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第三章 戦争編
第87話 子分
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この日は、ミレイと村外れの廃屋の辺りに来ていた。
何をしに来たのかというと、先日セレナとしたアオカンが思いの外良かったので、今日はミレイとやろうと思ったのだ。
「昨日もあれだけしたのに、またするんですか?」
戸惑うミレイの服をめくり上げる。
綺麗な生乳がポロンと露出した。
当然の如く揉みしだいた。
「しかも、外でなんて……恥ずかしいです」
そんな事を言いつつも、キスをするとしっかりと舌を絡めてくる。
「私に夢中になってくれるのはうれしいですけど、少しルーナさんに申し訳ないです……」
ルーナはルーナでちゃんと毎日抱いているので問題ないのだ。
そんな事を考えながら、せっせとミレイの服を剥ぎ取っていった。
「こ、コウ! さん!」
不意に誰かに名前を呼ばれた。
しかも、男の声だった。
対人恐怖症が発動するのを感じながら振り返ると、見覚えのない少年が立っていた。
ミレイが短い悲鳴を上げて、少年に背を向けて衣服を直している。
せっかく脱がせたのに。
俺は怒りを込めて少年を見る。
なんなんだこいつ、モブキャラみたいな顔しやがて。
というか、なんで俺の名前を知っているんだろうか。
あれ?
こいつ知ってる気がする。
なんだ、モブキャラかと思ったらピートじゃないか!
「お、おう、ピートか。久しぶりだな」
そこに立っていたのは、一緒に戦争に行ったピートだった。
残念な事にピートも男なので、数日会わなかった為に俺の脳内アルゴリズムがオートデリートしようとしていたのだ。
完全にデリートされる前でよかった。
というか、なんでピートがこんな所にいるんだろうか。
ここは街から徒歩で3日も離れた辺境中の辺境だ。
ふらっと立ち寄るような場所じゃない。
不審に思って見ていると、突然、ピートは地面に這いつくばった。
そして、思い切り頭を地面に擦り付ける。
「頼みます! 俺をコウさんの子分にしてください!」
そして、そんな事を言い始めた。
急に何言ってんの、こいつ。
「俺はあなたに返しきれない恩があります。あの戦で、俺はお嬢様を守って死ぬつもりでした。それでも、俺が命をかけたって、お嬢様は守りきれなかったと思います。だけど、あなたが……。あなたが俺たちを守ってくれました! 俺、すごく感動して……」
ピートは目を潤ませながら、思いの丈をぶつけてくる。
その表情は真剣そのもので、俺はさっきまでミレイを抱こうとしていたムラムラ感が消えていくのを感じた。
「どうやって恩を返せばいいのか、必死に考えました。でも、俺、何も返せるものを持っていなくて……。だから、せめてあなたの子分にして貰おうと思って来ました! お願いします。ここに置いてやって下さい!」
ピートは結構な荷物を背負っていた。
家を出てきたのだろうか。
確か庭師の息子だとか言っていたが。
とりあえず、しゃがみ込んでピートの腕をとって立たせようとした。
それでも、ピートは頭を下げたまま、立ち上がろうとしなかった。
ふーむ。
どうしよう。
とりあえず、ミレイを振り仰いでみたが、ミレイは何がなんだかわからないと言った表情をしていた。
そりゃそうだ。
「……とりあえず、その気持ちの悪い敬語をやめろ。俺の事も呼び捨てでいいから」
仲の良かったピートに敬語を使われると、ハブられているような錯覚を受けるのだ。
「で、でも」
「慣れないことをするなって」
「あ、ああ……わかった」
言葉遣いは改めてくれたが、ピートは頑なに立ち上がろうとしなかった。
仕方なく俺も地べたにあぐらをかいて、視線の高さだけでも合わせた。
「子分と言ってもなあ。俺の子分になんてなって何をするんだ?」
子分とは部下的な解釈でいいのだろうか。
といっても、俺は普段仕事をしていないので、振る仕事はないし。
普段仕事をしていないとか、自分で思っておいて軽く傷ついてしまった。
普段俺が何をしているかって?
