ちょいクズ社畜の異世界ハーレム建国記

油揚メテオ

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第二章 吸血鬼編

第52話 治療

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 さっそくミレイさんに赤い筋を治療してもらう事になった。
 ミレイさんはまず、俺の右手に手を当てると神聖魔法を発動させる。
 白く厳かな光が、俺の右手を包み、温かさを感じる。
 ドクン、ドクンと脈打つようにミレイさんの魔力が俺の体内に流れ込んでくるのがわかる。
 かなり気持ちよかった。
 なんというか細胞が生まれ変わっていくような感じがする。

 メグが俺の手が白い光に包まれていく様を、キラキラした目で見つめている。
 魔法に興味があるらしい。
 俺の魔法が復活したら、派手なのを見せてあげようと思う。

「ふう、どうでしょうか? これで右手の魔力回路は全部治せたと思いますが」

 一息ついたミレイさんにそう言われて、右手を見てみると確かに赤い筋が綺麗サッパリとなくなっている。

「ホントだ。筋が無くなっていますね。これでもう右手だけなら魔力を流せるんでしょうか?」

「まだ、やめておいたほうが良いと思います。詳しいわけではありませんが、魔力回路は全身を複雑に流れているので、右手に魔力を流しているつもりでも、別の所に流れていく場合もあるそうです」

「なるほど」

「次は左手を治しますね?」

「はい、お願いします」

 ミレイさんに左手を差し出す。
 というか、神聖魔法を受けたのに、神聖魔法スキルが開放されなかった。
 神聖魔法スキルの取得条件は別にあるのだろうか。
 宗教に入信しなきゃダメとかだったら嫌だ。

「……あの、その喋り方なんですけど」

 ミレイさんは俺の左手を持ちながら、不満そうに眉根を寄せて俺を見た。

「はい?」

「……ちょっとよそよそしい感じがして嫌です。まるで他人みたいじゃないですか」

 まるでも何も俺とミレイさんは他人な気がするが。
 まあ、たしかに敬語っていうのも変なのだろうか。

「次からは気をつける、みたいな感じでいいか?」

「はい。名前もミレイって呼び捨てにしてくださいね」

 ミレイは嬉しそうに俺の左手を抱きしめた。
 左手に素敵な感触がする。

 そのまま、左手も治療して貰った。
 後は同じことを全身にすればいいらしい。

「それにしても、こんなにひどいサーキットダメージは初めて見ました。一体何をしたんですか?」

「いや、ちょっと無理して魔法を使いすぎて……」

 あの時の回復魔法の痛みは当分忘れられそうにない。

「無理してって……。一体どんな無理をしたんですか。いいですか? これからは私がいるので、また同じような症状になっても治してあげられるかもしれませんが、身体には絶対に良くないですからね? あんまり無理をしてはいけませんよ?」

 ミレイに説教されてしまった。
 カンナさんの時も思ったが、美人にされる説教というのはなんかゾクゾクして良い。
 ちなみに俺は、SかMかで言ったら、間違いなくドMだ。

 しばらくして、俺の全身からはあのキモい赤い筋が綺麗に消え去っていた。
 久しぶりに自分の肌が見える。
 全ての治療が終わった時、ミレイは肩で息をついていた。
 MPがギリギリだったらしい。

「……ありがとう、ミレイ」

 ミレイはお礼を言うと、疲れた顔でニコっと笑ってくれた。

「これで、もう問題なく魔法が使えるはずですよ?」

 そう言われて、とりあえず《火形成》を発動させてみた。

 直ぐ側の地面から勢い良く火柱が立ち上る。

 おお、使えてる使えてる!

 しかも、痛みも感じない。
 先程から、ぐんぐんMPも回復している。

「本当にありがとう!」

 思わずミレイを抱きしめてしまった。

 ミレイは俺の火柱を見て、ポカンとした顔をしていた。
 メグも同じような表情を浮かべている。

「……あの、以前は土魔法を使っていませんでしたか?」

「ああ、俺は土と火と水の魔法が使えるんだ」

「3つも!?」

 ミレイが驚いている。
 そういえば、ルーナに他の人に言っちゃダメとか言われていたんだった。
 まあ、ミレイはこれからご近所さんになるんだし、いいだろう。

「……コウさまは戦士様の上に、貴族様だったのですね」

 メグがボソッとそんな事を言った。
 また貴族様か。

「なあ、なんで魔法を使ったら貴族なんだ?」

「知らないのですか? 魔法使いというだけで、王国から爵位をもらえるんですよ? 1代限りですが」

 爵位というと、あれだろうか。
 男爵とか伯爵とか。
 別にいらんけど。

「あれ、ということはミレイも爵位持っているのか? 神聖魔法使えるし」

「いえ、私は出家していた身ですから貰っていませんけど、言えばすぐにでも貰えると思います」

 爵位ってすぐに貰えるものなのだろうか。
 ただでくれるんなら、貰っておこうかな。
 いやでも、おそらく貰うためには役所みたいな所に行かなきゃいけないのだろう。
 そんな人がたくさんいそうな所行きたくないので、やめとく。

「……なんかコウさんって不思議な方ですよね。常識に疎いというか」

 ミレイが俺を訝しんでいる。
 さっそくこの世界の人間じゃないのがバレそうだ。
 俺に腹芸は無理らしい。

「うーん、そのうち俺の出自については話すよ」

 どうするかは、ルーナと相談しようと思う。

 何はともあれ、再び魔法が使えるようになって良かった。
 これで水も飲み放題だし、風呂にも入れる。
 ミレイとメグの家も建ててやれるし、セレナの別荘づくりも再開できそうだ。

 あとは家に帰るだけだ。
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