ちょいクズ社畜の異世界ハーレム建国記

油揚メテオ

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第三章 戦争編

第62話 ルーナのステータス

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 今日は朝から、ずっと気になっていた鉄シリーズの防具や月光魔剣の整理を行うことにした。
 山賊のアジトから帰ってきてから、ずっと部屋の片隅に放置してあったのだ。
 せっかくなので、綺麗にディスプレイしたい。
 そんなわけで、家を拡張して床の間を作ろうと思うのだ。
 色々考えたのだが、日本人としては武器を飾るのは床の間であるべきだ。
 床の間に飾られた刀とか鼻血が出そうなほどかっこいいし。
 ちなみに、庶民の上に、おそらく先祖は農民の俺は、床の間に飾られた刀なんて実際に見たことがない。
 テレビとかで見て憧れていたのだ。

 そんなわけで、まずはベッドの奥の壁を拡張させる。
 だいたい2メートルくらいの幅を持たせて、外側に凹ませた。
 土魔法を使えば、このくらい簡単だ。
 ホントに土魔法は便利でヤバイ。
 リノベーションし放題だ。
 床の間なので、床を既存の部屋より10センチ位高くしておいた。
 これで立派な床の間の完成だ。
 できればLEDライトとかで照らしたい気分だが、そんなものないので我慢しておく。

 俺は完成したばかりの床の間に、まずは月光魔剣を飾った。
 床の間の壁に土魔法で小さな返しを作って、そこに月光魔剣を固定する。
 壁に横向きに飾られる形になってかっこいい。
 というかこの月光魔剣。
 意匠の凝った鞘に収められていて、それはそれでかっこいいのだが、山賊長が持っていた時は、刃自体が薄ぼんやり光っていて、失神するくらいかっこよかった。
 なのに、俺が持った時は刃は光らないのだ。
 これが通販で買ったものだったら詐欺だと思って即クーリングオフするところなのだが。

「魔剣は魔力を通さないと威力を発揮しないぞ?」

 いつの間にか背後に立っていたルーナがそんな事を教えてくれた。
 月光魔剣を持って、ブツブツ言っていたのが聞こえたらしい。

「魔力を通すってどうやるんだ?」

「うーん、私も使ったことがないからわからないけど、剣に魔力を込めればいいんじゃないか?」

 そのまんまかよ。
 とりあえず、言われた通り、月光魔剣を持つ手に魔力を込める。
 そして、そのまま月光魔剣に魔力を流してみた。
 魔力はあっさりと剣に流れていく。

 月光魔剣はぼんやりと輝き始めた。
 その光はまるで月光のようで、月光魔剣と名づけられた理由がわかる気がする。

「おお……」

 めちゃくちゃかっこいい。
 振り回してみると、光が残像のように残って更にかっこいい。
 もっと暗い所で振り回してみたくなる。

「そろそろご飯できるから、おもちゃで遊んでないでテーブルで大人しく待っているんだぞ」

 ルーナはそう言いながらキッチンに戻っていった。
 ルーナは朝ごはんを作っている途中だったのだ。
 というか、おもちゃじゃねえから!

 ちなみに月光魔剣に魔力を通してみたら、ログが流れた。

『[月光魔剣]のアビリティ《斬撃拡張》が開放されました。攻撃力補正+30』

 月光魔剣は単体で攻撃力補正+52だったから、魔力を流すと+82になる。
 土魔法で作った剣が+30くらいだったからほぼ3倍近い攻撃力補正だ。
 物凄い性能だ。
 これでどんな敵が来ても勝てる!
 敵?
 敵と聞いてもいまいち思い浮かばない。
 その辺にいるヒツジやウサギやスライムでは明らかにオーバーキルだし。
 山賊たちも雑魚だったし、メグが最強だとか言ってたサソリも弱かった。
 セレナは敵というよりおっぱいだし。
 強い武器を手に入れてもすることがない。
 ちょっとしょんぼりしてしまう。
 ハイスペックPCを組んでもやりたいゲームがないのと同じだ。
 まあ、それだけ私が強くなってしまったというわけなんですが。
 ウサギをレッドアイズなんたらとか呼んでた頃が懐かしい。

 とりあえず、鞘に納めた月光魔剣を床の間に飾り直す。
 そして、月光魔剣の上に以前作ったデスサイズも同じように飾っておいた。
 俺のメインウェポンたるデスサイズは、いつだったかルーナが家の周りの草刈りに使おうとしていたので、口酸っぱく怒って、部屋の片隅に立てかけておいたのだ。
 こうして改めて床の間に飾ってみると、やっぱりデスサイズはかっこいい。
 いつか武器としてちゃんと装備したいものだ。
 どんなに持っても、装備ログが出ないのが気になるが。