朝起きて、軽くヒツジを狩りに行って、帰りにセレナを抱いて、その後、カンナさんを抱いて、家に帰ってきてルーナを抱いて、晩御飯を食べて、ルーナを抱いて、その後、夜中にミレイを抱くのだ。
子分の介在する余地がないクソ野郎っぷりだ。
というか本当に、いつテクノブレイクしてもおかしくない気がしてきた。
不安である。
「次の戦の時に子分として一緒に連れて行ってくれるだけでいい。それまでは、身体を鍛えたりしているから」
次の戦争にも、俺は参戦する事が確定している言い方な気がするが。
普段は放っておいていいということだろうか。
「多分、お前はこれから多くの子分を抱えると思う。とにかく、俺はその一番最初になりたいんだ!」
「俺が子分なんか抱えるだろうか」
人間嫌いの俺が子分なんて持つわけないのだが。
美女なら抱えるが。
「きっとそうなる。だって、お前は将軍になる男だからだ! あの時、オークに向かって突撃していくお前を見て確信したんだ」
ピートは目をキラキラさせていた。
なんか途方もない勘違いをしている。
将軍なんて、生まれてから一度もなりたいと思ったことないんだけど。
「……ちなみに、帰れと言ったらどうする?」
「絶対に帰らない! お前の子分になるまで、俺はここを動かない!」
ピートは地面にしがみつくように爪を立てる。
そんな事をしても、俺の筋力ステータスなら簡単に弾き剥がせるのだが。
うーむ。
どうしよう。
「……そういえば、お前の後ろにいるその子供は誰だ?」
さっきからちょいちょい気になっていた。
ピートの後ろに鼻水を垂らした子供が立っていたのだ。
10歳くらいの男の子だ。
「こいつは俺の弟でカービンという。カー坊と呼んでやってくれ」
実際に~坊とか呼ばれてる奴、初めて見た。
昭和の漫画か。
カー坊は鼻水を垂らして、指を咥えたまま俺をボーっと見ていた。
うーむ、バカっぽい。
「それで、そのカー坊は何しに来たんだ?」
「こいつも男だ。まだ10歳だけど、今から鍛えて、いずれお前の下で戦わせようと思っている」
弟の将来を兄が勝手に決めるとか。
理不尽にも程がある。
カー坊に不満はないんだろうか。
そう思いながら、カー坊を見つめてみる。
カー坊はボーッとしながら、地面に這いつくばっているピートの裾をちょいちょいと引っ張った。
「……あんちゃん、さっき、このお姉ちゃんのおっぱい見えた」
「か、カー坊!」
突然、なんの脈略もない事を言い出すカー坊の口をピートが塞いでいる。
ミレイが顔を真赤にして胸元を隠していた。
さっき俺が肌蹴させたのを見ていたのだろうか。
というか、カー坊はバカだ。
ただ好感の持てるバカだ。
今時珍しいエロガキだ。
不意に見えてしまったミレイのおっぱいが目に焼き付いて離れないのだろう。
俺も20年前はそんな感じだった。
カー坊の頭を優しく撫でておいた。
カー坊は金髪を短く刈り込んでいる。
撫で心地が良い。
少し10円ハゲがあるのが気になるが。
それにしても、どうするか。
ピートは17歳とか言っていた。
カー坊はもちろん、ピートもまだ未成年だ。
「……親御さんはなんて言っているんだ?」
「親父は俺の好きなようにしろって言ってくれている。家はアニキが継ぐし」
まあ、親が納得しているならいいのだろうか。
人様の子供を預かるような感じになってしまうので、少し責任を感じてしまうのだが。
ピートがここにいたいと言うなら、いさせてやっても良いかもしれない。
幸いミレイ農園のお陰で食べ物には困っていないし、普段はその辺の野山で遊ばせておけばいいだろう。
カー坊はともかく、ピートは野山で遊んで楽しいだろうかとは思うが。
「住む家はどうするんだ?」
「あー、それはあまり考えていなかったんだけど、あそこにあるのは廃屋か?」
ピートはここに最初からあった廃屋を見ていたので、頷いておいた。
「それなら、あの廃屋に住まわせてもらってもいいか? カー坊と2人で直して住む」
