146 / 299
第四章 竜騎士編
第145話 にんげんだもの
しおりを挟む
その後も、服やらアクセサリーやら日用雑貨等を買いまくった。
買った商品はかなりの量になったが、前回と同じように運送業者が纏めて運んでくれるらしい。
金貨3枚程かかったが。
ちょっと送料が高い気もするので、アマ○ンプライム見習えよと思ったが、トラックもない時代だと考えるとむしろ良心的な値段設定な気もする。
金の力を見せつける店全部買い占めは、生活必需品等を扱う道具屋でもやってみたが、相変わらず女たちの反応は鈍いものだった。
まあ、生活必需品なので、ヴァンダレイジジイやロビンジジイ達にあげてもいいかと思う。
というか、買い物中、ルーナが事ある毎にしがみついてきた。
その度に、ルーナをずるずると引きずる羽目になるので止めてほしいのだが。
「お前がすぐに私をほったらかすのが悪いんじゃないか! もっと妻を可愛がらないとダメだ!」
ルーナはそう言って、鼻をぐすぐすさせながら俺の腕にぎゅっとしがみつく。
可愛いからいいんだけど、せめて自分の足で歩いて欲しい。
そんなこんなで買い物をしながら王都を練り歩いていると、大きな広場に出る。
その広場の中央には大きな男性の像があった。
剣を掲げたオッサンの像だ。
その像を大勢の人が囲んで眺めている。
観光スポットのような場所なのだろうか。
というか、俺はオッサンの像よりも気になる場所があった。
広場の奥の方に、オッサン像よりも大きな人だかりが出来ている。
そこには、巨大な白龍がきゅーっと身を縮こまらせている。
衛兵さんらしき人たちがそんな白龍を取り囲んで輪を作り、それを更に大勢の人たちが取り囲んで眺めていた。
ちょっと見ない間に、うちのドラゴンが観光スポットになっていた。
つうか、何してんのあいつ。
ルーナを引きずりながらドラゴンの方に近づくと、衛兵さんがビシっと挨拶してくれる。
「お疲れ様です、ハイランダー! 御乗騎は我らが責任を持って守らせて頂きます」
衛兵さんたちは、わざわざうちのドラゴンをガードしてくれていたらしい。
寒い中、申し訳なさすぎて胃が痛くなる。
「……お前、あんまし衛兵の皆さんに迷惑をかけんなよ。つうか、何でこんなとこにいんの?」
(主ハ昨日我ニ命ジタ。邪魔ニナラナイ場所デ小サクナッテイロ、ト。ダカラ我ハ、ココデ小サクナッテイルノダ)
そう言って、フェルさんはきゅーっと更に身を縮こまらせる。
「全然小さくねえから!」
どんなにがんばった所で、このドラゴンは鎌倉の大仏くらいの大きさはある。
(……スマナイ、主ヨ)
フェルさんはしょぼんとしていた。
相変わらず可愛くねーわ。
「……うちのトカゲがご迷惑をおかけして申し訳ないです。すぐに外に移動させますので」
せめて王都の外で小さくなってろよと思うのだ。
「いえ、これも仕事ですので! ……それに市民も喜んでおりますし、ここにいて頂いてもよろしいかと」
確かに、周囲を取り囲む人々はおっかなびっくりと、好奇心に満ちた表情でフェルさんを眺めている。
これだけデカいドラゴンは異世界でも珍しいのだろうか。
まあ、それならそれでいいんだけどさ。
衛兵さんもこう言ってくれていることだし。
「あまり他の人の迷惑にならないようにしろよ。明日になったら帰るから」
(承知)
フェルさんにそう注意して、衛兵さんの言葉に甘えることにした。
「じゃあ、お手数おかけしますけど、よろしくお願いします」
「はっ! もったいなきお言葉、恐縮です!!」
衛兵さんとそんな挨拶をしていると、ずっと黙ってしがみついていたルーナが何かを見つけた。
「あっ! クレープ屋さんだ!」
あっさりと俺から離れたルーナがクレープの屋台を目掛けて、ぴゅーっと走っていく。
……あいつ、前もあんな感じで迷子になったよな。
ルーナは王都に来るといつも以上にはしゃぐ。
「……あの馬鹿娘。全然反省してないわね」
セレナも同じことを思ったようで、青筋を立てていた。
「ちょっと叱ってくるわ」
セレナが拳をバキバキ言わせながら、ルーナの後を追おうとする。
お手柔らかにと思いながら。
「セレナ、ちょうどいいから少しここで休憩しよう。その辺にベンチもあるし」
そんな提案をしてみた。
今は日が傾き始めた所だ。
