ちょいクズ社畜の異世界ハーレム建国記

油揚メテオ

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第四章 竜騎士編

第134話 高級ホテル

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 王都上空に差し掛かったフェルさんは、王都を恐怖のるつぼに叩き落とした。

 突然現れた巨大なドラゴンに、王都の人々が悲鳴を上げている。
 子供は泣きわめき、大人は腰を抜かしている。
 怪獣映画さながらの光景だった。
 そりゃそうだと思うのだが、どうしよう。
 まあ、降りるしか無いのだが。

 とりあえず、降りれそうな広場を探して、フェルさんに着陸してもらった。
 フェルさんから降りるなり、すぐさま衛兵らしき人たちが駆けつけてくる。
 これだけ王都を騒がせてしまったのだ。
 なんか怒られる気がする。
 なので、とりあえずルーナの背中に隠れた。

「コウ・アサギリ卿ですね?」

「お、おう」

「お待ちしておりました!!!」

 数人の衛兵さん達が、突然、ビシっと直立不動になる。
 え、何この反応。
 怒っている感じではない。

「突然、デカいので乗り付けちゃって悪かったね」

 とりあえず、そう謝ってみた。

「いえ! 全然構いません!」

 衛兵さんはビシっとした姿勢のままそう言った。
 良かった。
 構わないらしい。
 周囲で腰を抜かしている人々を見ていると、構わなくて良いのだろうかと思うのだが。

 衛兵さんは俺を一度も見る事なく、ひたすら上の方に目線を固定している。
 対人恐怖症の俺には有難かったが、なぜそんな反応をするのかわからなくて困惑してしまう。
 軍人が上官に対するような反応だからだ。
 微妙に汗ばんでいるようにも見える。
 何をそんなに緊張しているんだろう。
 俺が貴族だからだろうか。
 ただの元底辺SEなのだが。

「早速、今夜のお宿にご案内させて頂きます!」

 衛兵さんがそう言うので、ついていくことにした。

(主ヨ、我ハドウスレバ……)

 脳内にフェルさんの不安そうな声が響く。

「お前は、どっか邪魔にならない所で小さくなってろ」

(承知……)

 フェルさんは寂しそうにノッシノッシと歩いていった。
 相変わらず可愛くはない。


 論功行賞について知らせてくれた使者は、王都での宿は、王宮側で用意してくれると言っていた。
 なので全くのノープランで来たのだ。
 以前のようにフィンデル子爵家に厄介になってもいいと思ったのだが、貴族になった以上、他の貴族の家に泊まるのはダメだとルーナに言われてしまった。


 衛兵さんに案内してもらった宿は、重厚な雰囲気の古代ギリシャの神殿のような建物だった。
 中に入ると、品の良いフロントがあったので、ここがホテルなのだと判る。

「しばらくしたら王宮から迎えのものが来ると思います。それまでは、ここでおくつろぎ下さい」

 衛兵さんはそう言い残すと、ビシっと拳を胸に当てて去っていった。
 ルーナ曰く、アレはこの世界の敬礼らしい。

 衛兵さん達と入れ替わるように、フロントの奥から上品な老紳士がやって来る。
 多分、ホテルの従業員だろう。
 老紳士は心なしか青ざめているように見えた。

「アサギリ様。大変、申し訳ございません。お連れ様の人数を把握出来ておりませんでしたもので、手狭な部屋しか用意できておりません」

 老紳士は、そう言って頭を深々と下げた。
 ふむ。
 さすがに8名で来たのはまずかっただろうか。
 多分ベッドの数が足りないだろう。
 まあ、全員俺のベッドで寝ればいいのだ。
 ベッドの数はあまり重要ではない。
 最低でも一個あればいいのだから。

「とりあえず、部屋を見せてもらおうか」

「はっ、早速ご案内させて頂きます」

 そして、老紳士に連れてこられたのは、ホテルの最上階の部屋だった。
 綺羅びやかな装飾。
 ふかふかの絨毯。
 窓から覗く景色は王都を一面に見渡せる絶景だった。
 内部屋の数は10個以上はある。
 中央にある部屋には、オブジェとして噴水がついていた。

 あ、あれ、手狭な部屋って聞いたんだけど……。
 あの老紳士、馬鹿なのかな。

 俺たちが案内された部屋は、テレビで紹介されるようなセレブ御用達の部屋といった感じだった。

「こ、ここ、王都で最高級の宿の最高級のお部屋ですよ……。外国の王侯貴族が泊まっちゃうような、一泊金貨ウン十枚の……」

 ミレイが真っ青な顔でビビりまくっていた。
 なんでそんな部屋に俺達が案内されたんだろうか。
 全然心当たりがないんだけど。

「うわー! このベッドふかふかだよっ!」

 アンが別の部屋にあるベッドの上で飛び跳ねている。
 ちょっと見渡しただけでも、全員分のベッドはゆうにあった。

「申し訳ございません。こちらは3、4名様用のお部屋となっております。8名様では手狭な思いをさせてしまうと思われますが……」

 老紳士が恐縮しながら、そう言った。
 何を言っているのか全然わからない。
 ベッドも部屋数も十分足りているように見えるのだが。
 一体どういう計算をしたら、この部屋が3、4名用になるんだ。
 算数できないのだろうか。

「いや、いいよ。この部屋で全然満足だから」

「はっ、ありがとうございます」

 老紳士は恐縮しながら頭を深々下げると、部屋から去っていった。
 何か用がある時は、備え付けの鈴を鳴らせば誰かが飛んで来るらしい。
 ホント至れり尽くせりだ。

「……なんでこんな高級宿が用意されているんだ。こんな部屋、私でも数回しか泊まったこと無いぞ」

 俺達だけになると、ルーナがそんな事を言った。
 数回は泊まったことあるのかよ。
 さすが公爵家のご令嬢は言うことが違う。
 ちなみに、高級宿が用意された理由は俺にもわからない。

「とりあえず、今回の戦であなたが立てた戦功を聞きましょうか。多分、それが原因だから」

 そんなことを聞いてきたのはセレナだった。
 そういえば、今回も戦争の話は女達にはしていなかった。
 ルーナにはちょろっと話したが触りだけだ。

 なので、今回は出来るだけ詳細に戦争の話をしてみた。
 たどたどしくも、敵の数なんかを具体的に話す。

「お前が一人で数万のオークを全滅させたように聞こえるんだが……」

 俺の話を黙って聞いていたルーナが、最後にそんな事を呟く。
 俺がっていうか、やったのはフェルさんだが。

「……数が、ちょっと半端ないですね。オーク百体斬りの英雄とかなら伝説で聞いたことがありますが……」

 ミレイが呆れながら言った。
 百体で伝説とか。
(笑)をつけてしまいたくなる。
 百体くらいならフェルさんじゃなくても倒せそうだ。
 実際、それくらいは魔法で屠った気がするし。
 ゼービアさんにいい格好したくて。

「まあ、あのドラゴンならそれくらい出来るでしょうね。世界に五匹しかいない純色の古龍(エンシェントドラゴン)の一匹でしょう? あれ」

 セレナはそう言いながら、腕を組んだ。
 世界にはフェルさんクラスが五匹もいるのだろうか。
 なにそれ怖い。
 世界には危険が溢れているので、これからも引きこもろうと固く誓った。

「それにしても、呆れた戦功ね。七百年生きている私も聞いたことがないわよ。こんな高級宿をあてがわれたのも納得だわ」

「オークを数万体撃破ってどんな報奨になるんだ?」

「……さあ? いきなり伯爵様とかになってもおかしくはない気がしますけど」

「……コウさま、テーブルの上にかざってあるフルーツって食べていいんでしょうか?」

 セレナ、ルーナ、ミレイが難しい顔をして相談する中、メグが脈絡のないことを言い出す。
 空気を読めと言いたくなるが、癒やされたのでメグの頭を撫でた。
 なんでも食べなさいと言っておいた。

「何にせよ、凄まじい報奨になるだろうな。うう、やっかみが凄そうだ……」

 ルーナが頭を抱えている。
 なんか申し訳ないですな。
 全部悪いのはフェルさんなのだが。
 ルーナは俺に真剣な眼差しを向けた。

「私に任せろ。他の貴族の嫉妬は、私が上手く受け流してやる。それが妻の役目だ!」

 そう言って、ルーナは胸をぷるんと張った。
 当然の如く揉んだ。

「…………い、今、真剣な話をしているんだ。そういうのは夜まで待て」

 ルーナは頬を少し赤らめていた。
 夜まで待てと言われると、この場で押し倒したくなるこの現象は何と呼べば良いのだろう。

「とにかく、私はドレスを着てくる。お前もちゃんと着替えておくんだぞ?」

 そう言い残して、ルーナは席を立つ。
 そういえば、しばらくしたら迎えにくるって衛兵さん達が言ってたな。

「ねえ、偉そうな事を言っているけれど、お前さっき答えるのに間があったわよ? エロいのもいい加減にしなさい?」

 そんな事を言いながらセレナもルーナについていった。

「う、うるさいな! エロいのは私じゃなくてコウの方じゃないか! まったく、あいつが私を好きすぎるのも、困ったものだな。えへへ」

「……調子に乗るのもいい加減にしなさい? 喧嘩を売っているのなら買うわよ?」

 二人でぎゃーぎゃー喧嘩をしながら、別の部屋へと消えていく。
 こうして見ると、仲が良いように見える。
 ルーナとセレナの関係はいまいちよくわからない。

 二人の着替えを手伝うためにカンナさんもついていった。

 まあ、俺も着替えるか。

「コウ様、お着替えお手伝いしますよ? はあはあ」

 フィリスがそんな事を言ってくれるが、荒い息遣いが怪しかったので断っておいた。
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