木造の廃屋は壁の板が所々外れているし、藁葺きの屋根は、家のベッドになってしまったため、丸裸になっている。
あんなの直すより、俺が土魔法で新しい家を作った方が早いのだが。
ふとピートとカー坊を見る。
17歳の兄と10歳の弟か。
少しもそそられない。
これが17歳の姉と10歳の妹だったら、物凄い立派な家を建ててやるのだが。
この兄弟は自分でボロ家を直すくらいがちょうどいいだろう。
「……わかった。好きにしろ」
「それって、俺を子分にしてくれるってことか?」
「まあ、そうだな」
「うおおお! ありがとう! 俺、必死にがんばるから!」
ピートが鼻息荒く俺の手を握ってくる。
物凄く暑苦しいのでやめて欲しい。
カー坊は相変わらずボーっと突っ立ったままだった。
多分、俺の子分になりたいとかは欠片も思っていないのだろう。
というか、この子、少し心配になるな。
主に脳が。
カー坊はメグと同じようにルーナ先生に預けてみるか。
多分、文字とか書けなそうだし。
メグは最近、計算なんかも習っているらしいから、丁度いい。
「なあ、コウ。ところで、そっちの綺麗なお姉さんは誰だ?」
ああ、そういえばミレイを紹介していなかった。
「ミレイだ。俺の女だ」
ミレイはペコリと軽く頭を下げた。
「あ、ああ、どうも、ピートと言います。……え、お前ルーナさんと結婚してるんじゃ?」
「そうだ。ルーナも俺の女だ。あとここには他にも女が住んでいるが、全員俺の女だ。手を出したら、殴った上に追放するから、そのつもりでな!」
「お、おう」
ピートは引きながらも頷いている。
ここに住むのであれば、真っ先に言わなくてはならない事をちゃんと言うことが出来た。
後はもうバカ兄弟の好きにやらせればいいだろう。
とりあえず、ミレイの腰を抱いてその場を後にする。
アオカンはピートに邪魔をされてしまったので、ミレイの家で続きをやろうと思う。
「……あの子達の面倒見なくていいんですか?」
「大丈夫だろう。それよりも、今はミレイを抱きたいな」
「もう、コウさんはエッチですね」
咎めるような事を言いながらも、ミレイは嬉しそうに笑っていた。
かわいい。
「……うらやましい」
後ろの方で、そんな声が聞こえた。
あの後、ミレイを抱いてから、家に帰ってルーナを抱いた。
そして、セレナ邸に遊び行って、セレナとカンナさんをまとめて抱いた。
今日も腰回りがいい感じに充実している。
セレナ邸から出ていこうとしたら、フィリスに出会った。
「悪いけど、今日もよろしく頼むな」
そう声をかけておいた。
いつものことだが、今回もセレナの部屋は酷い有様になっているのだ。
「……あのお部屋の掃除をするだけで妊娠しそうになるんですけど」
フィリスがそんな冗談を言うので、笑い飛ばしておいた。
外に出ると、不意にピートとカー坊はどうしているだろうかと気になった。
今はもう夕暮れ時だ。
廃屋があるところまで歩いてくると、2人はせっせと家を直している所だった。
とはいえ、廃屋は相変わらず廃屋のままで、全く修繕は進んでいない。
2人は、どこからか拾ってきたらしい小さな木板で、必死に穴を塞ごうとしていた。
木板は大きさも形もチグハグなので、なんとか穴は塞げても酷く不格好になってしまっている。
塞げている穴も少ししかないし。
これではいつになっても家と呼べるものにはならないだろう。
もう日も暮れるというのに、何をやっているんだ。
俺は踵を返して、セレナ邸に戻る。
その脇にはセレナ邸建築時に余った丸太が何本か放置してあるのだ。
俺は丸太を抱えて、ピート達の下に戻る。
巨大な丸太を何本も抱えている俺を見て、ピート達は驚いていた。
俺も初めてフィリスが丸太を抱えた時には驚いたものだ。
懐かしい。
とりあえず、丸太を《下級木材生成》で均一の大きさの板にした。
そして、出来たばかりの板をピートとカー坊に持たせて、家の壁となるように位置を調整した。
廃屋の壁は3本の柱で構成されていた。