多分、15時くらいだと思う。
ずっと買い物しっぱなしで、少し皆も疲れているだろう。
「そうねえ。じゃあ、ついでに皆の分のクレープも買ってくるわ。……メグも一緒に行く?」
クレープ屋の屋台を見てそわそわしていたメグにセレナがニコッと声をかける。
ルーナよりメグの方が我慢できている件について。
「は、はい! わたしもいきたいです!!」
セレナとメグは手をつなぎながら、歩いていった。
どうでもいいけど、吸血鬼の真祖をパシらせてしまったのだがいいのだろうか。
「じゃあ、私たちは座るところを確保しておきましょうか」
カンナさんは特に気にした様子もなく、さっさとベンチの方に歩いていってしまったので、いいんだろうけど。
広場のベンチに腰掛けて一息つくと、両側にミレイとカンナさんが座ってきた。
「ああっ! 私もコウ様のお隣が良かったのに!! ……どけ、退魔師(エクソシスト)」
フィリスが悪い顔でミレイを睨む。
「ご、ごめんなさい」
ミレイが真っ青になりながら立ち上がった。
「きゃはっ、コウ様ー!」
一転して、可愛らしい笑顔を浮かべたフィリスが抱きついてきた。
ミレイがかわいそうだったので、デコピンしておいた。
「ミレイ、ここ座れよ」
そう言って、膝の上をポンポン叩いてみた。
「ええ!? で、でも……私下着汚れてるから、コウさんのお膝濡らしちゃうかもしれませんよ? そ、それにこんな公衆の面前で……その……」
ミレイは恥ずかしそうにそんな事を言った。
そう言えば、中出しした後、強引にパンツ履かせたな。
どう考えても俺が悪い。
「いいよ。出したの俺のだし」
強引にミレイを抱き寄せて、膝の上に乗せる。
「あっ……もう、コウさんったら」
ミレイはまんざらでもなさそうに俺に抱きしめられていた。
ミレイのふわふわの癖っ毛に顔をうずめると心地よい。
「……なんかさっきから、その子フラフラしてて変だなと思ってたんですけど。もしかしてコウくん、やったんですか? いつの間に……」
カンナさんが呆れていた。
「もう、本当に仕方ないですね、コウくんは。そろそろお姉ちゃんもエッチして欲しいです」
俺もそろそろカンナさんを抱きたい。
まあ、夜になったらこっそり犯すか。
……今夜は忙しくなりそうだぜ。
「……でも、コウさん、いいんですか?」
ミレイが振り返りながら、そんな事を言った。
「え? ……わかってる。ちゃんとお前も今夜抱いてやるから安心しろ」
「そ、そうではなくて! …………夜はちゃんと抱いてもらいますけど」
ミレイは顔を赤くしていたが、最後にボソッと可愛いことを言っていた。
もう夜じゃなくて今押し倒しちゃおうかなと思った。
「お買い物の事ですよ。……なんか私たちばっかり欲しいもの買ってもらって……コウさん自分のもの全然買ってないじゃないですか」
「あー、そっちか」
真っ先に下ネタを疑ってしまう俺ってヤバイのだろうか。
「確かにそうですねえ。お姉ちゃんがコウくんに似合う服選んであげましょうか? 半ズボンとかがいいと思うんですけど」
カンナさんがじゅるりと涎をすすりながら不穏な事を言っている。
半ズボンなんて25年くらい履いてないんだけど。
転生する前の俺だったら、履いただけで捕まりそうな気がする。
とりあえず、カンナさんと服を買いに行くのは止めようと思う。
「うーん、私はコウ様はスッポンポンが一番いいと思いますよ」
フィリスもじゅるりとしながら、ラリった事を言っていた。
気持ちはわかる。
俺も女の裸が大好きだからだ。
でも、フィリスはちょっと黙ってて欲しい。
「休憩したらコウさんのものを買いに行きませんか?」
吸血鬼姉妹のボケには乗らずにミレイがそう言ってくれるが、正直言って欲しいものなんて無い。
武器は王様がくれたし、防具もセレナが作ってくれるし。
服もルーナブランドでいいし。
うーん。
あ、そういえば。
「……避妊薬って普通に売ってるのかな?」
昨日アイリーンが避妊薬を使っていると言っていたのを思い出した。
どんなものかはわからないが、是非俺も持っておいたほうがいい気がするのだ。
めんどくさい責任をとりたくないので。
プロにとっては必需品な気がしてきた。
「……コウくんって避妊する気あるんですか?」
カンナさんが失礼なこと言っていた。
ありますよ!