 鉄シリーズの防具は、床の間に十字の棒を生成して、そこに飾ってみた。
 戦国時代の鎧をイメージしてみたが、どちらかと言うと軽装っぽい鉄シリーズの防具だといまいちパッとしない。
 やっぱりフルプレートの装備が欲しいな。
 近所に他の山賊とかいないだろうか。
 そして、フルプレートの装備をぶんどれないだろうか。

 そんな事を考えていたら、ルーナにご飯ができたと呼ばれた。



 今朝の朝ごはんはクラムチャウダーだった。
 今朝方グラードさんがいい魚介が手に入ったと持ってきてくれたらしい。
 後でミレイとメグにもおすそ分けしなくては。
 今持っていって、朝ごはんに使ってもらおうかとも思ったが、朝の来客は嫌がられると思って控えておいた。
 俺だったら、すごく嫌だし。
 むしろ来客自体が嫌だし。
 ちなみに、別に早朝訪ねてきたグラードさんをディスっているわけではない。

 クラムチャウダーは生臭い感じがするので、あまり好きではないのだが、ルーナのは全然臭くなかった。
 使った材料が新鮮だったせいかもしれないが、ルーナの料理の腕もあると思うので、素直に美味しいと言うと、ルーナは嬉しそうにしていた。

 朝ごはんを食べながら、ふとルーナを見つめる。
 ルーナはふーふーしながらクラムチャウダーを食べていた。
 ちょっと可愛いが、今はそんな事はどうでもいい。
 ルーナを見つめながら、ステータスと念じてみると、バラバラとルーナのステータスが表示された。

#############################################
【ステータス】
名前:ルシアリーナ・アルス・ルネ・エリシフォン
LV:--
称号:放浪令嬢
HP:434/434
MP:112/112
筋力:23
防御:34
敏捷:41
器用:38
知能:23
精神:28
スキルポイント:--
#############################################

 筋力以外は俺とあまり変わらないステータスだ。
 レベルとスキルポイントが『--』なのは、レベルが上がることはないという事だろうか。
 HPが全快なので、怪我はもう大丈夫みたいだ。
 安心する。
 というか、それよりも問題は名前ですよ。
 ええと、長いな。

「……ルシアリーナ?」

 そう声に出してみると、ルーナがビクッとした。
 クラムチャウダーを口にしようとしていた所だったらしく、盛大にこぼしている。

「なっ! なんで、その名前を知っている!?」

 ルーナはわかりやすく動揺していた。
 やっぱり本名はルシアリーナと言うらしい。

「いや、なんかお前をじっと見つめると名前やらなんやらが見えるようになったんだ」

 ステータスと言っても通じないと思ったので、そんな風に説明してみた。

「そんな能力聞いたことないぞ! 他の人間のも見れるのか?」

「いや、お前のしか見えないらしい。なんでかは俺にもわからないんだが」

 実は昨日、みんなでお昼ごはんを食べている時に、全員のステータスを見ようとしたのだが、ルーナ以外は誰も見えなかった。
 なにが条件になっているのか本気でわからない。

 ルーナは何かに気づいたように、はっとした後、急に顔を赤らめた。

「あ、愛の力かな」

 聞いていて、俺も恥ずかしくなる。
 ルーナも言ってて恥ずかしかったのか顔が真赤だ。
 ちなみに愛の力など存在しない。
 だいたい愛の力でその人のステータスが見れるようになるなんて、喜ぶのはストーカーくらいだ。

「それよりも、なんで本当の名前を隠してたんだ?」

 最近、結構そのことが気になっていた。
 ルーナが隠したいなら詮索するまいとは思っていたのだが、貴族のこととか隠すのが下手すぎて見てられなかったので、この際、気になることは全部聞いてしまおうと思ったのだ。

「べ、別に隠そうとしていたわけじゃないんだ。家族とか親しい人は、みんな私の事ルーナって呼ぶし。私としては、お前にはルーナって呼んでもらいたい。ルシアリーナって名前はいかにも貴族っぽいし……」

