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第三章 戦争編
第90話 論功行賞 ②
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次の日の早朝、使者の予告通り馬車が迎えに来た。
馬車は二頭建ての結構大きな馬車だった。
とりあえず、馬車の荷台に俺たちの着替え等を積み込む。
王都で着る儀礼用の服だ。
ルーナのドレスは昨日遅くまで、セレナと一緒にギャーギャー言いながら、カレリアさんに仕立て直して貰って、なんとか間に合ったらしい。
たった1着のドレスを仕立て直すだけなのに、セレナとルーナは物凄い熱中していて、とても俺が入り込める雰囲気ではなかったので、早々に立ち去ってミレイを抱いて寝た。
なので、まだドレスルーナは拝んでいない。
王都で見るのを楽しみにしておこうと思う。
ちなみに、俺の燕尾服の仕立ては数分で終わった。
男の衣装なんてそんなものだ。
馬車の中は、向かい合って座るタイプの座席がついていた。
座席にはクッションが敷き詰められていて、そこはかとなくバブリーな雰囲気を醸し出しているのだが、ルーナ曰く、長旅に耐えられるように設置してあるらしい。
馬車は結構揺れるので、クッションが無いと尻が痛くなるそうだ。
とりあえず、ルーナと向かい合って座る。
ルーナと目が会うと、にっこりと微笑んだ。
なんかご機嫌だ。
「えへへ、楽しみだな」
何言ってんだこいつ。
王都は恐らく、日本で言うなら狂気の都、東京に相当するだろう。
ストレスで溢れているのに違いない。
楽しみなんて1ミリもないはずだ。
「王の慰安が終わったら、2人で色んな所、見て回ろうな?」
ルーナは嬉しそうにそんな事を言う。
それではまるでデートじゃないか。
まあ、サーガットの町ではデートできなかったので、今回は付き合ってやってもいいかもしれないが。
「そういえば、金はちゃんと持ってきたか?」
サーガットの町では金がなくてデートできなかったのだ。
ちなみに、俺は持ってきていない。
あの時、反省したつもりだったが、うっかり忘れていたのに今気づいた。
「うん! ちゃんといっぱい持ってきたぞ! 家が買えるくらい持ってきた」
ルーナは嬉しそうにぱんぱんに膨らんだ革袋を見せてくる。
あの中には金貨が詰まっているのだろうか。
というか、なぜ家が買えるくらい持ってきたのかわからない。
これがお嬢様の金銭感覚なのだろうか。
「あとな? 今日のお昼ご飯も作ってきたんだ。それから、おやつに食べられるようにパイも焼いてきたんだぞ。ほら、美味しそうだろ?」
ルーナは嬉しそうにバスケットの中身を見せつけてくる。
確かにこんがり焼けたパイは美味しそうだったが。
「お前、昨日遅くまでドレス仕立ててたのに、パイなんていつ焼いたんだ?」
「え? ちょっと、徹夜して……」
そういえば、ルーナの目の下にはわずかな隈ができている。
朝っぱらからテンション高いなとは思っていたが、そのせいか。
「だ、だってな? 楽しみで眠れなかったんだ。突然決まって慌てたけど、お前と2人で王都に旅行に行けると思ったから」
旅行とか言い出した。
まあ、気張る必要なんてないのだろうが。
「……お前、私も行くことを忘れていない?」
セレナが馬車に乗り込んでくる。
ルーナは小さく舌打ちしていた。
セレナは俺の隣に腰を下ろす。
恐らく4人乗りなのだろうが、結構狭い車内だ。
セレナが隣りに座ると、いい感じに密着して、肘におっぱいが当たる。
馬車っていいですね。
「お、おい! なんでコウの隣に座るんだ!?」
「はあ? お前の隣はバスケットやら革袋やら、荷物でいっぱいじゃないの。この子の隣しか空いてないんだから仕方ないでしょう? ねえ?」
そんな事を言いながら、セレナが身体を押し付けてくる。
腕がおっぱいにずぶずぶと埋まる。
「う、うむ。仕方ないな」
「うわああ! お前まで何を言っているんだ!? じゃあ、私はここに座るからな!」
泣きながらルーナが膝の上に飛び乗ってくる。
膝に感じる尻の感触が心地よい。
本当に馬車っていいですね。
「はあ!? そんな所に座って舌でも噛んだらどうするの? ちゃんと席に座りなさい!」
「コウがちゃんと抱きしめてくれるもん! なー?」
「お、おう」
言われるがままに、ルーナの細い腰に手を回す。
「おう、じゃないわよ! 離れなさいエロ娘!」
「いたいいたい!」
セレナがルーナの髪の毛を引っ張っている。
目の前で、生々しい喧嘩を始めるのやめてもらいたいんだけど。
なんか馬車が揺れてるし。
「発車致します」
御者台の方から、そんな酷く事務的な声が聞こえて、馬車が動き出す。
というか、こんな状況で動き出さないで欲しい。
お客様喧嘩中だから!
