ちょいクズ社畜の異世界ハーレム建国記

油揚メテオ

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第四章 竜騎士編

第122話 レティーお嬢様の依頼 ①

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 今朝はルーナと一緒に洗濯物を干しつつ、セクハラをするという最近結構フェイバリットになりつつある遊びに興じていた。

「ば、ばか! そんな所触られたら、洗濯物干せないじゃないか」

 うーん。楽しい。
 ピクピクするルーナが可愛くてたまらない。

 その時、背後で物音がした。

 またバーサーカージジイだろうか。
 そういえば、あのジジイはこの遊びをしていると高確率で襲ってくる習性がある。
 本当にはた迷惑なジジイである。
 取り柄は孫娘が美少女ということくらいしかない。

 まあ、今日こそ返り討ちにしてやるが。

 そんな事を考えながら、振り返る。
 そして、驚愕した。

 そこには馬に乗った美女がいた。

「レティーお嬢様!?」

「ど、どうも……」

 久しぶりに会ったレティーお嬢様は、相変わらず幸薄そうな笑顔を浮かべている。
 困ったように眉根を寄せた笑顔。
 薄い茶髪と薄い茶色の瞳がその儚さを際立たせている。
 ああ、癒される。
 ジジイと思ったらレティーお嬢様とか。
 こういうサプライズなら大歓迎だ。

「……お久しぶりですね、コウ。いえ、アサギリ卿。ルーナ殿もお元気そうで」

「ええ。お久しぶりですわ。レティシア様」

 よそ行きルーナがにっこりと挨拶した。
 ルーナの変な所を触ったままだったので、慌てて手を離す。
 レティーお嬢様に俺が変態だと誤解されてしまっては大変だ。
 事実無根なので。

「突然、どうしたんですか? こんな辺境に」

 なぜレティーお嬢様がこんな所にいるのかわからないので、聞いてみた。

「え、ええ。ちょっと相談したいことがあって……」

 レティーお嬢様は再び困ったように笑う。
 遠慮がちな伏せ目がたまらない。

「ふむ。まあ、とりあえず中に入って下さい。こんな場所で立ち話も何ですので。ルーナ、お茶!」

「はいはい。……なんで嬉しそうなんだ。まったくもー!」

 レティーお嬢様の下馬を手伝っていると、不満そうなルーナがぷりぷりしながら家の中に入っていった。
 レティーお嬢様が来て嬉しくない訳がない。
 来客でテンション上がるなんて久しぶりだ。
 いや、初めてかもしれない。



 うちのダイニングでレティーお嬢様は辺りをきょろきょろしながら、ルーナ茶を一口飲む。
 そして、おいしいと呟いて顔をほころばせた。

 普段ルーナやセレナを見慣れているからか、レティーお嬢様の地味美人っぷりがたまらない。
 しかも、レティーお嬢様は以前と同じように銀色のプレートメイルを装着していた。
 スケイルメイルはリュディアのお陰で、今や一家言を持つほどに堪能できたが、俺はまだプレートメイル童貞である。
 そんな俺に見せつけるようにプレートメイルを装着してくる辺り、レティーお嬢様は判っている。
 というか、もはや俺の為に着てきてくれたような感じすらする。
 脈がありすぎてやばい。

「……そ、そういえば、先日はまた戦で大功を挙げたそうですね。王宮では史上類をみない戦功にどんな報酬を与えればよいのか困惑しているとか」

 そんな話になっているのか。
 別に王宮から貰いたいものなんてないので、気を使わなくていいのに。
 強いて言うならゼービアさんが欲しい。

「そ、それで、その、そんなアサギリ卿に、こんな頼みごとをするのは、大変恐縮なんですが……」

 レティーお嬢様はもじもじしながら次の言葉を切り出せずにいる。
 ピート辺りが同じことをやったらぶん殴るが、レティーお嬢様は美人なので俺は気長に待った。

「……そ、その、うちで起きた農民反乱の鎮圧を手伝って頂けないでしょうか?」

 申し訳なさそうに言うレティーお嬢様。
 俺は脊椎反射的に、親指を立てていた。
 レティーお嬢様の為ならなんだってやる。
 なぜなら、見返りにやらせてくれるかもしれないから。

「ちょっと待て! なんでコウが他家の問題を手伝わなきゃいけないんだ!? 以前とは違って、もうこいつは領地持ちの貴族だぞ?」

 ルーナがバンとテーブルを叩いて席を立つ。
 貴族だと他人を手伝ってはいけないのだろうか。
 というか、よそ行きルーナはどうした。
 ルーナは完全に地が出ていた。

「……ルーナ殿のおっしゃることはごもっともです。ただ、もう私にはコウしか頼れる人がいなくて……」

 そして、レティーお嬢様はたどたどしくも置かれた状況を説明し始めた。

「じ、実はうちの領地で農民の反乱が頻発してまして……。うちの私軍は、全軍で反乱に鎮圧に当たっています。でも、全然手が回ってなくて……。それで、お父様が、私に、お前も遊んでないで反乱の鎮圧をして来いと……べ、別に遊んでいたわけではないのですが」

 ふーむ。
 フィンデル子爵家、終わってますな。
 というか、それなら。

「王国に援軍を頼めば良いんじゃないか?」

 俺の所に来るよりも、まずは上にエスカレーションすべきな気がする。
 有事の際は、上司に相談する。
 社会人の基本だ。

「……そんな事をすれば、フィンデル子爵家は即お取り潰しだろうな。農民があちこちで反乱を起こすなんて、領主としての能力がありませんと公言するようなものだ」

「……ルーナ殿のおっしゃるとおりです」

 レティーお嬢様はそう言ってしょぼんと肩を落とす。
 つまり、発生した問題がやばすぎて上司にバレたらクビになるレベルという事か。
 俺なら即夜逃げするが。
 まあ、レティーお嬢様に夜逃げをされては、もう会えなくなってしまうので、それは避けたい。
 なので、俺に出来ることならなんだってやる。

 ただ、レティーお嬢様が一人なのが気になった。
 鎧をつけているのは、鎮圧軍の指揮官でもやるからだと思うのだが。
 肝心の鎮圧軍は??
 どっか近くで野営でもしているのだろうか。

「そ、それが、本当にお恥ずかしい話なんですが……私にまわせる軍など無いと言われまして……一人で徴兵してなんとかしろと……で、でも、各村を回ってきましたけど、誰も私に協力してくれる人がいなくて……も、もう、本当にコウを頼るしか……」

 言いながらレティーお嬢様の頬を涙が伝う。
 そして、ブワッと不幸オーラが漂う。
 うーむ。
 全力で幸せにしてあげたくなってしまう。

 というか、娘に一人で反乱を鎮めてこいと言うのは、親としてどうなんだろう。
 フィンデル子爵。
 脂ぎったガマガエルの顔が思い浮かぶ。
 あいつクソ野郎だな。

「そ、それは流石にひどいな……」

 ルーナもこう言っているし。
 もう俺が手伝うしか無いだろう。

「それで、農民反乱の規模は?」

 多分、反乱した農民が数万だとしてもあのドラゴンに乗っていけば瞬殺できる気がするが、一応確認しておく。

「ええと、私が任された所だと数十人くらいだと聞いています。……て、手伝ってくれるのですか?」

 レティーお嬢様は上目遣いでおずおずと俺を見る。
 可愛い。
 数十人か。
 それなら俺一人でも余裕かもしれない。
 遠くから火魔法で一撃だろう。
 余裕ですわ。

「もちろん。他ならぬレティーお嬢様の頼みですから」

「……コウ。あ、すみません、アサギリ卿」

 安心したのか、レティーお嬢様は涙を拭いながらはにかむ。

「以前と同じようにコウで結構ですよ。俺とレティーお嬢様の仲じゃないですか」

 言いながら、レティーお嬢様の手を両手で握りしめた。
 ここぞとばかりにさわさわしまくる。
 すべすべしていていい手だ。

「で、でも! やっぱりお前が危険な目に遭うのは……」

 ルーナは再びガタッと立ち上がると、怯えたような表情をした。
 突然、立ち上がるからびっくりした。
 レティーお嬢様の手をさわさわしているのを怒られるのかと思った。
 ただ心配になっただけらしい。

「大丈夫だ。数十人の反乱くらいすぐに片付けてくるよ。ちょっとだけ家で待っててくれ。すぐに帰ってくるから」

 そう言ってから、ルーナを安心させるために笑顔を浮かべてみた。
 ぎこちなく引きつってしまったが。

「……そ、そういう顔をするな。ず、ずるいぞ! 胸がドキドキする」

 顔を赤らめたルーナが胸を抑える。
 相変わらずチョロい。
 というか、引きつった笑顔にまで反応するようになってしまった。
 いよいよ危ない。

「あ、あのう、こ、コウ? そろそろ手を……その……」

 レティーお嬢様に言われて、未だに手をさわさわし続けていた事に気づいた。
 未だに俺の手の呪いは解けていない。
 この前、ミレイに解呪してもらったはずなのに。

 レティーお嬢様は真っ赤になっていた。
 握っていた手を離すと、すぐに引っ込めてしまう。

「い、いえ、殿方に手を握っていただくのは久しぶりだったもので……と、年上の女をからかうものではありませんわ」

 レティーお嬢様は恥ずかしそうにそんな事をボソボソと呟いた。
 この反応は……。
 もしかして、レティーお嬢様も結構チョロいんじゃないかという気がしてきた。
 ルーナほどではないだろうが。

 スキンシップに弱いんだろうか。
 言っておくけど、俺のスキンシップは半端ないよ?
 結構、あっさりとレティーお嬢様を落とせそうだ。

 何よりも、これからレティーお嬢様と二人きりで農民反乱の鎮圧に行くのだ。
 どこで反乱が起きているのかは知らないが、道中はたっぷりとチャンスが有るだろう。
 多分、そう遠くない未来にレティーお嬢様は俺の腕の中でアヘることになると思う。
 ふふふ。
 農民反乱。
 なんて楽しみなんだ……!

 その時、玄関が突然開かれた。

「コウ! レティーお嬢様が来てるって!?」

 そこには息を切らしたピートが立っていた。

 あのモブキャラ野郎。
 ノックもしないで……。

「お前、わかっているのか? 俺んちに無断で入ってきたら死刑だぞ?」

「ええ!? そんな法律あったの!?」

 今作ることにする。
 俺は領主なのだ。
 引きこもりの家に勝手に入るなんて、殺人罪と同レベルの重罪だ。

「……ピート?」

 レティーお嬢様は突然現れたピートに目を丸くして驚いていた。

「レティーお嬢様!」

 ピートはレティーお嬢様を見つけると嬉しそうな顔をした。

 そして、ピートとレティーお嬢様はしばし見つめ合う。
 え、なにこれ。

「……急にいなくなったと思ったら、こんな所にいたんですね」

「ええ。何も言わずに、すみません」

 レティーお嬢様が目を伏せる。

「……別に構いませんけど」

「…………」

 辺りに重苦しい沈黙が落ちる。
 なんか2人で独特な空間を作り出していた。
 俺とルーナの息を飲む音だけが響く。
 ここ俺たちの家なんだけど?

「……お前まで、私を置いていかなくてもいいでしょうに」

 レティーお嬢様の呟きに、ピートがハッとした顔をする。

「…………」

 しかし、ピートは何も言わずに押し黙る。

 あー。
 もう耐えられない。

 とりあえず、立ち上がってピートに近づくと、その頭部に拳骨を落とした。

「な、何するんだ!?」

 うるさい。
 なんか羨ましいやら、もどかしいやらでピートを殴らずにはいられなかったのだ。
 ピートのくせに!
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