ちょいクズ社畜の異世界ハーレム建国記

油揚メテオ

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第四章 竜騎士編

第124話 レティーお嬢様の依頼 ③

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 朝、目が覚めるとすぐ隣にはルーナ、ではなく筋肉のむさい顔があった。
 なんという不快な目覚めだろう。
 ルーナが恋しくてたまらない。

「ふいー! おはようございます。アサギリさん!」

 同じく目覚めたらしい筋肉は寝起きだと言うのにデカい声だった。

「お、おはよう」

「よく眠れましたかな? 私はぐっすりでしたよ」

 昨夜は筋肉のいびきがうるさくて全然眠れなかった。
 睡眠耐性がなかったら殺意が芽生えていた所だ。

「そういえば、ピートくん起こしに来ませんでしたな。見張りの交代しなくてよかったんでしょうか」

「……おはよう」

 そんな時、目の下に隈を作ったピートがやってきた。
 もしかして、寝ずに見張りをしていたのだろうか。
 というか、悩みすぎて眠れなかったのかな。
 若いですな。

 その後は、レティーお嬢様が準備するのを待って、朝食を食べた。



 農民反乱の現場についたのは、お昼を過ぎた辺りだった。
 木板で囲われた村の入口に廃材などを使ったバリケードが設置されている。
 村をまるごと封鎖して立てこもっているらしい。
 村人全員で反乱を起こしたのだろうか。
 村の中には、20軒いかないくらいの家が見えた。
 規模的にはかなり小さい村だ。

 こんな村が反乱を起こした所で、結果は見えている気がするのだが。

 まあ、嫌なことはさっさと終わらせて早く帰ろう。

「とりあえず、村を焼き討ちにすればいいですか?」

 レティーお嬢様にそう言いながら、手のひらに小さな炎を生成する。
 この程度の村、MP枯渇に陥ることなく全滅させられる。

「……待って下さい。まずは私が説得してみます」

 ゴクリと生唾を飲み込んだレティーお嬢様がバリケードに近づいていく。

「れ、レティーお嬢様、危ないですよっ!」

 ピートが慌ててついていくので、俺と筋肉も後を追った。

「わ、私はレティシア・フィンデルと申します。フィンデル子爵家の長女です。ど、どうか私の話を聞いて頂けませんか?」

 ビクビクしながらも、レティーお嬢様が精一杯声を張り上げると、バリケードの中がざわつき始めた。
 春の賃上げストライキ中に社長の娘がやってくるようなものだ。
 そりゃざわつくだろう。
 しかし。

「ふ、ふざけるな! 娘が来て何になる!? フィンデル子爵が直接来い!」

 そんな声が聞こえると同時に、石が飛んでくる。
 石は全く見当違いの方向に飛んでいった。
 バリケードのせいでこちらが見えていないので、正確に狙われる事はないだろうが、万が一レティーお嬢様に当ってしまっては大変だ。

「レティーお嬢様、危ないです」

 ピートがレティーお嬢様を庇うように立つ。

「み、みなさん、落ち着いて下さい! どうか、私の話を……」

「うるさい! お、オラたちはもう我慢の限界だ!!」

 石がバラバラと飛んで来る。
 その中の一発が、レティーお嬢様を庇うピートに直撃する。

「うぐっ!」

 まあピートならセーフだ。
 たんこぶが出来ていそうだが。

 しかし、うーん。
 とても、話し合いなんて出来る雰囲気ではない。

 とりあえず、バリケードに対して《火形成》を念じる。

 ゴウっと音を立てて、バリケードが一瞬で炎上し、消し炭になった。

「ひ、ひい! 魔術師(メイジ)だ!」

 消し炭になったバリケードの向こうで、数人の男たちが腰を抜かしていた。
 思っていたよりも人数が少ない。
 というか、当然だけどニンゲンが出てきてビビった。
 対人恐怖症が発動してビクビクしてしまう。

「……レティーお嬢様、お話を」

 これで少しは話しやすくなっただろうと思ったのだが、肝心のレティーお嬢様は胸の前で両手を祈るようにして俺以上にガタガタ震えていた。

「……こ、コウの魔法があんまり凄かったので、びっくりしちゃいました。そ、その、腰が……」

 腰を抜かしてしまったのだろうか。
 ビビるレティーお嬢様が可愛いくて押し倒したくなってしまう。
 とりあえず、腰を支えるだけで我慢するが。
 一応、尻は撫で回した。