「そのわりには、いつもお姉ちゃんのことタプタプにするじゃないですか。まあ、私は吸血鬼なのでいくら出されても妊娠しませんが」
吸血鬼は本当にプレシャスな種族。
俺の中では風の民(ダークエルフ)とツートップを張っている。
「……私は人間なので妊娠するんですけど、タプタプにしますよね……私のことも」
ミレイまで乗っかってきた。
そりゃタプタプにしているけれども!
ただ、二人とも何も判ってないと思うのだ。
なのでここは改めて、2人には俺という男を理解してもらおうと思った。
「俺はね。いつも避妊しようとはしているんですよ。でも、中出しが大好きなんです」
仕方ないじゃない。
にんげんだもの。
なので、しみじみ言ってみた。
「……コウくんが何を言っているのか、お姉ちゃんには全然わかりません」
全然わかってもらえなかったんだけど。
なぜ!?
「……はあ。まあ、避妊薬は錬金魔法を覚えたての職人見習いでも作れる薬ですから、その辺の薬局に普通に売ってますよ。多分、あんまり高くないですよね?」
カンナさんがミレイに問いかける。
「ええ。多分、銀貨1枚くらいで買えると思います」
千円くらいだろうか。
まあそんなもんか。
「……ただ避妊薬を使うと女性は生理周期が乱れたり、頭痛がしたりするって聞きますし、そ、それに……」
ミレイはそこで言葉を切ると、恥ずかしそうにモジモジした。
「……い、今更、遅いと思いますよ? ルーナさんも、わ、私も……」
俺をチラチラ見ながらミレイがそんなことを言った。
…………。
な、何をいっているのかわかりませんね。
急に、本当にあった怖い話みたいなのをされても。
諦めたらそこで試合終了だと言うのに。
ただ話を聞く限り、避妊薬ってまんまピルっぽい。
あんまり女に負担をかけるのもなー。
かと言って、中出しは止めたくない。
気持ちいいので。
神様、一体、私はどうしたらいいのでしょうか?
思わず柄にもなく神に聞いてしまった。
というか、今度、ノリコさんに会ったら聞いてみようかな。
絶対に怒られる気がした。
そんな事を考えていたら、ルーナ達がクレープを抱えて戻ってきた。
ルーナの頭にはでっかいたんこぶが出来ていた。
セレナに怒られたんだろうなと思った。
「ああっ! なんでミレイを膝の上に乗せているんだ!? そ、そこは私の席なのに!!」
帰ってくるなり、ルーナがそんなことを泣き叫ぶ。
ミレイがそそくさとルーナに俺の膝を譲っていた。
いや、俺は椅子じゃねえから。
そういえばかつて肉椅子にしたリュディアは元気だろうか。
そのまま、しばらく皆でまったりした。
「さて、そろそろ行くか」
そう言って立ち上がるとミレイがくいっと裾を引っ張る。
「薬局行きますか?」
あー避妊薬か。
うーん。
避妊か中出しかは、人生をかけて悩むべき問題な気がする。
哲学者が自我に悩むのと同じだ。
なので、考えるだけ無駄なので、今日も気にせず中出ししようと思う。
「薬局はいいわ。また買い物続けよう」
「……薬局?」
さっきの話を聞いていないルーナが首を傾げている。
というか、ルーナを見ていて思い出した。
王都で買わなきゃいけないものがあるじゃないか。
「そういえば、指輪買いにいかないとな。前、約束しただろう?」
「う、うん! 指輪買う! 絶対買う!」
鼻息荒く、ルーナが詰め寄ってくる。
近い近い。
「えへへ、ちゃんと覚えててくれたんだな。……すごく嬉しい」
俺のすぐ目の前でルーナが花が咲いたような笑顔を浮かべた。
当然だが、可愛い。
「ちょっと、指輪って何よ?」
セレナが不満そうな顔をしていた。
「……そ、その結婚指輪。まだ買ってもらってなかったから」
ルーナが照れながらも、嬉しそうに言うと、セレナは複雑な顔をしていた。
何かを迷っている顔だった。
私も欲しいとか言い出しそうだ。
「………………お、お金はちゃんと足りるの?」
しかし、意外にもセレナはそんなことを言う。
お金か。
結婚指輪っていくらするんだろうか。
給料の三ヶ月分?
100万くらいあればいいかな。
金貨10枚なら普通にあるけど。
ただ、最近金銭感覚の狂いまくった俺からすると金貨10枚なんて端金にしか聞こえない。
ここはドーンと金貨100枚くらいのを買うか。
日本円にして1000万だ。
え、マジで。
結構な大金に思わずガタガタ震えてくる。
「もういいから、私が預かってたお金も持っていきなさい。あと私が個人的に持ってきたお金もあげるわ」
そう言って、セレナは1億円をみんなで等分した金貨袋と、可愛らしいお財布を渡してくれる。
セレナ財布にはじゃらっと結構な額の金貨が入っていた。
自分の金までくれるなんて、セレナいいヤツ。
「……女にとっては一生の思い出なんだから、バカ娘に立派なのを買って上げなさいよ?」
「うう、セレナ……あ、あ゛り゛がどね」
ルーナは思い切り鼻声になりながら、涙をボロボロ流していた。
「なんで泣くの……。ホント馬鹿な子ね」
そう言いながら、セレナはルーナの涙をハンカチで拭いてやっていた。
「あ、あの! コウさん、私のお金も持っていってください。まだ全然使ってませんから」
ミレイまでそんな事を言ってくれる。
それどころか、その場にいる全員がお小遣いとして配った金貨を返してくれた。
買い物しまくったと言っても、元の金額が莫大なので金貨1000枚は殆ど減っていない。
多分、一番金を使いまくったのは店全部買い占めとかやっていた俺なのだが、それもセレナから貰った金で補填できそうだ。
なので、ほぼ金貨1000枚が俺とルーナの手元にあるわけだが。
量が多すぎて持ちづらい。
スロットの1000枚とかだったら箱2個くらいなのだが、こっちの世界の金貨はスロットメダルよりも大きいし形が歪なのでかさばる。
「ふふ、ついに私の出番ですね! 私が店まで金貨を運びますよ!」
意気揚々と出てきたフィリスは、しかし、カンナさんにあっさりとぶん殴られていた。
「空気を読みなさい! この愚妹! ……コウくん、お姉ちゃんたちはその辺をぶらぶらしてますから、終わったら探しに来てくださいね」
そう言って、顔をしゅーしゅー言わせるフィリスを引きずったカンナさんについて皆どこかへ行ってしまう。
俺とルーナを二人きりにしてくれたらしい。
皆なんだかんだ言って人が良い。
ほぼ全員どろどろした肉体関係を持っているのに不思議だった。
本当に俺はいい女に恵まれていると思う。
この礼はベッドの上で返さねば。
「じゃあ行くか」
「う、うん。行く」
とりあえず、指輪を売っている店を探して歩きだすと、照れたルーナがそっと手を握ってきた。
それにしても指輪ってどこに売っているのだろうか。
その辺の露店でも売っているが、さすがにアレはないだろう。
やっぱ宝飾店かな。
そういえば、以前、バカ高い鏡台を買ったあたりに高級店が並んでたのを思い出した。
とりあえず、そっちに向かうことにした。
買った商品はかなりの量になったが、前回と同じように運送業者が纏めて運んでくれるらしい。
金貨3枚程かかったが。
ちょっと送料が高い気もするので、アマ○ンプライム見習えよと思ったが、トラックもない時代だと考えるとむしろ良心的な値段設定な気もする。
金の力を見せつける店全部買い占めは、生活必需品等を扱う道具屋でもやってみたが、相変わらず女たちの反応は鈍いものだった。
まあ、生活必需品なので、ヴァンダレイジジイやロビンジジイ達にあげてもいいかと思う。
というか、買い物中、ルーナが事ある毎にしがみついてきた。
その度に、ルーナをずるずると引きずる羽目になるので止めてほしいのだが。
「お前がすぐに私をほったらかすのが悪いんじゃないか! もっと妻を可愛がらないとダメだ!」
ルーナはそう言って、鼻をぐすぐすさせながら俺の腕にぎゅっとしがみつく。