JRだったら絶対に15分は停車するレベルだから!
揺れ動く馬車に、ルーナが膝から滑り落ちそうになったので、慌てて抱きとめる。
「……なあなあ、もっとギュッとしてくれ」
ルーナは目を蕩けさせながらそんな事を言っている。
可愛いのだが。
セレナに引っ張られた髪がブチブチ音を立てながら言われても冷や汗しか出てこない。
結局、俺が荷物の隣に一人で座ることにした。
ルーナとセレナはぶーぶー文句を言っていたが、ルーナの脳と毛根が心配だったので仕方ないのだ。
馬車が動き出してしばらくすると、ルーナが静かに寝息を立て始めた。
昨日徹夜したとか言っていたので、眠かったのだろう。
ルーナはセレナの肩にもたれ掛かるようにして眠っている。
しかし、どちらかと言うとセレナは撫肩なので、ルーナはどんどんずり落ちていき、やがてセレナの巨乳にぽすんと乗っかった。
人の頭が乗った……だと……?
「ふふ、眠っていると可愛いのだけれどね」
「お、おう」
セレナが微笑ましい事を言っているが、おっぱいで頭が一杯で上手く受け答えができなかった。
さんざん揉みまくったつもりだったが、まだまだセレナのおっぱいにはロマンがたくさん詰まっている。
しばらくして目を覚ましたルーナも、セレナのおっぱいが気になるらしく、不満そうな表情でセレナの隣にむにゅっと座っている。
「……なあ、前から気になってたんだが、普段何を食べたらこんなに大きくなるんだ?」
ついにルーナが聞いてしまった。
それは俺も前から気になっていた。
「何よ? いきなり。食べ物になんか気を使ってないわよ。吸血鬼なのよ? 私。ただ、言っておくけれど、お前がこの前、行商人からこっそり買っていた豊胸薬は効果ないと思うわよ」
「ええ!?」
あの商人からそんなものを買っていたのか。
気にすることなんて全然ないのに。
セレナの巨乳もルーナの美乳も等しく国の宝だ。
国の宝というか、俺の宝だが。
というか、豊胸薬とか。
そんな怪しげなものに騙されるなよと言いたい。
ほんとにチョロいというか、なんというか。
「……あなたにも一応言っておくけれど、増毛剤と精力剤も多分インチキよ?」
「ええ!?」
思わずルーナと同じセリフを言ってしまった。
そんな馬鹿な。
「…………精力剤?」
ルーナが俺を見つめながら、ゴクリと喉を鳴らす。
「なんでそこに反応するの!? 本当にエロい娘ね。隣で発情しないでくれる? 暑苦しいから」
「べ、別に発情なんてしてないぞ!」
そうして再びルーナとセレナはギャーギャーと喧嘩を始めた。
王都までずっとこんな感じなのだろうか。
俺の胃が保つことを祈ろう。
というか、あの商人はいつかぶっ飛ばす。
そんなこんなで王都への旅程は比較的順調に進んだ。
王都までは5日かかるらしい。
この世界は移動に時間がかかりすぎるのが難点だ。
戦争に行った時もそうだったが、移動に数日かかるのはザラらしい。
まあ、今回はルーナとセレナが同行しているので戦争に行った時よりは何倍もマシだったが。
ちなみに、夜は御者さんが天幕を張ってくれたので、そこに3人で川の字になって寝た。
3人だし、さすがに自重しようかなと思っていたのだが、ルーナが当然のように求めてきたので、すげえなこいつと思いながら、気絶するまで抱いた。
その後は、隣で寝たふりをしていたセレナを抱いた。
ルーナとセレナを並べて抱くのは楽しかった。
いつか2人を同時に抱いてみたい。
ルーナが泣くだろうから多分無理だけど。
それでも、いつか必ず……!
俺は人生の最終目標が見つかった気がした。
家を出発してから、もう4日が経っていた。
王都まであと少しだ。
「なあ、戦の話を聞かせてくれないか?」
不意にルーナにそんな事を聞かれた。
そういえば、帰ってきてからは戦争の話は詳しくしていなかった。
というか、俺が危ない目に遭う話なんて聞きたくないとか言っていた気がするのだが。
「この国の王に会うのに、妻の私が夫が戦でどんな働きをしたのか知らないのは不味い気がしてきたんだ」
「それもそうね」
セレナまで聞きたそうにしている。
ふむ。
長い話は苦手なのだが、馬車に黙って乗っているのはさすがに飽きてきたので、たまにはいいかと思った。
「ええと、じゃあ、戦場についてから話すな?」
そんな前置きをして、たどたどしくも戦争の話をする。
オーク騎馬隊を止める為に土魔法を使ったあたりでは、ルーナに魔法を使った件を怒られると思ったのだが、ルーナはまじめな顔で聞いているだけだった。よかった。
というか、話しているうちにルーナの顔色がどんどん青ざめていく。
話し終えた頃には、頭を抱えだしていた。
なんかおかしな事を言ってしまっただろうか。
「……なあ、なんかお前が王国軍壊滅の危機を救ったように聞こえるんだが?」
「まあ、そうだな。あと敵将の首も討ったぞ」
これでも戦争で結構活躍したのだ。
とりあえずルーナにドヤ顔を向ける。
「………」
ルーナは顔を青くするだけだった。
バカな。
いつものアヘ顔はどうした。
毎回心配になっていたが、されなきゃされないで、ちょっとさみしい。
「……それで? 軍司令官直々に褒美をやると言われて? 今、私たちは王都に向かっているのか?」
「そうそう」
とりあえず、肯定すると、ルーナは肩を震わせながら俯いてしまう。
「はあ、あなたのことだから、すごい大活躍をしたんだろうなとは思っていたけれど」
セレナにため息をつかれてしまった。
あれ、なんか雲行きがおかしい。
「大活躍って……。叙爵ものの大手柄じゃないか!!!」
ルーナがキッと俺を睨みつけながら言う。
その目にはじわじわと涙が溜まり始める。
なぜ泣く。
「何が慰安だ!? 何が旅行だ!? 爵位を貰いに行くんじゃないか! うわーん! コウが貴族になっちゃうー!」
旅行はお前が勝手に思っただけなのだが。
「だいたいそんな戦果上げちゃって、お前の正体がバレちゃったらどうするんだ!?」
「よしよし。それくらいじゃ英霊(エインヘリアル)だとは思われないわ。大丈夫よ。とにかくお前はこの子を盛りたてる事だけを考えなさい? それが妻の役目でしょう? あとは私が何とかしてあげるから。……本当についてきて良かったわ」
セレナがルーナを優しく抱きしめている。
というか、ルーナがなんで泣くのかわからない。
俺の活躍は貴族になれるレベルだったという事だろうか。
貴族になんてなりたくはないが、それだけの活躍をしたのだ。
もっと褒めてほしいのだが。
「はあ、貴族というものはね、多くの特権が認められると同時に、戦には絶対に参加しなくてはならない義務が生じるのよ? 戦に行くあなたの無事を家で祈り続ける女の気持ちを考えなさい?」
頭に疑問符を浮かべまくっていたら、セレナがそんな説明をしてくれた。
なるほど。
それでルーナが泣いているのか。
俺が戦争に行くのを極端に嫌がっていたもんな。
うーん。
たしかに戦争に行くのはめんどいけど。
「……後、恐らくあなたが叙されるであろう騎士爵とか男爵みたいな下級貴族は王宮勤めが普通よ?」
「えええええ!?」
王宮勤め?
