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第四章 竜騎士編
第142話 朝食
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ガスっと頭に重い衝撃を受けて目が覚めた。
「あうー、痛い」
目の前では、上半身を肌蹴たルーナが目に涙を浮かべている。
その頭には立派なたんこぶが出来ていた。
「あなた達は、朝っぱらからなんて格好で寝ているの!? お腹冷やしちゃったらどうするのバカ娘!?」
寝ぼけ眼をこすると、鬼の形相をしたセレナが立っていた。
どうやら俺たちはセレナの拳骨を食らったらしい。
「だいたい、小さな子もいるのよ!? 少しは気を使いなさい?」
セレナの足元にはアンがいた。
セレナのスカートをギュッと掴んで、指を加えながら俺とルーナを見つめている。
おっぱい丸出しのルーナは確かに教育上よろしくない。
というか、俺は昨日ルーナにこんな格好をさせたまま寝てしまったらしい。
なんという失態だ。
アヘらす前に寝てしまうなんて。
「……寝ちゃって悪かったな」
とりあえず、そう謝ってみると、ルーナはニコっと笑ってくれた。
「ううん。いいんだ。ああいうのもたまにはいい。お前を抱きしめながら、私も寝ちゃったし。……でも、今夜は最後までして欲しいな?」
ルーナはそんな可愛いことを言う。
今夜と言わずに今すぐに最後までしてやってもいいのだが。
「……いいから早く胸を仕舞いなさいよ。……というか、お前、なんか乳首肥大化していない?」
「ええ!?」
注意している最中に気づいたらしいセレナの言葉に、ルーナが驚きの声を上げる。
乳首肥大化?
そうだろうか。
朝の爽やかな日差しに照らされたルーナの乳首をまじまじと見る。
たしかに大きく、というか長くなっている気がする。
乳輪はそうでもないが、乳首に関して言えば、俺が今まで抱いた女の中で一番デカいかもしれない。
毎日、吸ったり噛んだりしたせいだろうか。
まだ綺麗な桜色をしているのがせめてもの救いだ。
「……悪いな。俺が毎日噛んだせいかもしれない。確かに肥大化してるわ」
「お前まで言うのか!?」
ルーナは不安そうに自分の乳首をツンツンする。
その光景はちょっとエロかった。
「……貧乳のくせに乳首だけデカいなんて……どんどんエロくなっていくわね。お前。そろそろコウにも引かれるわよ?」
「ええええ!? そ、そうなのか? こんな大きな乳首をした女は嫌いか?」
セレナの言葉にルーナはあっさりと泣きべそをかいていた。
デカい乳首が嫌いかって?
この馬鹿!!
俺はその問いに答える前に、ルーナをガバッと抱きしめた。
「俺はデカい乳首が大好きだ!!!」
そう叫ぶと、ルーナははっとしたように息を飲む。
「……だ、大好き? わ、私も! 私もお前が大好きだぞ! えへへ」
ルーナが嬉しそうに抱きしめ返してきた。
いや、好きなのはルーナじゃなくて乳首だからね?
ちゃんと俺の話を聞けよと思うのだが。
というか。
「……悪かったな。これからはもっとお前の乳首を優しく扱うからな」
「ううん。いいんだ。お、お前に噛まれるの嫌いじゃないし。……というか気持ちいいし。だ、だいたい、コレはもうお前のものだ。お、お前の好きにしてくれていいんだぞ?」
そう言って、ルーナは自分の乳房を掴んで、俺に差し出すようにする。
ツンとした例の乳首が俺の方を向くので、俺は思わず生唾を飲み込んだ。
知ってたけど、そうだったのか。
コレはもう俺のものだったのか。
それならば。
「……じゃ、じゃあ早速食べさせてもらおうかな」
その言葉を聞いたルーナは熱に冒されたように顔を真赤にして、目をとろけさせた。
「……う、うん。たんと召し上がれ?」
そして、ルーナのおっぱいにしゃぶりつこうとして。
「ごふっ!!」
「あうっ!」
再びセレナの拳骨を食らっていた。
「だから、小さい子が見てるって言っているでしょう!? この子がお前みたいなエロ娘になっちゃったらどうするの!?」
セレナの言うことはごもっともなのだが。
そもそも乳首の話を始めたのはセレナじゃんと思うのだ。
「……ねえねえ、おっぱいは食べ物なの?」
アンはセレナのスカートをクイクイしながらそんなことを言う。
どう考えても、教育に良くないので、俺はそっとめくり上げたルーナのシャツを下に戻した。
「食べ物じゃないわよ。あなたはあのお姉ちゃんみたいになっちゃダメよ?」
優しい口調でアンを諭すセレナ。
アンはセレナの言葉を聞きながら、ルーナに純真無垢な瞳を向ける。
ルーナはしゅんとしながら小さくなっていた。
「でも、わたしまえ見たよ。お兄ちゃんにセレナお姉ちゃんのおっぱいも食べ――」
何か不穏な事を口走ろうとするアンの口をセレナがさっと塞ぐ。
「お、おほほ、何を言っているのかしら、この子は」
セレナが焦りながら誤魔化す。
多分、外でセレナを抱いているところを見られてたんだろうな。
ホント子供の教育に悪い村だよ。
これからは気をつけなければ。
「……もう色々と手遅れだと思いますよ」
いつの間にかやってきていたミレイが呆れながら言った。
まあ、ミレイを抱いているのも度々カー坊に覗かれてたしな。
ちなみにミレイは、ホテルの人に朝ごはんを用意してもらったので、呼びに来てくれたらしい。
まあ、教育問題みたいな難しい事を考えるのは止めて、飯にするか。
「お、おい! さっきアンは何を言おうとしたんだ!?」
ルーナが気色ばんでいたが、もうその話題は終わったのだ。
空気を読めと言いたい。
皆で朝食を食べながら、今後の予定について話をする。
「この部屋にはいつまで滞在できるんですか?」
「明日までだったかな」
パンを千切りながらミレイがそんなことを聞いてくるので、昨日王宮で確認しておいた話を答えておいた。
「じゃあ、結構ゆっくり観光できますね。服でも買いに行きましょうか。メグさん」
ミレイは嬉しそうに隣に座ったメグに目を向ける。
「は、はい! 行きたいです……けど、わたしお金もってないです。奴隷なので」
一瞬、喜色を浮かべたものの、メグがしゅんとうなだれる。
だから、奴隷とか言うなっつーに。
というか、金なら。
「昨日、王様が金をこの宿に送っといてくれるって言ってたけど、届いてないか?」
この前の戦争のご褒美でもらった金だ。
たしか金貨1000枚だったかな。
「……ああ、それなら」
ミレイがなぜか顔を青ざめさせながら、部屋の入口に目をやる。
そこには大きな宝箱が置かれていた。
「昨日、兵隊さんたちが重そうに運んできてくれました。ちょっと中を覗いてみたら、信じられないような大金が入っていたので、そっと閉じましたが……」
ミレイはその金額にびびったらしい。
相変わらずミレイはビビリだ。
というか、金貨1000枚って日本円にしていくら位なんだろう。
何度かこっちの世界で買い物をして感じた感覚では、金貨一枚は数万円から十万円だと思う。
仮に金貨一枚、十万円だとすると。
1000枚って、億いってるんじゃ……。
い、いや、やめよう。
深く考えると、ミレイ以上にビビってしまいそうだ。
とにかく。
「買い物行くなら、あそこから金は持っていっていいからな。なんでも好きなものを買え」
とりあえず、その場にいる全員に向けて言ってみた。
この場にいるのは俺の女だけだ。
金なんていくらでもやる。
もしもこの場にピートとカー坊がいたら、あいつらにだけは銅貨をちゃりんと一枚ずつ投げる所だった。