可愛いからいいんだけど、せめて自分の足で歩いて欲しい。
そんなこんなで買い物をしながら王都を練り歩いていると、大きな広場に出る。
その広場の中央には大きな男性の像があった。
剣を掲げたオッサンの像だ。
その像を大勢の人が囲んで眺めている。
観光スポットのような場所なのだろうか。
というか、俺はオッサンの像よりも気になる場所があった。
広場の奥の方に、オッサン像よりも大きな人だかりが出来ている。
そこには、巨大な白龍がきゅーっと身を縮こまらせている。
衛兵さんらしき人たちがそんな白龍を取り囲んで輪を作り、それを更に大勢の人たちが取り囲んで眺めていた。
ちょっと見ない間に、うちのドラゴンが観光スポットになっていた。
つうか、何してんのあいつ。
ルーナを引きずりながらドラゴンの方に近づくと、衛兵さんがビシっと挨拶してくれる。
「お疲れ様です、ハイランダー! 御乗騎は我らが責任を持って守らせて頂きます」
衛兵さんたちは、わざわざうちのドラゴンをガードしてくれていたらしい。
寒い中、申し訳なさすぎて胃が痛くなる。
「……お前、あんまし衛兵の皆さんに迷惑をかけんなよ。つうか、何でこんなとこにいんの?」
(主ハ昨日我ニ命ジタ。邪魔ニナラナイ場所デ小サクナッテイロ、ト。ダカラ我ハ、ココデ小サクナッテイルノダ)
そう言って、フェルさんはきゅーっと更に身を縮こまらせる。
「全然小さくねえから!」
どんなにがんばった所で、このドラゴンは鎌倉の大仏くらいの大きさはある。
(……スマナイ、主ヨ)
フェルさんはしょぼんとしていた。
相変わらず可愛くねーわ。
「……うちのトカゲがご迷惑をおかけして申し訳ないです。すぐに外に移動させますので」
せめて王都の外で小さくなってろよと思うのだ。
「いえ、これも仕事ですので! ……それに市民も喜んでおりますし、ここにいて頂いてもよろしいかと」
確かに、周囲を取り囲む人々はおっかなびっくりと、好奇心に満ちた表情でフェルさんを眺めている。
これだけデカいドラゴンは異世界でも珍しいのだろうか。
まあ、それならそれでいいんだけどさ。
衛兵さんもこう言ってくれていることだし。
「あまり他の人の迷惑にならないようにしろよ。明日になったら帰るから」
(承知)
フェルさんにそう注意して、衛兵さんの言葉に甘えることにした。
「じゃあ、お手数おかけしますけど、よろしくお願いします」
「はっ! もったいなきお言葉、恐縮です!!」
衛兵さんとそんな挨拶をしていると、ずっと黙ってしがみついていたルーナが何かを見つけた。
「あっ! クレープ屋さんだ!」
あっさりと俺から離れたルーナがクレープの屋台を目掛けて、ぴゅーっと走っていく。
……あいつ、前もあんな感じで迷子になったよな。
ルーナは王都に来るといつも以上にはしゃぐ。
「……あの馬鹿娘。全然反省してないわね」
セレナも同じことを思ったようで、青筋を立てていた。
「ちょっと叱ってくるわ」
セレナが拳をバキバキ言わせながら、ルーナの後を追おうとする。
お手柔らかにと思いながら。
「セレナ、ちょうどいいから少しここで休憩しよう。その辺にベンチもあるし」
そんな提案をしてみた。
今は日が傾き始めた所だ。
多分、15時くらいだと思う。
ずっと買い物しっぱなしで、少し皆も疲れているだろう。
「そうねえ。じゃあ、ついでに皆の分のクレープも買ってくるわ。……メグも一緒に行く?」
クレープ屋の屋台を見てそわそわしていたメグにセレナがニコッと声をかける。
ルーナよりメグの方が我慢できている件について。
「は、はい! わたしもいきたいです!!」
セレナとメグは手をつなぎながら、歩いていった。
どうでもいいけど、吸血鬼の真祖をパシらせてしまったのだがいいのだろうか。
