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第二章 吸血鬼編
第20話 異変
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俺達は、朝からヒツジを狩っていた。
もう羊毛なら腐るほどあるのだが、ヒツジは食材としても優秀なので、肉目当ての狩りだ。
狩りと言っても、ヒツジの動きは単調なので《土形成》で作った剣だけで余裕で倒せる。
この1ヶ月間、毎日のように狩っていたせいで、もはや完全な作業と化している。
経験値も貰えないし、俺は暇だと思いながら、ヒツジ相手に剣を振り続けた。
「がんばれー」
ルーナはそんな俺をにこにこしながら応援している。
以前、何がそんなに楽しいのか問いただしてみたら、ルーナのために俺が頑張って働いている感が好きらしい。
ルーナのためでもないし、働いているつもりもないが。
あの女は働くということを理解していないのだ。
働くとは、こんな太陽の下で爽やかに行われるものではない。
マシンの音しかしない密閉されたサーバ室に閉じ込められて、ひたすらバグ解析なんかをやらされ、気づくと今が何時何分なのか、朝なのか夜なのかわからない状態になり、あとは己の生命力との戦いになる。
そんな奴隷のような過酷な労働の事を指すのだ。
あれに比べたら、ヒツジ刈りなんかは気分転換のスポーツと一緒なのだ。
スポーツなんてやってなかったけど。
俺は、辺りのヒツジを倒し切ったのを確認すると、額の汗を拭って、土の剣を地面に刺した。
ルーナがタオルを持って、こちらに歩いてくるのが見える。
俺はルーナを待ちながら、辺りを見渡した。
結構、森の近くまで来てしまったらしい。
森はかなり広い。
木が生い茂っていて、中がよく見渡せない。
なんか不気味な感じがする。
そういえば、森の中にもモンスターがいるのだろうか。
経験値的に、なにか新しい獲物が欲しいのだ。
「どうした? 森なんか眺めて」
歩いてきたルーナからタオルを受け取って、顔を拭う。
「いや、森のなかにもモンスターとかいるのかなと思って」
「ああ、そういえば、この森の中には、絹糸の原料となる芋虫のモンスターがいると聞いたことがあるな」
「絹糸? 金になりそうだな。狩りに行くか?」
俺は土の剣を抜いて剣呑に構えてみたが、ルーナに止められた。
「ちょっと待て。以前、あの村の住人に聞いた時は、絶対に森に近づいてはいけないし、森のモンスターを倒してもいけないと言われたぞ。なんか奥に住んでいる森の主に気づかれるからって」
「森の主か。ってお前、以前もここに来たことがあるのか?」
「うん。ここはいい羊毛がとれるからな。数年前に来た時は、まだ村に人間が住んでいたぞ」
「ふーん。なんで誰もいなくなっちゃったんだろうな」
その時だった。
「……あぁ……うう……」
急にどこかからかうめき声が聞こえてくる。
犯しまくった後のルーナみたいな声だ。
しかし、ルーナはきょとんとした表情を浮かべているだけだ。
アヘ顔ではないので、ルーナではないのだろう。
「……おい、なんか失礼な事を考えていないか?」
ルーナじゃないなら誰だと思いながら、辺りを見渡してみる。
そして、俺は凍りついた。
それは、森の入口にいた。
生気のない濁った瞳。
腐りかけた身体。
ボロボロの衣服。
覚束ない足取り。
かつて、人間だった者の成れの果て。
「……グール」
ルーナがそんな声をあげる。
だが、俺はそれどころではなかった。
小刻みに震える腕に苦労しながら、ルーナを捕まえて抱き寄せる。
「わわっ、なんだいきなり」
「ひいいいいいいい!」
そして、思い切り悲鳴を上げた。
アレはダメだ。
ホラーは苦手なのだ。
なんていうか生理的に無理だ。
だってお化けじゃん!