「う、うぐっ」

 背後でピートがうめき声を上げる。
 これくらい我慢しろ。

「……お手数をおかけします。ちゃんと支えててくださいね」

 照れながらも、上目遣いでそう言うレティーお嬢様は、小さく咳払いをした。

「こ、こほん! そ、それで、あなた方はなぜ反乱なんて起こしたのですか?」

 レティーお嬢様の問いかけに、男たちはお互いに顔を見合わせている。

「……税として作物を殆ど持っていかれそうになっただ。そんなことされたら、おら達はこの冬を越せねえ」

「ちゃ、ちゃんと土地税も人頭税も払っただ。んだども、戦が大変だから更に追加で徴税するって……」

「そ、それが嫌なら女房と娘を差し出せって……。そんなことできるわけねえだ」

 男たちは口々に不満を言い出す。
 その表情は、怒っているというよりも、戸惑っている様に見えた。

 そういえば俺も同じようなことをフィンデル家の徴税官に言われた。
 それで、行きたくもない戦争に行く羽目になったのだ。

「そ、そんな追加徴税なんて話は聞いてませんが……」

 レティーお嬢様は狼狽していた。
 その顔は真っ青だ。

 レティーお嬢様は知らなかったらしいが、冬を越せなくなる程の徴税なんて異常だ。
 大体、女を差し出せば免除される理由がわからない。

 うーん。
 なんかこの反乱。
 非はフィンデル子爵側にあるような気がしてならない。

「……どうも見逃してやりたくなってしまうな」

 ふとそんな事を呟いてしまう。

「わ、私もそうは思いますが……」

 レティーお嬢様は複雑な表情を浮かべている。
 なぜそんな表情をするのかわからない。

 目の前で怯える男たちを眺める。
 バリケード越しにではわからなかったが、こうしてみると普通の農民に見える。
 とても反乱を起こすようには見えない。
 というか。

「なあ、反乱って具体的に何やったんだ?」

 ただバリ封してただけなら、次は止めてねで済む気がするのだ。

「……役人を殺害したと聞いています」

 レティーお嬢様は真っ青な顔で言った。
 え、まじで?
 殺人事件じゃん。
 さっきの複雑な表情の理由はこれか。
 殺人を犯してしまっては、おいそれと見逃すわけにはいかないのだろうか。

「……本当に殺っちゃったのか?」

 とりあえず、農民たちに聞いてみると、皆気まずそうな顔をした後、近くの木を仰ぎ見た。
 俺も一緒になってその木に目をやる。

 木には一人の人間がぷらぷらと吊るされていた。
 言うまでもなく既に事切れている。

 吊るされた役人は、リンチでもされたのだろうか、顔をパンパンに腫らしって……。
 その顔には見覚えがあった。
 いつかうちに徴税に来て、俺に徴兵令の赤札を叩きつけたオッサンだった。
 オッサンは苦悶の死顔でプラプラと風に揺れている。

 そうか。
 殺っちゃったのはこのオッサンか。
 まあ嫌なやつだったしな。
 ルーナやミレイを差し出せとか言っていた。
 今思い返しても腸が煮えくり返る。

「そ、そのお役人さんがあまりにも酷いことを言うもんだから、ついカッとなって皆でやっちまっただ。……それで、もう後には引けなくなって」

 農民の一人がばつが悪そうに言った。
 カッとなる気持ちはよく分かる。
 俺も殺ろうとしたもん。
 でも、あの時は反逆になるからやめろってルーナに止められて……。
 そうか。
 それが今のこの村の状況か。

