ちょいクズ社畜の異世界ハーレム建国記

油揚メテオ

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第二章 吸血鬼編

第22話 森の古城にて

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 城の中は、闇に閉ざされていた。
 辺りは何も見えない。
 埃の臭いと、微かな生臭さを感じる

 そんな中、急にぼっと蝋燭の灯りが灯る。
 ぼっぼっと立て続けに蝋燭が灯っていく。
 蝋燭は真っ直ぐ伸びた階段を照らし出した。
 それはあたかも、俺たちを道案内しているかのようだった。

 そこはかとなく。
 ホラーの香りがする。

 俺は片手でルーナを抱き寄せた。

「わわっ! いきなりなんだ? あっ、また胸を!」

 ダメだ。ここはダメだ。
 俺はルーナの程よい胸を揉みながら冷静に考える。

 よし、帰ろう。

 思い立ったが吉日!
 というわけで、俺は踵を返す。
 入ってきた扉を開けようとして――。

 がちゃがちゃ。

 扉は完全に閉ざされていた。

「…………」

「あん、ダメだってば……は、げしい、から」

 もみもみもみ。
 高鳴る心臓に合わせて胸を揉む。
 もう進むしかないのだろうか。
 俺は仕方なく、蝋燭に照らされた階段を昇る。

 階段の上には、華麗な装飾の施された扉があった。
 もうここまできたら、覚悟を決めて扉を開ける。

 扉の先には何がいるのか。
 森の主がいるのだろうか。
 森の主ってやっぱり巨大な鹿とかだろうか。
 倒したら祟られそうだった。

 扉の中には、拍子抜けするような光景が広がっていた。

 華美ではないが、センスのいい調度品。
 明るい照明。
 鼻孔を擽る紅茶の香り。

 そこは、貴族の屋敷にあるようなサロンだった。

 柄付きの壁紙に囲まれた気品ある室内。
 部屋の中央には大きな長テーブルが置かれている。

 そして、テーブルの奥に座る人影。

「ようこそ。いらっしゃい」

 そこにいたのは一人の女性だった。
 女性は立ち上がると、優雅な笑みを浮かべてこちらに歩いてくる。

 匂い立つような色香を感じる。

 俺は思わず息を飲んだ。

 美しい光沢を帯びた銀色の髪。
 神によって作られた彫刻のように、整った顔立ち。
 真っ直ぐ通った鼻梁。
 艷やかな赤い唇。
 顎のラインは芸術的な曲線を描く。
 吸い込まれるような赤い瞳は慈愛に満ち溢れている。

 女性は百合の花のような簪を右のこめかみにつけていて、銀色の髪によく映えている。
 黒いロングスカートのレースのドレスに身を包んでいて、肌の白さを際立たせていた。
 それはまるで、黒いウェディングドレスのようにも見えた。

 そして、何よりもドレスの胸元から覗く見事な谷間。
 ものすごい巨乳だった。

 俺は思わず、揉みまくっていたルーナの胸を離した。

「……おい、なぜ揉むのをやめる」

 さっきまで抵抗していたのに、なぜかルーナが文句を言う。

「疲れたでしょう。さあ、座りなさいな」

 女性は、俺の手を取って、テーブルの椅子を引いてくれた。
 女性の手は柔らかく、サラリと流れた銀の髪からは、ほのかに良い香りがした。

「……どうも」

 俺は対人恐怖症に加えて、女性が美しすぎるので、女性の顔をまともに見ることができなかった。
 言われるがままに、椅子に腰を下ろす。

「そんなに固くならないでちょうだい」

 女性は俺の顎先を緩やかに撫でた。
 くすぐったくて、思わず顔を上げてしまう。

「あら、私好みのいい男だわ」

 俺は、女性の胸元に釘付けだった。
 え、ナニコレ。
 大きく盛り上がって柔らかそうな胸の谷間。
 白すぎる肌に血管が透けて見える。

「うふふ、そんなに見られたら恥ずかしいわ」

「……すみません」

 モロバレだった。

「……おい」

 ルーナが不安そうに手を握ってくる。
 いやわかってる。
 ……そういえば、ここに何しに来たんだったか。
 おっぱい。
 おっぱい見に来たんだったかな。

「…………」

 女性はルーナを軽く見やると、俺に向かって笑顔を見せた。
 花も恥じらう程、優雅な笑顔だった。

「あら、私ったらごめんなさい。まだお茶を出していなかったわね」

 そう言いながら、俺に紅茶を用意してくれる。
 女性はいくつくらいだろうか。
 仕草が落ち着いているが、見た目的には、まだ25,6に見える(勘)。
 ルーナよりは年上に見えるが、少なくとも俺よりは年下だ。
 ルーナは俺と同い年だけど、見た目の話だ。

