52 / 299
第二章 吸血鬼編
第52話 治療
しおりを挟む
さっそくミレイさんに赤い筋を治療してもらう事になった。
ミレイさんはまず、俺の右手に手を当てると神聖魔法を発動させる。
白く厳かな光が、俺の右手を包み、温かさを感じる。
ドクン、ドクンと脈打つようにミレイさんの魔力が俺の体内に流れ込んでくるのがわかる。
かなり気持ちよかった。
なんというか細胞が生まれ変わっていくような感じがする。
メグが俺の手が白い光に包まれていく様を、キラキラした目で見つめている。
魔法に興味があるらしい。
俺の魔法が復活したら、派手なのを見せてあげようと思う。
「ふう、どうでしょうか? これで右手の魔力回路は全部治せたと思いますが」
一息ついたミレイさんにそう言われて、右手を見てみると確かに赤い筋が綺麗サッパリとなくなっている。
「ホントだ。筋が無くなっていますね。これでもう右手だけなら魔力を流せるんでしょうか?」
「まだ、やめておいたほうが良いと思います。詳しいわけではありませんが、魔力回路は全身を複雑に流れているので、右手に魔力を流しているつもりでも、別の所に流れていく場合もあるそうです」
「なるほど」
「次は左手を治しますね?」
「はい、お願いします」
ミレイさんに左手を差し出す。
というか、神聖魔法を受けたのに、神聖魔法スキルが開放されなかった。
神聖魔法スキルの取得条件は別にあるのだろうか。
宗教に入信しなきゃダメとかだったら嫌だ。
「……あの、その喋り方なんですけど」
ミレイさんは俺の左手を持ちながら、不満そうに眉根を寄せて俺を見た。
「はい?」
「……ちょっとよそよそしい感じがして嫌です。まるで他人みたいじゃないですか」
まるでも何も俺とミレイさんは他人な気がするが。
まあ、たしかに敬語っていうのも変なのだろうか。
「次からは気をつける、みたいな感じでいいか?」
「はい。名前もミレイって呼び捨てにしてくださいね」
ミレイは嬉しそうに俺の左手を抱きしめた。
左手に素敵な感触がする。
そのまま、左手も治療して貰った。
後は同じことを全身にすればいいらしい。
「それにしても、こんなにひどいサーキットダメージは初めて見ました。一体何をしたんですか?」
「いや、ちょっと無理して魔法を使いすぎて……」
あの時の回復魔法の痛みは当分忘れられそうにない。
「無理してって……。一体どんな無理をしたんですか。いいですか? これからは私がいるので、また同じような症状になっても治してあげられるかもしれませんが、身体には絶対に良くないですからね? あんまり無理をしてはいけませんよ?」
ミレイに説教されてしまった。
カンナさんの時も思ったが、美人にされる説教というのはなんかゾクゾクして良い。
ちなみに俺は、SかMかで言ったら、間違いなくドMだ。
しばらくして、俺の全身からはあのキモい赤い筋が綺麗に消え去っていた。
久しぶりに自分の肌が見える。
全ての治療が終わった時、ミレイは肩で息をついていた。
MPがギリギリだったらしい。
「……ありがとう、ミレイ」
ミレイはお礼を言うと、疲れた顔でニコっと笑ってくれた。
「これで、もう問題なく魔法が使えるはずですよ?」
そう言われて、とりあえず《火形成》を発動させてみた。
直ぐ側の地面から勢い良く火柱が立ち上る。
おお、使えてる使えてる!
しかも、痛みも感じない。
先程から、ぐんぐんMPも回復している。
「本当にありがとう!」
思わずミレイを抱きしめてしまった。
ミレイは俺の火柱を見て、ポカンとした顔をしていた。
メグも同じような表情を浮かべている。
「……あの、以前は土魔法を使っていませんでしたか?」
「ああ、俺は土と火と水の魔法が使えるんだ」
「3つも!?」
ミレイが驚いている。
そういえば、ルーナに他の人に言っちゃダメとか言われていたんだった。
まあ、ミレイはこれからご近所さんになるんだし、いいだろう。
「……コウさまは戦士様の上に、貴族様だったのですね」
メグがボソッとそんな事を言った。
また貴族様か。
「なあ、なんで魔法を使ったら貴族なんだ?」
「知らないのですか? 魔法使いというだけで、王国から爵位をもらえるんですよ? 1代限りですが」
爵位というと、あれだろうか。
男爵とか伯爵とか。
別にいらんけど。
「あれ、ということはミレイも爵位持っているのか? 神聖魔法使えるし」
「いえ、私は出家していた身ですから貰っていませんけど、言えばすぐにでも貰えると思います」
爵位ってすぐに貰えるものなのだろうか。
ただでくれるんなら、貰っておこうかな。
いやでも、おそらく貰うためには役所みたいな所に行かなきゃいけないのだろう。
そんな人がたくさんいそうな所行きたくないので、やめとく。
「……なんかコウさんって不思議な方ですよね。常識に疎いというか」
ミレイが俺を訝しんでいる。
さっそくこの世界の人間じゃないのがバレそうだ。
俺に腹芸は無理らしい。
「うーん、そのうち俺の出自については話すよ」
どうするかは、ルーナと相談しようと思う。
何はともあれ、再び魔法が使えるようになって良かった。
これで水も飲み放題だし、風呂にも入れる。
ミレイとメグの家も建ててやれるし、セレナの別荘づくりも再開できそうだ。
あとは家に帰るだけだ。