「おい、どうしたんだ。急に? あ、あんっ、やめろ、胸を揉むな!」
俺は冷や汗を流しながら、必死に落ち着こうとした。
ルーナの胸を揉んで、冷静になるのだ。
男は有事の際、自然と女性の胸を求めるものなのだ。
俺は自分を落ち着かせながら、森の入口にいるグールに目をやる。
グールなんてゲームによく出てくる雑魚モンスターじゃないか。
スライムと一緒だ。
そう考えれば、怖くない。
そうだ、怖くないのだ。
落ち着け。
「……うぅ……ぐぅあ……」
グールはうめき声を上げながら、覚束ない足取りで歩いている。
こっちに向かって。
「ひい!」
反射的に《火形成》を発動していた。
グールの足元から、数メートルの火柱が出現する。
火柱に包まれたグールは、うめき声を上げながら燃え尽きていった。
『5ポイントの経験値を獲得しました。』
表示されたログを確認する。
どうやら、倒したようだ。
「ふう」
俺は冷や汗でびしょ濡れになった額を拭う。
厳しい戦いだったぜ……。
「……お、おい」
気づくとルーナは真っ赤な顔で、瞳を潤ませながら、身体をぴくぴくさせていた。
どこか呼吸も荒い。
なんというか、完全に出来上がっている。
「どうした? 乳首ビンビンにさせて」
「お前が、急に胸を揉むからだろう!?」
そういえば、俺は未だに両手でルーナの胸を揉みしだいていた。
つまり、俺は手を使わずに《火形成》を発動させたことになる。
また大魔導師に一歩近づいた瞬間だった。
その時、急に森がざわめき立つ。
鳥たちが一斉に飛び立ち、木々が揺れる。
「なんだ?」
イきかかっていたルーナを離してやりながら、森を眺めた。
森が揺れる。
次いで、聞こえてくる地響き。
いや、これは足音か。
何か大質量のモノが移動してくるような。
刹那、森が爆ぜた。
木々が吹き飛ぶ。
吹き飛ばされた木々の合間から、飛び出してくる緑色の巨体。
2メートルはある人間のような身体に、豚のような顔がついている。
最低限の腰布のようなものをつけた以外は、筋骨隆々の全裸だ。
「野生のオークだ!」
オーク? あれが?
森からオークが5,6体飛び出してくる。
ルーナがレイピアを抜いていた。
オークが物凄い勢いで、こちらに向かってかけてくる。
このまま行ったら戦闘は避けられないだろう。
俺は咄嗟にルーナの前にでた。
そのまま、ルーナを後方に押しやる。
「お前は、下がっていろ!」
ルーナとオークを戦わせる訳にはいかない。
なんというか、ルーナが犯される未来しか見えない。
エルフとオークの関係はそういうものだ(エロゲー脳)。
土の剣を構えて、オークを見据える。
オークは無骨な棍棒を持っていた。
「グガァアア!」
一体、突出してきたオークが俺に向かって棍棒を振り下ろす。
俺は、その攻撃を必死に避けながらオークに向かって剣を振るった。
「グオ」
しかし、俺の剣はあっさり躱されてしまう。
素人の剣ではこんなものか。
「無理だ! まだお前では、オークには勝てない」
ルーナが悲痛な叫びを上げて、俺に加勢しようとしてくる。
「黙って見てろ!」
俺はそんなルーナを手で制しながら、久しぶりのスキル取得メニューを念じてみた。
#############################################
【取得可能スキル一覧】
使用可能スキルポイント:8
・武器スキル
剣/槍/弓/根/斧/拳
・魔法スキル
風魔法
・強化スキル
筋力/防御/敏捷/器用/知能/精神
・生産スキル
鍛冶/木工/革細工/錬金術/彫金
#############################################
俺は、スキルの中から剣スキルを選択して取得する。
『スキルポイントを1ポイント消費しました。』
『剣LV1を取得しました。』
『剣LV1:《基礎剣術》が使用可能になりました。』
『使用可能スキルポイントは7ポイントです。』
剣スキルをとってみたら《基礎剣術》とかいうのを覚えた。
覚えた瞬間から、剣をどのように振るえばよいか、身のこなしはどうすればよいかなどのイメージが脳裏に湧いてくる。
《基礎剣術》はパッシブ型のスキルのようだ。
「グガアアア!」
再び棍棒を振り上げるオーク。
俺はそんなオークの懐に飛び込むと、胴を薙ぎ払いながら駆け抜けた。
「グゴ!?」
何が起こったのかわからないといった素振りを見せながら、腸を撒き散らせたオークが地面に倒れていく。
『10ポイントの経験値を獲得しました。』
「グガアア!」