変な差別をしなくて済んだ分、あいつらを村に忘れてきてホントに良かったと思う。
俺の言葉に、皆、一様にぽかんと驚いていたが、とりわけメグの驚きが大きかった。
「そ、そんなコウさまのお金なんてつかえません! だって、わたし奴隷――」
「メグ!」
何度も注意したのに、メグが再び自分を奴隷と言おうとしたので、ちょっと強めにメグの名前を呼んだ。
俺はメグを奴隷扱いするつもりはない。
メグは俺に熱のこもった目を向けてから、やや涙ぐむ。
そして、満面の笑みを浮かべた。
「……そうでしたね。もうわたしはコウさまのお嫁さんでした!」
いや、そこまでは言ってないけど。
こんな大勢の前で困るなー。
なぜだろう。
メグの背後でせっせと爆弾に点火しているスタンドが見える。
「もー! コウさまがいつまでたっても、わたしを抱いてくれないのがわるいんですよ!? わたしはやくコウさまの赤ちゃんうみたいです」
メグが嬉しそうに机をパンパンと叩く。
だ、だからそういう際どいこと言うなってば。
――しゃくしゃく。
サラダを齧りながら、ルーナが無表情で俺を見つめていた。
なんだこのリアクション。
その顔と咀嚼音がなんか怖いんだよ。
「……メグ、こいつの子供は私が産むから、お前はそんなこと気にしなくていいんだぞ?」
ルーナは引きつりながらも、そう言ってメグに笑顔を浮かべた。
その瞬間、俺は立ち上がってメグのもとに急ぐ。
「あ、はい! もちろん、順番はまもりますよ! わたしはルーナさんの後でいいです。順番はだいじですからね! でも、この前、コウさまがわたしのこともグチョグチョって触って――むがむがっ」
寸前のところでメグの口を塞ぐことに成功した。
離れた場所に座っていたので、危なかった。
というか、ふざけんな。
「……おい、グチョグチョなんて触ってねえだろ。お前の擬音は紛らわしいんだよ」
とりあえず、小声でメグを注意する。
「えー? わたしグチョグチョでしたよ。コウさまとってもお上手だったので。……というか、ギオンってなんですか?」
人がせっかく小声で話しているのに、メグは全く空気を読まずにデカい声で話す。
このバカ!
そんな声で話したら……。
「……お前、メグをグチョグチョになるまで触ったのか?」
ほ、ほら、ルーナさんがすごい目で睨んでるじゃないか。
ルーナだけじゃなく、セレナもミレイも俺を睨んでいた。
「い、いや、触ったって言うと語弊があるんですけど、肘が触れるくらいだったんじゃないかな。ほ、ほら、俺って上手いから肘だけでも、女はグチョグチョになるっていうか」
そんな苦しい言い訳をしてみたが、セレナとミレイは怪訝な顔をしながらも納得したように頷いていた。
あいつら俺をなんだと思ってるんだろうか。
ルーナだけは目に涙を貯めながら、ツカツカと歩いてくる。
「ううー! 例え肘だけだろうと、私以外の女に触っちゃダメだ! なんですぐに浮気するんだ!? もう、今日はお前から離れないからな!? ずっと抱きついてお前が浮気しないように監視してやる!」
そう言いながら、ルーナがぼすんと抱きついてくる。
柔らかくて素敵な感触なので俺はいいのだが。
これじゃあ、どこも行けないじゃないか。
軽く歩いてみると、ルーナが抱きついたままズズッとついてきた。
歩き辛いわ。
まあ引きこもりなので、どこにも行かなくていいのだが。
皆が買い物しているのを、ホテルでルーナを抱きながら待っててもいいか。
そんな事を考えていると、口いっぱいにパンを頬張ったアンと目が合った。
そういえば、すっかり忘れていた。
アンを姉の所に連れてってやる約束したんだった。
「アン、お姉ちゃんちの場所はわかるのか?」
ルーナを引きずりながら聞いてみると、アンは嬉しそうに頷く。
アンは全く足のついていなかった椅子から勢い良く飛び降りると、てててと走っていって、小さなリュックから一枚の紙切れを取り出す。
再びてててと戻ってきたアンは俺にその紙切れを差し出した。
紙切れにはミミズ文字が書いてあった。
恐らくヴァンダレイジジイが書いたアン姉の住所だろう。
ただ残念な事に俺はミミズ文字を読むことが出来ない。
しかし、アンの前で文字が読めないとは言い辛い。
アンに蔑んだ目で見られたら、俺は生きていけないからだ。
「……ちょっと王都は詳しくなくてな、この場所がどこかはわからないなー。い、いや、別に文字が読めないわけじゃないんだぞ? ホントだぞ?」
「……おねいちゃんにあえないの?」