「じゃあ、私たちは座るところを確保しておきましょうか」
カンナさんは特に気にした様子もなく、さっさとベンチの方に歩いていってしまったので、いいんだろうけど。
広場のベンチに腰掛けて一息つくと、両側にミレイとカンナさんが座ってきた。
「ああっ! 私もコウ様のお隣が良かったのに!! ……どけ、退魔師(エクソシスト)」
フィリスが悪い顔でミレイを睨む。
「ご、ごめんなさい」
ミレイが真っ青になりながら立ち上がった。
「きゃはっ、コウ様ー!」
一転して、可愛らしい笑顔を浮かべたフィリスが抱きついてきた。
ミレイがかわいそうだったので、デコピンしておいた。
「ミレイ、ここ座れよ」
そう言って、膝の上をポンポン叩いてみた。
「ええ!? で、でも……私下着汚れてるから、コウさんのお膝濡らしちゃうかもしれませんよ? そ、それにこんな公衆の面前で……その……」
ミレイは恥ずかしそうにそんな事を言った。
そう言えば、中出しした後、強引にパンツ履かせたな。
どう考えても俺が悪い。
「いいよ。出したの俺のだし」
強引にミレイを抱き寄せて、膝の上に乗せる。
「あっ……もう、コウさんったら」
ミレイはまんざらでもなさそうに俺に抱きしめられていた。
ミレイのふわふわの癖っ毛に顔をうずめると心地よい。
「……なんかさっきから、その子フラフラしてて変だなと思ってたんですけど。もしかしてコウくん、やったんですか? いつの間に……」
カンナさんが呆れていた。
「もう、本当に仕方ないですね、コウくんは。そろそろお姉ちゃんもエッチして欲しいです」
俺もそろそろカンナさんを抱きたい。
まあ、夜になったらこっそり犯すか。
……今夜は忙しくなりそうだぜ。
「……でも、コウさん、いいんですか?」
ミレイが振り返りながら、そんな事を言った。
「え? ……わかってる。ちゃんとお前も今夜抱いてやるから安心しろ」
「そ、そうではなくて! …………夜はちゃんと抱いてもらいますけど」
ミレイは顔を赤くしていたが、最後にボソッと可愛いことを言っていた。
もう夜じゃなくて今押し倒しちゃおうかなと思った。
「お買い物の事ですよ。……なんか私たちばっかり欲しいもの買ってもらって……コウさん自分のもの全然買ってないじゃないですか」
「あー、そっちか」
真っ先に下ネタを疑ってしまう俺ってヤバイのだろうか。
「確かにそうですねえ。お姉ちゃんがコウくんに似合う服選んであげましょうか? 半ズボンとかがいいと思うんですけど」
カンナさんがじゅるりと涎をすすりながら不穏な事を言っている。
半ズボンなんて25年くらい履いてないんだけど。
転生する前の俺だったら、履いただけで捕まりそうな気がする。
とりあえず、カンナさんと服を買いに行くのは止めようと思う。
「うーん、私はコウ様はスッポンポンが一番いいと思いますよ」
フィリスもじゅるりとしながら、ラリった事を言っていた。
気持ちはわかる。
俺も女の裸が大好きだからだ。
でも、フィリスはちょっと黙ってて欲しい。
「休憩したらコウさんのものを買いに行きませんか?」
吸血鬼姉妹のボケには乗らずにミレイがそう言ってくれるが、正直言って欲しいものなんて無い。
武器は王様がくれたし、防具もセレナが作ってくれるし。
服もルーナブランドでいいし。
うーん。
あ、そういえば。
「……避妊薬って普通に売ってるのかな?」
昨日アイリーンが避妊薬を使っていると言っていたのを思い出した。
どんなものかはわからないが、是非俺も持っておいたほうがいい気がするのだ。
めんどくさい責任をとりたくないので。
プロにとっては必需品な気がしてきた。
「……コウくんって避妊する気あるんですか?」
カンナさんが失礼なこと言っていた。
ありますよ!
「そのわりには、いつもお姉ちゃんのことタプタプにするじゃないですか。まあ、私は吸血鬼なのでいくら出されても妊娠しませんが」
吸血鬼は本当にプレシャスな種族。
俺の中では風の民(ダークエルフ)とツートップを張っている。
「……私は人間なので妊娠するんですけど、タプタプにしますよね……私のことも」
ミレイまで乗っかってきた。
そりゃタプタプにしているけれども!
ただ、二人とも何も判ってないと思うのだ。
なのでここは改めて、2人には俺という男を理解してもらおうと思った。
「俺はね。いつも避妊しようとはしているんですよ。でも、中出しが大好きなんです」
仕方ないじゃない。
にんげんだもの。
なので、しみじみ言ってみた。
「……コウくんが何を言っているのか、お姉ちゃんには全然わかりません」
全然わかってもらえなかったんだけど。
なぜ!?
「……はあ。まあ、避妊薬は錬金魔法を覚えたての職人見習いでも作れる薬ですから、その辺の薬局に普通に売ってますよ。多分、あんまり高くないですよね?」
カンナさんがミレイに問いかける。
「ええ。多分、銀貨1枚くらいで買えると思います」
千円くらいだろうか。
まあそんなもんか。
「……ただ避妊薬を使うと女性は生理周期が乱れたり、頭痛がしたりするって聞きますし、そ、それに……」
ミレイはそこで言葉を切ると、恥ずかしそうにモジモジした。
「……い、今更、遅いと思いますよ? ルーナさんも、わ、私も……」
俺をチラチラ見ながらミレイがそんなことを言った。
…………。
な、何をいっているのかわかりませんね。
急に、本当にあった怖い話みたいなのをされても。
諦めたらそこで試合終了だと言うのに。
ただ話を聞く限り、避妊薬ってまんまピルっぽい。
あんまり女に負担をかけるのもなー。
かと言って、中出しは止めたくない。
気持ちいいので。
神様、一体、私はどうしたらいいのでしょうか?
思わず柄にもなく神に聞いてしまった。
というか、今度、ノリコさんに会ったら聞いてみようかな。
絶対に怒られる気がした。
そんな事を考えていたら、ルーナ達がクレープを抱えて戻ってきた。
ルーナの頭にはでっかいたんこぶが出来ていた。
セレナに怒られたんだろうなと思った。
「ああっ! なんでミレイを膝の上に乗せているんだ!? そ、そこは私の席なのに!!」
帰ってくるなり、ルーナがそんなことを泣き叫ぶ。
ミレイがそそくさとルーナに俺の膝を譲っていた。
いや、俺は椅子じゃねえから。
そういえばかつて肉椅子にしたリュディアは元気だろうか。
そのまま、しばらく皆でまったりした。
「さて、そろそろ行くか」
そう言って立ち上がるとミレイがくいっと裾を引っ張る。
「薬局行きますか?」
あー避妊薬か。
うーん。
避妊か中出しかは、人生をかけて悩むべき問題な気がする。
哲学者が自我に悩むのと同じだ。
なので、考えるだけ無駄なので、今日も気にせず中出ししようと思う。
「薬局はいいわ。また買い物続けよう」
「……薬局?」
さっきの話を聞いていないルーナが首を傾げている。
というか、ルーナを見ていて思い出した。
王都で買わなきゃいけないものがあるじゃないか。
「そういえば、指輪買いにいかないとな。前、約束しただろう?」
「う、うん! 指輪買う! 絶対買う!」
鼻息荒く、ルーナが詰め寄ってくる。
近い近い。
「えへへ、ちゃんと覚えててくれたんだな。……すごく嬉しい」
俺のすぐ目の前でルーナが花が咲いたような笑顔を浮かべた。
当然だが、可愛い。
「ちょっと、指輪って何よ?」
セレナが不満そうな顔をしていた。
「……そ、その結婚指輪。まだ買ってもらってなかったから」
ルーナが照れながらも、嬉しそうに言うと、セレナは複雑な顔をしていた。
何かを迷っている顔だった。
私も欲しいとか言い出しそうだ。
「………………お、お金はちゃんと足りるの?」
しかし、意外にもセレナはそんなことを言う。
お金か。
結婚指輪っていくらするんだろうか。
給料の三ヶ月分?
