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04 ショック療法ってなんですか
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「ごめん。僕も本望ではないんだけれど。とにかく一回僕のものになろう? そしたら僕も余裕をもって、君の記憶喪失に対処できると思うんだ」
「下衆な発言やめて!? しかもとにかく一回ってなに!!」
「だって今日結婚式を挙げたんだよ!? 僕のものになったのに! それがなしとか受け入れられるわけないよ!」
「受け入れられないのはこちらも同じです!!」
「大丈夫。受け入れられない君の心ごと、僕が受け入れてあげるから!」
「いやいや、おかしいわよ! だいたい、私、あなたの嫁でしょ!? 愛する新妻でしょ!? それが記憶喪失になったって言ってるのに、『よし、とりあえず僕のものになっておこうか』ってどういうこと!? 自分の欲望最優先じゃないの!」
「あはっ、そんなふうに言ったら、僕が身勝手なクズ男みたいじゃないか。君を心底愛しているから、こんなに欲深になっているというのに」
うさんくささしか感じない慈愛に満ちた微笑みを浮かべて、彼が私の腰をグッと抱き寄せた。
ふわりと香る甘い匂い。
胸がざわつく大人の匂い。
思わずドキッとして、そんな自分に驚く。
身勝手なクズに迫られて、動揺するなんてありえない。
「ちょ、ちょっと……!」
押し返そうとした腕は、彼の片手で一つにまとめあげられてしまった。
抵抗が一切できなくなって、息を呑む。
「ねえ、待って……」
「やだ。待たない」
本気で動揺して彼を見上げると、この夜見た中で、一番冷やかな色をした眼差しと視線がぶつかった。
口元は相変わらず弧を描いているのに、目はまったく笑っていない。
さっきまでとはまるで別人のようで、わけがわからなくなる。
なんて顔をするの、この人……。
怖い。
「だってさ、考えてみてよアデリーヌ。僕を忘れるなんてあんまりじゃないか。いまの僕、めちゃくちゃ明るく振る舞ってるけれど、本当はすっごい傷ついてるよ?」
「あ……。えっと、ご、ごめんなさい……。あなたの態度明るいから、全然動じてないように見えたの」
「君に忘れられたのに、動じない? 本気でそんなこと言ってるの?」
「……っ」
低く掠れた声で、彼が呟く。
その声を聞いた瞬間、冷たい汗が背中を流れて、心臓が縮むような感覚を覚えた。
「そんな怯えた顔しちゃだめだよ。ハァ……。ゾクゾクするな……。ああ、でもまずは、君の記憶を蘇らせてあげないとね!」
あっと思ったときには、再び彼の下に組み敷かれていた。
「な、なにしてるの……!?」
「ショック療法を試してみようと思って! あ、違うよ? 決して自分の欲望を満たしたくて、押し倒したんじゃないよ?」
「絶対嘘でしょう!?」
もうほんとありえない。
恐怖と苛立ちを抱えながら、私は再び彼の下から抜け出そうとした。
けれど今度は、さっきのようにうまくはいかなかった。
「だーめ。もう逃がさない」
クスッと笑った彼が、足の間に膝を押しこんでくる。
強引に距離を詰められたことが不快で、キッと睨みつけたら、うれしそうに微笑みかけられた。
全然まったく怯んでいない。
私が怒っていても、平気で流せてしまうんだ。
そうわかった瞬間、心の奥がゾッと凍りついた。
あ、これまずい……。
記憶喪失だと認識した瞬間と同じ状況。
でもさっきまで迫られていたのとは、本気度が違う。
このままでは私、この人に無理やり……。
「いっ……いやあああーーーーーっっっ!!!!」
響き渡る私の絶叫。
『初夜を行っている部屋から、悲鳴が聞こえてきても、聞き流されると思うけれど』
彼はたしかそんなことを言っていた。
けれど、闇を切り裂く腹からの悲鳴を聞きつけ、即座に数十人の衛兵たちが、寝室へと雪崩れ込んできたのだった。
「下衆な発言やめて!? しかもとにかく一回ってなに!!」
「だって今日結婚式を挙げたんだよ!? 僕のものになったのに! それがなしとか受け入れられるわけないよ!」
「受け入れられないのはこちらも同じです!!」
「大丈夫。受け入れられない君の心ごと、僕が受け入れてあげるから!」
「いやいや、おかしいわよ! だいたい、私、あなたの嫁でしょ!? 愛する新妻でしょ!? それが記憶喪失になったって言ってるのに、『よし、とりあえず僕のものになっておこうか』ってどういうこと!? 自分の欲望最優先じゃないの!」
「あはっ、そんなふうに言ったら、僕が身勝手なクズ男みたいじゃないか。君を心底愛しているから、こんなに欲深になっているというのに」
うさんくささしか感じない慈愛に満ちた微笑みを浮かべて、彼が私の腰をグッと抱き寄せた。
ふわりと香る甘い匂い。
胸がざわつく大人の匂い。
思わずドキッとして、そんな自分に驚く。
身勝手なクズに迫られて、動揺するなんてありえない。
「ちょ、ちょっと……!」
押し返そうとした腕は、彼の片手で一つにまとめあげられてしまった。
抵抗が一切できなくなって、息を呑む。
「ねえ、待って……」
「やだ。待たない」
本気で動揺して彼を見上げると、この夜見た中で、一番冷やかな色をした眼差しと視線がぶつかった。
口元は相変わらず弧を描いているのに、目はまったく笑っていない。
さっきまでとはまるで別人のようで、わけがわからなくなる。
なんて顔をするの、この人……。
怖い。
「だってさ、考えてみてよアデリーヌ。僕を忘れるなんてあんまりじゃないか。いまの僕、めちゃくちゃ明るく振る舞ってるけれど、本当はすっごい傷ついてるよ?」
「あ……。えっと、ご、ごめんなさい……。あなたの態度明るいから、全然動じてないように見えたの」
「君に忘れられたのに、動じない? 本気でそんなこと言ってるの?」
「……っ」
低く掠れた声で、彼が呟く。
その声を聞いた瞬間、冷たい汗が背中を流れて、心臓が縮むような感覚を覚えた。
「そんな怯えた顔しちゃだめだよ。ハァ……。ゾクゾクするな……。ああ、でもまずは、君の記憶を蘇らせてあげないとね!」
あっと思ったときには、再び彼の下に組み敷かれていた。
「な、なにしてるの……!?」
「ショック療法を試してみようと思って! あ、違うよ? 決して自分の欲望を満たしたくて、押し倒したんじゃないよ?」
「絶対嘘でしょう!?」
もうほんとありえない。
恐怖と苛立ちを抱えながら、私は再び彼の下から抜け出そうとした。
けれど今度は、さっきのようにうまくはいかなかった。
「だーめ。もう逃がさない」
クスッと笑った彼が、足の間に膝を押しこんでくる。
強引に距離を詰められたことが不快で、キッと睨みつけたら、うれしそうに微笑みかけられた。
全然まったく怯んでいない。
私が怒っていても、平気で流せてしまうんだ。
そうわかった瞬間、心の奥がゾッと凍りついた。
あ、これまずい……。
記憶喪失だと認識した瞬間と同じ状況。
でもさっきまで迫られていたのとは、本気度が違う。
このままでは私、この人に無理やり……。
「いっ……いやあああーーーーーっっっ!!!!」
響き渡る私の絶叫。
『初夜を行っている部屋から、悲鳴が聞こえてきても、聞き流されると思うけれど』
彼はたしかそんなことを言っていた。
けれど、闇を切り裂く腹からの悲鳴を聞きつけ、即座に数十人の衛兵たちが、寝室へと雪崩れ込んできたのだった。
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