ちょいクズ社畜の異世界ハーレム建国記

油揚メテオ

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第一章 異世界転移編

第9話 土の家を作る! ①

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 朝、目を覚ますと、めちゃくちゃ寒かった。
 昨日は、筋トレ祭りのせいで、スライムオイルを焚かずに寝てしまった。
 火すらつけずに、地面に直寝である。
 人間としてどうかと思う。

 とりあえず、スライムオイルに火をつけて、暖をとる。

 その後は、昨日と同じように、水魔法で身体と服を洗って、全裸で仁王立ちした。
 これは、朝のルーティンにしようと思う。

 それにしても、身体中がめちゃくちゃ痛い。
 筋肉痛+地面に直寝のせいだろう。

 昨日最後にやった首ブリッジのせいで、首筋が特に痛い。
 筋力ステータスが上がらないのに腹を立てて、誰に言うでもない罵詈雑言を撒き散らしながら、首ブリッジをした。
 完全にトランス状態だった。
 なんというか、飲み過ぎて暴れまくった日の翌日的なやっちゃった感がある。

 ただ、筋トレも毎日のルーティンにしようと思う。
 昨日みたいなのは、さすがにもうやらないが、腕立て、腹筋、スクワットくらいは毎日やっていいと思うのだ。
 主にステータスアップを目指して。
 ステータスアップは、俺のジャスティスだ。

 俺は腕を組みながら、全裸で仁王立ちをして、そんな事を考えた。イメージ的に今かかっているBGMは、ガンバ○ターのアレである。



 まず《土形成》を試してみる。
 いつもと同じように、右の手の平を上向きにして、《土形成》と念じてみた。

 もこもこと、一定量の土が不定形に形を変えながらふわふわ浮いている。

 《火形成》と同じように細長くしてみたり、くるくる回る土の渦を作ってみたり、形を自由に変えられた。

 ここまでは想定どおりだ。

 次は、右手で地面に触れながら、地面に対して《土形成》と念じてみた。

 ごごごと地震のような音を立てて、地面が盛り上がっていく。

 先程まで平らな地面だった場所に、一瞬で俺の腰くらいまでの高さのある小さな山が出現していた。 
 すでにある地面の土を使っているのか、消費したMPはびっくりするほど少ない。 

 やっぱり、地形効果的なものはあり、土の地面の上では、土魔法が使いやすいようだ。

 きっと川や海では水魔法、風の強い日は風魔法が使いやすいのだろう。
 火魔法が使いやすいのは、火山とかだろうか。
 火山とか絶対行かないけど。

 俺は、再び地面に《土形成》をかける。

 地面がゆっくりと盛り上がっていく。

 今度作るのは山ではなく、四角い土壁だ。
 形を整えようとしている分だけ、生成に時間がかかる。

 やがて目の前に、高さ1メートルほどの土手のようなものができあがる。
 厚さは10センチ程で、今にも崩れそうだ。

 俺はもう一度《土形成》を発動させて、土手の厚みを30センチ程にしてみた。
 まだ少しぐらぐらしている気がする。
 更に厚みを50センチくらいまで増加させた。
 やっと安定したっぽい。

