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第四章 竜騎士編
第99話 村を作る!
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なぜかは知らないが、最近来客が多い。
この日訪ねてきたのは、いつか山賊から助け出した奥さんだった。
(戦士様、今は何もお礼をするものはございませんが……その、私の身体くらいしか)
そんな事を言って、胸元をチラ見せしてくれた奥さんだ。
なかなか良い乳をしていた。
一瞬見えただけだったが、乳首の色まで鮮明に記憶している。
「お久しぶりです。アサギリ様。なんでも貴族になられたとかで。本当におめでとうございます」
そんな事を言って、奥さんは深々とお辞儀をしてくれる。
前にも思ったが、奥さんはなかなかの美人だ。
緩やかにウェーブした金髪を伸ばして、おっとりしていそうなタレ目、左目尻には泣きぼくろがある。
ちょっとぽっちゃりした肉付きの良い身体からは人妻特有の色気がムワッと薫る。
久しぶりに奥さんに会えてよかった。
心の底からそう思った。
人妻というのは、それだけでエロさが3割増だ。
ステータス補正のある称号のようなものだと思う。
団地に住んでいればなお良い。
ただ、問題は。
「やっと会えましたね。先日は我が妻を救ってくれたそうで、本当に、本当に、ぐっ、うう!」
なんか奥さんの横に立っていた男が暑苦しく泣いている。
男は、冬だって言うのにタンクトップのみで、パンパンに盛り上がった筋肉には汗すら滲んでいる。
「アサギリさん、あんた男だ! 真の男だ! 男の中の漢だよ!!」
男は当たり前の事を連呼しながら、感極まったように俺の手を握ってきた。
ぷーんと汗の臭いが鼻についた。
吐き気を催した。
「あなた、アサギリ様が困っているじゃないの。それに、貴族様に失礼よ」
「お、おお、そうだな。すみません、アサギリさん。アサギリさんの漢気に当てられてつい! ははっ!」
筋肉男は暑苦しくもムキムキと頭の後ろを掻いている。
そんな事はどうでもいいのだが、奥さんのセリフに聞き逃せない単語があった。
あなた……だと……!?
それではまるで奥さんの旦那みたいな呼び方じゃないか。
バカなっ!
人妻とか言って俺を騙したのだろうか。
人妻とは、文字通り人の妻であるが、旦那の気配を全く感じさせずにこっそりヤらせてくれる素敵なジョブじゃないのか。
だって、俺がよく見てた某年齢制限のかかる映像資料では大抵そうだったもん。
異論は認めない。
そんな事を考えていたら、奥さんは手に抱いていた小さな物体を俺に渡してきた。
「アサギリ様、この子を抱いてやって下さい。アサギリ様のお陰で、またこの子に会うことができました。本当にありがとうございます」
奥さんに渡されたのは、赤子だった。
赤子は俺に純真無垢な目を向けてきた。
恥の多い人生を歩んできた俺は胸が痛んだ。
というか、赤子!?
これでは奥さんがまるで家庭を持っているみたいじゃないか!?