俺の見苦しい言い訳に、アンはしょぼんとしながら指をくわえる。
うう、罪悪感に胸が張り裂けそうだ。
「まったくコウくんは仕方ないですね。ここはお姉ちゃんに任せて下さい。王都は私にとって庭のようなものですので」
得意げな表情をしたカンナさんが俺の背中越しに紙切れを覗き込む。
背中にカンナさんの豊満な胸が押し当てられて、俺の罪悪感は一瞬で吹き飛んでいた。
姉の乳は偉大だ。
「あー、ここならわかりますよ。結構近くですね。というか、かなりの高級住宅地ですよ。アンちゃんのお姉さんすごいですね。私が案内してあげますからね」
そう言って、カンナさんは俺の背中越しにアンに微笑む。
「ありがとう! カンナお姉ちゃん!」
アンは嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
可愛い。
「というか、なんでカンナさんそんなに王都に詳しいんですか?」
ふと気になったので聞いてみた。
あんな辺境の森に住んでいたのに、王都に詳しい意味がわからない。
「昔、お姉ちゃんにも色々あったんですよ。ふふふ。……というか、コウくん? カンナさんじゃなくてお姉ちゃんと呼んで下さいって言ってるじゃないですか! 悪い弟にはこうしてやりますよ!?」
そう言ってカンナさんはぎゅーと首筋に抱きついてくる。
胸も一緒に押し付けられるので、物凄く楽しいんですけど。
悪い弟も捨てたもんじゃない。
「お、おい! 言ってる傍からなんで浮気するんだ!? 私を抱きしめてないとダメじゃないか!!」
ルーナが涙目になりながらしがみついてくるので、言われたとおり抱きしめてやった。
後ろからカンナさん、前からルーナ。
なんと素敵なサンドイッチなんだろう。
「……ついつい忘れがちですけど、カンナさんってあのイスマンメルなんですよね……そりゃ、王都に詳しいですよ、はは……」
ミレイがそんな事を言いながら、ガクガクと震えていた。
理由はよくわからない。
とにかく、カンナさんの案内のもと、俺たちはアンの姉を尋ねることになった。
■あとがき
通貨を日本円換算した場合は以下のようになります。
金貨→10万円
銀貨→1000円
銅貨→10円
「あうー、痛い」
目の前では、上半身を肌蹴たルーナが目に涙を浮かべている。
その頭には立派なたんこぶが出来ていた。
「あなた達は、朝っぱらからなんて格好で寝ているの!? お腹冷やしちゃったらどうするのバカ娘!?」
寝ぼけ眼をこすると、鬼の形相をしたセレナが立っていた。
どうやら俺たちはセレナの拳骨を食らったらしい。
「だいたい、小さな子もいるのよ!? 少しは気を使いなさい?」
セレナの足元にはアンがいた。
セレナのスカートをギュッと掴んで、指を加えながら俺とルーナを見つめている。
おっぱい丸出しのルーナは確かに教育上よろしくない。
というか、俺は昨日ルーナにこんな格好をさせたまま寝てしまったらしい。
なんという失態だ。
アヘらす前に寝てしまうなんて。
「……寝ちゃって悪かったな」
とりあえず、そう謝ってみると、ルーナはニコっと笑ってくれた。
「ううん。いいんだ。ああいうのもたまにはいい。お前を抱きしめながら、私も寝ちゃったし。……でも、今夜は最後までして欲しいな?」
ルーナはそんな可愛いことを言う。
今夜と言わずに今すぐに最後までしてやってもいいのだが。
「……いいから早く胸を仕舞いなさいよ。……というか、お前、なんか乳首肥大化していない?」
「ええ!?」
注意している最中に気づいたらしいセレナの言葉に、ルーナが驚きの声を上げる。
乳首肥大化?
そうだろうか。
朝の爽やかな日差しに照らされたルーナの乳首をまじまじと見る。
たしかに大きく、というか長くなっている気がする。
乳輪はそうでもないが、乳首に関して言えば、俺が今まで抱いた女の中で一番デカいかもしれない。
毎日、吸ったり噛んだりしたせいだろうか。
まだ綺麗な桜色をしているのがせめてもの救いだ。
「……悪いな。俺が毎日噛んだせいかもしれない。確かに肥大化してるわ」
「お前まで言うのか!?」
ルーナは不安そうに自分の乳首をツンツンする。
その光景はちょっとエロかった。
「……貧乳のくせに乳首だけデカいなんて……どんどんエロくなっていくわね。お前。そろそろコウにも引かれるわよ?」
「ええええ!? そ、そうなのか? こんな大きな乳首をした女は嫌いか?」
セレナの言葉にルーナはあっさりと泣きべそをかいていた。
デカい乳首が嫌いかって?