 連続で《土形成》をしたせいで、MPがカツカツだった。
 とりあえず、残りMPを適当な《火形成》を発動させて溶かして、MPを枯渇させた。
 一旦、休憩しよう。

 MP枯渇が収まるのを待って、俺は作った土手をぺたぺたと触ったみた。
 触った先から、ぼろぼろと土が崩れていく。
 強度的に、まだまだ土壁とは呼べなそうだ。

 MPの回復を待ってから、土手を圧縮してみることにした。

 土の量はそのままに、土手の厚みを薄くさせてみる。

 《火生成》の時もそうだったが、大切なのはイメージだと思う。
 動画データをMPEGで圧縮するように、土手を横に圧縮して、密度を高めて行くのだ。

 土手はじわじわと横に縮まり始めた。
 必死に圧力を高めようとするが、なんというか魔力的なものが足りない気がする。

 俺は遊んでいる左手も使って、2重の《土成形》を発動させる。
 昨日と同じように、脳に負荷がかかる。

 土手はぎゅーっと薄く圧縮されていった。
 めりめりと音を立てて、横に縮んでいく。

 やがて、半分くらいの薄さになった所で圧縮が止まる。

 もうこれで限界のようだ。
 《土形成》でいくら縮めと念じても、ぴくりとも動かない。

 それでも、まだ見た目が土っぽい。
 触ってみると、ガリガリした感触に変わってた。
 ぱっと見、崩れる様子はない。

 でも、まだ家の壁としての強度は不十分ではないかと思うのだ。

 なぜなら、自分の家と言うのは、他者を隔絶する絶対防壁であり、何人たりとも不法侵入を許してはならないからだ。

 重ねて言っておくが、別に俺が引きこもりだからというわけではない。

 そんな訳で、俺はジジイの前戯のようにしつこくねちっこく、再び《土形成》を発動させる。

 今度は最初から、両手での発動である。
 両手を広げるようにして、土壁と向き合う。

 圧縮しきった土壁は、ぴくりとも動かない。

 まだまだ!
 大切なのはイメージだ。
 ここでイメージするのは、硬い壁。
 誰にも破れない、ここに逃げ込めばひと安心。
 核戦争で世界が滅びても、俺んちだけは無事。
 俺が、住みたいのはそんな家だ!

 その時、微動だにしなかった土壁に変化が生じた。

 土壁全体が青白く発光し始める。
 発光は次第に強まっていく。

 頭が締め付けられるような痛みを発する。
 MPが音を立てるようにがんがん減っていった。
 いつもの倍どころか、数倍の速度である。

 その時、土壁にバチバチと放電現象が発生した。
 そして何かが爆発するような音がした時。
 土壁は一瞬で、超圧縮していた。

 土壁は最初の10分の1程度の薄さになり、放電現象のせいか微かに白煙を上げている。

 俺のMPは0になり、いつものMP枯渇が襲ってくる。
 しかし、俺はあまりの出来事に声もなかった。
 MP枯渇の嫌な感じも気にならない程、今起きた現象に驚いていた。

 恐る恐る土壁を叩いてみる。
 すると、キンッと金属的な音がした。
 物凄く硬そうだ。

 見た目は、元が黒い土だったとは思えないが、薄茶色になっていた。

 ついに、俺の引きこもり根性が奇跡を起こしたのだ!
 引きこもりが勝利した歴史的瞬間であった。
 俺は達成感に満たされた。

 それにしても、さっきの《土形成》はすごかった。
 MPの消費量が跳ね上がった気がしたけど、《土形成》にかかる消費MPは一定ではないのだろうか。
 もしも、さっきの感覚が消費MP量を増やすものだとしたら、なんとなくコツは掴んだ気がする。

 もしやと思ってステータスを確認してみると、あの一度だけでMPが5ポイント、知能が2ポイントも上昇していた。
 頭すごく痛かったし、結構な負荷がかかったようだ。

 MPを回復させたら、本格的に家を建て始めようと思う。



 なんか、《土形成》が上手く言ったのがうれしくて、ついゲロってしまったけど、俺は本質的に引きこもりだ。
 ちゃんと社会人をしていたのはホントだし、人とも普通にコミュニケーションを取れる。
 ましてや、彼女とかもいるけど、基本的には人嫌いなのである。

 休日は滅多に外には出ずに、ずっと家にいる。
 まあ、ほとんど休日なんてないですけど(ブラック企業ジョーク)。

 仕事中も、他の人が皆帰宅して、一人になってからのほうが作業効率が上がる。
 彼女といて、一番楽しいのは、彼女が帰った後に、一人でタバコを吸う時間だ。

 働かなきゃ生きていけないので必死に我慢しているが、許されるなら俺は永遠に自分の部屋に閉じこもっていたい。

 一人は素晴らしい。
 面倒くささは皆無で気楽。しかもストレスフリー。
 身だしなみに気を使う必要もなく、独り言どれだけ言っても無問題。変な妄想をしてニヤニヤし放題。

 誰にも傷つけられないし、誰も傷つけない。

 人は一人では生きていけません。
 誰が言ったのか知らないが、あのセリフは嘘だと思う。
 たまの休みに、夕方まで爆睡して、全裸で人に見せられないくらいエログロなエロゲーとかやっているのが好きなのだ。



 そんなダメ男日本代表的な事を考えていたら、MPが全快していた。

 俺は先程作った土壁? と言って良いのかわからないが原料が土だった壁を眺める。
 厚さは5センチくらいにまで圧縮されている。
 最初から考えると、10分の1くらいまで圧縮されている事になる。圧縮率90%とか!

 試しに思い切り殴ってみると、壁は勢い良く倒れた。
 《土形成》をかけたのは、目に見える部分だけなので、地面の固定は甘かったのだろう。
 ただ、思い切り殴ったのに、壁は傷ひとつついていなかった。
 むしろ殴った俺の拳が痛い。
 なんというか、骨レベルで痛い。
 壁の硬度はかなりのものだと思う。

 そんなわけで、この壁を作りまくって夢のマイホームにするのだ。

 まずは適当な空き地を探す。
 どれくらいの広さが良いだろうか。
 4メートル四方くらいだろうか、中野にある自宅がそれくらいだ。

 それくらいの広さなら、あっさり見つかった。
 廃村の中央を通る道沿いで、村の一番奥にあたる箇所にちょうどいいスペースがあったのだ。
 言うなればメインストリート沿いの角地である。

 俺はまず、そのスペースに長さ4メートル、高さ3メートル、幅3メートルほどの直方体を《土形成》で作った。
 測ったわけではないので、長さは勘だ。
 直方体はかなりの容積になるので、MPを半分ほど消費した。

 念のために、少し休んでMPを全快にする。

 そして、この幅3メートルほどの直方体を幅30センチまで圧縮させたい。

 両手を直方体に添える。
 ゆっくりと深呼吸してから、《土形成》を発動させる。
 まずは、少しずつ直方体を圧縮させていく。
 MPがじわじわと減り始めた。

 先程の超圧縮を体験してから、なんとなくMPの流れというか、魔力の流れを感じることが出来るようになった。
 今は両方の手の平から、緩やかに魔力が直方体へと流れていっているのがわかる。

 ちょっと前まで、両手で《土形成》を発動させると、脳に負荷がかかる感じがしたのだが、慣れたのか、今はそれほど感じなかった。
 結構な時間を掛けて、直方体が半分くらいの厚さまで縮んだ所で、圧縮が止まる。
 ここまでは予定通り。
 問題はここからである。

 俺は両手から流れる魔力を意識すると、思い切りその魔力の流れに圧力を掛けた。
 関を切ったかのように、両手から魔力が激流となって直方体に流れ込んでいく。

 頭が割れそうな程痛い。

 それでも、我慢して強固な壁を作るイメージを構築していく。

 どんどん魔力が直方体に溜まっていくのがわかる。
 魔力が直方体を満たし、溢れかけた所で、例の発光現象が発生した。
 そして発生する放電。
 パリパリと音を立てて、直方体が振動する。

 先程は感じなかったが、手の平が燃えるように熱い。

 次の瞬間、雷が落ちたような轟音がして、超圧縮が開始される。
 まだ厚さ150センチくらいあった土の直方体が、一瞬で厚さ30センチくらいの壁に変化したのだ。

 俺は、MP枯渇に襲われながら荒くなった息を整えていた。
 額からとめどなく流れてくる汗が目に染みた。
 この大きさの土塊を圧縮するのは、ものすごい疲労を伴った。
 いつもはMP枯渇発生とともに、すぐに消える疲労耐性のログが、ずっと出続けている。

 壁にもたれないように気をつけながら、ゆっくりと地面に腰を下ろす。

 今回は地面部分も巻き込むように圧縮してみたお陰か、結構な重量があるはずの土壁はなんとかバランスを保っている。
 ただ、少しでも力を込めると、さっき殴ったみたいに倒れそうで怖かった。
 この大きさの壁が倒れたら、俺の力では起こせそうにない。

 とりあえずMPが回復したら、この壁を固定するような形で直方体を作りたい。
 そして、その直方体を超圧縮させて同じような壁をあと3枚作るのだ。
 壁を4枚作って、接合部を《土形成》で固定させれば、お互いに支え合って安定するはずだ。

 というか、よく考えたら、家って基礎から作るのではないだろうか。
 結構深くまで、コンクリとかで基礎を作ってから建てるべきな気がする。

 家作りは奥が深い。

 まあ、今回は初めてだし、我流で行けるところまで行ってみるのだ。

 壁を1枚作るだけで、すごく疲れたがやってやれない事もない。
 それが少しうれしかった。



 壁を4枚作り終えた頃には、日が暮れていた。
 4枚の壁が、夕焼けを背に聳え立つ様は、壮観だった。

 なんというか、身体はもうズタボロで、MP休憩はちょいちょい取っているのに、全身がだるくて仕方がない。
 なんかあのMPを過負荷的に流して、放電現象を発生させるヤツをやると、精神力がごそっと減る。
 頭が痛くなるだけでは済まずに、耳まで痛くなってきた。
 命を削って発動させる禁断の邪法とかだったら、どうしよう。
 それはそれで、暗黒騎士らしくていい。みなぎる。

 そういえば、昨日の筋肉痛も未だに取れない。
 先程から、疲労耐性に加えて、睡眠耐性、痛覚耐性が発動している。

 4枚の壁は隙間なく立つように計算して作ってみたのだが、壁と壁が接合する角の部分には、僅かな隙間ができていた。

 俺は、最後の力を振り絞って、4枚の壁を丁寧に《土形成》で結合していく。

 最後の壁の隙間をきれいに埋めた所で、壁の中に入る手段がないことに気づいた。
 ちょっと自分がバカすぎて、悲しくなった。

 気を取り直して入り口を作ることにする。

 少し考えたが、入り口から朝日が入るといいかなと思って、沈んでいく太陽とは反対の方向の壁に入り口を作ろうと思う。

 壁に手を当てて、バチバチと放電させながら《土形成》を発動させる。
 高さは3メートルくらいあるので、2メートルくらいの穴を開けようと思ったが、50センチくらい穴を開けた所で、MPも気力も尽きた。

 俺は今日何度目になるかわからないくらいのMP枯渇に苦しみながらも、50センチくらいの穴を這うようにして、建築中の我が家に入っていく。

 家の中心部まで這っていった所で、仰向けに転がった。

 辺りは完全に夜になっていて、冷えた地面が心地よかった。

 仰向けに見上げた空に思わず息を飲んだ。

 そこには満天の星空が広がっていた。

 そういえば、この世界に来て夜空を見上げたのは、初めてだった。
 電気のない世界だと、星ってこんなにも見えるものなのか。

 新宿では星なんて見たことない。
 そもそも空を見上げない。

 たまにはいいものだなと思いながら、俺は吸い込まれるように眠りに落ちていった。

■あとがき
 ちなみに、1日壁を作り続けた結果ステータスは結構伸びました。

#############################################
【ステータス】
名前:コウ
LV:7
称号:悲哀なる社畜
HP:1236/1236
MP:0/45(+12)
筋力:7
防御:11
敏捷:12
器用:12
知能:23(+5)
精神:21
スキルポイント:3
#############################################
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