人妻とは、背後にある家庭崩壊とか面倒くさい事を感じさせずに、ただヤらせてくれる素敵ジョブだったはずなのに。
こんな赤子を抱かされてしまっては、気軽に奥さんに手を出すことができなくなってしまう。
「アサギリ様、申し遅れましたが、私はソフィと申します。こちらは夫のダン。その子は息子のポールです」
突然、自己紹介をされたので曖昧に頷いておく。
奥さんはソフィさんというらしい。
いい名前だ。
筋肉男の方は、今紹介されたばかりだったが、覚える必要はないと判断したので記憶から削除しておいた。
筋肉男は、暑苦しくもニンと笑っている。
どうでもいいけど、こいつすげえ日焼けしている。
日サロに通っているか、肝臓が悪いかのどっちかってレベルだ。
ただただ暑苦しい。
「……アサギリ様に何かお礼をしたいとずっと考えておりました。この度、アサギリ様が貴族になられて、領地を持たれたと聞いたので、一念発起して家族でアサギリ様の領地に移り住むことにしました。私達で領地の開拓を少しでもお手伝いできたらと思うのですが、いかがですか?」
そう言うソフィさんの表情は真剣そのものだった。
家族で引っ越してきたらしい。
そういえば、筋肉男は大荷物を背負っている。
というか、こんな辺境に移り住むメリットが全然わからないのだが、ソフィさんは良かれと思って言ってくれているっぽい。
開拓のお手伝いって何をするんだろう。
よくわからないが、既にこうして来ちゃったわけだし。
うーむ。
ソフィさんだけだったら、即決でオーケーするのだが。
余計なのいるしなー。
筋肉男に目を向ける。
「なんでしょう? 私と腕相撲でもしますか?」
「なんでだよ! しねえよ!」
体育会系とでも言うのだろうか。
はっきり言って嫌いなタイプだ。
いつかソフィさんをNTRしてやりたい。
はっ! そうだ。
NTRの楽しみがあるじゃないか。
人妻の醍醐味を忘れていた。
「わかりました。ソフィさんを受け入れましょう!」
そう言って、ソフィさんの手を握ろうとした。
「おお! アサギリさん! これからよろしくお願いします!!!」
しかし、筋肉男が暑苦しくも割り込んできて、ハグされた。
強烈なワキガの臭いが目に染みた。
くそ、絶対にソフィさんを寝取ってやる。
そんなこんなで、ソフィさんと筋肉にはまだまだ空いている廃屋の1軒を使ってもらうことにした。
ピート、ヴァンダレイジジイの時に続いて、もう3回目なので廃屋の修理は慣れたものだった。
とはいえ、ソフィさんには赤子がいる。
廃屋は1つの大きめの部屋しかないので、子供が成長する事を考えると、何かと手狭だろうと思って、土魔法で2倍くらいに拡張しておいた。
廃屋は木造なので、土魔法で作った増築分はちょっと違和感があるのだが、この際、我慢してもらおう。
ついでに、赤ちゃんベッドや、ソフィさんの腰の高さに合わせておむつ交換台のようなものも作ってみた。
ソフィさんと筋肉は、匠の美技に酔いしれたのか、呆然としていた。
ちょっと気分がいい。
「他に必要なものはないですか?」
子育てなんかしたことがないので、何が必要なものは随時聞いてみようと思った。
「……そうですな。農具は持ってきたし、ええと」
ソフィさんに聞いてみたのに、筋肉が答えた。
なんでだよ。
「何か筋肉を鍛えられるものがあればいいんですが」
「死ねよ」
子育てに必要なものを聞いたのに、何を言っているのか。
思わず死を願ってしまった。
だが、まあ、とりあえず、ぶら下がれる鉄棒のようなものを作っておいた。
筋肉はかなりガタイがいいので、《土形成》では耐久力に問題があるかもしれないと思って、《石形成》を圧縮させた黒曜石で作ってみた。
今日作った家具の中で、もっとも消費魔力が大きかったのが腹立たしい。
筋肉は嬉しそうに鉄棒で懸垂していた。
「夫のおもちゃまで作って頂いて……ありがとうございます。ありがとうございます」
ソフィさんは恐縮したように何度も頭を下げてくれた。
ふふ、思わぬ所でソフィさんの好感度を稼げたらしい。
NTRできる日も近いと見た!
そんなこんなで、その日の夜、俺は夕食を食べながら今日の出来事をルーナに報告した。
ソフィさんという人妻が引っ越してきたのだが、誠に遺憾ながら男を連れてきやがったと熱弁した。
ふと何を当たり前の事を言っているのだろうと思ったが、ルーナは黙って聞いてくれた。
俺が喋り終わるのを待って。
「言っている事はほとんどわからないが、お前が人妻好きなのはわかった。……そ、その目の前にもいるだろう? 人妻が。お前のだけど」
そんな事を言って照れるルーナは、バグってんじゃないの? というくらい可愛かったので、問答無用で押し倒してしまった。
次の日も来客ラッシュは続いた。
今日の客は団体さんだった。
先頭に立つ男が気安く声をかけてくる。
「やあ、コウ。久しぶりだね」
そう言う男には全く見覚えがなかった。
何だこいつは。
なぜ俺の名前を知っているのか。
男、というか少年だろうか。
少年は酷く単純な顔立ちをしている。
全く絵心のない俺でも3分で似顔絵を書けてしまいそうな顔だ。
目と鼻と口が棒でできているような。
へのへのもへじの方がまだ複雑な顔をしている。
「ラッセル! ラッセルじゃないか!」
その辺にいたピートがそんな事を言って驚いていた。
ラッセル?
ああ!
いたいた!
なんかそんなんいた!
一緒に戦争に行ったラッセルじゃないか。
遥か太古の記憶すぎて、完全に忘れていた。
「お、おう! ラッセル、久しぶりだな。今日はどうしたんだ?」
とりあえず、さも覚えてました感を出して言ってみた。
さも覚えてました感ってどんな感じだよと思うが。
「コウが貴族になったって聞いてね。家族で領地の開拓を手伝おうと思って、みんなでやってきたんだ。べ、別に借金取りから夜逃げしてきたわけじゃないよ?」
最後のセリフが気になる。
そういえば、ラッセルん家は貧乏だとか言っていた。
十中八九夜逃げしてきたのだろう。
というか、また開拓のお手伝いとか言っている。
だから何を手伝うんだよって話だ。
まあ、うちの近所に住みたいのなら別に構わないが。
もう異物が混入しすぎて、俺のハーレムユートピアは殆ど諦めているし。
ただ気になるのは。
「その後ろにいる団体さんはなんだ?」
ラッセルの後ろには、ぞろぞろと大人数が続いている。
皆、以前ルーナが被っていたようなフード付きのマントを被っていて、その顔は窺い知れない。
背格好は、皆一様にラッセルと同じくらいに見える。
「ああ、紹介するよ。父と母だ」
ラッセルがそう言うと、2人がフードをとる。
出てきたのは、ラッセルと全く同じ顔の2人だった。
「で、こっちが長女のキャサリン、次女のブリトニーと、三女のクリスティーヌ」
なんか美女っぽい名前だった。
しかし、紹介された3人がフードをとるとラッセルの棒線顔が出てきた。
「四女のパリスに、五女のダイアナと……」
ラッセルが次々と冗談みたいな名前を呼び上げると、フードがめくられラッセルの顔が出てくる。
そして、14人のラッセルが集合した。
え、なにこれ。
「な? 言ったとおりだったろ?」
ピートが悟ったような目で言った。
な? じゃねえから。
「似すぎというか、コピーしすぎというか」
思わずそんな感想が漏れてしまう。
14人のラッセルは皆完全に同じ顔をしている。
まるでラッセルをコピペしたようだ。
妹達は髪型こそ、女っぽいものになっているが顔はラッセルそのものだ。
「家族だからね。そりゃ似ているさ」
ラッセルはそんな事を言っているが、その理屈で言ったら母親が同じ顔をしている件の説明がつかない。
「「「「「「「「「「「「「よろしくお願いします。アサギリ卿!」」」」」」」」」」」」」
ラッセル一家は、声までラッセルと同じだった。
もはや遺伝子兵器なんじゃないだろうかと疑ってしまうレベルだ。
なんなのこいつら、大道芸でも見せに来たのだろうか。
いや、大道芸と考えるとかなりのレベルだな。
「ちょっとルーナを連れてくるから、さっきの芸もう一回やってくれるか?」
「え? 芸ってなんだい?」
よく判っていないラッセルを残して、家に戻る。
クッキーを作っていたルーナをそのまま連れてきた。
「わわ、なんだ、いきなり? 今生地を作ってるんだぞ?」
ルーナの手にはボウルとかき混ぜ器が握られているが気にしない。
そして、再びラッセルにさっきの芸をやってもらった。
「な? な? 面白いだろう?」
「……う、うん。だけど、こんな大人数どこに住んでもらうんだ?」
せっかく連れてきたのに、ルーナは少し引きながらそんな事を言った。
「どこって、廃屋が1軒余ってるだろう?」
ピート兄弟、ヴァンダレイ爺孫、ソフィ家族が使っているので、最後の1軒だ。
「いや、絶対に入り切らないだろう」
そうだろうか。
狭い空間にぎっしりと詰まっている方がゲノム兵っぽくて良い気がしたのだが。
「奥さん、家は僕達でなんとかするから……」
心配するルーナにラッセルがそんな事を言っている。
ふむ。
大人数が住める家か。
マンションでも建てるか。
日照権とかがあるから、ちょっと外れた場所になるけど。
そんなわけで、村外れに4階建てのマンションを建築した。