となると、釘は6本か。
土魔法の《石形成》を発動させる。
空中に6つの石塊を生成して、それらを一気に圧縮させる。
バチバチと魔力を迸らせながら、黒曜石で出来た釘を作った。
「いいか? なるべく板の端っこを持っていろよ? 怪我するからな?」
宙に浮いた6本の釘に対して、一斉に命令した。
飛べ。
釘は鋭い音を立てて、板に突き刺さっていく。
釘は板を突き破り、板と柱を縫い付けた。
それは一瞬の出来事だった。
辺りに銃弾が命中するような音が響く。
柱に縫い付けられた板を動かしてみる。
板は微動だにしない。
しっかりと固定されたようだ。
「な? 簡単だろ?」
「お、おう」
ピートに、家造りはこうするのだと大工としてのお手本を見せてやったつもりだったが、ピートは感心するどころか、引いていた。
失礼なやつだ。
とりあえず、他の壁も同じように修繕して、ついでに屋根も板で作っておいた。
作業が終わったのは、丁度日が沈みきった所だった。
なんとか間に合っただろうか。
「……家を直すのに一月はかかると思ってたんだけど」
ピートはなんとか家と呼べるようになった廃屋を呆然と眺めている。
一月もかかったら、その間、ずっと雨ざらしになってしまう。
冗談はヨシヒコさんである。
家なんて1時間もあれば建てられるのだ。
「明日、ルーナに頼んで寝具とかを作ってもらうから、悪いけど今日の所は我慢してくれ。そういえば、夕飯はどうする? うちで食べるか?」
「あ、ああ。悪いな」
「気にするな。じゃあ、行くか」
ピートとカー坊を連れて、家に帰る。
ルーナに頼んで2人の分も作ってもらおうと思う。
もう夕食を作り始めているだろうから、今から頼むのは悪いだろうか。
まあ、最悪この2人には、今日取れたばかりのキュウリでも食わせとけばいいだろう。
というか、今日はルーナをどう抱こうか。
後ろから強引にというのもなかなか乙だが、上に跨がらせてというのも……。
俺はルーナをどう抱くかで頭がいっぱいになっていった。
「なあ、あんちゃん。あの人、すげえな」
「ああ、カー坊。あの人の背中をよく見ておくんだぞ」
ピート達がそんな暑苦しいことを言っている。
その人は、女を抱くことしか考えていないのだが、いいのだろうか。
というか、男にすげえとか言われても全然嬉しくない。
そういえば、ピートはモブキャラ顔とはいえ、なかなかのイケメンだ。
カー坊はアレだけど、妹とか姉とかいたらきっと美人な気がするのだが。
「え? うちは男3人兄弟だ」
なんと使えない。
俺はがっかりしながら、ため息をついた。
男3人兄弟とか誰得だよ。
とにかく、そんなこんなで今日は俺に暑苦しい子分が2人も出来ました。
え、どうしよう。
全然嬉しくないんだけど。
何をしに来たのかというと、先日セレナとしたアオカンが思いの外良かったので、今日はミレイとやろうと思ったのだ。
「昨日もあれだけしたのに、またするんですか?」
戸惑うミレイの服をめくり上げる。
綺麗な生乳がポロンと露出した。
当然の如く揉みしだいた。
「しかも、外でなんて……恥ずかしいです」
そんな事を言いつつも、キスをするとしっかりと舌を絡めてくる。
「私に夢中になってくれるのはうれしいですけど、少しルーナさんに申し訳ないです……」
ルーナはルーナでちゃんと毎日抱いているので問題ないのだ。
そんな事を考えながら、せっせとミレイの服を剥ぎ取っていった。
「こ、コウ! さん!」
不意に誰かに名前を呼ばれた。
しかも、男の声だった。
対人恐怖症が発動するのを感じながら振り返ると、見覚えのない少年が立っていた。
ミレイが短い悲鳴を上げて、少年に背を向けて衣服を直している。
せっかく脱がせたのに。
俺は怒りを込めて少年を見る。
なんなんだこいつ、モブキャラみたいな顔しやがて。
というか、なんで俺の名前を知っているんだろうか。
あれ?
こいつ知ってる気がする。
なんだ、モブキャラかと思ったらピートじゃないか!