オークを倒したことをログで確認しながら、駆けつけてきた別のオークの棍棒を剣で受ける。
ガキンと嫌な音がしたが、オークの無骨な棍棒を受けても土の剣は折れそうになかった。
「グオオオ!」
刹那、もう1体、別のオークが棍棒を振り上げてきた。
2体同時とか。
俺の剣は既に他のオークの棍棒を受け止めていて、新しいオークの攻撃に対応するすべがない。
「くそっ」
毒づきながら、左手にもう1本の土の剣を生成した。
オークの棍棒が振り下ろされる直前だったので、間に合うか賭けだったが、ギリギリのタイミングで新しく生成した剣は、オークの棍棒を受け止めていた。
『〔土の剣〕を装備しました。攻撃力補正+30』
心なしか攻撃力補正が上がっている気がする。
《基礎剣術》の効果だろうか。
『エクストラスキル解放条件を達成しました。』
『解放条件:武器を両手で装備する。』
『解放スキル:武器スキル 二刀流』
『取得に必要なスキルポイントは1です。』
装備ログに続いて、そんなログが出力される。
二刀流とか!
数多のゲーム中で二刀流が弱かった例がない。
俺は早速、二刀流も取得した。
『スキルポイントを1ポイント消費しました。』
『二刀流LV1を取得しました。』
『二刀流LV1:《基礎二刀流》が使用可能になりました。』
『使用可能スキルポイントは6ポイントです。』
《基礎二刀流》を取得すると、《基礎剣術》の時と同じように、二刀流のいろはが脳内に流れ込んでくる。
これもパッシブスキルなのだろう。
俺は両手で受け止めていたオークの棍棒を受け流すように、剣を滑らせた。
身体を捻って、2体のオークの間を抜ける。
「グオ!?」
「ガア?」
オークたちは渾身の力を込めていたであろう棍棒を受け流されて、バランスを崩している。
よろける2体のオークは、俺にとっては格好の餌食に見える。
俺は右の剣で1体のオークの首を飛ばして、左の剣でもう1体のオークを袈裟斬りにした。
一瞬の後、噴水のような血を噴き上げた2体のオークが地面に沈んでいく。
『10ポイントの経験値を獲得しました。』
『10ポイントの経験値を獲得しました。』
続けざまに流れるログを見ながら、俺は残りのオークに目をやる。
残りは3体。
物凄い勢いで駆けていたオークたちの足は完全に止まっていた。
あっという間に、3体のオークを屠った俺に恐れをなしているのだろう。
俺を見ながら、距離をとってたじろいでいる。
2メートルの巨体がビビる様は滑稽だった。
このままちょっと脅かせば、逃げていくかもしれない。
一瞬、そんな事が脳裏によぎったが、見逃すつもりはない。
経験値10ポイントを俺が見逃すわけないのだ。
俺は両手に握った剣を広げるようにして構えながら、ゆっくりとオークに近づいていった。
最後のオークの首を飛ばした後、俺は水魔法でカラカラに乾いていた喉を潤した。
いやー、さっきは中々やばかった。
咄嗟にスキルを取得しなかったらやばかっただろう。
おもわず2ポイントも使ってしまったが。
まあ、まだ6ポイントも残っているからいいけど。
「……あ、あの」
ルーナがおずおずと近づいてくる。
オークを近寄らせなかったので、ルーナは無事だった。
よかった。
もう少しでこの女がオークに犯されるところだった。
……ほんの少し見てみたい気もしたが。
「怪我はないか?」
「う、うん」
念のためそんな事を聞いてみたが、ルーナは心ここにあらずといったように、ぽーっとした表情で俺を見ている。
心なしか顔が赤い。
「いや、その、急に強くなるからびっくりして……。そ、その格好良すぎて……」
ルーナの表情は、恋する少女そのものだった。
だから、チョロインにも程があると……。
その時、再び地響きがして森がざわつき出す。
先程のものより、遥かに大きい。
地響きは、もはや地震と言ってもいいレベルで俺たちの足元を揺らす。
これが先程と同じようにオークが起こしているものだとしたら。
数体じゃすまない。
そして、目の前の森の一部が爆発したように、吹き飛んだ。
先程の数倍の規模だ。
飛び出してくるオークの群れ。
数十体、いや100体は軽く超えている。
彼我の距離は数百メートルしかない。
逃げるか。
そう思ってルーナの手を掴む。
しかし、オークの速度はかなりのものだ。
正直、あれから逃げ切れる自信はない。
「あ、ああ……」
ルーナは完全に怯えきっていて、顔を真っ青にさせている。
数体ならまだしも、あの数のオークに犯されたらただじゃすまない。
ルーナが壊れちゃうよう!