念入りに基礎工事をして、黒曜石の柱で作ったオール土魔法建築だ。
とはいえ、セレナ邸に匹敵する規模の建築物だったので、完成するまでに3日もかかってしまった。
その間、ラッセルズは野宿していた。
14人中、12人が女性らしい(ラッセル曰く)のだが、なぜか野宿させても全然胸は痛まなかった。
完成したマンションは、1階部分に家族全員の団欒スペースと食堂を用意した。
2階から上はそれぞれのパーソナルスペースだ。
一人6畳位の個室しか用意できなかったので、不満が出ないか心配だったがラッセルズは引くくらい喜んでいた。
あとは、初めての高層建築物なので、なんと言っても強度が心配だった。
とりあえず、フィリスを呼んでマンションの柱を思い切りぶん殴って貰った。
マンションは微動だにしなかった。
一安心である。
カンナさんやセレナがやったら危ないかもしれないが、あの2人は日本のマンションも素手で崩壊させそうなので気にしない。
「あの、もうちょっと女の子扱いしてほしいです……」
フィリスがそんな事を言って凹んでいたので、とりあえず薄い胸を揉みながら、口の中を舐め回してみた。
フィリスは物凄く興奮してくれたのだが。
「はあはあ、お返しにコウ様のお尻をペロペロさせてもらってもいいですか?」
何がお返しなのか全然わからなかったので、辞退しておいた。
フィリスはちょっとベクトルがおかしいので、気軽に抱けない。
そんなこんなでうちの近所が賑やかになってしまった。
ラッセル家のせいで人口増加率が2倍近い。
そんな急激に人口が増えたら、色んな問題が出てくる気がするが、未来の俺が苦しめばいいのであって、今の俺には関係ないのである。
それよりも、今、俺の目の前でフリフリと揺れているセレナの尻のほうが気になる。
「あなたのお茶は私が淹れたいと思って、カレリアに習ったのよ? え、ちょっと待って、どこに顔を付けているの!? あん、だ、だめ!」
どこって尻だが。
そのままいつものようにセレナを押し倒した。
この日訪ねてきたのは、いつか山賊から助け出した奥さんだった。
(戦士様、今は何もお礼をするものはございませんが……その、私の身体くらいしか)
そんな事を言って、胸元をチラ見せしてくれた奥さんだ。
なかなか良い乳をしていた。
一瞬見えただけだったが、乳首の色まで鮮明に記憶している。
「お久しぶりです。アサギリ様。なんでも貴族になられたとかで。本当におめでとうございます」
そんな事を言って、奥さんは深々とお辞儀をしてくれる。
前にも思ったが、奥さんはなかなかの美人だ。
緩やかにウェーブした金髪を伸ばして、おっとりしていそうなタレ目、左目尻には泣きぼくろがある。
ちょっとぽっちゃりした肉付きの良い身体からは人妻特有の色気がムワッと薫る。
久しぶりに奥さんに会えてよかった。
心の底からそう思った。
人妻というのは、それだけでエロさが3割増だ。
ステータス補正のある称号のようなものだと思う。
団地に住んでいればなお良い。
ただ、問題は。
「やっと会えましたね。先日は我が妻を救ってくれたそうで、本当に、本当に、ぐっ、うう!」
なんか奥さんの横に立っていた男が暑苦しく泣いている。
男は、冬だって言うのにタンクトップのみで、パンパンに盛り上がった筋肉には汗すら滲んでいる。
「アサギリさん、あんた男だ! 真の男だ! 男の中の漢だよ!!」
男は当たり前の事を連呼しながら、感極まったように俺の手を握ってきた。
ぷーんと汗の臭いが鼻についた。
吐き気を催した。
「あなた、アサギリ様が困っているじゃないの。それに、貴族様に失礼よ」
「お、おお、そうだな。すみません、アサギリさん。アサギリさんの漢気に当てられてつい! ははっ!」
筋肉男は暑苦しくもムキムキと頭の後ろを掻いている。
そんな事はどうでもいいのだが、奥さんのセリフに聞き逃せない単語があった。
あなた……だと……!?
それではまるで奥さんの旦那みたいな呼び方じゃないか。
バカなっ!
人妻とか言って俺を騙したのだろうか。
人妻とは、文字通り人の妻であるが、旦那の気配を全く感じさせずにこっそりヤらせてくれる素敵なジョブじゃないのか。
だって、俺がよく見てた某年齢制限のかかる映像資料では大抵そうだったもん。
異論は認めない。
そんな事を考えていたら、奥さんは手に抱いていた小さな物体を俺に渡してきた。
「アサギリ様、この子を抱いてやって下さい。アサギリ様のお陰で、またこの子に会うことができました。本当にありがとうございます」
奥さんに渡されたのは、赤子だった。
赤子は俺に純真無垢な目を向けてきた。
恥の多い人生を歩んできた俺は胸が痛んだ。
というか、赤子!?
これでは奥さんがまるで家庭を持っているみたいじゃないか!?
人妻とは、背後にある家庭崩壊とか面倒くさい事を感じさせずに、ただヤらせてくれる素敵ジョブだったはずなのに。
こんな赤子を抱かされてしまっては、気軽に奥さんに手を出すことができなくなってしまう。
「アサギリ様、申し遅れましたが、私はソフィと申します。こちらは夫のダン。その子は息子のポールです」
突然、自己紹介をされたので曖昧に頷いておく。
奥さんはソフィさんというらしい。
いい名前だ。
筋肉男の方は、今紹介されたばかりだったが、覚える必要はないと判断したので記憶から削除しておいた。
筋肉男は、暑苦しくもニンと笑っている。
どうでもいいけど、こいつすげえ日焼けしている。
日サロに通っているか、肝臓が悪いかのどっちかってレベルだ。
ただただ暑苦しい。
「……アサギリ様に何かお礼をしたいとずっと考えておりました。この度、アサギリ様が貴族になられて、領地を持たれたと聞いたので、一念発起して家族でアサギリ様の領地に移り住むことにしました。私達で領地の開拓を少しでもお手伝いできたらと思うのですが、いかがですか?」
そう言うソフィさんの表情は真剣そのものだった。
家族で引っ越してきたらしい。
そういえば、筋肉男は大荷物を背負っている。
というか、こんな辺境に移り住むメリットが全然わからないのだが、ソフィさんは良かれと思って言ってくれているっぽい。
開拓のお手伝いって何をするんだろう。
よくわからないが、既にこうして来ちゃったわけだし。
うーむ。
ソフィさんだけだったら、即決でオーケーするのだが。
余計なのいるしなー。
筋肉男に目を向ける。
「なんでしょう? 私と腕相撲でもしますか?」
「なんでだよ! しねえよ!」
体育会系とでも言うのだろうか。
はっきり言って嫌いなタイプだ。
いつかソフィさんをNTRしてやりたい。
はっ! そうだ。
NTRの楽しみがあるじゃないか。
人妻の醍醐味を忘れていた。
「わかりました。ソフィさんを受け入れましょう!」
そう言って、ソフィさんの手を握ろうとした。
「おお! アサギリさん! これからよろしくお願いします!!!」
しかし、筋肉男が暑苦しくも割り込んできて、ハグされた。
強烈なワキガの臭いが目に染みた。
くそ、絶対にソフィさんを寝取ってやる。
そんなこんなで、ソフィさんと筋肉にはまだまだ空いている廃屋の1軒を使ってもらうことにした。
ピート、ヴァンダレイジジイの時に続いて、もう3回目なので廃屋の修理は慣れたものだった。
とはいえ、ソフィさんには赤子がいる。
廃屋は1つの大きめの部屋しかないので、子供が成長する事を考えると、何かと手狭だろうと思って、土魔法で2倍くらいに拡張しておいた。
廃屋は木造なので、土魔法で作った増築分はちょっと違和感があるのだが、この際、我慢してもらおう。
ついでに、赤ちゃんベッドや、ソフィさんの腰の高さに合わせておむつ交換台のようなものも作ってみた。
ソフィさんと筋肉は、匠の美技に酔いしれたのか、呆然としていた。
ちょっと気分がいい。
「他に必要なものはないですか?」
子育てなんかしたことがないので、何が必要なものは随時聞いてみようと思った。
「……そうですな。農具は持ってきたし、ええと」
ソフィさんに聞いてみたのに、筋肉が答えた。
なんでだよ。
「何か筋肉を鍛えられるものがあればいいんですが」
「死ねよ」
子育てに必要なものを聞いたのに、何を言っているのか。
思わず死を願ってしまった。
だが、まあ、とりあえず、ぶら下がれる鉄棒のようなものを作っておいた。
筋肉はかなりガタイがいいので、《土形成》では耐久力に問題があるかもしれないと思って、《石形成》を圧縮させた黒曜石で作ってみた。
今日作った家具の中で、もっとも消費魔力が大きかったのが腹立たしい。
筋肉は嬉しそうに鉄棒で懸垂していた。
「夫のおもちゃまで作って頂いて……ありがとうございます。ありがとうございます」
ソフィさんは恐縮したように何度も頭を下げてくれた。
ふふ、思わぬ所でソフィさんの好感度を稼げたらしい。
NTRできる日も近いと見た!