「お、おう、ピートか。久しぶりだな」
そこに立っていたのは、一緒に戦争に行ったピートだった。
残念な事にピートも男なので、数日会わなかった為に俺の脳内アルゴリズムがオートデリートしようとしていたのだ。
完全にデリートされる前でよかった。
というか、なんでピートがこんな所にいるんだろうか。
ここは街から徒歩で3日も離れた辺境中の辺境だ。
ふらっと立ち寄るような場所じゃない。
不審に思って見ていると、突然、ピートは地面に這いつくばった。
そして、思い切り頭を地面に擦り付ける。
「頼みます! 俺をコウさんの子分にしてください!」
そして、そんな事を言い始めた。
急に何言ってんの、こいつ。
「俺はあなたに返しきれない恩があります。あの戦で、俺はお嬢様を守って死ぬつもりでした。それでも、俺が命をかけたって、お嬢様は守りきれなかったと思います。だけど、あなたが……。あなたが俺たちを守ってくれました! 俺、すごく感動して……」
ピートは目を潤ませながら、思いの丈をぶつけてくる。
その表情は真剣そのもので、俺はさっきまでミレイを抱こうとしていたムラムラ感が消えていくのを感じた。
「どうやって恩を返せばいいのか、必死に考えました。でも、俺、何も返せるものを持っていなくて……。だから、せめてあなたの子分にして貰おうと思って来ました! お願いします。ここに置いてやって下さい!」
ピートは結構な荷物を背負っていた。
家を出てきたのだろうか。
確か庭師の息子だとか言っていたが。
とりあえず、しゃがみ込んでピートの腕をとって立たせようとした。
それでも、ピートは頭を下げたまま、立ち上がろうとしなかった。
ふーむ。
どうしよう。
とりあえず、ミレイを振り仰いでみたが、ミレイは何がなんだかわからないと言った表情をしていた。
そりゃそうだ。
「……とりあえず、その気持ちの悪い敬語をやめろ。俺の事も呼び捨てでいいから」
仲の良かったピートに敬語を使われると、ハブられているような錯覚を受けるのだ。
「で、でも」
「慣れないことをするなって」
「あ、ああ……わかった」
言葉遣いは改めてくれたが、ピートは頑なに立ち上がろうとしなかった。
仕方なく俺も地べたにあぐらをかいて、視線の高さだけでも合わせた。
「子分と言ってもなあ。俺の子分になんてなって何をするんだ?」
子分とは部下的な解釈でいいのだろうか。
といっても、俺は普段仕事をしていないので、振る仕事はないし。
普段仕事をしていないとか、自分で思っておいて軽く傷ついてしまった。
普段俺が何をしているかって?
朝起きて、軽くヒツジを狩りに行って、帰りにセレナを抱いて、その後、カンナさんを抱いて、家に帰ってきてルーナを抱いて、晩御飯を食べて、ルーナを抱いて、その後、夜中にミレイを抱くのだ。
子分の介在する余地がないクソ野郎っぷりだ。
というか本当に、いつテクノブレイクしてもおかしくない気がしてきた。
不安である。
「次の戦の時に子分として一緒に連れて行ってくれるだけでいい。それまでは、身体を鍛えたりしているから」
次の戦争にも、俺は参戦する事が確定している言い方な気がするが。
普段は放っておいていいということだろうか。
「多分、お前はこれから多くの子分を抱えると思う。とにかく、俺はその一番最初になりたいんだ!」
「俺が子分なんか抱えるだろうか」
人間嫌いの俺が子分なんて持つわけないのだが。
美女なら抱えるが。
「きっとそうなる。だって、お前は将軍になる男だからだ! あの時、オークに向かって突撃していくお前を見て確信したんだ」
ピートは目をキラキラさせていた。
なんか途方もない勘違いをしている。
将軍なんて、生まれてから一度もなりたいと思ったことないんだけど。
「……ちなみに、帰れと言ったらどうする?」
「絶対に帰らない! お前の子分になるまで、俺はここを動かない!」
ピートは地面にしがみつくように爪を立てる。
そんな事をしても、俺の筋力ステータスなら簡単に弾き剥がせるのだが。
うーむ。
どうしよう。
「……そういえば、お前の後ろにいるその子供は誰だ?」
さっきからちょいちょい気になっていた。
ピートの後ろに鼻水を垂らした子供が立っていたのだ。
10歳くらいの男の子だ。
「こいつは俺の弟でカービンという。カー坊と呼んでやってくれ」
実際に~坊とか呼ばれてる奴、初めて見た。
昭和の漫画か。
カー坊は鼻水を垂らして、指を咥えたまま俺をボーっと見ていた。
うーむ、バカっぽい。
「それで、そのカー坊は何しに来たんだ?」
「こいつも男だ。まだ10歳だけど、今から鍛えて、いずれお前の下で戦わせようと思っている」
弟の将来を兄が勝手に決めるとか。
理不尽にも程がある。
カー坊に不満はないんだろうか。
そう思いながら、カー坊を見つめてみる。
カー坊はボーッとしながら、地面に這いつくばっているピートの裾をちょいちょいと引っ張った。
「……あんちゃん、さっき、このお姉ちゃんのおっぱい見えた」
「か、カー坊!」
突然、なんの脈略もない事を言い出すカー坊の口をピートが塞いでいる。
ミレイが顔を真赤にして胸元を隠していた。
さっき俺が肌蹴させたのを見ていたのだろうか。
というか、カー坊はバカだ。
ただ好感の持てるバカだ。
今時珍しいエロガキだ。
不意に見えてしまったミレイのおっぱいが目に焼き付いて離れないのだろう。
俺も20年前はそんな感じだった。
カー坊の頭を優しく撫でておいた。
カー坊は金髪を短く刈り込んでいる。
撫で心地が良い。
少し10円ハゲがあるのが気になるが。
それにしても、どうするか。
ピートは17歳とか言っていた。
カー坊はもちろん、ピートもまだ未成年だ。
「……親御さんはなんて言っているんだ?」
「親父は俺の好きなようにしろって言ってくれている。家はアニキが継ぐし」
まあ、親が納得しているならいいのだろうか。
人様の子供を預かるような感じになってしまうので、少し責任を感じてしまうのだが。
ピートがここにいたいと言うなら、いさせてやっても良いかもしれない。
幸いミレイ農園のお陰で食べ物には困っていないし、普段はその辺の野山で遊ばせておけばいいだろう。
カー坊はともかく、ピートは野山で遊んで楽しいだろうかとは思うが。
「住む家はどうするんだ?」
「あー、それはあまり考えていなかったんだけど、あそこにあるのは廃屋か?」
ピートはここに最初からあった廃屋を見ていたので、頷いておいた。
「それなら、あの廃屋に住まわせてもらってもいいか? カー坊と2人で直して住む」
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あんなの直すより、俺が土魔法で新しい家を作った方が早いのだが。
ふとピートとカー坊を見る。
17歳の兄と10歳の弟か。
少しもそそられない。
これが17歳の姉と10歳の妹だったら、物凄い立派な家を建ててやるのだが。
この兄弟は自分でボロ家を直すくらいがちょうどいいだろう。
「……わかった。好きにしろ」
「それって、俺を子分にしてくれるってことか?」
「まあ、そうだな」
「うおおお! ありがとう! 俺、必死にがんばるから!」
ピートが鼻息荒く俺の手を握ってくる。
物凄く暑苦しいのでやめて欲しい。
カー坊は相変わらずボーっと突っ立ったままだった。
多分、俺の子分になりたいとかは欠片も思っていないのだろう。
というか、この子、少し心配になるな。
主に脳が。
カー坊はメグと同じようにルーナ先生に預けてみるか。
多分、文字とか書けなそうだし。
メグは最近、計算なんかも習っているらしいから、丁度いい。
「なあ、コウ。ところで、そっちの綺麗なお姉さんは誰だ?」
ああ、そういえばミレイを紹介していなかった。
「ミレイだ。俺の女だ」
ミレイはペコリと軽く頭を下げた。
「あ、ああ、どうも、ピートと言います。……え、お前ルーナさんと結婚してるんじゃ?」
「そうだ。ルーナも俺の女だ。あとここには他にも女が住んでいるが、全員俺の女だ。手を出したら、殴った上に追放するから、そのつもりでな!」
「お、おう」
ピートは引きながらも頷いている。
ここに住むのであれば、真っ先に言わなくてはならない事をちゃんと言うことが出来た。
後はもうバカ兄弟の好きにやらせればいいだろう。
とりあえず、ミレイの腰を抱いてその場を後にする。
アオカンはピートに邪魔をされてしまったので、ミレイの家で続きをやろうと思う。
「……あの子達の面倒見なくていいんですか?」
「大丈夫だろう。それよりも、今はミレイを抱きたいな」
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かわいい。
「……うらやましい」
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あの後、ミレイを抱いてから、家に帰ってルーナを抱いた。
そして、セレナ邸に遊び行って、セレナとカンナさんをまとめて抱いた。
今日も腰回りがいい感じに充実している。
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「悪いけど、今日もよろしく頼むな」
そう声をかけておいた。
いつものことだが、今回もセレナの部屋は酷い有様になっているのだ。
「……あのお部屋の掃除をするだけで妊娠しそうになるんですけど」
フィリスがそんな冗談を言うので、笑い飛ばしておいた。
外に出ると、不意にピートとカー坊はどうしているだろうかと気になった。
今はもう夕暮れ時だ。
廃屋があるところまで歩いてくると、2人はせっせと家を直している所だった。
とはいえ、廃屋は相変わらず廃屋のままで、全く修繕は進んでいない。
2人は、どこからか拾ってきたらしい小さな木板で、必死に穴を塞ごうとしていた。
木板は大きさも形もチグハグなので、なんとか穴は塞げても酷く不格好になってしまっている。
塞げている穴も少ししかないし。
これではいつになっても家と呼べるものにはならないだろう。
もう日も暮れるというのに、何をやっているんだ。
俺は踵を返して、セレナ邸に戻る。
その脇にはセレナ邸建築時に余った丸太が何本か放置してあるのだ。
俺は丸太を抱えて、ピート達の下に戻る。
巨大な丸太を何本も抱えている俺を見て、ピート達は驚いていた。
俺も初めてフィリスが丸太を抱えた時には驚いたものだ。
懐かしい。
とりあえず、丸太を《下級木材生成》で均一の大きさの板にした。
そして、出来たばかりの板をピートとカー坊に持たせて、家の壁となるように位置を調整した。
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となると、釘は6本か。
土魔法の《石形成》を発動させる。
空中に6つの石塊を生成して、それらを一気に圧縮させる。
バチバチと魔力を迸らせながら、黒曜石で出来た釘を作った。
「いいか? なるべく板の端っこを持っていろよ? 怪我するからな?」
宙に浮いた6本の釘に対して、一斉に命令した。
飛べ。
釘は鋭い音を立てて、板に突き刺さっていく。
釘は板を突き破り、板と柱を縫い付けた。
それは一瞬の出来事だった。
辺りに銃弾が命中するような音が響く。
柱に縫い付けられた板を動かしてみる。
板は微動だにしない。
しっかりと固定されたようだ。
「な? 簡単だろ?」
「お、おう」
ピートに、家造りはこうするのだと大工としてのお手本を見せてやったつもりだったが、ピートは感心するどころか、引いていた。
失礼なやつだ。
とりあえず、他の壁も同じように修繕して、ついでに屋根も板で作っておいた。
作業が終わったのは、丁度日が沈みきった所だった。
なんとか間に合っただろうか。
「……家を直すのに一月はかかると思ってたんだけど」
ピートはなんとか家と呼べるようになった廃屋を呆然と眺めている。
一月もかかったら、その間、ずっと雨ざらしになってしまう。
冗談はヨシヒコさんである。
家なんて1時間もあれば建てられるのだ。
「明日、ルーナに頼んで寝具とかを作ってもらうから、悪いけど今日の所は我慢してくれ。そういえば、夕飯はどうする? うちで食べるか?」
「あ、ああ。悪いな」
「気にするな。じゃあ、行くか」
ピートとカー坊を連れて、家に帰る。
ルーナに頼んで2人の分も作ってもらおうと思う。
もう夕食を作り始めているだろうから、今から頼むのは悪いだろうか。
まあ、最悪この2人には、今日取れたばかりのキュウリでも食わせとけばいいだろう。
というか、今日はルーナをどう抱こうか。
後ろから強引にというのもなかなか乙だが、上に跨がらせてというのも……。
俺はルーナをどう抱くかで頭がいっぱいになっていった。
「なあ、あんちゃん。あの人、すげえな」
「ああ、カー坊。あの人の背中をよく見ておくんだぞ」
ピート達がそんな暑苦しいことを言っている。
その人は、女を抱くことしか考えていないのだが、いいのだろうか。
というか、男にすげえとか言われても全然嬉しくない。
そういえば、ピートはモブキャラ顔とはいえ、なかなかのイケメンだ。
カー坊はアレだけど、妹とか姉とかいたらきっと美人な気がするのだが。
「え? うちは男3人兄弟だ」
なんと使えない。
俺はがっかりしながら、ため息をついた。
男3人兄弟とか誰得だよ。
とにかく、そんなこんなで今日は俺に暑苦しい子分が2人も出来ました。
え、どうしよう。
全然嬉しくないんだけど。
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