……もはやそんな問題じゃないが。
俺は押し寄せてくるオークの群れを睨む。
いくらスキルを取得したと言っても、あの中に剣で切り込む自信はない。
なら、魔法しかないか。
というか、そもそも俺は魔法使いだ。
ちょっと忘れかけたけど。
俺は両手に握った剣を地面に刺して、開いた両手をオークの群れに向けた。
両手にMPの殆どを流し込む。
未だかつて扱ったことのない程、莫大な魔力だ。
そして、オーバーロードを発動させる。
体中から、激しい稲妻がほとばしる。
「……お、おい」
背中から、ルーナの心配そうな声が聴こえる。
守ってやるから安心しろ。
イメージは、圧倒的な破壊だ。
目の前のオークの群れを一瞬で殲滅させるのだ。
そして、俺は《火形成》を発動させる。
オーバーロードさせた《火形成》は初めてだった。
不意にオークたちの足元が灼熱に染まる。
高熱によって、地面が溶けていくのがわかる。
「消し飛べ!」
グワッと大地が盛り上がる。
慌てたようにバランスを崩すオークたち。
そして。
地面が爆発する。
圧倒的に巨大な火柱が立ち上った。
空まで届きそうな火柱だった。
火柱がオークたちを燃やし尽くしていく。
離れた所に立っている俺にすら焼けるような熱を感じる。
急激に熱せられた空気は、陽炎を形成して、辺りの景色を歪ませる。
数秒後に、火柱が消えた時、不気味に黒く染まった大地が残され、所々で煙を上げていた。
そこには、あれだけいたオークの影も形も見えない。
『10ポイントの経験値を獲得しました。』
『10ポイントの経験値を獲得しました。』
『10ポイントの経験値を獲得しました。』
『10ポイントの経験値を獲得しました。』
大量のログが流れるように、視界を埋めていく。
オークは全滅したようだ。
「うぐっ!」
不意に頭痛に襲われた。
心臓の鼓動が早くなり、視界が歪む。
久しぶりに感じるMP枯渇だった。
経験値取得ログが流れまくっているせいで、確認ができないが、おそらくMPが0なのだろう。
「お、おい! 大丈夫か?」
ルーナが駆け寄ってくる。
未だに顔が青く、血の気が戻っていない。
「ああ、ちょっと魔力を使いすぎた」
歪む視界の中で、ルーナに笑いかけてみる。
あれだけのオークを倒しきったのだ。
またさっきみたいに惚れ直してくれるだろうか。
しかし、そんな俺の期待は、ルーナの青い瞳から溢れる一筋の涙を見て裏切られる。
「お、おい。どうした?」
急に泣き出したルーナに動揺した。
「……だから、あんまり私にすごい力を見せるなって!」
ルーナが抱きついてくる。
「そんなに自分が勇者だって私に見せつけたいのか!」
俺の首筋に顔を埋めるルーナの表情は窺い知れない。
「……おねがいだから、私を置いて行かないで」
そして、ルーナは嗚咽をあげ始めた。
「……一人にしないでよ」
だから、引きこもりはどこにも行かないってば。
「悪かった」
そんな事を思いながら、ルーナの背中を優しく抱きしめた。
ルーナをなだめながら、俺は真っ黒焦げになった大地を見渡す。
勇者となって魔族の軍隊と戦うなんて無理だと思っていた。
でも、なんか今の感じだと軍隊くらい相手にできそうだった。
絶対にやらないけど。
まあ、今回は少しやりすぎたかな。
オーバーキルにも程があった。
もう羊毛なら腐るほどあるのだが、ヒツジは食材としても優秀なので、肉目当ての狩りだ。
狩りと言っても、ヒツジの動きは単調なので《土形成》で作った剣だけで余裕で倒せる。
この1ヶ月間、毎日のように狩っていたせいで、もはや完全な作業と化している。
経験値も貰えないし、俺は暇だと思いながら、ヒツジ相手に剣を振り続けた。
「がんばれー」
ルーナはそんな俺をにこにこしながら応援している。
以前、何がそんなに楽しいのか問いただしてみたら、ルーナのために俺が頑張って働いている感が好きらしい。
ルーナのためでもないし、働いているつもりもないが。
あの女は働くということを理解していないのだ。
働くとは、こんな太陽の下で爽やかに行われるものではない。
マシンの音しかしない密閉されたサーバ室に閉じ込められて、ひたすらバグ解析なんかをやらされ、気づくと今が何時何分なのか、朝なのか夜なのかわからない状態になり、あとは己の生命力との戦いになる。
そんな奴隷のような過酷な労働の事を指すのだ。
あれに比べたら、ヒツジ刈りなんかは気分転換のスポーツと一緒なのだ。
スポーツなんてやってなかったけど。
俺は、辺りのヒツジを倒し切ったのを確認すると、額の汗を拭って、土の剣を地面に刺した。
ルーナがタオルを持って、こちらに歩いてくるのが見える。
俺はルーナを待ちながら、辺りを見渡した。
結構、森の近くまで来てしまったらしい。
森はかなり広い。
木が生い茂っていて、中がよく見渡せない。
なんか不気味な感じがする。
そういえば、森の中にもモンスターがいるのだろうか。
経験値的に、なにか新しい獲物が欲しいのだ。
「どうした? 森なんか眺めて」
歩いてきたルーナからタオルを受け取って、顔を拭う。
「いや、森のなかにもモンスターとかいるのかなと思って」
「ああ、そういえば、この森の中には、絹糸の原料となる芋虫のモンスターがいると聞いたことがあるな」
「絹糸? 金になりそうだな。狩りに行くか?」
俺は土の剣を抜いて剣呑に構えてみたが、ルーナに止められた。
「ちょっと待て。以前、あの村の住人に聞いた時は、絶対に森に近づいてはいけないし、森のモンスターを倒してもいけないと言われたぞ。なんか奥に住んでいる森の主に気づかれるからって」
「森の主か。ってお前、以前もここに来たことがあるのか?」
「うん。ここはいい羊毛がとれるからな。数年前に来た時は、まだ村に人間が住んでいたぞ」
「ふーん。なんで誰もいなくなっちゃったんだろうな」
その時だった。
「……あぁ……うう……」
急にどこかからかうめき声が聞こえてくる。
犯しまくった後のルーナみたいな声だ。
しかし、ルーナはきょとんとした表情を浮かべているだけだ。
アヘ顔ではないので、ルーナではないのだろう。
「……おい、なんか失礼な事を考えていないか?」
ルーナじゃないなら誰だと思いながら、辺りを見渡してみる。
そして、俺は凍りついた。
それは、森の入口にいた。
生気のない濁った瞳。
腐りかけた身体。
ボロボロの衣服。
覚束ない足取り。
かつて、人間だった者の成れの果て。
「……グール」
ルーナがそんな声をあげる。
だが、俺はそれどころではなかった。
小刻みに震える腕に苦労しながら、ルーナを捕まえて抱き寄せる。
「わわっ、なんだいきなり」
「ひいいいいいいい!」
そして、思い切り悲鳴を上げた。
アレはダメだ。
ホラーは苦手なのだ。
なんていうか生理的に無理だ。
だってお化けじゃん!
「おい、どうしたんだ。急に? あ、あんっ、やめろ、胸を揉むな!」
俺は冷や汗を流しながら、必死に落ち着こうとした。
ルーナの胸を揉んで、冷静になるのだ。
男は有事の際、自然と女性の胸を求めるものなのだ。
俺は自分を落ち着かせながら、森の入口にいるグールに目をやる。
グールなんてゲームによく出てくる雑魚モンスターじゃないか。
スライムと一緒だ。
そう考えれば、怖くない。
そうだ、怖くないのだ。
落ち着け。
「……うぅ……ぐぅあ……」
グールはうめき声を上げながら、覚束ない足取りで歩いている。
こっちに向かって。
「ひい!」
反射的に《火形成》を発動していた。
グールの足元から、数メートルの火柱が出現する。
火柱に包まれたグールは、うめき声を上げながら燃え尽きていった。
『5ポイントの経験値を獲得しました。』
表示されたログを確認する。
どうやら、倒したようだ。
「ふう」
俺は冷や汗でびしょ濡れになった額を拭う。
厳しい戦いだったぜ……。
「……お、おい」
気づくとルーナは真っ赤な顔で、瞳を潤ませながら、身体をぴくぴくさせていた。
どこか呼吸も荒い。
なんというか、完全に出来上がっている。
「どうした? 乳首ビンビンにさせて」
「お前が、急に胸を揉むからだろう!?」
そういえば、俺は未だに両手でルーナの胸を揉みしだいていた。
つまり、俺は手を使わずに《火形成》を発動させたことになる。
また大魔導師に一歩近づいた瞬間だった。
その時、急に森がざわめき立つ。
鳥たちが一斉に飛び立ち、木々が揺れる。
「なんだ?」
イきかかっていたルーナを離してやりながら、森を眺めた。
森が揺れる。
次いで、聞こえてくる地響き。
いや、これは足音か。
何か大質量のモノが移動してくるような。
刹那、森が爆ぜた。
木々が吹き飛ぶ。
吹き飛ばされた木々の合間から、飛び出してくる緑色の巨体。
2メートルはある人間のような身体に、豚のような顔がついている。
最低限の腰布のようなものをつけた以外は、筋骨隆々の全裸だ。
「野生のオークだ!」
オーク? あれが?
森からオークが5,6体飛び出してくる。
ルーナがレイピアを抜いていた。
オークが物凄い勢いで、こちらに向かってかけてくる。
このまま行ったら戦闘は避けられないだろう。
俺は咄嗟にルーナの前にでた。
そのまま、ルーナを後方に押しやる。
「お前は、下がっていろ!」
ルーナとオークを戦わせる訳にはいかない。
なんというか、ルーナが犯される未来しか見えない。
エルフとオークの関係はそういうものだ(エロゲー脳)。
土の剣を構えて、オークを見据える。
オークは無骨な棍棒を持っていた。
「グガァアア!」
一体、突出してきたオークが俺に向かって棍棒を振り下ろす。
俺は、その攻撃を必死に避けながらオークに向かって剣を振るった。
「グオ」
しかし、俺の剣はあっさり躱されてしまう。
素人の剣ではこんなものか。
「無理だ! まだお前では、オークには勝てない」
ルーナが悲痛な叫びを上げて、俺に加勢しようとしてくる。
「黙って見てろ!」
俺はそんなルーナを手で制しながら、久しぶりのスキル取得メニューを念じてみた。
#############################################
【取得可能スキル一覧】
使用可能スキルポイント:8
・武器スキル
剣/槍/弓/根/斧/拳
・魔法スキル
風魔法
・強化スキル
筋力/防御/敏捷/器用/知能/精神
・生産スキル
鍛冶/木工/革細工/錬金術/彫金
#############################################
俺は、スキルの中から剣スキルを選択して取得する。
『スキルポイントを1ポイント消費しました。』
『剣LV1を取得しました。』
『剣LV1:《基礎剣術》が使用可能になりました。』
『使用可能スキルポイントは7ポイントです。』
剣スキルをとってみたら《基礎剣術》とかいうのを覚えた。
覚えた瞬間から、剣をどのように振るえばよいか、身のこなしはどうすればよいかなどのイメージが脳裏に湧いてくる。
《基礎剣術》はパッシブ型のスキルのようだ。
「グガアアア!」
再び棍棒を振り上げるオーク。
俺はそんなオークの懐に飛び込むと、胴を薙ぎ払いながら駆け抜けた。
「グゴ!?」
何が起こったのかわからないといった素振りを見せながら、腸を撒き散らせたオークが地面に倒れていく。
『10ポイントの経験値を獲得しました。』
「グガアア!」
オークを倒したことをログで確認しながら、駆けつけてきた別のオークの棍棒を剣で受ける。
ガキンと嫌な音がしたが、オークの無骨な棍棒を受けても土の剣は折れそうになかった。
「グオオオ!」
刹那、もう1体、別のオークが棍棒を振り上げてきた。
2体同時とか。
俺の剣は既に他のオークの棍棒を受け止めていて、新しいオークの攻撃に対応するすべがない。
「くそっ」
毒づきながら、左手にもう1本の土の剣を生成した。
オークの棍棒が振り下ろされる直前だったので、間に合うか賭けだったが、ギリギリのタイミングで新しく生成した剣は、オークの棍棒を受け止めていた。
『〔土の剣〕を装備しました。攻撃力補正+30』
心なしか攻撃力補正が上がっている気がする。
《基礎剣術》の効果だろうか。
『エクストラスキル解放条件を達成しました。』
『解放条件:武器を両手で装備する。』
『解放スキル:武器スキル 二刀流』
『取得に必要なスキルポイントは1です。』
装備ログに続いて、そんなログが出力される。
二刀流とか!
数多のゲーム中で二刀流が弱かった例がない。
俺は早速、二刀流も取得した。
『スキルポイントを1ポイント消費しました。』
『二刀流LV1を取得しました。』
『二刀流LV1:《基礎二刀流》が使用可能になりました。』
『使用可能スキルポイントは6ポイントです。』
《基礎二刀流》を取得すると、《基礎剣術》の時と同じように、二刀流のいろはが脳内に流れ込んでくる。
これもパッシブスキルなのだろう。
俺は両手で受け止めていたオークの棍棒を受け流すように、剣を滑らせた。
身体を捻って、2体のオークの間を抜ける。
「グオ!?」
「ガア?」
オークたちは渾身の力を込めていたであろう棍棒を受け流されて、バランスを崩している。
よろける2体のオークは、俺にとっては格好の餌食に見える。
俺は右の剣で1体のオークの首を飛ばして、左の剣でもう1体のオークを袈裟斬りにした。
一瞬の後、噴水のような血を噴き上げた2体のオークが地面に沈んでいく。
『10ポイントの経験値を獲得しました。』
『10ポイントの経験値を獲得しました。』
続けざまに流れるログを見ながら、俺は残りのオークに目をやる。
残りは3体。
物凄い勢いで駆けていたオークたちの足は完全に止まっていた。
あっという間に、3体のオークを屠った俺に恐れをなしているのだろう。
俺を見ながら、距離をとってたじろいでいる。
2メートルの巨体がビビる様は滑稽だった。
このままちょっと脅かせば、逃げていくかもしれない。
一瞬、そんな事が脳裏によぎったが、見逃すつもりはない。
経験値10ポイントを俺が見逃すわけないのだ。
俺は両手に握った剣を広げるようにして構えながら、ゆっくりとオークに近づいていった。
最後のオークの首を飛ばした後、俺は水魔法でカラカラに乾いていた喉を潤した。
いやー、さっきは中々やばかった。
咄嗟にスキルを取得しなかったらやばかっただろう。
おもわず2ポイントも使ってしまったが。
まあ、まだ6ポイントも残っているからいいけど。
「……あ、あの」
ルーナがおずおずと近づいてくる。
オークを近寄らせなかったので、ルーナは無事だった。
よかった。
もう少しでこの女がオークに犯されるところだった。
……ほんの少し見てみたい気もしたが。
「怪我はないか?」
「う、うん」
念のためそんな事を聞いてみたが、ルーナは心ここにあらずといったように、ぽーっとした表情で俺を見ている。
心なしか顔が赤い。
「いや、その、急に強くなるからびっくりして……。そ、その格好良すぎて……」
ルーナの表情は、恋する少女そのものだった。
だから、チョロインにも程があると……。
その時、再び地響きがして森がざわつき出す。
先程のものより、遥かに大きい。
地響きは、もはや地震と言ってもいいレベルで俺たちの足元を揺らす。
これが先程と同じようにオークが起こしているものだとしたら。
数体じゃすまない。
そして、目の前の森の一部が爆発したように、吹き飛んだ。
先程の数倍の規模だ。
飛び出してくるオークの群れ。
数十体、いや100体は軽く超えている。
彼我の距離は数百メートルしかない。
逃げるか。
そう思ってルーナの手を掴む。
しかし、オークの速度はかなりのものだ。
正直、あれから逃げ切れる自信はない。
「あ、ああ……」
ルーナは完全に怯えきっていて、顔を真っ青にさせている。
数体ならまだしも、あの数のオークに犯されたらただじゃすまない。
ルーナが壊れちゃうよう!
……もはやそんな問題じゃないが。
俺は押し寄せてくるオークの群れを睨む。
いくらスキルを取得したと言っても、あの中に剣で切り込む自信はない。
なら、魔法しかないか。
というか、そもそも俺は魔法使いだ。
ちょっと忘れかけたけど。
俺は両手に握った剣を地面に刺して、開いた両手をオークの群れに向けた。
両手にMPの殆どを流し込む。
未だかつて扱ったことのない程、莫大な魔力だ。
そして、オーバーロードを発動させる。
体中から、激しい稲妻がほとばしる。
「……お、おい」
背中から、ルーナの心配そうな声が聴こえる。
守ってやるから安心しろ。
イメージは、圧倒的な破壊だ。
目の前のオークの群れを一瞬で殲滅させるのだ。
そして、俺は《火形成》を発動させる。
オーバーロードさせた《火形成》は初めてだった。
不意にオークたちの足元が灼熱に染まる。
高熱によって、地面が溶けていくのがわかる。
「消し飛べ!」
グワッと大地が盛り上がる。
慌てたようにバランスを崩すオークたち。
そして。
地面が爆発する。
圧倒的に巨大な火柱が立ち上った。
空まで届きそうな火柱だった。
火柱がオークたちを燃やし尽くしていく。
離れた所に立っている俺にすら焼けるような熱を感じる。
急激に熱せられた空気は、陽炎を形成して、辺りの景色を歪ませる。
数秒後に、火柱が消えた時、不気味に黒く染まった大地が残され、所々で煙を上げていた。
そこには、あれだけいたオークの影も形も見えない。
『10ポイントの経験値を獲得しました。』
『10ポイントの経験値を獲得しました。』
『10ポイントの経験値を獲得しました。』
『10ポイントの経験値を獲得しました。』
大量のログが流れるように、視界を埋めていく。
オークは全滅したようだ。
「うぐっ!」
不意に頭痛に襲われた。
心臓の鼓動が早くなり、視界が歪む。
久しぶりに感じるMP枯渇だった。
経験値取得ログが流れまくっているせいで、確認ができないが、おそらくMPが0なのだろう。
「お、おい! 大丈夫か?」
ルーナが駆け寄ってくる。
未だに顔が青く、血の気が戻っていない。
「ああ、ちょっと魔力を使いすぎた」
歪む視界の中で、ルーナに笑いかけてみる。
あれだけのオークを倒しきったのだ。
またさっきみたいに惚れ直してくれるだろうか。
しかし、そんな俺の期待は、ルーナの青い瞳から溢れる一筋の涙を見て裏切られる。
「お、おい。どうした?」
急に泣き出したルーナに動揺した。
「……だから、あんまり私にすごい力を見せるなって!」
ルーナが抱きついてくる。
「そんなに自分が勇者だって私に見せつけたいのか!」
俺の首筋に顔を埋めるルーナの表情は窺い知れない。
「……おねがいだから、私を置いて行かないで」
そして、ルーナは嗚咽をあげ始めた。
「……一人にしないでよ」
だから、引きこもりはどこにも行かないってば。
「悪かった」
そんな事を思いながら、ルーナの背中を優しく抱きしめた。
ルーナをなだめながら、俺は真っ黒焦げになった大地を見渡す。
勇者となって魔族の軍隊と戦うなんて無理だと思っていた。
でも、なんか今の感じだと軍隊くらい相手にできそうだった。
絶対にやらないけど。
まあ、今回は少しやりすぎたかな。
オーバーキルにも程があった。
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