「どうぞ。召し上がってくださいな」

「……どうも」

「お口に合うといいのだけれど」

 女性が入れてくれた紅茶を一口飲む。
 芳醇な香りが鼻孔をくすぐる。
 久しぶりに飲む紅茶に、どこか安心感を与えてくれる。

「美味しいです」

「よかった」

 女性は、俺の肩に触れながら優雅に微笑む。
 俺はそんな女性の笑顔に、思わずぽーっと見とれてしまう。

「私の名前は、セレナ。セレナ・ダーグリュン。あなたは?」

「コウです。アサギリ・コウ」

「そう。コウというのね。素敵な名前」

 女性は、俺の頬を優しく撫でる。
 女性のスキンシップはどこか官能的で、俺は毎回ドキドキしてしまう。

「おい!」

 気づくと、ルーナが叫んでいた。
 形の良い眉を思い切り歪めながら、唇を噛み締めている。
 どこか不安そうな表情だ。

「どうしたんだ?」

「……別にどうもしないけど」

 どうもしない表情じゃなかったが。

「そういえば、お前なんで立ったままなんだ?」

「……わからない」

「悪いわね。うちには椅子が一脚しかないの。だからエルフの小娘は立ってなさいね」

 うん?
 なんかセレナさんの口から不穏なセリフが聞こえた。

 思わずセレナさんに目を向けると、にこっと笑顔をみせてくれた。
 笑顔と一緒に胸がたわむ。

 俺は生唾を飲み込んだ。

「……なあ」

 ルーナが腕を掴んでくる。

「だから、なんだ。さっきから」

 ルーナはぐいっと身を寄せると、俺の耳元で声を潜めた。

「……この女、ちょっとおかしいと思わないか? こんな森の奥地の怪しい城に住んでるなんて。他に人の気配もしないし。こんな所に女が一人なんて変だ」

「いや、変じゃないだろう。この人も人間嫌いなんじゃないかな」

「……それにしては、さっきからお前にベタベタ、ベタベタと馴れ馴れしく触っているぞ」

「そうかな。普通だと思うぞ」

「お前もお前だぞ。さっきから鼻の下を伸ばしすぎだ」

 顔を寄せたルーナの顔がどんどん近くなってくる。
 その瞳は少し潤んでいた。

「なあ、なんで私の前で他の女に見とれるんだ? 私をいじめて楽しいのか?」

 息がかかる程の距離で涙目のルーナがそんな事を言う。

 その時、耳をつんざくような轟音が鳴り響いた。

 慌てて、音のした方向を振り向くと、大きな長テーブルが真っ二つに割れていた。

 テーブルの割れ目の上には、セレナさんの細い腕があった。
 俺の勘違いだと思うのだが、まるでセレナさんが割ったかのようにも見える。

「……これだからエルフは。私が目をつけた男を、私の目の前で誘惑するなんて。相変わらず、エルフは淫乱で困るわ」

 セレナさんの美しい顔が憎悪に染まっている。
 なんだろう。
 状況に脳がついてこない。

「私が目をつけたって……。こいつは私のだぞ!」

 ルーナが俺にしがみつく。
 おい、いつ俺がお前のものになった。

「キャンキャン騒がないでちょうだい。下品だわ。コウが困っているじゃないの」

 確かに俺は少し困っていた。
 ルーナはそんな俺をちらりと見ると、なぞのドヤ顔を見せて頷いた。

「どこが困っているんだ? こいつは私の事を大好きなんだぞ!」

「おい、ちょっと待て」

「ふふん、そんな貧相な身体でよく言うわね。小娘はさっさと家に帰りなさい」

「……貧相?」

 ルーナからプチっと何かが切れる音がした。

「ただのデブのくせに」

 ボソッとルーナはそんな事をつぶやく。

「……デブ?」

 ピクンとセレナさんの眉が釣り上がる。

「…………」

「…………」

 突然、辺りに静寂が訪れる。
 なぜか背筋が凍りつくような静寂だった。
 ちなみに、ルーナは貧相ではないし、セレナさんはデブではない。
 そう思うのだが、なぜか口に出すのは憚られた。

「………ふふ」

「………はは」

 そして、2人の女は同時に剣呑な笑みを浮かべ始めた。
 やめよう?
 なんか胃がキリキリしてくるから、やめよう?

「ふざけるな、このまな板エルフ!」

 突然、セレナさんが腕を振り上げる。
 膨大な魔力の流れを感じた。

 やばい。

 咄嗟にルーナをかばって土壁を生成する。

 土壁越しに、極度の冷気を感じた。

 土壁は一瞬で凍りついて砕け散る。

「……あら? なぜその絶壁小娘をかばうの?」

 セレナさんは、信じられないものを見たかのような表情を浮かべる。
 その表情はどこかあどけなく、ぞっとする程、美しかった。

「誰が絶壁――むぐっ」

 言い返そうとするルーナを背中で隠す。

「いや、特に理由はないんだが、なんとなくな」

 俺もさすがにセレナさんがやばいのはわかってきた。
 多分、高確率で人間じゃない気がする。

「残念だわ。あなたならわかってくれる気がしたのに」

 セレナさんは驚くほど長い睫毛を伏せながら、悲しそうな声を上げる。

「……まあ、結果的にわかってくれればいいのだけれど」

 セレナさんから、高密度な魔力が漂ってくる。

 俺は、美人と戦うのは嫌だなと思いながら、両手に剣を生成した。
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