100万くらいあればいいかな。
金貨10枚なら普通にあるけど。
ただ、最近金銭感覚の狂いまくった俺からすると金貨10枚なんて端金にしか聞こえない。
ここはドーンと金貨100枚くらいのを買うか。
日本円にして1000万だ。
え、マジで。
結構な大金に思わずガタガタ震えてくる。
「もういいから、私が預かってたお金も持っていきなさい。あと私が個人的に持ってきたお金もあげるわ」
そう言って、セレナは1億円をみんなで等分した金貨袋と、可愛らしいお財布を渡してくれる。
セレナ財布にはじゃらっと結構な額の金貨が入っていた。
自分の金までくれるなんて、セレナいいヤツ。
「……女にとっては一生の思い出なんだから、バカ娘に立派なのを買って上げなさいよ?」
「うう、セレナ……あ、あ゛り゛がどね」
ルーナは思い切り鼻声になりながら、涙をボロボロ流していた。
「なんで泣くの……。ホント馬鹿な子ね」
そう言いながら、セレナはルーナの涙をハンカチで拭いてやっていた。
「あ、あの! コウさん、私のお金も持っていってください。まだ全然使ってませんから」
ミレイまでそんな事を言ってくれる。
それどころか、その場にいる全員がお小遣いとして配った金貨を返してくれた。
買い物しまくったと言っても、元の金額が莫大なので金貨1000枚は殆ど減っていない。
多分、一番金を使いまくったのは店全部買い占めとかやっていた俺なのだが、それもセレナから貰った金で補填できそうだ。
なので、ほぼ金貨1000枚が俺とルーナの手元にあるわけだが。
量が多すぎて持ちづらい。
スロットの1000枚とかだったら箱2個くらいなのだが、こっちの世界の金貨はスロットメダルよりも大きいし形が歪なのでかさばる。
「ふふ、ついに私の出番ですね! 私が店まで金貨を運びますよ!」
意気揚々と出てきたフィリスは、しかし、カンナさんにあっさりとぶん殴られていた。
「空気を読みなさい! この愚妹! ……コウくん、お姉ちゃんたちはその辺をぶらぶらしてますから、終わったら探しに来てくださいね」
そう言って、顔をしゅーしゅー言わせるフィリスを引きずったカンナさんについて皆どこかへ行ってしまう。
俺とルーナを二人きりにしてくれたらしい。
皆なんだかんだ言って人が良い。
ほぼ全員どろどろした肉体関係を持っているのに不思議だった。
本当に俺はいい女に恵まれていると思う。
この礼はベッドの上で返さねば。
「じゃあ行くか」
「う、うん。行く」
とりあえず、指輪を売っている店を探して歩きだすと、照れたルーナがそっと手を握ってきた。
それにしても指輪ってどこに売っているのだろうか。
その辺の露店でも売っているが、さすがにアレはないだろう。
やっぱ宝飾店かな。
そういえば、以前、バカ高い鏡台を買ったあたりに高級店が並んでたのを思い出した。
とりあえず、そっちに向かうことにした。
1
お気に入りに追加
1,238
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる