ちょいクズ社畜の異世界ハーレム建国記

油揚メテオ

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第一章 異世界転移編

第12話 充実していく引きこもり生活

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 俺は、冷たい床の上で目を覚ました。

 硬質で、少しざらざらした床だ。

 そんな床に頬をつけて眠っていたようなので、顔が痛い。
 というより、全身が痛い。

 床に直寝はダメだ。野宿の方が地面が柔らかい分マシかもしれない。

 そんな事を思いながら、仰向けになる。

 そして、俺の目の前には、真っ赤に染まる雄大な雲が見えた。
 複雑な形で、至るところに陰影があり、赤や、黒、白など様々な色に彩られている。

 何か無性に心を打つ、美しい景色だった。

 そして、そんな景色は部屋の上部一杯に広がったドーム状の天窓から見えていた。
 天窓はガラスのように透明で、それでいて周りの縁の部分は薄茶色の曇りがかかっている。
 頭頂部に行けば行くほど、透明度が増していき、天井から覗く景色はまるで額縁に入れられた一枚の絵のようであった。

 それは、俺のイメージした通りの天井だった。

 天井から見える赤い雲は、夕焼けだろうか、朝焼けだろうか。
 今が何時くらいなのかわからない。

 俺は起き上がりながら、辺りを見渡す。

 平らな床に、頑丈そうな壁。
 柱のない広々とした空間に、空を見渡せる全面ガラス?張りの天井。
 一辺が4メートルの壁を正方形になるように配置してみたので、面積は16平方メートルだ。
 フリーハンドでやったにしては恐ろしい程きれいな正方形だった。なんというか俺の製図能力が天才的だったのだろうか。
 きっとそうだろう。
 もしかしたら、《土形成》をした時のイメージのお陰かもしれないけど。

 それにしても、16平方メートルって結構広い。
 中野の俺の賃貸が16平方メートルだったので同じような広さをイメージしてみたが、全然こっちの方が広い。
 10畳くらいある気がする。
 畳の計算方法がわからないので、正確にはわからないが、俺の賃貸の16平方メートルってサギだったのか、トイレとかお風呂のせいで部屋が狭くなっていたのだろうか。

 なんにせよ、嬉しい誤算である。
 今にして思えば、そもそも何故、俺の家と同じ広さにしようとしたのか。
 どうせ魔法で作るんだから、どーんと100坪とかにすればよかった。
 坪の計算方法もわからないから、どうすれば100坪になるのか知らんけど。

 入り口をくぐって外に出る。

 すると、朝日が昇る所だった。
 今は朝らしい。

 あ、やばい。

 俺は慌てて服を脱いで、真っ裸になる。
 ゴシゴシと、身体を洗って指歯ブラシで歯を磨く。
 そして、昇ってくる朝日に見せつけるように、全裸で腕を組んで仁王立ちをキめる。
 今日も朝日を犯してやったぜ。

 いつもの日課を終えたあとは、クリンゴを食べた。
 クリンゴは美味い。
 美味いが、たまには肉を食べたい。
 牛丼でいいから。

 ちなみにウサギは二度と食べない。

 よく考えてみると、きっとウサギが不味いのではなくて、食べ方が不味かったのだと思う。
 ちゃんと料理すれば美味しいのかもしれない。
 しかし、俺は料理ができない。
 10年くらい一人暮らしをしているが、一回も料理をしたことがない。
 もっというと、包丁すら持っていない。
 だって、指を切ったら危ないじゃんか。
 包丁は人を殺せるのだ。いわば武器だ。
 危ないので買わないのである。
 それなのに、どこの家にも包丁がある。
 日本とは危険な国である。

 朝ごはんを食べた後は、完成した我が家を眺めてみた。
 薄茶色の重厚な壁に、透明なドーム状の屋根。
 高さは3メートル超で、1辺が4メートルの正方形だ。
 今、太陽が昇ってきた方角に向けて、高さ2メートル、幅1メートルの入り口が、ぽっかりと穴を開けている。
 中々の出来だ。
 壁を叩いてみると硬質な音がする。
 これなら、多少の地震や台風が来ても大丈夫だろう。

 こいつあ、引きこもり甲斐があるってもんだぜ……!

 俺は、子供のようにわーい! と家の中に駆け込む。
 そして、床をごろごろと転がりまわった。

 よく考えたら、俺はもう仕事に行かなくてよいのだ。
 長年の夢が叶っていたのである。

 毎朝、少なすぎる睡眠時間に身悶えながら起きて、満員電車に揺られて職場に行き、深夜まで働き、終電が無くなったので、会社に泊まり、守衛のおじさんに心配される。
 俺は一体、なんの罪を犯して、そんな奴隷階級に落とされたのだろうか。

 でも、今はそんな事を気にしなくていい。
 働かなくても、衣食住揃っているのだ。
 あれ、衣?
 つうか、衣とか生きてく上でそんなに必要なくない?
 とにかく、必要なものは揃っている。
 俺は思う存分、引きこもる事にするのだ。
 とりあえず、3ヶ月くらい。
 何もせずに、無駄な時間を弄んでやるのだ。

 そんなわけで、俺は床に大の字で寝そべった。

 あれから、何時間が経過したのだろうか。
 透明な天井には、太陽が真上に昇っているのが見えた。

 さっき気づいたのだが、この天井、夜は良いとしても昼間は地獄なのではないか。
 だって、この天井ビニールハウスよりも透明だもん。
 きっとレンズの役割を果たしていて、昼寝をしていたら、強化された太陽光線を浴びせられて、悶え苦しむんじゃないか。

 そんな事を先程まで、思っていました。
 なんとこの天井、太陽が真上に来ても、全然暑くないのです。
 それどころか、眩しくもない。
 かと言って暗いわけでもなく、程よい光が差し込んでくる。
 さすが、まくろ……ノリコさんも手伝ってくれた特別製。
 メイドインゴッドは伊達じゃない。
 おそらく、透過する光量に閾値があって、一定以上の光は通さないのかもしれない。
 どうやったのかはわからないけど。
 ステキすぎる天井である。
 なんて快適な部屋なんだ。ここなら3ヶ月どころか、半年はイケる!

 そんなことを、先程まで思っていました。
 今は、15時くらいでしょうか。
 さすがに、空をずっと眺めているのも飽きてきました。
 なんというか、涸れ井戸に落ちたまま出れなくなってしまった日本兵の話を思い出したのです。
 天井はともかく、部屋には何もありません。
 無骨な壁が圧迫感を醸し出しています。
 ここは牢屋かと。

 そんなわけで、家具が必要だと思った。
 とりあえず、ベッドかな。

 よし、ベッドを《土形成》で作ろう。
 弾力性に富んでいて、腰が痛くならず、それでいてふかふかで清潔なベッド。
 大きさは寝返りをうっても落ちないようにキングサイズだ。
 部屋がほぼ埋まるけど、常にベッドの上にいればいいので気にしない。

 早速、両手に稲妻を纏わせながら《土形成》を発動する。
 イメージを固めていると、いきなり稲妻が赤く変色した。

 『警告:世界の禁忌に触れています。』

 ログが出たので、即刻、魔法の発動を辞めた。
 やばいやばい。
 いきなり神敵認定されるところだった。

 土からベッドが作れますか。バカなんですか。

 脳裏にノリコさんがそんな事をいう姿が思い浮かんだ。
 作れません。
 でも、フレームくらいは作れるんじゃないだろうか。
 そう思って、ベッドの土台部分を《土成形》してみる。

 一応、オーバロードを発動させて、バチバチと床から土が盛り上がっていく。

 ベッドの土台はあっさりと成功した。
 いきなり禁忌に触れそうになって、少しへこんだので、大きさは普通のシングルベッドくらいにしておいた。
 高さは俺の膝くらいまでにしてある。
 硬さは、床や壁ほどではないが、土の質感がなくなるくらいまでには固めておいた。

 つまり禁忌に触れたのは、マットレスの部分なのだろう。
 ベッドで一番重要な部分だった。

 それにしても、この禁忌の制約、結構めんどくさい。
 結構《土形成》が優秀なので、なんでも作れると思っていたのに。
 なんなら、パソコンとかスマホとかオリ○ント工業とか作ってやろうと思ったのに。
 まあ、そこまで行くと土なんて全く関係ない。
 あえて言うならば、ドラ○もんだ。
 ドラ○もんがオリ○ント工業を出してくれるとは思わないけど。

 そんなわけで、マットレスは別の方法で作らなければいけない。
 どうしようか。
 そもそも、マットレスって何でできているんだろうか。
 布と、スポンジ? スプリング?
 分解したことがないからよくわからない。

 そうえいば、村に残っている廃屋に何かないだろうか。
 まるまるベッドはないけど、シーツくらいはあるかもしれない。

 そんな事を考えて、部屋の外に出て、道沿いに一番近い廃屋に向かう。

 外はすでに陽が傾いていて、どこかで虫のなく声がした。

 廃屋に入ると、埃っぽい臭いがした。
 我が家と違って造りは木造で、床は地面むき出しだ。
 せめてフローリングとかにすればいいのに。

 家の中央には、囲炉裏のような物があって、歪んだ中華鍋のような物が放置されていた。
 暖を取るために火を燃やすから、地面むき出しなのだろうか。

 廃屋には想像以上に何もない。
 ツボを壊したらやくそうが出てくるとか、タンスを開けたら1ゴールドが入ってるとかもない。
 そもそも、ツボもタンスもない。

 ただ、奥の方に大量の藁と、めくれた薄い生地があった。
 これが寝具なのかもしれない。

 生地は結構な大きさで色は肌色というか、木の板のような色だ。
 生地の目は荒く、バラバラで、酷いところは1センチくらいの穴が空いていた。
 なんというか、麻っぽい質感がする。
 これがシーツなんだろうか。
 とりあえず、これをパクろう。
 なんか、埃っぽい臭いがしたので、水魔法で洗って、外に干しておく。
 目が荒いので、吸水性は全くない。そう時間もかからずに乾くだろう。

 後は、一応藁も持って帰ろうと思う。
 藁は完全に乾燥していて、指で摘んでみると結構弾力があったからだ。

 俺は家に戻ると、先程作ったベッドの土台の中を《土形成》で凹ませた。
 10センチくらいの縁を残して、ベッドに藁を敷き詰められるスペースを作ったのだ。
 そのスペースに藁を敷き詰めていく。
 普通のシングルサイズのベッドだったが、廃屋から持って帰ってきた藁じゃ全然足りなかった。

 そんなわけで、俺は廃屋の屋根に使っている藁も引き剥がす事にした。
 廃屋の屋根は藁葺なのだ。
 廃屋の外に《土形成》で階段を作って、屋根に上がる。
 屋根に使われている藁は紐で固定されていたが、廃墟となって緩んでいたのか、思いっきり引っ張るとあっさり外れた。

 廃屋と自宅を何往復かして、ベットに敷き詰められるくらいの藁を集めた。

 そこに、先程洗っておいた麻布を被せてみる。
 麻布は、結構な大きさだったので、裾をベッドの縁に押し込んで、藁を固定できた。
 横になってみると、結構いい感じだった。
 結構な弾力がある上に、全然チクチクしない。
 そりゃ現代のベッドほどではないが、全然寝れる。
 今まで地面とか床で寝ていたので、格段の進歩だ。

 贅沢をいえば布団も欲しいが、流石に作り方がわからない。
 藁をそのまま被るのはいやだ。

 ただ夜になると、結構冷えるのが気になった。
 今までは、スーツのまま寝ていたが、さすがの俺もそろそろ風邪を引きそうである。

 そうだ、暖炉を作ろう。
 それくらいなら、簡単に出来る気がしたのだ。

 俺は、入り口がある反対側の壁の真ん中の下に、50センチくらいの正方形の穴を開けた。

 そして外に出て、その穴を囲むように、家の壁に沿って天井まで伸びる3方の壁を《土形成》で作る。
 煙突を作ったのだ。
 家の壁と同じくらいの硬さにしてみたが、壁を作った時に比べたら楽なものである。
 家の裏側に、ポコッと中が空洞の柱が出来るようなイメージだ。

 俺は、家の中に戻ると、作ったばかりの暖炉に、スライムオイルを置いて、《火生成》(イグナイト)をかけた。
 もう殆ど暗くなっていた室内が少し明るくなり、空気が熱せられて暖かくなった。
 燃えるスライムオイルが出す煙は、煙突を通って空に排出されるため、全然煙くならない。

 暖炉の近くに座ってぼーっとする。
 スライムオイルの火は、暖炉で囲われて風が来ないからか、穏やかでなんだか安心する。

 これで寝具と暖房器具が揃った。
 家の快適度がぐっと上がったのだ。
 今度こそ、3ヶ月は戦える!

 いつもに比べて、今日はあんまり行動しなかった。
 それでも、暖炉の暖かさを感じながら、ベッドに横になっているとだんだん眠くなって来る。

 天井からは、柔らかな月明かりが指していて。
 俺はそんな光に包まれるように眠りに落ちていった。



 次の日の朝、俺は歯を磨きながら昔読んだ漫画の事を思い出していた。
 その漫画は、日本を代表する名作RPGの漫画版で、原作を踏襲しつつもオリジナル要素を取り入れ、結構人気だったやつだ。

 その漫画の中で、魔法使いの登場人物が、火の魔法と、氷の魔法を融合させて、究極の魔法を完成させるというくだりがある。
 そして、思ったのだ。

 アレ俺にも出来るんじゃなかろうかと。

 ノリコさんにも褒められた俺の魔術的才能は、もはや大魔導師と言ってもいいレベルだと思うのだ。
 今なら、俺にもメ○ローアが打てる気がする!

 そんなわけで、朝の儀式を終えた後、早速実験してみることにする。
 今からやろうとしている魔法は、ものすごい威力を秘めているので、せっかく作った家が壊れないように、俺は荒野まで、てくてくと歩いてきた。

 そして、右手に《水生成》で水を溢れさせ、左手に《火形成》で小さな火の玉を出現させる。

「喰らえ、極大消滅呪文!!!」

 そして、俺は右手と左手を合わせた。

 ぶしゅうと音を立てて、火と水が対消滅していく。
 白い湯気が立ち上っていく。
 蒸発しきれなかった水が、お湯となって手からこぼれ落ちていく。

 で?

 俺の目の前では、当たり前の現象が起きている。
 水+火=お湯。
 そういえば、そうだった。
 どうすれば極大消滅呪文になるのかわからない。
 水ではなく、氷じゃないとダメなんだろうか。
 いや、氷+火=水だろう。

 まだ俺にはメド○ーアは早いってのか……!?

 タイムマシンがあったら、家を壊すといけないとか言っていた俺を殴りに行きたい。

 って、お湯!?

 お湯なんて、ここしばらく触っていない。
 毎朝、寒い思いをしながら、水を浴びていたのだ。
 火魔法も使えるんだから、なぜ水を温めるという発想がなかったのか。
 バカなのか。

 俺はとりあえず、ぽいぽいと服を脱いだ。
 先ほどと同じように、それぞれの手の平に水と火を現出させる。
 そして、両手を頭上で合わせた。
 白い湯気を上げながら、温かいお湯が滴り落ちてくる。

「おお」

 すごく気持ちいい。シャワーだ。
 全身に鳥肌が立つ。
 屋外で全裸で、両手を頭上に合わせているのは、なんの宗教だろうと思うが、久しぶりのシャワーはめちゃくちゃ心地よかった。

 お風呂の蛇口の赤と青のバルブのように、左手と右手の魔力を調節すると、シャワーの温度とか勢いが変わる。
 ただ、両手が塞がっているので、身体をこすったりできない。
 なんとかならないだろうか。
 そうだ、土魔法で容器を作って、そこにお湯を貯めて――!

 というか、風呂を作ればいいじゃないか!!

 目からウロコとはこのことである。
 俺は、踵を返して、家まで戻る。
 身体を乾かすのがめんどくさかったので、全裸のまま服は抱えてきた。
 我ながら、いい事を思いついた。
 ただ、もっと早く気付けよとも思う。


 家に帰ると、俺は風呂を作る場所について考えてみた。
 部屋の中には作りたくない。
 湯気とかが出て湿気るし、ベッドがカビそうだ。
 なので、早速家を増築する事にした。

 ほぼ1日をかけて、入り口がある壁から見た左側に、横2メートル、縦4メートルの部屋を増築した。
 家全体が、4メートル四方の正方形から、横6メートル、縦4メートルの長方形になった形だ。
 風呂場にしては、広すぎる気もしたが、家の形が凸凹するのが嫌だったのだ。
 魔力は2回ほど枯渇したが、家の壁を作っている時に比べたら、大分マシになっている気がする。

 ちなみに、風呂場は天井なしにしてある。
 天井を作ってしまうと湯気でカビそうだったし、半露天風呂みたいにしたかったのだ。
 できれば、ノリコさんに頼んで、風呂場にもステキ天井(防カビ処理済)を作ってほしかった。
 ノリコさんに頼む方法なんてないので、また禁忌魔法を発動させて、危ない所で助けてもらって、白い部屋に呼び出されて、てへぺろ☆とか言おうかと思ったが、高確率で討滅される気がするので、止めておく。

 また、床はベッドの置いてある部屋の床より、一段低くしてある。
 風呂場の床と壁の継ぎ目に、外につながる排水口を作っておいたので、風呂場で身体を洗っても部屋まで濡れることはない。

 そんなわけで、メインとなる風呂を作成する。
 オーバーロードを発動させて、風呂場の中央に幅1メートル、長さ1.5メートルほどの風呂桶を生成する。
 お湯を入れた時に、土が溶けて泥水になるのが嫌だったので、これでもかというくらい圧縮してみた。
 《土形成》に慣れてきたお陰か、今まで作った中で最高の硬度を誇る風呂ができた。
 超圧縮され尽くした土は、光沢を帯びてさえいる。
 ちょっと蹴飛ばしてみると、洒落にならない硬さだっただったので、風呂の縁は丸みを帯びるように、再度《土形成》をしておいた。
 風呂に入ろうとして、滑って頭を打ったら大変だからである。

 連続で《土形成》をしたので、MPが残り少なかった。
 俺はベッドでゴロゴロしながら、MPを回復させてから、お湯を作ることにした。

 暖炉では、昨日つけたスライムオイルの火がまだ残っている。
 1個でどれくらい持つのだろうか。
 日本に持って帰ったら売れそうだ。

 MPが回復したので、早速お湯を生成してみる。
 手で生成しているので、お湯加減を確かめられていい。
 冷めることを予め考慮して、少し熱いくらいの温度にしてみた。
 じょぼじょぼと音を立てて、お湯が溜まっていく。
 心配していた泥水にはならなかった。

 お湯を生成している最中に、水魔法がレベル2になった。
 《水形成》が使えるようになった。
 毎日身体を洗ったり、洗濯したり、水を飲んだりする度に《水生成》を使っていたのが、地味に蓄積されていたようだ。

 肩までつかれるくらいの量が溜まった所で、俺は慌てて部屋に戻って服を脱いだ。
 そして、白い湯気が立ち上る風呂に勢い良く飛び込む。
 熱いお湯に身体を浸す。
 お湯が溢れて、床に流れていく。

「んほおおお」

 思わず、エロゲーのような喘ぎ声が漏れた。
 久しぶりの風呂だ。
 細胞の隅々までお湯が染み渡っていく。
 身体の芯から温まっていくようだ。
 全身の力が抜けていく。

 頭を風呂桶に乗せて、ぽっかりと開いた天井を見つめる。
 白い湯気が空に吸い込まれていくのが見える。
 空は暗く、完全に夜は更けていた。

 星々に彩られた美しい夜空を眺めながら、俺はしばらく風呂を堪能し続けた。
 お湯が冷めてくると、風呂に入ったまま、火魔法で温め直した。

 ものすごく変な表現であるが。
 今の気持ちを一言で表すのならば。

 死ぬほど幸せだった。
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