この馬鹿!!
俺はその問いに答える前に、ルーナをガバッと抱きしめた。
「俺はデカい乳首が大好きだ!!!」
そう叫ぶと、ルーナははっとしたように息を飲む。
「……だ、大好き? わ、私も! 私もお前が大好きだぞ! えへへ」
ルーナが嬉しそうに抱きしめ返してきた。
いや、好きなのはルーナじゃなくて乳首だからね?
ちゃんと俺の話を聞けよと思うのだが。
というか。
「……悪かったな。これからはもっとお前の乳首を優しく扱うからな」
「ううん。いいんだ。お、お前に噛まれるの嫌いじゃないし。……というか気持ちいいし。だ、だいたい、コレはもうお前のものだ。お、お前の好きにしてくれていいんだぞ?」
そう言って、ルーナは自分の乳房を掴んで、俺に差し出すようにする。
ツンとした例の乳首が俺の方を向くので、俺は思わず生唾を飲み込んだ。
知ってたけど、そうだったのか。
コレはもう俺のものだったのか。
それならば。
「……じゃ、じゃあ早速食べさせてもらおうかな」
その言葉を聞いたルーナは熱に冒されたように顔を真赤にして、目をとろけさせた。
「……う、うん。たんと召し上がれ?」
そして、ルーナのおっぱいにしゃぶりつこうとして。
「ごふっ!!」
「あうっ!」
再びセレナの拳骨を食らっていた。
「だから、小さい子が見てるって言っているでしょう!? この子がお前みたいなエロ娘になっちゃったらどうするの!?」
セレナの言うことはごもっともなのだが。
そもそも乳首の話を始めたのはセレナじゃんと思うのだ。
「……ねえねえ、おっぱいは食べ物なの?」
アンはセレナのスカートをクイクイしながらそんなことを言う。
どう考えても、教育に良くないので、俺はそっとめくり上げたルーナのシャツを下に戻した。
「食べ物じゃないわよ。あなたはあのお姉ちゃんみたいになっちゃダメよ?」
優しい口調でアンを諭すセレナ。
アンはセレナの言葉を聞きながら、ルーナに純真無垢な瞳を向ける。
ルーナはしゅんとしながら小さくなっていた。
「でも、わたしまえ見たよ。お兄ちゃんにセレナお姉ちゃんのおっぱいも食べ――」
何か不穏な事を口走ろうとするアンの口をセレナがさっと塞ぐ。
「お、おほほ、何を言っているのかしら、この子は」
セレナが焦りながら誤魔化す。
多分、外でセレナを抱いているところを見られてたんだろうな。
ホント子供の教育に悪い村だよ。
これからは気をつけなければ。
「……もう色々と手遅れだと思いますよ」
いつの間にかやってきていたミレイが呆れながら言った。
まあ、ミレイを抱いているのも度々カー坊に覗かれてたしな。
ちなみにミレイは、ホテルの人に朝ごはんを用意してもらったので、呼びに来てくれたらしい。
まあ、教育問題みたいな難しい事を考えるのは止めて、飯にするか。
「お、おい! さっきアンは何を言おうとしたんだ!?」
ルーナが気色ばんでいたが、もうその話題は終わったのだ。
空気を読めと言いたい。
皆で朝食を食べながら、今後の予定について話をする。
「この部屋にはいつまで滞在できるんですか?」
「明日までだったかな」
パンを千切りながらミレイがそんなことを聞いてくるので、昨日王宮で確認しておいた話を答えておいた。
「じゃあ、結構ゆっくり観光できますね。服でも買いに行きましょうか。メグさん」
ミレイは嬉しそうに隣に座ったメグに目を向ける。
「は、はい! 行きたいです……けど、わたしお金もってないです。奴隷なので」
一瞬、喜色を浮かべたものの、メグがしゅんとうなだれる。
だから、奴隷とか言うなっつーに。
というか、金なら。
「昨日、王様が金をこの宿に送っといてくれるって言ってたけど、届いてないか?」
この前の戦争のご褒美でもらった金だ。
たしか金貨1000枚だったかな。
「……ああ、それなら」
ミレイがなぜか顔を青ざめさせながら、部屋の入口に目をやる。
そこには大きな宝箱が置かれていた。
「昨日、兵隊さんたちが重そうに運んできてくれました。ちょっと中を覗いてみたら、信じられないような大金が入っていたので、そっと閉じましたが……」
ミレイはその金額にびびったらしい。
相変わらずミレイはビビリだ。
というか、金貨1000枚って日本円にしていくら位なんだろう。
何度かこっちの世界で買い物をして感じた感覚では、金貨一枚は数万円から十万円だと思う。
仮に金貨一枚、十万円だとすると。
1000枚って、億いってるんじゃ……。
い、いや、やめよう。
深く考えると、ミレイ以上にビビってしまいそうだ。
とにかく。
「買い物行くなら、あそこから金は持っていっていいからな。なんでも好きなものを買え」
とりあえず、その場にいる全員に向けて言ってみた。
この場にいるのは俺の女だけだ。
金なんていくらでもやる。
もしもこの場にピートとカー坊がいたら、あいつらにだけは銅貨をちゃりんと一枚ずつ投げる所だった。
変な差別をしなくて済んだ分、あいつらを村に忘れてきてホントに良かったと思う。
俺の言葉に、皆、一様にぽかんと驚いていたが、とりわけメグの驚きが大きかった。
「そ、そんなコウさまのお金なんてつかえません! だって、わたし奴隷――」
「メグ!」
何度も注意したのに、メグが再び自分を奴隷と言おうとしたので、ちょっと強めにメグの名前を呼んだ。
俺はメグを奴隷扱いするつもりはない。
メグは俺に熱のこもった目を向けてから、やや涙ぐむ。
そして、満面の笑みを浮かべた。
「……そうでしたね。もうわたしはコウさまのお嫁さんでした!」
いや、そこまでは言ってないけど。
こんな大勢の前で困るなー。
なぜだろう。
メグの背後でせっせと爆弾に点火しているスタンドが見える。
「もー! コウさまがいつまでたっても、わたしを抱いてくれないのがわるいんですよ!? わたしはやくコウさまの赤ちゃんうみたいです」
メグが嬉しそうに机をパンパンと叩く。
だ、だからそういう際どいこと言うなってば。
――しゃくしゃく。
サラダを齧りながら、ルーナが無表情で俺を見つめていた。
なんだこのリアクション。
その顔と咀嚼音がなんか怖いんだよ。
「……メグ、こいつの子供は私が産むから、お前はそんなこと気にしなくていいんだぞ?」
ルーナは引きつりながらも、そう言ってメグに笑顔を浮かべた。
その瞬間、俺は立ち上がってメグのもとに急ぐ。
「あ、はい! もちろん、順番はまもりますよ! わたしはルーナさんの後でいいです。順番はだいじですからね! でも、この前、コウさまがわたしのこともグチョグチョって触って――むがむがっ」
寸前のところでメグの口を塞ぐことに成功した。
離れた場所に座っていたので、危なかった。
というか、ふざけんな。
「……おい、グチョグチョなんて触ってねえだろ。お前の擬音は紛らわしいんだよ」
とりあえず、小声でメグを注意する。
「えー? わたしグチョグチョでしたよ。コウさまとってもお上手だったので。……というか、ギオンってなんですか?」
人がせっかく小声で話しているのに、メグは全く空気を読まずにデカい声で話す。
このバカ!
そんな声で話したら……。
「……お前、メグをグチョグチョになるまで触ったのか?」
ほ、ほら、ルーナさんがすごい目で睨んでるじゃないか。
ルーナだけじゃなく、セレナもミレイも俺を睨んでいた。
「い、いや、触ったって言うと語弊があるんですけど、肘が触れるくらいだったんじゃないかな。ほ、ほら、俺って上手いから肘だけでも、女はグチョグチョになるっていうか」
そんな苦しい言い訳をしてみたが、セレナとミレイは怪訝な顔をしながらも納得したように頷いていた。
あいつら俺をなんだと思ってるんだろうか。
ルーナだけは目に涙を貯めながら、ツカツカと歩いてくる。
「ううー! 例え肘だけだろうと、私以外の女に触っちゃダメだ! なんですぐに浮気するんだ!? もう、今日はお前から離れないからな!? ずっと抱きついてお前が浮気しないように監視してやる!」
そう言いながら、ルーナがぼすんと抱きついてくる。
柔らかくて素敵な感触なので俺はいいのだが。
これじゃあ、どこも行けないじゃないか。
軽く歩いてみると、ルーナが抱きついたままズズッとついてきた。
歩き辛いわ。
まあ引きこもりなので、どこにも行かなくていいのだが。
皆が買い物しているのを、ホテルでルーナを抱きながら待っててもいいか。
そんな事を考えていると、口いっぱいにパンを頬張ったアンと目が合った。
そういえば、すっかり忘れていた。
アンを姉の所に連れてってやる約束したんだった。
「アン、お姉ちゃんちの場所はわかるのか?」
ルーナを引きずりながら聞いてみると、アンは嬉しそうに頷く。
アンは全く足のついていなかった椅子から勢い良く飛び降りると、てててと走っていって、小さなリュックから一枚の紙切れを取り出す。
再びてててと戻ってきたアンは俺にその紙切れを差し出した。
紙切れにはミミズ文字が書いてあった。
恐らくヴァンダレイジジイが書いたアン姉の住所だろう。
ただ残念な事に俺はミミズ文字を読むことが出来ない。
しかし、アンの前で文字が読めないとは言い辛い。
アンに蔑んだ目で見られたら、俺は生きていけないからだ。
「……ちょっと王都は詳しくなくてな、この場所がどこかはわからないなー。い、いや、別に文字が読めないわけじゃないんだぞ? ホントだぞ?」
「……おねいちゃんにあえないの?」
俺の見苦しい言い訳に、アンはしょぼんとしながら指をくわえる。
うう、罪悪感に胸が張り裂けそうだ。
「まったくコウくんは仕方ないですね。ここはお姉ちゃんに任せて下さい。王都は私にとって庭のようなものですので」
得意げな表情をしたカンナさんが俺の背中越しに紙切れを覗き込む。
背中にカンナさんの豊満な胸が押し当てられて、俺の罪悪感は一瞬で吹き飛んでいた。
姉の乳は偉大だ。
「あー、ここならわかりますよ。結構近くですね。というか、かなりの高級住宅地ですよ。アンちゃんのお姉さんすごいですね。私が案内してあげますからね」
そう言って、カンナさんは俺の背中越しにアンに微笑む。
「ありがとう! カンナお姉ちゃん!」
アンは嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
可愛い。
「というか、なんでカンナさんそんなに王都に詳しいんですか?」
ふと気になったので聞いてみた。
あんな辺境の森に住んでいたのに、王都に詳しい意味がわからない。
「昔、お姉ちゃんにも色々あったんですよ。ふふふ。……というか、コウくん? カンナさんじゃなくてお姉ちゃんと呼んで下さいって言ってるじゃないですか! 悪い弟にはこうしてやりますよ!?」
そう言ってカンナさんはぎゅーと首筋に抱きついてくる。
胸も一緒に押し付けられるので、物凄く楽しいんですけど。
悪い弟も捨てたもんじゃない。
「お、おい! 言ってる傍からなんで浮気するんだ!? 私を抱きしめてないとダメじゃないか!!」
ルーナが涙目になりながらしがみついてくるので、言われたとおり抱きしめてやった。
後ろからカンナさん、前からルーナ。
なんと素敵なサンドイッチなんだろう。
「……ついつい忘れがちですけど、カンナさんってあのイスマンメルなんですよね……そりゃ、王都に詳しいですよ、はは……」
ミレイがそんな事を言いながら、ガクガクと震えていた。
理由はよくわからない。
とにかく、カンナさんの案内のもと、俺たちはアンの姉を尋ねることになった。
■あとがき
通貨を日本円換算した場合は以下のようになります。
金貨→10万円
銀貨→1000円
銅貨→10円
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