5 / 299
第一章 異世界転移編
第5話 バースト
しおりを挟む
「ふーむ」
俺はとぼとぼと歩きながら、腕を組んで悩む。
先程、強敵レッドアイズホワイトビーストとの死闘を経て、俺のスーツはズタボロである。
袖や裾は擦り切れ、至る所に穴が空き、全体的に泥だらけだ。
あれほどの魔物との死闘、仕方あるまいて。
そうやって自分を慰めながらも、今悩んでいるのは、別のことだ。
《火魔法》の事である。
イグナイトぉ! とか叫びながら、強ライター程度の火力しか出せなかった、あのニューカマーな黒歴史。
言ってみれば、中学生がライターで火遊びしながら、厨二全開の技名を叫んでいるのと変わらない。
そう考えると、布団を抱えて小一時間、恥ずかし! 恥ずかし! と、のたうち回りたくなる。
もう2度と《火生成》をイグナイトなんて言わない。絶対。絶対にだ!
スライムはただ燃えやすかっただけだったんだな。
アレのせいで、久しぶりに調子こいてしまった。
それとも、俺を元気づける為にわざとやってくれたのだろうか。
あいつめ、余計な気使いやがって……!
スライムが長年の友のように思えて仕方ないが、間違いなく考えすぎだった。
そんな時、目の端を白い何かがよぎっていった。
白くて、小さくて、もふもふしていて、おまけに目の赤い何か。
ついでに、長い耳まで見えた気がする。
ドッドッドッと心臓の鼓動がやけに大きく聞こえる。
全身から、冷たい汗が吹き出していた。
……ヤツだ。
ここは地獄なのか。あの強敵が再び降臨するとは。
神も仏もいないってのかよ! (ここは異世界なので、仏はきっといない)
彼我の距離は約100メートル。
奴はピョンピョンと、無邪気なフリをしてこちらの油断を待っている。
恐ろしく、冷酷な戦略家だ。
どうしよう。
またヤツが疲れるまで、なぶられ続けるのは絶対にイヤだ。
あんな経験、何度も耐えられるわけがない。
次やられたら、子分にしてくださいとか言って、やつに忠誠を誓ってしまう気がする。
考えろ、考えるんだ。
そして、ある事を思いついた。
《水生成》はMPの続く限り、水を出し続ける事ができた。
ならば、《火生成》も火を出し続ける事ができるのではないだろうか。
イグナイト(笑)は発火が一瞬だったせいで、レッドアイズホワイトビーストを燃やすことはできなかったが、絶え間なく火を出し続ければ、あの場面で倒せたのかもしれない。
ふと、100メートル先のレッドアイズホワイトビーストを眺める。
奴は、辺りを飛んでいるチョウチョと戯れるフリをしていた。
実験するなら今だった。
俺はすぐそばの地面に向かって、《火生成》と念じた。
シュボッと火が灯って、すぐに消える。
その時、結構遠くにいるはずの、レッドアイズホワイトビーストの長い耳が、ひくひく動き、その鮮血のような真紅の瞳が、こちらを捉えた。
俺は全速力で猛ダッシュをした。
脇目も振らずに荒野を駆け抜ける。
十数分、全力ダッシュをしたところで、ヤツが追ってこないことを確認して立ち止まる。
全身汗だくだった。
念のため言っておくが、別にビビったわけではない。
ヤツの恐るべき索敵能力に敬意を表して、戦略的撤退を図ったのだ。
第一まだ、《火生成》の実験が完了していない。
今はまだ戦うべき時ではないのだ。
戦いとは刻の見極めが大事って戦国時代の誰かが言ってた気がするもん。
とりあえず、額の汗を拭って、《火生成》の実験を開始する。
まずは、《火生成》を一回発動させる。
シュボっと発火現象が起きる。
そのまま、発動を維持させようと、みょんみょんと、なんというか魔術的なものを送ってみる。
しかし、微かな白煙を残して、火は消えてしまった。
《水生成》と同じような感じでやってみたが、ダメみたいだ。
それならばと再チャレンジ。
再び《火生成》を発動。
発火現象を確認し、火が消える前に、続けて《火生成》。
そのまま連続で《火生成》《火生成》《火生成》《火生成》《火生成》。
シュボボボボボと連続して、発火現象が発動する。
それは、まるで爆発しているようにも見えて――。
キーンと耳鳴りがした。
あ、やばい。
ぐにゃりと視界が歪む。
MP切れだ。
『睡眠耐性LV10が発動しました。』
『疲労耐性LV10が発動しました。』
倒れそうになるのを必死に堪えて、MPの回復を待つ。
《火生成》は1回の発動でMPを1ポイント使うようだ。
今、俺の最大MPは16ポイント。
いや、17ポイントに増えている。
だから、《火生成》を連続で発動できるのは、最大で17回。
17回目を発動するまでに、ヤツを倒しきらなくてはならない。
また、連続で《火生成》の発動を念じるため、回数をどこまで把握できるか不安だ。
ちょっとダサいけど、指で数えたほうがいいかもしれない。
それにしても、ちょいちょいMPが増えていくのはなんでなんだろう。
MP枯渇を経験すると、MPが増えるのだろうか。
今度、実験してみよう。
MP枯渇の苦しみが和らいできたので、俺は体育座りをして、MPの完全回復を待つことにした。
たしか、1MP3分くらいだったから、1時間くらい待たなくてはいけない。
時計がないので、体感だけど。
MP回復を待つ間に、ある事に気づいてしまった。
この世界には、魔法があって、レベルがあって、モンスターがいる。
昔、死ぬほどやったロールプレイングゲームそのものだ。
夢にまで見た憧れの世界。
剣と魔法の世界。
なのに俺は剣を持っていない!
初期装備は肉体である。
そんなゲーム聞いたことないから。
バグを疑うレベルである。
そもそもマクロスさんが最後にエクスカリバーとか渡すべきじゃないのか。
インチキくさい啓発セミナーみたいな事言いやがって!
何を言われたのか、あんましよく覚えていないが、ツボを買えば宝クジが当たって美女とヤリまくり! みたいな事を言われた気がする。
エロ本の裏表紙か!
せめて、ひのきのぼうくらいさあ!
あれ、棒ならその辺に落ちているじゃない。
ふとそんな事に気づいた。
荒野を歩いているとよく棒というか、木の枝が落ちているのだ。
ちょうど目の前にも、いい感じの木の枝が落ちている。
どの辺がいい感じかというと、俺がもう三十年くらい若くて、厨二病の片鱗を覗かせていたら、剣と呼んでいたかもしれないってレベルの枝なのだ。
なんとなく拾ってみる。
振り回してみると、なかなか痛そうな風切り音がした。
『〔エルダーウッドの棒〕を装備しました。攻撃力補正+2』
まさかのログ表示が発生した。
今、手に持つこの枝は、武器と判定されるらしい。
まあ、手ぶらよりはマシか。
とにかく、ついに俺も武器を手に入れたのだ!
欲しいのは剣だけど。
むしろ、エクスカリバーだけど。
ただ、最初は木の棒で、徐々に強くなっていくのも面白いかもしれない。
木の棒>銅の剣>鉄の槍>炎の剣>エクスカリバーみたいな。
装備が良くなっていくのも、RPGの醍醐味だよね。
武器の進化ツリーが見えた気がする。
でも、なんたらの棒って名前はダサい。
とりあえず、枝と書いて、デュランダルと読むことにする。
エクスカリバーは言い過ぎだけど、デュランダルくらいはいいんじゃなかろうか。
何よりも、名前かっこいいし!
ただ、急に武器の進化ツリーは見えなくなった。
そんなこんなで、棒を振り回していると、あっという間に1時間が経過した。
俺のMPは最大まで回復している。
落ちてる木の枝で1時間遊べる30代って、どうなんだろうかと思うが、今の俺は気にしない。
なぜならば。
新魔法スキル、連続《火生成》!
新武器、枝(デュランダル)!
新たな力を2つも手に入れたった!
この言い知れぬ無敵感。
もう誰にも負ける気はしない。
首を洗って待っていろ、レッドアイズホワイトビースト!
俺は手に枝(デュランダル)を持ちながら、歩きだす。
もと来た道を戻るように。
今度こそヤツの息の根を止めるのだ。
マジレスすると、ちょっとトラウマになりかけていたので、早めに克服しないとヤバイっぽいのだ。
イヤだって、俺今まであんなにボコボコにされた事ないもん。
どっちかというと充実した学生生活を送っていた俺は、いじめられたこともない。
殴り合いのケンカをしたこともない。
よく考えたら、親にだって殴られたことないかもしれない。
そんな俺をヤツは殴ったのだ。
今なら、ア○ロの気持ちがよく分かる。
いやいや、せっかく異世界に来たんだから、胸を熱くさせるようなバトルはむしろ望むところですよ。
問題は、相手がウサギさんということだ。
せめて魔王の腹心の暗黒騎士とか、ドラゴンとか、アル○マウェポンとかと死闘を演じたい。
出会って2種類目のモンスターと死闘を演じちゃダメだと思う。
これは、俺が充実した異世界生活を送るために、絶対に負けられない戦いなのだ!
そんなこんなでメラメラと闘志を燃やしながら、荒野をさまよっていると、ついにヤツに出会った。
ヤツは地面をぴょんぴょん跳ねたり、髭をひくひくさせたり、ごろごろ転がって背中を掻いたりしていた。
反吐が出るほど。
かわいらしかった。
クソが! なんて精神攻撃だ。なぜ精神耐性:LV5が発動しないんだ! バグってんのか!
その時、ヤツはつぶらな瞳で俺を見た。
ついに、見つかった。
どうする。とりあえず、赤ちゃん言葉で話しかけながら、もふもふの背中をなでにいくか!?
完全にヤツの術中にハマっていた。
しかし、前回もこんな感じで結果的にボコボコにされたのだ。
ヤツの外見に黙れされちゃダメだ。
こっちから仕掛けるのだ。
「うおおおおおお!」
俺は雄叫びを上げながら、走り出した。
そのまま、右手を掲げて、ウサギに集中する。
走りながらふと思う。
俺は魔法を使えるのに、なぜいつも接近戦を挑むのかと。バカかと。
それでももう止まれない。
なぜなら、すでにウサギさんは威嚇の顔をしているから。
アレは俺をボコボコにした時と同じ顔つきだ。
「ままよ!」
そのまま、《火生成》と念じる。
ボヒュッ!
《火生成》《火生成》《火生成》《火生成》《火生成》《火生成》《火生成》《火生成》《火生成》《火生成》《火生成》《火生成》《火生成》《火生成》《火生成》《火生成》!
ウサギの体中から発火現象が起こる。
シュボボボボと音を立てて、ウサギは火に包まれていく。
グラリと立ちくらみがした。
結局、《火生成》のカウントを忘れて、限界までMPを使ってしまった。バカなのかと。
これで倒せなかったら、もうボコられるしかない。
ウサギは火だるまになりながら、地面に崩れ落ちていく。
『4ポイントの経験値を獲得しました。』
『レベルが4になりました。』
『スキルポイント1を獲得しました。』
「うおおおお! 勝ったどおおおおお!」
俺は枝(デュランダル)を天に掲げて吠えた。
ただの勝ちではない、瞬殺オーバーキルである。
MP枯渇でふらつく足で、俺はなんとか踏みとどまる。
これでもうウサギは怖くない。二度とレッドアイズホワイトビーストなんて呼ばない。
これからはヤツが経験値供給源(ウサギ)だ!
そして、今回の事で連続《火生成》が十分使えることが判明した。
今なら言える。
連続《火生成》を、イグナイト・バーストと名付けようと!
