いや、別にね。
メガネフェチってわけではないんですよ。
だが、あえて言わせて貰えるなら。
「メガネに精子ぶっかけてえ!!!」
思わず口から出ていた。
やっべ。
自分で言っといてなんだが、ドン引きである。
思ったよりもテンションが上っていたらしい。
だってぶっかけたかったんだもん。
「…………」
案の定、エレインさんは真っ青な顔でドン引きしていた。
いかん! 俺の好感度が!!
「いえ、うちの地方の方言で、ようこそいらっしゃいました的な意味の言葉です」
とっさに苦しい言い訳をしてみた。
「……あ、ああ。なるほど……さすがにそこまでクズ野郎じゃないですよね……」
エレインさんは一応納得してくれたみたいだが、その顔色は青いままだった。
クズ野郎とか聞こえたが、聞き間違いだろうか。
エレインさんの年齢は20代中盤くらいだろうか。
女盛りの色気を感じる。
言うなれば抱き頃だ。
エレインさんはまるでリクルートスタイルのような、開襟シャツと紺色のスーツを着ていて、それがまた眼鏡によく似合っている。
膝上くらいできゅっと絞られた中丈スカートがたまらない。
脱がせたい。
胸はあまり大きくないが、いわゆるスレンダーな体つきはきっと美味に違いない。
早く食べたい。
というか、エレインさんはナイセイカンとか言っていたが、聞きなれない言葉だった。
ナイセイ?
なんか卑猥な響きがする。
シモネタだろうか。
「お前がハイランダーになった時に、陛下が文官を派遣してくれるって言っていたじゃないか。……望みどおりの美人が来てくれて良かったな……ばか!」
隣に座ったルーナがプイッと背を向けながら教えてくれた。
あー。
そういえば、王様が美人を派遣してくれるとか言ってたな。
2人も美人を派遣してくれるなんて。
王様マジで太っ腹。
お歳暮にハムを贈ってくれるようなものだろうか。
ありがたく召し上がろうと思う。
というかですよ。
「なんだなんだ! 鼻の下伸ばしちゃって! ばか!」
さっきからルーナの機嫌が物凄く悪い。
俺の分だけお茶を出してくれてないし。
俺がヒルダさんとエレインさんをねっとりと視姦してたからだろうけど。
めんどくさい女だ。
まあ、ルーナの機嫌を治すなんて赤子の手をひねるより簡単なのだが。
「……俺が一番綺麗だと思っているのは、お前なんだぞ?」
そんな恥ずかしいセリフを耳元で囁いてみた。
お世辞というわけでもなく結構本気で思っている。
まあ、これでルーナなんてイチコロだろう。
「そんなおためごかしが通用すると思っているのか!?」
しかし、ルーナはそんなことを言いながらすくっと立ち上がった。
ば、馬鹿な。
マリオの1面よりチョロいと噂のルーナの機嫌が直らないなんて。
「……お茶飲む?」
しかし、ルーナは赤くなった顔でそんな事を言いながら、素早くお茶を淹れてくれた。
「……もー! 人前で私を綺麗とか言っちゃダメじゃないか! お前が私にベタ惚れなのがバレちゃったらどうするんだ? えへへ」
お茶を淹れてくれたルーナは自分の席に戻らず、俺の膝の上に座ってくる。
機嫌は完全に直ったらしい。
相変わらずチョロくて結構なのだが。
「…………」
「…………」
ヒルダさんとエレインさんがドン引きしているのでやめて欲しい。
「自己紹介がまだだったな。コウの妻のルーナだ。こいつはかっこいいけど、私という妻がいるんだから、好きになっちゃダメだぞ?」
俺に抱きついてニコニコしながら2人に自己紹介をするルーナ。
ついでに釘を刺したつもりなのだろうが、かっこいいとか言われるとこっちが恥ずかしくなるのでやめて欲しい。
ルーナは目が腐っているのだ。
俺の見た目が十人並みなのはちゃんと理解している。
「…………この人も、何を飲まされたのかしら……外道め」
なぜかエレインさんに鋭い目を向けられた。
ボソボソと何かを喋っていたが、よく聞こえなかった。
「ごほん、とりあえず自己紹介も済んだ所で、アサギリ卿?」
エレインさんは咳払いをしてから、メガネをクイッと上げて俺を見た。
メガネクイッてセックスアピールだろうか。
すげえそそるんだけど。
「先程、村人たちが貧困に喘いでおりましたが、その原因に心当たりはありますか?」
エレインさんにそんなことを聞かれた。
村人たちの貧困?
野球バカたちが一文無しという件だろうか。
そんなの原因は一つしか無い。
「あいつらがダメ人間だからだ」
俺の答えを聞いたエレインさんは目を丸くしてから、テーブルをバンッと叩く。
ちょっとビクッとした。
「なんですかその答えは!? 一体、あなたは民をなんだと思ってるんですか!?」
なぜかエレインさんはキレていた。
綺麗な顔を怒りに染めている。
美人の怒り顔は怖い。
そそるけど。
というか、キレてる理由がわからない。
民をなんだと思ってるかって言われても――。
「他人かな」
――としか答えられない。
「他人とはなんですか!? 思い切り他人事じゃないですか! あなたの民なんですよ!?」
いやいや、あいつらはあいつらであって、決して俺のものではないと思うのだが。
とはいえ、これは何を言っても怒られるパターンな気がする。
長い社畜経験の勘がそう告げていた。
エレインさんはめんどくさいクライアントと同じ臭いがした。
ここは俺の108の社畜スキルの一つ、全然悪いと思ってないけど、心の底から後悔している感じの謝り方を披露するとするか。
まずは背筋をピンと伸ばす。
両手は膝の上で固く握る。
そして、歯を食いしばり、歯と歯の間で音を立てるように息を吸い込む。
「……本当に……すみませんでした!!」
謝罪の前に音を立てて息を吸い込むのがポイントだ。
「……まあ、判って頂けたならいいですが」
そう言って、エレインさんは深く息をついた。
社畜謝罪が効いたようだ。
ふふふ、俺が何度クライアントに頭を下げてきたと思っているのだ。
多分数千回は謝っている。
謝りまくっていると卑屈な人間になってしまうので、心の中ではうるせえ馬鹿野郎と思っておくのがコツだ。
エレインさんは野郎ではないので、うるせえさっさとヤらせろと思っておいた。
「……それで、普段、民にはどんな仕事を与えているのですか?」
エレインさんは不思議な事を聞いてきた。
仕事……?
仕事とはアレだろうか。
出勤したが最後、一秒たりともオフィスを出ることは許されず、唯一終電の時間だけがワンチャンスあるかもという過酷な囚人生活を強いる行為のことを言っているのだろうか。
そんなに仕事ばかりして……身体には気をつけてくださいね?
そんな優しい言葉をかけてくれるのは、会社の人間ではなく、夜間の見回りに来たガードマンのおじさんだけという。
そんな血も涙もない過酷な行為の事だろうか!?
「…………仕事を与えるなんて、残酷な行為は俺には出来ない」
「どこが残酷なんですか!? 適度な仕事を与えて、然るべき報酬を払う。まずはそうやって経済を回して行くのです! 見たところ、この村にはモンスターの侵入を防ぐ外壁もなければ、道も舗装されていない様子。与える仕事なんていくらでもあるでしょう!?」
あーそういう仕事か。
モンスターは見つけ次第殺しているし、人間が住んでいればそのうち出てこなくなるとか言っていた気がするのだが。
そんな疑問を口にしてみると。
「スライムのような弱いモンスターは人間を避けますが、たまに出現する強力なモンスターを想定して、柵等は作って置いたほうがいいです。魔族がここまで侵攻してくることも想定しなければなりませんし」
エレインさんがそう教えてくれた。
ふむ。
そう言われると確かに柵は必要かもしれない。
いや、こうなったらサーガットの街みたいな立派な外壁を作ってみようか。
あれは良い壁だった。
黒曜石で黒光りした固いのを作ろう。
道も土魔法で舗装すればいいだろう。
というか、外壁も道も作るの楽しそうだ。
「わかりました。今度、俺が作っときますよ」
そう言いながらドヤ顔を決めてみた。
「なんで領主様自ら作ろうとなさるんですか!? そういうのを村人たちに作らせて報酬を払えと言っているんです! 私の話を聞いてましたか!? 大体、一人で外壁や道なんて作れるわけ無いでしょう!?」
作れるのに……。
せっかくドヤ顔まで決めたのに不発でしょんぼりである。
「き、急にかっこいい顔をするな! ドキドキしちゃうじゃないか……」
ドヤ顔は膝に座ったルーナに誤爆していた。
オウンゴールも甚だしい。
「もういいです。私が来た以上、領地の経済を健全化させてみせます。村人たちの仕事は私が割り当てますので。……ちなみに、仕事の報酬を払うに当たって、アサギリ卿の資産を確認したいです。今、どのくらいのお金をお持ちですか?」
今度はそんなことを聞かれた。
プライベートなことなので答えたくはないが、エレインさんは美人だし、まあいいか。
だが、しかし。
残念な事に、俺は俺がいくらの金を持っているか知らん!
そういうことは全部ルーナ任せだ。
なのでルーナに聞いてみた。
「ええと、金貨300枚くらいかな」
金貨300枚は日本円にして3000万円くらいだろうか。
どうしよう。
超金持ちじゃん。
「……たったそれだけですか?」
3000万円をたった呼ばわりするエレインさん。
これだから美人は!!
エレインさんほどの美人なら、楽勝でパパにマンションとか買ってもらえるのだろう。
「ハイランダーになられた時に、陛下から金貨1000枚賜ったと伺いましたが、そのお金はどうしたんですか!?」
あー。
そういえばそんなこともあったかな。
でも、あのお金は……。
言うのちょっと恥ずかしいな。
「……こいつの指輪買うのに使っちった」
「……えへへ。早く出来ないかな」
ルーナと2人で照れた。
ちなみに、正確には指輪を買おうとしたけど足りなくて金貨3000枚は借金になった。
指輪は一月くらいで完成すると言っていたので、そろそろ届くはずだ。
「なんでそんなものに使っちゃったんですか!? あれは領地経営をするためのお金でしょう!?」
そ、そうだったのか。
初めて知った。
突然、降って湧いた金だったので、スロットの勝ち分と同じアブク銭的なノリだと思っていたのだが。
「そ、そんなものとはなんだ!? あれはコウと私の愛の証なのに……」
ルーナがそう言って凹んでいたが、愛とか恥ずかしい言葉使わないで欲しい。
「……もういいです。今月分のお給金として金貨50枚を預かって来ましたので、それと合わせて金貨350枚はこれから私が管理します」
頭を抱えたエレインさんがため息をつきながら言った。
「なっ!? だ、ダメだ! あのお金は私たちの子供の養育費に使うんだ!」
意義を唱えたルーナが俺の膝から立ち上がる。
そういえば、前からそんなことを言ってたな。
子供とかリアルな事を言われると胃が痛くなるのでやめてほしいのだが。
「養育費にどれだけかけるつもりですか!? 金貨300枚ないと育てられない子供なんておりません! 奥様は計算もできないんですか!?」
「な、な……!? エルフ学院主席卒業の私に向かってなんて事を言うんだ!? 計算くらいできるもん!」
突然、学歴を自慢しだした小物なルーナ。
以前、フィリスと喧嘩した際にもそんなことを言っていたが。
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ルーナが主席になれるわけないよね。
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いや、いいのだ。
例えバカでも、主席卒業を金で買っていようともルーナは可愛いからいいのだ。
そんなわけで、その頭を優しく撫でてやった。
「うう、コウ! あの女がいじめるんだ!」
ルーナが泣きながら抱きついてくる。
よしよし、可愛い奴め。
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え? 尻なんか撫でて……。
ふとルーナの形の良い尻に目を落としてみると、俺の手が思い切り食い込んでモミモミしていた。
道理で柔らかくて気持ちいいと思った。
俺の手が呪われている事をすっかり忘れていた。
とはいえ、これは俺の尻なのだ。
モミモミして何が悪いというのか。
公序良俗なんて都市伝説だろうに。
「……何もお金を全部取り上げようと言っているのではありません。お金が必要な時は、言って頂ければお渡ししますので」
エレインさんは深くため息をついていた。
そもそも俺の金だしな。
「あ、そういえばケイトの店にお菓子の材料を買いに行こうと思ってたんだ」
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「うーんと……金貨100枚くらいあれば足りるかな」
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顎に指を当てながら答えたルーナにエレインさんの無慈悲なツッコミが入る。
「うう、バカって言われた……私はバカじゃないのに……うわーん! コウ!」
泣きついてくるルーナの頭を撫でながら、俺は必死にルーナをフォローする言葉を探した。
しかし残念な事に何も見つからなかった。
コンビニに1千万持ってくのはないわ。
以前、王都に行った時も家が買えるくらい持って来てたし。
お嬢様だからだろうか。
この女の金銭感覚は大分ラリっている。
「……ものすごく傷ついたから、ギュッとして慰めて欲しいな?」
目を潤ませながら上目遣いでそんな事を言うルーナ。
可愛かった!
ラリってるけれども!
なので、ぎゅーっと思い切り抱きしめてやった。
「えへへ……コウ……」
柔らかくて、いい匂いのするルーナを全身で感じる。
「だから、なんで人前で抱き合うんですか!? 領主夫婦が率先して風紀を乱すとは何事ですか!? ふしだらな!」
エレインさんが机をばんばん叩きながら怒っていた。
風紀が乱れても俺はかまわないので、エレインさんがなぜそんなに怒っているのかわからないのだが。
むしろ、外でセレナやミレイの乳をもんだり、セックスしたりしているので、抱き合うのなんてアンに見せてもOKなくらい軽い行為だと思う。
それなのに、ふしだらとか言われるのは遺憾だった。
「……はあ、とりあえず、お買い物でしたらこれで済ませて下さい、奥様」
ため息をついたエレインさんはルーナに銀貨を1枚渡す。
銀貨は日本円にして1000円くらいだ。
どんなのを作ろうとしているのかは知らないが、お菓子の材料を買うくらいなら足りるだろう。
「たった……これだけ……他に欲しいものができちゃったらどうするんだ……」
銀貨を受け取ったルーナは信じられないものを見るようなりアクションで不満を言い出した。
「我慢してください」
「……我慢は好きじゃないのに……うう、コウ!」
そういえば我慢をしているのをあまり見たことがないルーナが泣きついてくる。
今まで、なんだかんだでルーナのわがままをずっと聞いてきてしまった俺も悪いのだろうか。
でも、俺をうるうるしながら見つめるルーナは。
「……私がちゃんと我慢できるように頭をなでなでして欲しいな?」
有無を言わさぬほど可愛かった。
とりあえず、ルーナの頭をなでなでしながらエレインさんに目を向ける。
「あの、せめて金貨1枚くらい持たせてあげても……」
「ダメです」
ダメらしい。
俺だけだったらルーナのおつかいに預金通帳と印鑑を持たせるのに。
「さて、それでは村の視察に参りましょうか。実際に民の暮らしを見て、問題点を上げていこうと思います。食料の備蓄なども視察したいですし」
そう言いながら立ち上がるエレインさん。
参りましょうかって俺も行かなきゃダメなんだろうか。
そろそろミレイを抱きに行こうと思っていたのだが。
「コウも行くなら私も行く!」
「なんでですか!? お買い物に行くって言ってたじゃないですか!? さっさと行ってきて下さい!」
「うう、もっとコウと一緒にいたいのに……」
そんなことを言いながら、お買い物バックを持ったルーナがすごすごと出ていった。
ちょっとかわいそうだが、これはいい機会だ。
エレインさんと二人きりなら、おっぱいくらい揉ませてくれるかもしれない。
エレインさんのスーツに包まれたツンとしたおっぱいを見つめながら、生唾を飲み込んだ。
「どこ見てるんですか!? 変態!」
胸を隠したエレインさんに叱られてしまった。
その表情はどこか恥ずかしそうで……もなく、普通に嫌悪感が浮かんでいた。
どうしよう。
おっぱい揉める気がしない。
だが、野球は9回の裏2アウトからが本番だ。
ここから逆転サヨナラホームランを打ってみせる!
というかですよ。
俺とルーナがエレインさんに叱られている間、一言も発していない人がいるのだが。
「…………」
ずっと黙って指にマニキュアをつけていたヒルダさんが、ふーふーしながら乾かしていた。
「……ひ、ヒルダさんも一緒に行きます? 村を案内しますよ」
とりあえず、そんな声をかけてみた。
「あ、ウチはいいでーす。外寒いんで。ここでお茶してまーす」
ここは俺んちで、俺とエレインさんが外に行っちゃったらヒルダさん一人になっちゃうのだが。
まあ、盗られるものもないのでいいけど。
「……ずっと気になってたんですが、あなたは何のためにこの村に派遣されたんですか?」
エレインさんはヒルダさんを胡散臭そうに見つめている。
ヒルダさんは目線をネイルからエレインさんに移すと。
「…………さあ?」
そう言って首をかしげた。
「…………」
「…………」
俺とエレインさんは押し黙るしかなかった。
ヒルダさんからは、そこはかとなくダメな人の臭いがした。
#############################################
【居住地】
名称:名も無き村
人口:約230人。
コウ、ルーナ、ミレイ、メグ、セレナ、カンナ、フィリス、アン、リュディア、キリア、ダナン、ヴァンダレイ、ピート、カー坊、ソフィ、ダン、ポール、ロビン、マリー、クルガン、ハンス、ケイト、エレイン(New!)、ヒルダ(New!)。
ラッセルズ(×14)
ロビンの村の住人(×100)。
竜騎士(×100)。
フェルナノーグ。
※カレリアと数名のメイド、グラードは森の城に住んでいるため、計上せず。
戦力:竜騎士100名、フェルナノーグ(戦略破壊兵器)
農業:ミレイ農園(様々な野菜の収穫が短時間で可能)
ラッセルきのこ園(なんかキノコ作ってる)
商業:コンビニ
治安:なし
レジャー施設:公衆温泉
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