そんなこんなで、その日の夜、俺は夕食を食べながら今日の出来事をルーナに報告した。
ソフィさんという人妻が引っ越してきたのだが、誠に遺憾ながら男を連れてきやがったと熱弁した。
ふと何を当たり前の事を言っているのだろうと思ったが、ルーナは黙って聞いてくれた。
俺が喋り終わるのを待って。
「言っている事はほとんどわからないが、お前が人妻好きなのはわかった。……そ、その目の前にもいるだろう? 人妻が。お前のだけど」
そんな事を言って照れるルーナは、バグってんじゃないの? というくらい可愛かったので、問答無用で押し倒してしまった。
次の日も来客ラッシュは続いた。
今日の客は団体さんだった。
先頭に立つ男が気安く声をかけてくる。
「やあ、コウ。久しぶりだね」
そう言う男には全く見覚えがなかった。
何だこいつは。
なぜ俺の名前を知っているのか。
男、というか少年だろうか。
少年は酷く単純な顔立ちをしている。
全く絵心のない俺でも3分で似顔絵を書けてしまいそうな顔だ。
目と鼻と口が棒でできているような。
へのへのもへじの方がまだ複雑な顔をしている。
「ラッセル! ラッセルじゃないか!」
その辺にいたピートがそんな事を言って驚いていた。
ラッセル?
ああ!
いたいた!
なんかそんなんいた!
一緒に戦争に行ったラッセルじゃないか。
遥か太古の記憶すぎて、完全に忘れていた。
「お、おう! ラッセル、久しぶりだな。今日はどうしたんだ?」
とりあえず、さも覚えてました感を出して言ってみた。
さも覚えてました感ってどんな感じだよと思うが。
「コウが貴族になったって聞いてね。家族で領地の開拓を手伝おうと思って、みんなでやってきたんだ。べ、別に借金取りから夜逃げしてきたわけじゃないよ?」
最後のセリフが気になる。
そういえば、ラッセルん家は貧乏だとか言っていた。
十中八九夜逃げしてきたのだろう。
というか、また開拓のお手伝いとか言っている。
だから何を手伝うんだよって話だ。
まあ、うちの近所に住みたいのなら別に構わないが。
もう異物が混入しすぎて、俺のハーレムユートピアは殆ど諦めているし。
ただ気になるのは。
「その後ろにいる団体さんはなんだ?」
ラッセルの後ろには、ぞろぞろと大人数が続いている。
皆、以前ルーナが被っていたようなフード付きのマントを被っていて、その顔は窺い知れない。
背格好は、皆一様にラッセルと同じくらいに見える。
「ああ、紹介するよ。父と母だ」
ラッセルがそう言うと、2人がフードをとる。
出てきたのは、ラッセルと全く同じ顔の2人だった。
「で、こっちが長女のキャサリン、次女のブリトニーと、三女のクリスティーヌ」
なんか美女っぽい名前だった。
しかし、紹介された3人がフードをとるとラッセルの棒線顔が出てきた。
「四女のパリスに、五女のダイアナと……」
ラッセルが次々と冗談みたいな名前を呼び上げると、フードがめくられラッセルの顔が出てくる。
そして、14人のラッセルが集合した。
え、なにこれ。
「な? 言ったとおりだったろ?」
ピートが悟ったような目で言った。
な? じゃねえから。
「似すぎというか、コピーしすぎというか」
思わずそんな感想が漏れてしまう。
14人のラッセルは皆完全に同じ顔をしている。
まるでラッセルをコピペしたようだ。
妹達は髪型こそ、女っぽいものになっているが顔はラッセルそのものだ。
「家族だからね。そりゃ似ているさ」
ラッセルはそんな事を言っているが、その理屈で言ったら母親が同じ顔をしている件の説明がつかない。
「「「「「「「「「「「「「よろしくお願いします。アサギリ卿!」」」」」」」」」」」」」
ラッセル一家は、声までラッセルと同じだった。
もはや遺伝子兵器なんじゃないだろうかと疑ってしまうレベルだ。
なんなのこいつら、大道芸でも見せに来たのだろうか。
いや、大道芸と考えるとかなりのレベルだな。
「ちょっとルーナを連れてくるから、さっきの芸もう一回やってくれるか?」
「え? 芸ってなんだい?」
よく判っていないラッセルを残して、家に戻る。
クッキーを作っていたルーナをそのまま連れてきた。
「わわ、なんだ、いきなり? 今生地を作ってるんだぞ?」
ルーナの手にはボウルとかき混ぜ器が握られているが気にしない。
そして、再びラッセルにさっきの芸をやってもらった。
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「……う、うん。だけど、こんな大人数どこに住んでもらうんだ?」
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「どこって、廃屋が1軒余ってるだろう?」
ピート兄弟、ヴァンダレイ爺孫、ソフィ家族が使っているので、最後の1軒だ。
「いや、絶対に入り切らないだろう」
そうだろうか。
狭い空間にぎっしりと詰まっている方がゲノム兵っぽくて良い気がしたのだが。
「奥さん、家は僕達でなんとかするから……」
心配するルーナにラッセルがそんな事を言っている。
ふむ。
大人数が住める家か。
マンションでも建てるか。
日照権とかがあるから、ちょっと外れた場所になるけど。
そんなわけで、村外れに4階建てのマンションを建築した。
念入りに基礎工事をして、黒曜石の柱で作ったオール土魔法建築だ。
とはいえ、セレナ邸に匹敵する規模の建築物だったので、完成するまでに3日もかかってしまった。
その間、ラッセルズは野宿していた。
14人中、12人が女性らしい(ラッセル曰く)のだが、なぜか野宿させても全然胸は痛まなかった。
完成したマンションは、1階部分に家族全員の団欒スペースと食堂を用意した。
2階から上はそれぞれのパーソナルスペースだ。
一人6畳位の個室しか用意できなかったので、不満が出ないか心配だったがラッセルズは引くくらい喜んでいた。
あとは、初めての高層建築物なので、なんと言っても強度が心配だった。
とりあえず、フィリスを呼んでマンションの柱を思い切りぶん殴って貰った。
マンションは微動だにしなかった。
一安心である。
カンナさんやセレナがやったら危ないかもしれないが、あの2人は日本のマンションも素手で崩壊させそうなので気にしない。
「あの、もうちょっと女の子扱いしてほしいです……」
フィリスがそんな事を言って凹んでいたので、とりあえず薄い胸を揉みながら、口の中を舐め回してみた。
フィリスは物凄く興奮してくれたのだが。
「はあはあ、お返しにコウ様のお尻をペロペロさせてもらってもいいですか?」
何がお返しなのか全然わからなかったので、辞退しておいた。
フィリスはちょっとベクトルがおかしいので、気軽に抱けない。
そんなこんなでうちの近所が賑やかになってしまった。
ラッセル家のせいで人口増加率が2倍近い。
そんな急激に人口が増えたら、色んな問題が出てくる気がするが、未来の俺が苦しめばいいのであって、今の俺には関係ないのである。
それよりも、今、俺の目の前でフリフリと揺れているセレナの尻のほうが気になる。
「あなたのお茶は私が淹れたいと思って、カレリアに習ったのよ? え、ちょっと待って、どこに顔を付けているの!? あん、だ、だめ!」
どこって尻だが。
そのままいつものようにセレナを押し倒した。
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