「……ちなみに、反乱した場合の処罰ってどうなるんですか?」

 気になったので、レティーお嬢様に聞いてみる。

「このまま私の説得に応じて、反乱を辞めるのなら……村の代表者の、しょ、処刑と、村人にはしばらくの追加徴税でしょうか……」

 おどおどしながら話すレティーお嬢様に農民たちが反発する。

「そんな! 村長を処刑だなんて!?」

「しかも、結局税を取られるんでねえか!?」

 反発されたレティーお嬢様がビクビクと怯える。

「……それで、レティーお嬢様の説得が失敗した場合は?」

 農民たちがいまいち現状をわかっていないようなので、一応聞いてみた。

「…………は、反乱分子の殲滅……です」

 まあそうなるわな。
 男たちに見せつけるように、片手に小さな炎を生成してみた。

「ひっ……」

 先程バリケードを一瞬で消し炭にされたのが効いていたようで、農民たちは酷く怯えている。
 うーん。
 出来れば殲滅はしたくないんだが。
 なんかいい方法はないだろうか。

「……お待ちくだされ」

 その時、そんな嗄れた声が聞こえた。
 見れば村から小さな老人が歩いて来る。

「……村長」

 農民たちからそんな声が聞こえた。
 歩いて来る老人は村長らしい。

 村長はヴァンダレイジジイよりも更に年上に見える。
 全身が痩せこけ、腰は折れ曲がり、歩けるのが不思議なくらいヨボヨボしている。

「この村の長を務めます、ロビンと申します。フィンデル子爵のご令嬢であらせられるレティシア様と……失礼ですが、貴方様は?」

 村長はボサボサに伸び切った白髪の眉毛で覆われた目を俺に向けた。
 俺に自己紹介をしろという事だろうか。
 知らない人には個人情報を知られたくないのだが。
 というか、知らない人とは会話したくないのだが。

「……コウ・アサギリ」

 とりあえず、ボソボソっと言ってみた。
 すると、村長は口をあんぐりと開ける。
 何この反応。

「……なんと。貴方様が最近噂のアサギリ卿ですか。数万のオークを一瞬で壊滅させたという」

 噂になっているらしい。
 正確にはオークを壊滅させたのはうちのドラゴンなのだが。
 まあ俺の飼いドラゴンなので、俺の功績ということでいいだろう。
 ちょっと恥ずかしいが、満更でもない。
 帰ったらルーナに自慢しようと思う。

「……あのアサギリ卿が相手では抵抗は無意味でしょうな。……そこで一つお願いがあるのですが」

 そこで言葉を切ると、村長は地べたに跪いて頭を垂れた。

「どうか此度の反乱、この私めの首だけで許していただくわけには参りませんか?」

「そ、それは……」

 村長の申し出に、レティーお嬢様が答え辛そうにしている。
 レティーお嬢様がさっき言っていた条件は、代表者の処刑と追加徴税だ。
 村長の首だけではなく、徴税も必要だった。

「我が村は既に8割の土地税を納めております。これ以上は無理です」

 頭を垂れたまま、村長は呻くように言った。

「8割!? 土地税は4割のはずですよ!?」

 驚いたレティーお嬢様が上ずった声を上げる。

「……世の中は貴族のお姫様が思っているよりも、ずっと腐っております。それに、反乱を起こしたのは我が村だけではないと聞いておりますが?」

 村長はそんな皮肉を言って、レティーお嬢様を睨みつける。
 腐っているのは役人か、フィンデル子爵自身か。
 農民にとってはどっちでも同じだろうが。

 睨まれたレティーお嬢様はおずおずと後ずさっていた。
 その目には涙が浮かんでいる。
 そして、俺を振り仰いで言った。

「……ど、どうしましょう、コウ?」

 いや、俺に聞かれても。
 まあレティーお嬢様が可哀想なので考えるが。
 うーん。

「この村長の申し出を無視して、俺が魔法で村人全員跡形もなく燃やし尽く……」

 そう口に出した瞬間、その場にいた全員が凍りつく。
 まあ、最後まで聞け。

「……した事にして、村人全員で夜逃げするっていうのはどうだ?」

「すごい! すごくいい案です! それならお父様にも言い訳ができます。コウ、頭いいですね!」

 レティーお嬢様が両手を合わせて喜んでいる。
 ふふ、この様子なら後で乳を揉ませてくれるかもしれない。
 背後でピートが複雑な表情をしていた。
 わかっている。
 2、3回で揉むのは止めてやるから、そんな顔すんな。

「……逃げた所で、私どもには食いつなぐだけの食料がありません。逃げる場所に当てもありませんし……やはり、私の首だけでどうか……」

 しかし、村長にあっさり却下されてしまった。
 ジジイの首なんていらねえから。

 うーん。
 いい案だと思ったんだけどなー。
 食い物と逃げる場所か。

「…………」

 ……どっちも解決できる方法が一つだけ思い浮かんでしまった。
 俺んちなら、食い物はミレイ農園のお陰で余裕があるし、土地もまだまだ余っている。
 ただなー。
 人が増えるのはちょっと……。
 ニンゲン嫌いだし。

「……ちなみに、ここの村って全員で何人くらいいるんだ?」

「はあ、総勢で100名ほどになります」

 多いな。
 いや、昔住んでた中野区に比べたら全然少ないんだけどさ。
 うーん。

「……村人同士でBBQしたり、お花見したり、深夜にバイクに乗って大暴走したりしない?」

「……おっしゃられている意味がよくわかりませんが、我が村は祭事もなく、村人全員、物静かな性格でございます」

 村長はそう言って、何かを期待するような表情をした。
 薄々勘付いているらしい。

 まあ、物静かならいいかなあ。

「……う、うう、うちに来てもいいよ?」

 引きこもり的に絶対に言わないセリフすぎて上手く言えなかった。
 落ち着け。
 俺んちに来るわけじゃない。
 近所に引っ越してくるだけだ。
 家から出なければいいのだ。
 ……アオカンしづらくなるけど。
 …………やっぱ止めとこうかな。

「よ、よろしいのですか?」

 村長が喜色を浮かべる。
 そんなリアクションをとられると、やっぱなしとは言い辛い。

「……食べ物と住む家くらいは提供してやる」

「た、食べ物と家、でございますか……? な、なぜそこまでして頂けるのでしょうか?」

 村長は信じられないと言った表情をしていた。
 なぜと言われても。
 なぜだろう?

「……コウ。い、いえアサギリ卿。これは我が領の問題です。あ、アサギリ卿にご迷惑をかけるわけには……」

 レティーお嬢様が必死な顔でそんな事を言い出した。
 何を今更。

「そりゃあ、フィンデル家だけで解決できるならそれに越したことはないですが……。なんか他に良い案あるんですか?」

「……ないです。ごめんなさい」

 そう言って、レティーお嬢様は涙を流した。
 ついでに、不幸オーラも漂わせるのも忘れない。
 まあ、レティーお嬢様は悪くないんだろうけど。
 ホント苦労するお嬢様である。

「……とりあえず、脱出の準備してもらえます? すぐにでもここを出ましょう」

 村長にそんな提案をしてみた。
 すぐにここを出るのは、フィンデル子爵にバレたらまずいのもあるが、何よりも早く帰りたかったからだ。

「は、はい! すぐに村の者全員に声をかけてまいります」

 そう言い残すと、村長とバリケードを守っていた農民たちは慌てて村に戻っていく。
 ついでに、暇そうにしていたピートと筋肉を手伝いに向かわせる事にした。
 このままでは、この2人がついてきた意味が全くわからないからだ。

「……そ、そういえば、コウ? 100人の村人を引き連れて、コウの領地まで歩くおつもりですか? さすがに道中目立ちすぎて、お父様にバレちゃうんじゃないかと……」

 残されたレティーお嬢様が不安そうに言った。
 まあ、たしかに。
 反乱を鎮圧する為に、村人全員皆殺しにしときましたというのが今回の筋書きだ。
 ガマガエルにバレてしまっては元も子もない。
 なんか目立たずに移動できる手段はないだろうか。
 瞬間移動でもできればいいのだが。
 そういえば。
 瞬間移動できる人がいたな。

「か、カレリアさーん?」

 とりあえず明後日の方向に向かってカレリアさんを呼んでみる。
 有能メイドのカレリアさんなら、空間を超越してくれるはず。

「……お呼びになりましたか? アサギリ様」

 突然、歪曲した空間から、当然のように金髪メイドのカレリアさんが出現した。
 王都で一度見たけど、ホントすげえなこの人。
 俺も重力魔法なんていうクソ魔法じゃなくて、空間魔法とればよかった。
 エロいことには使えなさそうだけど。

「ちょっとだけ、お願いしたいことがあるんですけど……」

「……?」

 申し訳なさそうに言ってみると、カレリアさんは怪訝な表情を浮かべた。
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