俺はとぼとぼと歩きながら、腕を組んで悩む。
先程、強敵レッドアイズホワイトビーストとの死闘を経て、俺のスーツはズタボロである。
袖や裾は擦り切れ、至る所に穴が空き、全体的に泥だらけだ。
あれほどの魔物との死闘、仕方あるまいて。
そうやって自分を慰めながらも、今悩んでいるのは、別のことだ。
《火魔法》の事である。
イグナイトぉ! とか叫びながら、強ライター程度の火力しか出せなかった、あのニューカマーな黒歴史。
言ってみれば、中学生がライターで火遊びしながら、厨二全開の技名を叫んでいるのと変わらない。
そう考えると、布団を抱えて小一時間、恥ずかし! 恥ずかし! と、のたうち回りたくなる。
もう2度と《火生成》をイグナイトなんて言わない。絶対。絶対にだ!
スライムはただ燃えやすかっただけだったんだな。
アレのせいで、久しぶりに調子こいてしまった。
それとも、俺を元気づける為にわざとやってくれたのだろうか。
あいつめ、余計な気使いやがって……!
スライムが長年の友のように思えて仕方ないが、間違いなく考えすぎだった。
そんな時、目の端を白い何かがよぎっていった。
白くて、小さくて、もふもふしていて、おまけに目の赤い何か。
ついでに、長い耳まで見えた気がする。
ドッドッドッと心臓の鼓動がやけに大きく聞こえる。
全身から、冷たい汗が吹き出していた。
……ヤツだ。
ここは地獄なのか。あの強敵が再び降臨するとは。
神も仏もいないってのかよ! (ここは異世界なので、仏はきっといない)
彼我の距離は約100メートル。
奴はピョンピョンと、無邪気なフリをしてこちらの油断を待っている。
恐ろしく、冷酷な戦略家だ。
どうしよう。
またヤツが疲れるまで、なぶられ続けるのは絶対にイヤだ。
あんな経験、何度も耐えられるわけがない。
次やられたら、子分にしてくださいとか言って、やつに忠誠を誓ってしまう気がする。
考えろ、考えるんだ。
そして、ある事を思いついた。
《水生成》はMPの続く限り、水を出し続ける事ができた。
ならば、《火生成》も火を出し続ける事ができるのではないだろうか。
イグナイト(笑)は発火が一瞬だったせいで、レッドアイズホワイトビーストを燃やすことはできなかったが、絶え間なく火を出し続ければ、あの場面で倒せたのかもしれない。
ふと、100メートル先のレッドアイズホワイトビーストを眺める。
奴は、辺りを飛んでいるチョウチョと戯れるフリをしていた。
実験するなら今だった。
俺はすぐそばの地面に向かって、《火生成》と念じた。
シュボッと火が灯って、すぐに消える。
その時、結構遠くにいるはずの、レッドアイズホワイトビーストの長い耳が、ひくひく動き、その鮮血のような真紅の瞳が、こちらを捉えた。
俺は全速力で猛ダッシュをした。
脇目も振らずに荒野を駆け抜ける。
十数分、全力ダッシュをしたところで、ヤツが追ってこないことを確認して立ち止まる。
全身汗だくだった。
念のため言っておくが、別にビビったわけではない。
ヤツの恐るべき索敵能力に敬意を表して、戦略的撤退を図ったのだ。
第一まだ、《火生成》の実験が完了していない。
今はまだ戦うべき時ではないのだ。
戦いとは刻の見極めが大事って戦国時代の誰かが言ってた気がするもん。
とりあえず、額の汗を拭って、《火生成》の実験を開始する。
まずは、《火生成》を一回発動させる。
シュボっと発火現象が起きる。
そのまま、発動を維持させようと、みょんみょんと、なんというか魔術的なものを送ってみる。
しかし、微かな白煙を残して、火は消えてしまった。
《水生成》と同じような感じでやってみたが、ダメみたいだ。
それならばと再チャレンジ。
再び《火生成》を発動。
発火現象を確認し、火が消える前に、続けて《火生成》。
そのまま連続で《火生成》《火生成》《火生成》《火生成》《火生成》。
シュボボボボボと連続して、発火現象が発動する。
それは、まるで爆発しているようにも見えて――。
キーンと耳鳴りがした。
あ、やばい。
ぐにゃりと視界が歪む。
MP切れだ。
『睡眠耐性LV10が発動しました。』
『疲労耐性LV10が発動しました。』
倒れそうになるのを必死に堪えて、MPの回復を待つ。
《火生成》は1回の発動でMPを1ポイント使うようだ。
今、俺の最大MPは16ポイント。
いや、17ポイントに増えている。
だから、《火生成》を連続で発動できるのは、最大で17回。
17回目を発動するまでに、ヤツを倒しきらなくてはならない。
また、連続で《火生成》の発動を念じるため、回数をどこまで把握できるか不安だ。
ちょっとダサいけど、指で数えたほうがいいかもしれない。
それにしても、ちょいちょいMPが増えていくのはなんでなんだろう。
MP枯渇を経験すると、MPが増えるのだろうか。
今度、実験してみよう。
MP枯渇の苦しみが和らいできたので、俺は体育座りをして、MPの完全回復を待つことにした。
たしか、1MP3分くらいだったから、1時間くらい待たなくてはいけない。
時計がないので、体感だけど。
MP回復を待つ間に、ある事に気づいてしまった。
この世界には、魔法があって、レベルがあって、モンスターがいる。
昔、死ぬほどやったロールプレイングゲームそのものだ。
夢にまで見た憧れの世界。
剣と魔法の世界。
なのに俺は剣を持っていない!
初期装備は肉体である。
そんなゲーム聞いたことないから。
バグを疑うレベルである。
そもそもマクロスさんが最後にエクスカリバーとか渡すべきじゃないのか。
インチキくさい啓発セミナーみたいな事言いやがって!
何を言われたのか、あんましよく覚えていないが、ツボを買えば宝クジが当たって美女とヤリまくり! みたいな事を言われた気がする。
エロ本の裏表紙か!
せめて、ひのきのぼうくらいさあ!
あれ、棒ならその辺に落ちているじゃない。
ふとそんな事に気づいた。
荒野を歩いているとよく棒というか、木の枝が落ちているのだ。
ちょうど目の前にも、いい感じの木の枝が落ちている。
どの辺がいい感じかというと、俺がもう三十年くらい若くて、厨二病の片鱗を覗かせていたら、剣と呼んでいたかもしれないってレベルの枝なのだ。
なんとなく拾ってみる。
振り回してみると、なかなか痛そうな風切り音がした。
『〔エルダーウッドの棒〕を装備しました。攻撃力補正+2』
まさかのログ表示が発生した。
今、手に持つこの枝は、武器と判定されるらしい。
まあ、手ぶらよりはマシか。
とにかく、ついに俺も武器を手に入れたのだ!
欲しいのは剣だけど。
むしろ、エクスカリバーだけど。
ただ、最初は木の棒で、徐々に強くなっていくのも面白いかもしれない。
木の棒>銅の剣>鉄の槍>炎の剣>エクスカリバーみたいな。
装備が良くなっていくのも、RPGの醍醐味だよね。
武器の進化ツリーが見えた気がする。
でも、なんたらの棒って名前はダサい。
とりあえず、枝と書いて、デュランダルと読むことにする。
エクスカリバーは言い過ぎだけど、デュランダルくらいはいいんじゃなかろうか。
何よりも、名前かっこいいし!
ただ、急に武器の進化ツリーは見えなくなった。
そんなこんなで、棒を振り回していると、あっという間に1時間が経過した。
俺のMPは最大まで回復している。
落ちてる木の枝で1時間遊べる30代って、どうなんだろうかと思うが、今の俺は気にしない。
なぜならば。
新魔法スキル、連続《火生成》!
新武器、枝(デュランダル)!
新たな力を2つも手に入れたった!
この言い知れぬ無敵感。
もう誰にも負ける気はしない。
首を洗って待っていろ、レッドアイズホワイトビースト!
俺は手に枝(デュランダル)を持ちながら、歩きだす。
もと来た道を戻るように。
今度こそヤツの息の根を止めるのだ。
マジレスすると、ちょっとトラウマになりかけていたので、早めに克服しないとヤバイっぽいのだ。
イヤだって、俺今まであんなにボコボコにされた事ないもん。
どっちかというと充実した学生生活を送っていた俺は、いじめられたこともない。
殴り合いのケンカをしたこともない。
よく考えたら、親にだって殴られたことないかもしれない。
そんな俺をヤツは殴ったのだ。
今なら、ア○ロの気持ちがよく分かる。
いやいや、せっかく異世界に来たんだから、胸を熱くさせるようなバトルはむしろ望むところですよ。
問題は、相手がウサギさんということだ。
せめて魔王の腹心の暗黒騎士とか、ドラゴンとか、アル○マウェポンとかと死闘を演じたい。
出会って2種類目のモンスターと死闘を演じちゃダメだと思う。
これは、俺が充実した異世界生活を送るために、絶対に負けられない戦いなのだ!
そんなこんなでメラメラと闘志を燃やしながら、荒野をさまよっていると、ついにヤツに出会った。
ヤツは地面をぴょんぴょん跳ねたり、髭をひくひくさせたり、ごろごろ転がって背中を掻いたりしていた。
反吐が出るほど。
かわいらしかった。
クソが! なんて精神攻撃だ。なぜ精神耐性:LV5が発動しないんだ! バグってんのか!
その時、ヤツはつぶらな瞳で俺を見た。
ついに、見つかった。
どうする。とりあえず、赤ちゃん言葉で話しかけながら、もふもふの背中をなでにいくか!?
完全にヤツの術中にハマっていた。
しかし、前回もこんな感じで結果的にボコボコにされたのだ。
ヤツの外見に黙れされちゃダメだ。
こっちから仕掛けるのだ。
「うおおおおおお!」
俺は雄叫びを上げながら、走り出した。
そのまま、右手を掲げて、ウサギに集中する。
走りながらふと思う。
俺は魔法を使えるのに、なぜいつも接近戦を挑むのかと。バカかと。
それでももう止まれない。
なぜなら、すでにウサギさんは威嚇の顔をしているから。
アレは俺をボコボコにした時と同じ顔つきだ。
「ままよ!」
そのまま、《火生成》と念じる。
ボヒュッ!
《火生成》《火生成》《火生成》《火生成》《火生成》《火生成》《火生成》《火生成》《火生成》《火生成》《火生成》《火生成》《火生成》《火生成》《火生成》《火生成》!
ウサギの体中から発火現象が起こる。
シュボボボボと音を立てて、ウサギは火に包まれていく。
グラリと立ちくらみがした。
結局、《火生成》のカウントを忘れて、限界までMPを使ってしまった。バカなのかと。
これで倒せなかったら、もうボコられるしかない。
ウサギは火だるまになりながら、地面に崩れ落ちていく。
『4ポイントの経験値を獲得しました。』
『レベルが4になりました。』
『スキルポイント1を獲得しました。』
「うおおおお! 勝ったどおおおおお!」
俺は枝(デュランダル)を天に掲げて吠えた。
ただの勝ちではない、瞬殺オーバーキルである。
MP枯渇でふらつく足で、俺はなんとか踏みとどまる。
これでもうウサギは怖くない。二度とレッドアイズホワイトビーストなんて呼ばない。
これからはヤツが経験値供給源(ウサギ)だ!
そして、今回の事で連続《火生成》が十分使えることが判明した。
今なら言える。
連続《火生成》を、イグナイト・バーストと名付けようと!
1
お気に入りに追加
1,238
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる