ちょいクズ社畜の異世界ハーレム建国記

油揚メテオ

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第四章 竜騎士編

第126話 第3次魔族侵攻戦

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 純白のドラゴン、フェルなんとかさんの背中に乗って大空を駈ける。
 雲を真下に眺めながら、無限に拡がる大空を飛ぶのは気持ちいい。
 めちゃくちゃ寒いけど。

 王宮から魔族侵攻の兆候ありとの報せを受けたのは10日程前だった。
 そういえば、そろそろ前回の魔族侵攻から3ヶ月経つ。
 この前、変則的な大侵攻があったので今回はないと思っていたのだが、普通に攻め込んできたらしい。
 魔族の物量はどうなっているんだろうか。

 ドラゴン蛮族達にボコボコにされた王国軍の傷はまだ癒えておらず、領主軍が今回の主力らしい。
 前回の戦争を思い返すと、領主軍は足止め程度にしかなっていなかった。
 とても主力が務まるとは思えない。
 毎回の事ながら、今回の戦争もそこはかとなく不安だ。

 ちなみに今回、うちの村から参戦するのは俺とドラゴンだけだ。
 ピートは蛮族戦で足手まといにしかならなかったので、今回は置いてきた。
 今頃、悔しがりながらヴァンダレイジジイに稽古をつけてもらっているはずだ。
 ついでにヘタれた根性も叩き直して貰うと良い。
 好きな女を他の男に譲るとか。
 ヘタレにも程がある。
 しかも、レティーお嬢様もピートに気があるというのに。
 なんで押し倒さないんだよ、あのモブ野郎!!
 俺は未だにピートに対して怒っていた。


 今回の魔族侵攻戦は、前回と同じように西の国境で行われるそうだ。
 毎回オークに攻められているあの場所は、フレジア平原と言い、かつては豊かな穀倉地帯だったらしい。
 今では度重なる戦争で荒れ地となっているそうだが。
 フレジア平原までは、俺んちから徒歩で10日程の距離がある。

 なので、王宮からの報告を受けてからすぐに出発しなきゃいけなかったのだが、フェルなんとかさんが本気になれば半日で着くとか言うので、俺はゆったりとルーナ達を抱きまくって英気を養うことが出来た。
 戦の前は昂るというが、皆、いつもよりすごいと涎を垂らして喜んで? くれた。

 もちろん、ただ女を抱きまくっていたわけではない。
 先日、受け入れたばかりの新規住民の住居もあらかた完成させることが出来た。
 新規住民は全部で19世帯で、一応、全ての家族の要望を聞いて家を建ててみたが、一人だけどうしても不満そうなお父さんがいた。
 あれはなんだったのだろう。
 コミュニケーションを取るのが苦手なので深くは突っ込まなかったが。

(主ヨ、ソロソロ着クゾ)

 脳内にドラゴンのフェルさんの声が響く。
 もうついたのか。
 本当に家を発ってから半日くらいしか経っていない。
 金持ちがプライベートジェットを持つ気持ちがわかった。



 フレジア平原の上空でフェルさんがバサバサと翼を羽ばたかせて滞空する。
 遥か下方を見下ろすと、わらわらと王国軍が集結している所だった。
 そこから1キロくらい離れた場所にオーク達が同じく集結している。
 まだ戦端は開かれていないらしい。
 余裕で間に合ってしまった。

 というか、こうして上から俯瞰するとよくわかるのだが、王国軍とオーク共の戦力比がやばい。
 オーク共は王国軍の3倍くらいいるように見える。
 物量で圧倒的に負けている。
 うーん。
 どうするつもりなんだろう。
 とりあえず、着陸して王国軍に合流するか。
 ただその前に。

「お前、あのオーク共殲滅できるか?」

 今現在集結中のオーク共は以前フェルさんが薙ぎ払ったオーク共よりだいぶ多く見える。
 いくらフェルさんでもあの数はキツイんじゃないだろうか。

(愚問!)

 脳内に響いたフェルさんの声は、バカにするなとばかりに気色ばんでいた。
 そのまま、フェルさんが上体を起こす。
 そして、きゅいーんと何かをチャージする音が聞こえてきた。
 え、何しようとしてんの?

「ちょ! おま――!」

 慌てて静止しようとするが、間に合わず。
 ドラゴンは濃密な魔力の閃光を放った。

 閃光は以前と同じようにオーク共の集結地点に着弾すると、大地をえぐるように一閃する。
 一時の不気味な静寂の後。
 目が眩むような爆炎。
 蒼穹を穿つ火柱。
 圧倒的な熱量。
 そして、立ち上るキノコ雲。

「お前! 何勝手に打ってんだよ!?」

(……殲滅シロトイウ命令デハナカッタノカ?)

「ちげえよ! 殲滅できるか聞いただけだろうが!? 何勝手に殲滅してんだよ!?」

 ゴゴゴとキノコ雲が立ち上る場所は、大地が真赤になるほど灼熱している。
 多分、オークは一匹も生きていない。
 敵だからそれでいいのだが。
 だが、勝手にやられると本気で困る。
 ひとりでに発射される核ミサイルのようなものだ。
 世界滅亡の予感しかしない。

(……勘違イシテシマッタ。スマナイ、主ヨ。……怒ッテイルカ?)

 フェルさんは俺の機嫌を伺うようにくるるーと喉を鳴らす。
 可愛くねーから!!!
 とりあえず、乗っかっているフェルさんの背中をバシッと叩いた。

(……痛イ)

 うるせ! 罰だ!
 俺は腕を組んで、怒りを露わにしてみた。

「…………」

 ふと思った。
 これでフェルさんが逆ギレしたら俺はこの世から消滅するかもしれない。
 背筋が冷たくなる。
 セレナですら苦戦するとか言ってるドラゴン相手に俺はなぜこうも高圧的な態度を取れるのだろう。
 俺って結構すげえな。
 自分で自分を褒めてやりたくなった。

(スマナイ、主ヨ、本当ニスマナイ)

 フェルさんは必死に何度も謝っているので、多分逆ギレは無さそうだが。
 ノリコさんの神器マジでチート。



 とりあえず、集結中の王国軍の元に降下していく。
 中世レベルとは言え、王国軍はれっきとした軍隊だ。
 一兵士である俺が勝手に、先制攻撃を加えるって、軍隊的にどうなんだろう。
 軍人にとって命令は絶対だって、ばっちゃが言ってた!
 ……絶対に怒られる気がしてならない。
 まあ、悪いのはフェルさんであって俺ではないのだ。
 いざとなったらフェルさんを売ろうと思う。

「うおおおお! アサギリ卿!」

「アサギリ様ー!!」

「あんたは軍神だ! アサギリ卿ー!」

 王国軍の兵士たちが大歓声を上げていた。
 まさかのアサギリコールまで沸き起こる。
 どうしよう。
 すごく下りづらい。

 とりあえず、地面すれすれをフェルさんに旋回してもらう。
 兵士たちは上空の俺を見ながら、剣や槍を振り回している。
 その顔は皆、一様に晴れやかな笑顔だ。
 底辺サラリーマンだった俺にとって、こんな大勢のニンゲン達にこんな顔を向けられるのは初めての経験だった。
 王国軍はざっと見た感じ数万はいる。
 数万人が俺に歓声を向けるとか。
 もはや対人恐怖症じゃなくたって漏らすレベルだ。

 兵士たちに混じって見知った顔も何人かいた。
 いつもの大将軍や、王宮でルーナに紹介された貴族たちだ。
 王宮の貴族たちの顔なんてほとんど覚えていないが、なんとなく見覚えはある。
 それに、紺色の髪の美女の姿もあった。
 ゼービアさんだ!
 ゼービアさんはぽかんとした顔で、上空を旋回する俺を眺めている。
 全力で手を振ってみた。
 それに気づいたゼービアさんは、わずかに動揺した後、そっぽを向いてしまう。
 その顔は上から見ても明らかなほど真っ赤になっている。
 うーん、処女臭い。
 早く貰ってやらねば。

 とはいえどうしよう。
 今すぐ下りてゼービアさんを口説きたいところだが、この大歓声の中に降りる勇気はない。

「おい、あの美女だけをかっさらう事はできるか?」

 急降下してゼービアさんだけをピックアップできないだろうかと思ってフェルさんに聞いてみた。

(……他ノ人間ドモヲ蹴散ラシテ良イノナラ出来ル)

 うーん。
 正直、ゼービアさん以外の人間はどうでもいいが、さすがにまずいかな。
 今回は諦めるか。

 チラリとフェルさんがやらかした爆心地に目をやる。
 まだ煙が立ち込めているが、焼け焦げた大地に生命の気配はない。
 もう今回の戦争は完全勝利でいいだろう。

 もう既に勝手に先制攻撃という重大な命令違反を犯しているので、こうなったら勝手に戦線離脱もしちゃうかと思った。
 どうせ後で怒られるのだ。
 ゼービアさんのせいでムラムラしてしまったので、帰ってルーナを抱こうと思う。

 そんなわけで、俺は一度も戦場に降りることなく、そのまま飛び去った。
 今回の戦争は楽で良かった。
 毎回こうだと良いな。
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