ミレイさんはまず、俺の右手に手を当てると神聖魔法を発動させる。
白く厳かな光が、俺の右手を包み、温かさを感じる。
ドクン、ドクンと脈打つようにミレイさんの魔力が俺の体内に流れ込んでくるのがわかる。
かなり気持ちよかった。
なんというか細胞が生まれ変わっていくような感じがする。
メグが俺の手が白い光に包まれていく様を、キラキラした目で見つめている。
魔法に興味があるらしい。
俺の魔法が復活したら、派手なのを見せてあげようと思う。
「ふう、どうでしょうか? これで右手の魔力回路は全部治せたと思いますが」
一息ついたミレイさんにそう言われて、右手を見てみると確かに赤い筋が綺麗サッパリとなくなっている。
「ホントだ。筋が無くなっていますね。これでもう右手だけなら魔力を流せるんでしょうか?」
「まだ、やめておいたほうが良いと思います。詳しいわけではありませんが、魔力回路は全身を複雑に流れているので、右手に魔力を流しているつもりでも、別の所に流れていく場合もあるそうです」
「なるほど」
「次は左手を治しますね?」
「はい、お願いします」
ミレイさんに左手を差し出す。
というか、神聖魔法を受けたのに、神聖魔法スキルが開放されなかった。
神聖魔法スキルの取得条件は別にあるのだろうか。
宗教に入信しなきゃダメとかだったら嫌だ。
「……あの、その喋り方なんですけど」
ミレイさんは俺の左手を持ちながら、不満そうに眉根を寄せて俺を見た。
「はい?」
「……ちょっとよそよそしい感じがして嫌です。まるで他人みたいじゃないですか」
まるでも何も俺とミレイさんは他人な気がするが。
まあ、たしかに敬語っていうのも変なのだろうか。
「次からは気をつける、みたいな感じでいいか?」
「はい。名前もミレイって呼び捨てにしてくださいね」
ミレイは嬉しそうに俺の左手を抱きしめた。
左手に素敵な感触がする。
そのまま、左手も治療して貰った。
後は同じことを全身にすればいいらしい。
「それにしても、こんなにひどいサーキットダメージは初めて見ました。一体何をしたんですか?」
「いや、ちょっと無理して魔法を使いすぎて……」
あの時の回復魔法の痛みは当分忘れられそうにない。
「無理してって……。一体どんな無理をしたんですか。いいですか? これからは私がいるので、また同じような症状になっても治してあげられるかもしれませんが、身体には絶対に良くないですからね? あんまり無理をしてはいけませんよ?」
ミレイに説教されてしまった。
カンナさんの時も思ったが、美人にされる説教というのはなんかゾクゾクして良い。
ちなみに俺は、SかMかで言ったら、間違いなくドMだ。
しばらくして、俺の全身からはあのキモい赤い筋が綺麗に消え去っていた。
久しぶりに自分の肌が見える。
全ての治療が終わった時、ミレイは肩で息をついていた。
MPがギリギリだったらしい。
「……ありがとう、ミレイ」
ミレイはお礼を言うと、疲れた顔でニコっと笑ってくれた。
「これで、もう問題なく魔法が使えるはずですよ?」
そう言われて、とりあえず《火形成》を発動させてみた。
直ぐ側の地面から勢い良く火柱が立ち上る。
おお、使えてる使えてる!
しかも、痛みも感じない。
先程から、ぐんぐんMPも回復している。
「本当にありがとう!」
思わずミレイを抱きしめてしまった。
ミレイは俺の火柱を見て、ポカンとした顔をしていた。
メグも同じような表情を浮かべている。
「……あの、以前は土魔法を使っていませんでしたか?」
「ああ、俺は土と火と水の魔法が使えるんだ」
「3つも!?」
ミレイが驚いている。
そういえば、ルーナに他の人に言っちゃダメとか言われていたんだった。
まあ、ミレイはこれからご近所さんになるんだし、いいだろう。
「……コウさまは戦士様の上に、貴族様だったのですね」
メグがボソッとそんな事を言った。
また貴族様か。
「なあ、なんで魔法を使ったら貴族なんだ?」
「知らないのですか? 魔法使いというだけで、王国から爵位をもらえるんですよ? 1代限りですが」
爵位というと、あれだろうか。
男爵とか伯爵とか。
別にいらんけど。
「あれ、ということはミレイも爵位持っているのか? 神聖魔法使えるし」
「いえ、私は出家していた身ですから貰っていませんけど、言えばすぐにでも貰えると思います」
爵位ってすぐに貰えるものなのだろうか。
ただでくれるんなら、貰っておこうかな。
いやでも、おそらく貰うためには役所みたいな所に行かなきゃいけないのだろう。
そんな人がたくさんいそうな所行きたくないので、やめとく。
「……なんかコウさんって不思議な方ですよね。常識に疎いというか」
ミレイが俺を訝しんでいる。
さっそくこの世界の人間じゃないのがバレそうだ。
俺に腹芸は無理らしい。
「うーん、そのうち俺の出自については話すよ」
どうするかは、ルーナと相談しようと思う。
何はともあれ、再び魔法が使えるようになって良かった。
これで水も飲み放題だし、風呂にも入れる。
ミレイとメグの家も建ててやれるし、セレナの別荘づくりも再開できそうだ。
あとは家に帰るだけだ。
1
お気に入りに追加
1,238
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる