ちょいクズ社畜の異世界ハーレム建国記

油揚メテオ

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第四章 竜騎士編

第112話 過酷な奴隷生活 ⑤

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 なんというか。
 誠に遺憾な事に、奴隷生活は早くも7日目に突入していた。
 ご主人様とのソフトSMが思いの外楽しくて、ついつい長居してしまっている。
 ご主人様は隠された性癖をがんがん開放していき、今では尻を叩けば潮を吹くし、手足を拘束すれば歓喜するというマゾヒスト振りを見せている。
 ちょっとね。
 可愛いんですわ。

 ちなみに、今は全裸で四つん這いにさせたご主人様の上に、俺が座っているという、もはやなんでこうなったと言わざるをえないプレイにまで発展している。
 どう考えてもやりすぎなのだが。

「……ちょっと刺激が足りないけど、これはこれでいいぞ。人格が否定されている感じがする。はあはあ」

 人格が否定されて何がいいのかわからないが、肉椅子ご主人様は満足そうなので良しとする。

「つ、次は何をする? また、敵に捕まった女騎士が無理やり犯されるごっこやるか? 我はあれ、結構好きだぞ」

「そうだな」

 とりあえず答えるとご主人様は嬉しそうにスケイルメイルを身に着けていく。
 楽しそうで大変結構なのだが。
 さすがにそろそろ帰らないと不味いと思うんだよなー。
 ルーナは寂しがっているだろうし、セレナは血を吸わないで腹を空かせているだろうし。
 ただ――。

「くっ! わ、我を拘束して一体何をするつもりだ!?」

 勝手に手枷をつけたご主人様は床に寝転がって、俺に向かって股を開いている。
 ご主人様がこんなのになっちゃった責任は俺にもあると思うのだ。
 子供を孕ませた以上に重く感じてしまう。
 またしても頭がおかしくなるまで女を犯してしまった。
 うう、哀れな。
 さすがに、こんなご主人様を放って、もう帰るとか言い辛い。
 どうするかなー。
 とりあえずご主人様と遊ぶが。

「や、やめろ! 無理やり唇を奪うなんて、こ、この鬼畜! はぁ、ちゅば、れろれろ」

 そんな事を言いながらも、思い切り舌を絡ませてきた。
 うーん、楽しい。
 だが、こんな事をしていていいんだろうか。



 ご主人様となりきりプレイを楽しんだ後は、外に出てピートの牢屋にやってきた。
 さすがに放置しすぎな気がしてきたのだ。

 ご主人様を外に待たせておいて、一人でピートの元に向かう。

「うう、こ、コウ……」

 1週間ほど牢屋に入っていたピートはなんかやつれていた。
 床にうつぶせになっているし。
 飯はちゃんと食べていたはずだが。
 見るからに囚人と言った感じでちょっと感心してしまった。
 ピートは囚人の才能があるかもしれない。

「だ、大丈夫か?」

 お前がなと言いたくなるが、とりあえず頷いておく。

「……悪いな、俺の身代わりになって、ど、奴隷なんかに」

 ピートはそんな事を言いながら、うっうっと嗚咽を漏らし始めた。
 なんか精神的に追い詰められている感がある。
 どちらかと言うと嫌がらせで牢屋に入れっぱなしだったので、ちょっと胸が傷んだ。

「もうちょっとしたら出してやんよ」

「え、出せんの!?」

 驚くピートを尻目にさっさと牢屋を後にする。
 ジメジメしてたから、長居したくなかったのだ。
 まあ、ピートが元気? だったので安心した。
 帰る時は忘れずに一緒に連れて帰ってやらなきゃな。
 ピートはモブなのですぐに忘れてしまう。


 家に帰るなり、ご主人様は一族の集まりがあるとか言って出かけてしまった。
 一人でお留守番だ。
 暇だなー。
 そういえば、スキルポイントが大分溜まっていたことを思い出した。

『スキルポイント:15』

 こんなに溜まっている。
 これだけあれば10ポイントを消費する深淵魔法を取れるじゃないかと気づいた。
 時間魔法、空間魔法、精神魔法、重力魔法。
 うーん、どれを取ろうかな。
 時間魔法をとってミレイをぐっちょぐちょになるまで抱くか、精神魔法をとってソフィさんを洗脳して、筋肉の目の前で抱くかのどちらかだろうか。
 空間魔法と重力魔法はエロいことに使えなそうなので、放置する。

「…………」

 いやいや、10ポイント消費はかなりの高リスクだ。
 ここは慎重に決め無くてはならない。
 うーん。
 帰ったらセレナに相談してみようかな。
 あいつ魔法に詳しそうだし。
 もしかしたら、よくわからない重力魔法が物凄くエロいポテンシャルを秘めているかもしれない。
 無重力セックスくらいしか思いつかないが。
 空間魔法は、ないかな。
 ちょっと便利な使いみちが思いつかないんで。

 ただ、セレナに相談するにしても帰らないことには始まらない。
 それに、ルーナは元気だろうか。
 脳裏にルーナの笑顔が思い浮かぶ。

 よし。
 今度こそご主人様に帰るって言おう。
 俺は固く決意した。
 おそらくご主人様はアブノーマル全開で帰ってくるだろう。
 だが、ご主人様がどんなにアレな姿を見せても、俺の決意は揺るがない!



 しかし、帰ってきたご主人様は予想と違って、なんというか落ち込んでいた。
 以前、一人で出かけていって帰ってきた時は、友達が貸してくれたとか言ってムチを渡してきて、さすがにちょっと引いたのだが。

「……待たせて悪かったな。お腹空いただろう? 今、支度するから」

 ご主人様はそう言い残すと、そそくさとキッチンに入っていった。
 なんか拍子抜けしてしまう。
 そういえば、もう夕暮れ時だった。

 カチャカチャと食器の立てる音だけが食卓に響く。
 ご主人様は明らかに口数が少ない。
 俺はそもそも喋らないし。
 雰囲気が物凄く重い。
 一族の集まりでいじめられちゃったのだろうか。

 うーん。
 とても帰るなんて言い出せる雰囲気じゃなかった。
 まさかこんな形で阻止されるとは思ってもみなかったが。
 あ、明日こそはちゃんと言おう!
 そう心に固く決意し直した。

 夕食の後片付けを終えると、ご主人様は黙って抱きついてきた。
 いつもならエロい遊びをしている時間だ。
 とはいえ、なんかそんな雰囲気でもない。
 とりあえず、俺も黙ってご主人様を抱きしめ続けた。

「名前」

 ご主人様がポツリと呟く。

「そういえば、貴様の名前を聞いていなかった」

 そうだったっけか。
 今更感が半端ないが。

「コウだ。コウ・アサギリ」

「そうか。コウというのか。不思議な響きだな。知っているかもしれないが、我はリュディアという」

 出会ってから何度も肌を重ねてきたが、今頃になってやっとお互いを紹介しあった。
 なぜこのタイミングなのかはわからない。

「なあ、今日は、その、普通に抱いてくれないか? で、できれば恋人にするみたいに」

 ふーむ?
 また変わったオーダーをする。
 昨日は前戯無しでそのまましてくれとか言い出したので心配したのだが。
 まあ、ご主人様が言うのなら応えてやる。
 恋人みたいにってどうすればいいんだろう。
 とりあえず、頭を撫でながらねっとりと抱くか。

「あと、我の事はリュディアと呼んで欲しい」

 呼んで欲しいなら呼ぶけど。
 ご主人様って呼ぶのちょっと気に入ってたんだけどな。

「わかった。リュディア」

「コウ……」

 リュディアが目を閉じて顔を寄せてくるので、キスをした。

 そして、ねっとりと、出来るだけ優しく抱いてみた。



 何回か抱いた後、リュディアに腕枕をしてしばらく休憩していた。
 いつもと違って優しくしたせいか、リュディアはまだまだ元気そうだった。

「……こういうのもたまにはいいな」

 そう言うリュディアの頭を優しく撫でる。
 なんかやっぱり今日のリュディアはいつもと違う気がする。

「なあ、このまま貴様と2人でずっと暮らしていったら、いつかこういう関係になれたのかな」

「なれたかもな」

 ソフトSMからハードに進化していき、やがてピリオドの向こうへ行っちゃう可能性の方が高い気もするが。

「そのうち子供が出来て、貴様と3人で暮らして、きっと凄く楽しいだろうな」

「お、おう」

 そういう事を言われると、明日も帰るって言い辛くなるんですが。

「……貴様が前言っていた、残してきた家族の話だが」

 急にリュディアが話題を変える。

「残してきたのは、女だろう?」

 リュディアは悪戯っぽい笑みを浮かべて言った。

「ま、まあな」

「……まだその女の所に帰りたいか?」

 突然、千載一遇のチャンスがやってきた。
 だけど、うおおおおお!
 すげえ頷き辛えええ!

「…………帰りたい」

 だが、言えた!
 やった! ついに言ったった!

「……そうか」

 リュディアは顔を俺の胸に埋める。
 その表情は窺い知れない。
 傷つけちゃっただろうかとビクビクした。
 いや、また引き止められるかもしれない。
 まだ子供出来てないし。

「明日になったら帰っていいぞ」

「え、まじで?」

 意外とあっさり認めてもらえた。
 ちょっと拍子抜けしてしまう。

「実はな、龍神様の花嫁になることになったんだ。明日村で儀式をした後、我は龍神様に嫁ぐ。だから、貴様は自由だ」

「…………」

「なんか最近女らしくなったとか言われてな。戦う事しか能のない我でも花嫁になることが出来た。貴様のお陰かもな、ありがとう」

 何も言うことが出来なかった。
 いや、誰がどう見たってリュディアは美人だった。
 普通に考えれば当たり前なんだが。

「おめでとうって言ってくれないのか? 結構、憧れていたんだぞ、龍神様の花嫁に。一族の女なら誰だってそうだが」

 祝福する気には全くなれなかった。
 ホント宗教なんてクソ喰らえだし。
 だっておそらく、龍神様の花嫁が意味するのは――。

「…………」

 ――ドラゴンの生贄じゃないか。

 いつまでたっても、おめでとうと言わない俺に、リュディアはしびれを切らして、諦めたように笑う。

「本当に貴様は我をいじめるのが上手いな」

 リュディアはそんな冗談を言って、俺の胸板に顔を押し付ける。

「……ちょっとだけ、好きだったぞ。貴様のこと」

 ちょっとだけなら。
 俺だって。




 次の日の朝。
 リュディアはセレナの真祖装備一式と月光魔剣を返してくれた。
 大切に保管してくれていたらしい。
 ついでに、ピートとピートの装備一式も返してくれた。
 帰りの路銀まで持たせてくれる。

「……元気でな」

 そして、最後に俺たちはお別れのキスをした。



 リュディアの花嫁の儀式は大歓声の中行われた。
 今日は憎らしいくらいの晴天だった。
 あちこちで祝福の声が上がる中、俺とピートは遠くから儀式を眺めていた。
 純白の衣装に身を包み、花かんむりをつけたリュディアは遠目から見ても美しかった。
 ウェディングドレスを着た花嫁に見えなくもない。

 リュディアは俺に気づくと、悲しそうに目を伏せた。
 周囲の祝福の声とは対象的なその表情に酷く胸がざわついた。
 憧れてたんなら、もっと嬉しそうな顔をすればいいのに。

 リュディアが花飾りのつけられた輿に乗ると、飛竜がその輿を掴んで飛び上がっていく。
 辺りの歓声が一際大きくなる。
 これが儀式のフィナーレらしい。

 俺はリュディアの乗った輿が空高く上がっていくのを黙って見守っていた。
 あのまま竜神とやらの元に向かうのだろうか。
 輿はどんどん高度を増していき、村のある山の山頂へと消えていった。



 俺たちを村の入口まで案内してくれたのは、ダナンさんだった。
 リュディアに村を案内してもらった時に、話しかけてきたダークエルフだ。

「本来なら龍神様の花嫁の奴隷は風の民の共有財産になるんだけど、リュディアたっての希望でね。開放してあげるわ。あの子に感謝しなさい」

 ダナンさんがそんな事を教えてくれた。
 感謝したくても、もうリュディアはいないのだが。

 よく考えてみたら、奴隷が開放されるって凄いことなのかもしれない。
 普通は死ぬまでこき使われるのだろう。
 リュディアは俺を全然奴隷扱いしなかったので、実感はないのだが。
 結構、楽しかったな、奴隷生活。

「あなたが望むなら、私の犬として飼ってあげてもいいわよ?」

 ダナンさんはそんな冗談を言う。
 言うまでもなく社交辞令だろう。

「魅力的な提案ですけど、帰りを待ってくれている人がいるので」

「あら、残念。気をつけて帰りなさいね」

 ダナンさんはそう言って、笑顔で見送ってくれた。
 結構、いい人だった。



 ピートと2人で無言で歩いた。

 色々あったが、やっとルーナの所に帰れる。
 なんか釈然としないが、これで良かったのだと思う。
 初めから、リュディアの所に留まるつもりなんてなかった。
 いつかは別れるつもりだったのだ。
 残されたリュディアがその後どうなるかなんて知ったこっちゃない。

 今回の件は、ずるずるとリュディアの身体に溺れた俺への罰だ。
 もっと早く帰っていれば、あんな狂った儀式に立ち会うことはなかった。
 なんかエロいダークエルフがいたなーで済んだはずだ。
 これからはちょっと浮気は控えようと思う。

 なんか釈然としないが。
 物凄く釈然としないが。

 よく考えてみると、いい女だったよな。
 リュディアって。

 ああ、ダメだ。

 気づいた時には、立ち止まっていた。

「コウ? どうしたんだ?」

 ピートが振り返って、怪訝な表情をする。

「悪い。俺、ちょっと忘れ物した。先に帰ってろ」

「ええ!? 忘れ物ってなんだよ!? おい、コウ!」

 俺は踵を返して、走り出した。
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