王宮に通うってこと?
というか、勤め?
働くってこと?
絶対に嫌だ!!!
「辞退しよう」
「……国王に対する侮辱と取られて死刑ね」
「えええ!? じゃあ、このまま逃げようぜ」
「……それは辞退以上の侮辱になるのだけど、わかっている?」
そういえば、バックレようとした時にルーナにもそんな事を言われた。
えーどうしようどうしよう。
「まあ、私がなんとか交渉してみるわよ。これでも一応、女伯爵の爵位を持ってるのよ? ……完全に形だけだけれど」
さすがセレナサンは頼りになる。
というか、本当にどうしよう。
なんで戦争でがんばったのに、そんな苦行を押し付けられなくてはならないのか。
あー、すごい混乱する。
なんか落ち着くことしたい。
「セレナ」
「なあに?」
「乳を揉ませてくれ」
「……いいけど。事の重大さがわかっているの? あなた」
呆れながらも胸を差し出してくるセレナ。
事の重大さはわかっているが、今はとりあえずこの巨乳を揉んで落ち着かねば。
そんな時、泣いていたルーナがガバッと顔を上げた。
「うぐ、ひっく、ぐす……揉むなら私のを揉め」
「お、おう」
泣きじゃぐりながらもルーナはブレない。
とりあえず、ルーナの美乳を揉む。
あー落ち着く。
脳内にドーパミンがドバドバ分泌されていくのがわかる。
落ちついて改めて思う。
王都行くの本気で嫌なんだけど!
それでも、馬車は無慈悲にも王都に向かって突き進んでいくのだった。
馬車は二頭建ての結構大きな馬車だった。
とりあえず、馬車の荷台に俺たちの着替え等を積み込む。
王都で着る儀礼用の服だ。
ルーナのドレスは昨日遅くまで、セレナと一緒にギャーギャー言いながら、カレリアさんに仕立て直して貰って、なんとか間に合ったらしい。
たった1着のドレスを仕立て直すだけなのに、セレナとルーナは物凄い熱中していて、とても俺が入り込める雰囲気ではなかったので、早々に立ち去ってミレイを抱いて寝た。
なので、まだドレスルーナは拝んでいない。
王都で見るのを楽しみにしておこうと思う。
ちなみに、俺の燕尾服の仕立ては数分で終わった。
男の衣装なんてそんなものだ。
馬車の中は、向かい合って座るタイプの座席がついていた。
座席にはクッションが敷き詰められていて、そこはかとなくバブリーな雰囲気を醸し出しているのだが、ルーナ曰く、長旅に耐えられるように設置してあるらしい。
馬車は結構揺れるので、クッションが無いと尻が痛くなるそうだ。
とりあえず、ルーナと向かい合って座る。
ルーナと目が会うと、にっこりと微笑んだ。
なんかご機嫌だ。
「えへへ、楽しみだな」
何言ってんだこいつ。
王都は恐らく、日本で言うなら狂気の都、東京に相当するだろう。
ストレスで溢れているのに違いない。
楽しみなんて1ミリもないはずだ。
「王の慰安が終わったら、2人で色んな所、見て回ろうな?」
ルーナは嬉しそうにそんな事を言う。
それではまるでデートじゃないか。
まあ、サーガットの町ではデートできなかったので、今回は付き合ってやってもいいかもしれないが。
「そういえば、金はちゃんと持ってきたか?」
サーガットの町では金がなくてデートできなかったのだ。
ちなみに、俺は持ってきていない。
あの時、反省したつもりだったが、うっかり忘れていたのに今気づいた。
「うん! ちゃんといっぱい持ってきたぞ! 家が買えるくらい持ってきた」
ルーナは嬉しそうにぱんぱんに膨らんだ革袋を見せてくる。
あの中には金貨が詰まっているのだろうか。
というか、なぜ家が買えるくらい持ってきたのかわからない。
これがお嬢様の金銭感覚なのだろうか。
「あとな? 今日のお昼ご飯も作ってきたんだ。それから、おやつに食べられるようにパイも焼いてきたんだぞ。ほら、美味しそうだろ?」
ルーナは嬉しそうにバスケットの中身を見せつけてくる。
確かにこんがり焼けたパイは美味しそうだったが。
「お前、昨日遅くまでドレス仕立ててたのに、パイなんていつ焼いたんだ?」
「え? ちょっと、徹夜して……」
そういえば、ルーナの目の下にはわずかな隈ができている。
朝っぱらからテンション高いなとは思っていたが、そのせいか。
「だ、だってな? 楽しみで眠れなかったんだ。突然決まって慌てたけど、お前と2人で王都に旅行に行けると思ったから」
旅行とか言い出した。
まあ、気張る必要なんてないのだろうが。
「……お前、私も行くことを忘れていない?」
セレナが馬車に乗り込んでくる。
ルーナは小さく舌打ちしていた。
セレナは俺の隣に腰を下ろす。
恐らく4人乗りなのだろうが、結構狭い車内だ。
セレナが隣りに座ると、いい感じに密着して、肘におっぱいが当たる。
馬車っていいですね。
「お、おい! なんでコウの隣に座るんだ!?」
「はあ? お前の隣はバスケットやら革袋やら、荷物でいっぱいじゃないの。この子の隣しか空いてないんだから仕方ないでしょう? ねえ?」
そんな事を言いながら、セレナが身体を押し付けてくる。
腕がおっぱいにずぶずぶと埋まる。
「う、うむ。仕方ないな」
「うわああ! お前まで何を言っているんだ!? じゃあ、私はここに座るからな!」
泣きながらルーナが膝の上に飛び乗ってくる。
膝に感じる尻の感触が心地よい。
本当に馬車っていいですね。
「はあ!? そんな所に座って舌でも噛んだらどうするの? ちゃんと席に座りなさい!」
「コウがちゃんと抱きしめてくれるもん! なー?」
「お、おう」
言われるがままに、ルーナの細い腰に手を回す。
「おう、じゃないわよ! 離れなさいエロ娘!」
「いたいいたい!」
セレナがルーナの髪の毛を引っ張っている。
目の前で、生々しい喧嘩を始めるのやめてもらいたいんだけど。
なんか馬車が揺れてるし。
「発車致します」
御者台の方から、そんな酷く事務的な声が聞こえて、馬車が動き出す。
というか、こんな状況で動き出さないで欲しい。
お客様喧嘩中だから!
JRだったら絶対に15分は停車するレベルだから!
揺れ動く馬車に、ルーナが膝から滑り落ちそうになったので、慌てて抱きとめる。
「……なあなあ、もっとギュッとしてくれ」
ルーナは目を蕩けさせながらそんな事を言っている。
可愛いのだが。
セレナに引っ張られた髪がブチブチ音を立てながら言われても冷や汗しか出てこない。
結局、俺が荷物の隣に一人で座ることにした。
ルーナとセレナはぶーぶー文句を言っていたが、ルーナの脳と毛根が心配だったので仕方ないのだ。
馬車が動き出してしばらくすると、ルーナが静かに寝息を立て始めた。
昨日徹夜したとか言っていたので、眠かったのだろう。
ルーナはセレナの肩にもたれ掛かるようにして眠っている。
しかし、どちらかと言うとセレナは撫肩なので、ルーナはどんどんずり落ちていき、やがてセレナの巨乳にぽすんと乗っかった。
人の頭が乗った……だと……?
「ふふ、眠っていると可愛いのだけれどね」
「お、おう」
セレナが微笑ましい事を言っているが、おっぱいで頭が一杯で上手く受け答えができなかった。
さんざん揉みまくったつもりだったが、まだまだセレナのおっぱいにはロマンがたくさん詰まっている。
しばらくして目を覚ましたルーナも、セレナのおっぱいが気になるらしく、不満そうな表情でセレナの隣にむにゅっと座っている。
「……なあ、前から気になってたんだが、普段何を食べたらこんなに大きくなるんだ?」
ついにルーナが聞いてしまった。
それは俺も前から気になっていた。
「何よ? いきなり。食べ物になんか気を使ってないわよ。吸血鬼なのよ? 私。ただ、言っておくけれど、お前がこの前、行商人からこっそり買っていた豊胸薬は効果ないと思うわよ」
「ええ!?」
あの商人からそんなものを買っていたのか。
気にすることなんて全然ないのに。
セレナの巨乳もルーナの美乳も等しく国の宝だ。
国の宝というか、俺の宝だが。
というか、豊胸薬とか。
そんな怪しげなものに騙されるなよと言いたい。
ほんとにチョロいというか、なんというか。
「……あなたにも一応言っておくけれど、増毛剤と精力剤も多分インチキよ?」
「ええ!?」
思わずルーナと同じセリフを言ってしまった。
そんな馬鹿な。
「…………精力剤?」
ルーナが俺を見つめながら、ゴクリと喉を鳴らす。
「なんでそこに反応するの!? 本当にエロい娘ね。隣で発情しないでくれる? 暑苦しいから」
「べ、別に発情なんてしてないぞ!」
そうして再びルーナとセレナはギャーギャーと喧嘩を始めた。
王都までずっとこんな感じなのだろうか。
俺の胃が保つことを祈ろう。
というか、あの商人はいつかぶっ飛ばす。
そんなこんなで王都への旅程は比較的順調に進んだ。
王都までは5日かかるらしい。
この世界は移動に時間がかかりすぎるのが難点だ。
戦争に行った時もそうだったが、移動に数日かかるのはザラらしい。
まあ、今回はルーナとセレナが同行しているので戦争に行った時よりは何倍もマシだったが。
ちなみに、夜は御者さんが天幕を張ってくれたので、そこに3人で川の字になって寝た。
3人だし、さすがに自重しようかなと思っていたのだが、ルーナが当然のように求めてきたので、すげえなこいつと思いながら、気絶するまで抱いた。
その後は、隣で寝たふりをしていたセレナを抱いた。
ルーナとセレナを並べて抱くのは楽しかった。
いつか2人を同時に抱いてみたい。
ルーナが泣くだろうから多分無理だけど。
それでも、いつか必ず……!
俺は人生の最終目標が見つかった気がした。
家を出発してから、もう4日が経っていた。
王都まであと少しだ。
「なあ、戦の話を聞かせてくれないか?」
不意にルーナにそんな事を聞かれた。
そういえば、帰ってきてからは戦争の話は詳しくしていなかった。
というか、俺が危ない目に遭う話なんて聞きたくないとか言っていた気がするのだが。
「この国の王に会うのに、妻の私が夫が戦でどんな働きをしたのか知らないのは不味い気がしてきたんだ」
「それもそうね」
セレナまで聞きたそうにしている。
ふむ。
長い話は苦手なのだが、馬車に黙って乗っているのはさすがに飽きてきたので、たまにはいいかと思った。
「ええと、じゃあ、戦場についてから話すな?」
そんな前置きをして、たどたどしくも戦争の話をする。
オーク騎馬隊を止める為に土魔法を使ったあたりでは、ルーナに魔法を使った件を怒られると思ったのだが、ルーナはまじめな顔で聞いているだけだった。よかった。
というか、話しているうちにルーナの顔色がどんどん青ざめていく。
話し終えた頃には、頭を抱えだしていた。
なんかおかしな事を言ってしまっただろうか。
「……なあ、なんかお前が王国軍壊滅の危機を救ったように聞こえるんだが?」
「まあ、そうだな。あと敵将の首も討ったぞ」
これでも戦争で結構活躍したのだ。
とりあえずルーナにドヤ顔を向ける。
「………」
ルーナは顔を青くするだけだった。
バカな。
いつものアヘ顔はどうした。
毎回心配になっていたが、されなきゃされないで、ちょっとさみしい。
「……それで? 軍司令官直々に褒美をやると言われて? 今、私たちは王都に向かっているのか?」
「そうそう」
とりあえず、肯定すると、ルーナは肩を震わせながら俯いてしまう。
「はあ、あなたのことだから、すごい大活躍をしたんだろうなとは思っていたけれど」
セレナにため息をつかれてしまった。
あれ、なんか雲行きがおかしい。
「大活躍って……。叙爵ものの大手柄じゃないか!!!」
ルーナがキッと俺を睨みつけながら言う。
その目にはじわじわと涙が溜まり始める。
なぜ泣く。
「何が慰安だ!? 何が旅行だ!? 爵位を貰いに行くんじゃないか! うわーん! コウが貴族になっちゃうー!」
旅行はお前が勝手に思っただけなのだが。
「だいたいそんな戦果上げちゃって、お前の正体がバレちゃったらどうするんだ!?」
「よしよし。それくらいじゃ英霊(エインヘリアル)だとは思われないわ。大丈夫よ。とにかくお前はこの子を盛りたてる事だけを考えなさい? それが妻の役目でしょう? あとは私が何とかしてあげるから。……本当についてきて良かったわ」
セレナがルーナを優しく抱きしめている。
というか、ルーナがなんで泣くのかわからない。
俺の活躍は貴族になれるレベルだったという事だろうか。
貴族になんてなりたくはないが、それだけの活躍をしたのだ。
もっと褒めてほしいのだが。
「はあ、貴族というものはね、多くの特権が認められると同時に、戦には絶対に参加しなくてはならない義務が生じるのよ? 戦に行くあなたの無事を家で祈り続ける女の気持ちを考えなさい?」
頭に疑問符を浮かべまくっていたら、セレナがそんな説明をしてくれた。
なるほど。
それでルーナが泣いているのか。
俺が戦争に行くのを極端に嫌がっていたもんな。
うーん。
たしかに戦争に行くのはめんどいけど。
「……後、恐らくあなたが叙されるであろう騎士爵とか男爵みたいな下級貴族は王宮勤めが普通よ?」
「えええええ!?」
王宮勤め?
王宮に通うってこと?
というか、勤め?
働くってこと?
絶対に嫌だ!!!
「辞退しよう」
「……国王に対する侮辱と取られて死刑ね」
「えええ!? じゃあ、このまま逃げようぜ」
「……それは辞退以上の侮辱になるのだけど、わかっている?」
そういえば、バックレようとした時にルーナにもそんな事を言われた。
えーどうしようどうしよう。
「まあ、私がなんとか交渉してみるわよ。これでも一応、女伯爵の爵位を持ってるのよ? ……完全に形だけだけれど」
さすがセレナサンは頼りになる。
というか、本当にどうしよう。
なんで戦争でがんばったのに、そんな苦行を押し付けられなくてはならないのか。
あー、すごい混乱する。
なんか落ち着くことしたい。
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「なあに?」
「乳を揉ませてくれ」
「……いいけど。事の重大さがわかっているの? あなた」
呆れながらも胸を差し出してくるセレナ。
事の重大さはわかっているが、今はとりあえずこの巨乳を揉んで落ち着かねば。
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「うぐ、ひっく、ぐす……揉むなら私のを揉め」
「お、おう」
泣きじゃぐりながらもルーナはブレない。
とりあえず、ルーナの美乳を揉む。
あー落ち着く。
脳内にドーパミンがドバドバ分泌されていくのがわかる。
落ちついて改めて思う。
王都行くの本気で嫌なんだけど!
それでも、馬車は無慈悲にも王都に向かって突き進んでいくのだった。
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その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
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美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
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【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
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