 ふむ。
 予想してはいたが、あんまり大した理由はなさそうだ。
 それよりも。

「やっぱり貴族なのか?」

「……う、うん」

 ルーナはなぜかしょんぼり項垂れてしまう。
 長い耳までしゅんと垂れ下がっている。
 なぜそんな反応をするのかわからない。

「で、でも、私はお前と一緒にいたいんだ。そ、そのお前さえ良ければだけど」

「うーん、話が見えない。一緒にいたいならいればいいじゃないか?」

「ふふ、うん。お前なら、そう言ってくれると思っていた。私の家とかがこれからうるさく言ってくるかもしれないけど、2人で頑張ろう?」

 ルーナは席を立つと、嬉しそうに近寄ってきて抱きついてきた。
 何を頑張るのか本気でわからない。

「悪い。俺がいた世界って貴族制じゃなかったんだ。いまいち貴族ってものを理解してないから、その辺も含めて説明してくれ」

「そうだったのか? ええと、貴族の結婚っていろいろ面倒くさいんだ。家柄とか政治とかいろいろ絡んできて、私個人の問題じゃないんだ」

「ほほう」

 なんとなくわかるような、わからないような。

「つまりな、私の結婚相手はお父様とかお祖母様が決めるんだけど、私はもうお前と結婚しちゃっただろう?」

 いや、結婚したつもりは全くないが。

「まだ家には報告してないけど。……きっと報告したら、お父様はともかく、お祖母様が物凄く怒ると思うんだ。そ、そのお前は貴族じゃないし」

 お父様はともかくなのか。
 理解のあるお父様だな。

「それで、もしかしたら、軍隊とか来るかもしれないけど、ふ、2人で頑張ろうな?」

「はあ?」

 ちょっと何を言っているのかわからない。
 なぜ軍隊が来るのか。

「だ、だから、エリシフォン家に黙って私を娶っちゃったわけだから、私を取り返そうとして家の私軍が……」

「だから、なんでお前を取り返そうとして軍隊が来るんだよ?」

「だ、だって、お前は絶対に私を離さないだろう? そうなったら、お祖母様は強引に私を連れ戻そうとするはずだ」

 ちょっと汗をかきながら、ルーナが俺の機嫌を伺うような表情をしている。
 つまり、今の状況はアレだろうか。
 貴族のお嬢様と俺が駆け落ちしたような状況なのだろうか。
 そんな事をしたつもりはないのだが。

「お前が普通に帰ればいいんじゃ――」

「わー! そんなの絶対にイヤだ。わかっているのか? 帰ったら他の男と結婚させられちゃうんだぞ? お、お前だってそんなの嫌だろう?」

「………」

 そりゃ嫌だけど、ルーナの家族とかに迷惑がかかるんだったら、ここは大人しく身を引くべきなのだろうか。
 そもそもルーナとは一度別れようとしたのだ。
 ルーナのためにも俺なんかと一緒にいない方がいいと思ったし……。
 でもなあ、うーむ。

「な、なんで黙るんだ!? ほ、ほら、おっぱい触っていいぞ?」

 なぜかルーナがおっぱいを触らせてくれた。
 俺の気を引こうとしているのだろうか。
 中学生じゃあるまいし、俺がそんな事で――むう、相変わらずいい乳だ。
 この乳を他の男が触ると思うと腸が煮えくり返りそうになる。

「ちなみに、私軍って何人くらいなんだ?」

 私軍っていう名の響きからして、ルーナの家独自の私設軍隊だろう。
 こないだの山賊たちとの戦いからして、俺なら数百人くらいなら蹴散らせる気がする。
 軍隊とか言っても、ビビる必要はない気がしてきた。

「……1万人くらいかな」

 吹き出しそうになった。
 1万!?
 私設軍隊で1万ってどんだけでかい家なんだよ。

「さすがに1万を蹴散らすのは無理だぞ」

「ううっ、で、でも、でもでも、お前と別れるのなんて無理だ。お前がいないと死んでしまう」

 ルーナが泣きついてくるので、とりあえず抱き返す。
 そりゃ、正直に言えば、俺だってルーナと別れたくないけど。
 チラチラとルーナの背中から傷口が覗く。
 こんな傷をつけておいて、はい、さよならなんて言いたくない。

「……というか、お前、なんでそんな大事な事黙ってたんだよ?」

 もっと早く言ってくれれば、できれば出会った直後に言ってくれれば、俺だってすんなりルーナと別れられた、というか手を出さなかったのに。

「ううっ、公爵家の娘だと言ったら引かれちゃうと思ったし」

 サラッと言っているが、公爵家って一番偉い爵位じゃなかっただろうか。
 それくらいなら1万の軍隊も動員できるんだろうか。

「それにな? 私だってちゃんと考えてたんだ。もう少しで全部解決すると思うんだ」

 ほほう。
 ルーナに何か策があるらしい。
 言っちゃ悪いが、ルーナはとても策を練れるようには見えないのだが。
 まずは黙ってルーナの考えを聞いてみようと思う。

「既成事実ってあるだろう? 私に子供が出来ちゃえば、お祖母様だって強くは出れないはずなんだ」

「………」

 どうしよう。
 想像以上に、しょうもない策だった。
 貴族ってそういうものなのだろうか。

「……子供を産んだ後、普通に他の男と結婚させられるんじゃないか?」

「大丈夫だ。ハーフエルフを産んだエルフの女は物凄く軽蔑されるから、社交界では死んだも同然なんだ」

 ニコニコしながら、ルーナはそんな事を言っているが、内容が物凄く重い。
 物凄く軽蔑されるって……。

「なんでそこまでして」

「だって、お前の事が大好きなんだ。お前以外の妻になるなんて考えられない」

 ルーナは涙をいっぱいに溜めながら、何度もキスしてくる。
 そこまで好意を寄せられたことがないので、頭がショートしてしまう。
 柄にもなく、ルーナを愛おしいと思ってしまった。

「だから、早く子供を作ろう?」

「それはいいけど……」

 というか、子作りなんて毎日しているけど。
 ただ、いまいちルーナの既成事実作戦が上手くいくとは思えない。
 ここは男として、腹をくくるべきだろうか。
 今まで、逃げ続けていたけど。
 死んでもやりたくなくて、何度か付き合っていた彼女と別れたけど。

 ルーナの家族に挨拶に行くべきだ。

「ルーナ、よく聞け」

 抱きつくルーナを引き離して、真剣な表情で見つめる。

「はい……」

 ルーナも珍しく空気を読んだのか、泣いていた顔を引き締めた。

「とりあえず、お前の家族に挨拶がしたい。実家の住所を教えてくれるか?」

 そう告げると、ルーナは一瞬驚いた顔をする。
 そして、だーっと涙を流し始めた。
 なぜ泣くのか。

「死ぬ気なのか?」

「なんでだ!?」

「言い忘れてたけど、お祖母様は昔、セレナと引き分けたことがある。世界最強の一人だ。そんなお祖母様に、そ、その、私をくれなんて……えへへ」

 途中からルーナは顔をにやけさせて嬉しそうにしているが、聞き逃せない情報があった。
 セレナと引き分けたってなんだ。
 そんな情報言い忘れんなよ。
 セレナって全人類が束になっても敵わないって言ってたじゃないか。
 そのセレナと引き分けるってどんだけだよ。

「つうか、別にお祖母様と戦いに行くわけじゃないんだけど」

「でも、お祖母様は怒りっぽいから私をくれなんて言ったら、絶対に戦いになるぞ? そ、その言うつもりなんだろう? ……私をくれって」

「い、いや、べつにそんなつもりはねえけど」

 なんだか、物凄く恥ずかしくなったので、とりあえず否定しておいた。

「ふふ、えへへ! 照れたってわかってるんだからな」

 ルーナが嬉しそうに抱きついてくる。
 可愛いと思ってしまったが、今はそれどころじゃなくて。
 どうしよう。
 セレナクラスのお祖母様には絶対会いたくない。
 とはいえ、軍隊とも戦いたくない。
 だからといって、既成事実でなんとかなるとも思えない。
 お祖母様の立場に立って考えてみると、ルーナはともかく、俺は殺される気がする。

「……ちなみに、軍隊ってすぐ来そうなのか?」

「いや? まだ私の居場所を探している段階だと思う。居場所がバレても、すぐに軍隊じゃなくて執事とかが説得に来るんじゃないかな?」

 すげえ適当な予測だが、たしかにいきなり軍隊は来ないだろう。
 となると、道は1つしかない。

「執事が来たら、逃げるか」

「うん。お前と一緒ならどこでも行く!」

 物凄く後ろ向きな解決策だが、ルーナは嬉しそうだった。

「昔から駆け落ちってちょっと憧れてたんだ。えへへ」

 言葉にされると明るい未来が全く見えないのでやめて欲しい。
 なぜこんな事になってしまったのだろうか。
 それというのも、かつての俺がルーナが美人だからって安易に犯すから悪いのだ。
 これからどうしよう。
 せっかく頑張って家を建てたのでできればここから逃げたくない。
 まあ、未来の俺が苦しめばいいので、今の俺には関係ないのだが。
 ……こうやって俺は人生の選択を間違え続けてきた気がした。
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