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その悪魔は不意に…(ゲームクリエイターの場合)
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(ご注意:異常な死に方を表現したシーンがあります)
しっとりとしたアジサイが咲く木曜日の午後のこと……
「今回は、なんとしても最高の私の作品を仕上げるわよ!」
と言いながら利香は、専用パソコンとペイントパッドを前に悩んでいた。
名古屋市のR区の雑居ビルにある、総合ゲーム企画会社Qスタジオの企画課にいる彼女は、S区のワンルームマンションに住む独身のゲームクリエィターだ。
ブラウンの髪は肩あたりまであり、ほそ表でととのった顔の二十三歳の娘だった。
土曜日の社内会議で、新作のアドベンチャーゲームを発表しなければならないのだが、十二面の内の八面までしか出来ていなかったのだ。
「おおまかな内容だけでも決めておけよ」
と、今朝も課長に、そう言われていた。
彼女は、アイディアが詰まった時はあるサイトを覗いてみることにしていた。
それは「不思議サイト」で、利香のお気に入りの一つだった。
黒や赤や紫を基調色に使った、不気味な表紙のホームページだ。
利香は、そのホームページの右端にあるメニューの『動画』をクリックした。
すると画面が替わり、『新着投稿動画』が表示された。
彼女は一番目の動画をクリックした。
画面は暗くなり、モヤモヤー……とした煙のようなものが現れた。
「なーんか面白そう……」
やがてその中に、顔のようなものが現れ……笑顔の少女になった。
銀色の髪が長く美しく、同性から見ても可愛い少女だった。
『おねえちゃん、見付けたー』
「えっ、何これ……?」
少女の顔が消えると、どこかの山脈の光景が現れた。
利香は興味深げに見詰め、
「あれ? これって……私が作ったゲーム……」
さらに顔をぐっと近付けると、寒くなって風が吹きだした。
「えっ?」
ふと周りを見ると、利香はその光景が見える山の頂上にいたのだった。
彼女はふらふらと歩きまわっているうちに、足をすべらせて急速に下りていった。
やがて下り立つと、美しい池があった。
「この池、いい感じ……」
しかし良く見ると、何体もの死体が沈んでいた。
利香は驚いてその場に倒れた。
すると池が、ゴー! と渦まきそれらの死体が池から上がって、彼女に迫ってきた。
利香は血相を変えて逃げた。
森を抜け、川を渡り、洞窟を抜け、また森を抜けて、必死に逃げた。
ふと気がつくと高山の頂上にいた。
死体たちの姿は、諦めたらしく見えなかった。
その状況を見ながら利香がホッとした時、背中を誰かに叩かれた。
振り向くと、あの少女がいた。
「おねえちゃん、あれ見て」
「えっ、何?」
少女は笑顔で前方を指さした。
利香がその方を振り向くと、遥か向こうの山頂から、黒いものが飛んできていた。
それは大きな怪鳥だった。
「そうか……このアイディアだ……。だけど、どうやって帰れば……」
次の瞬間、巨大な怪鳥は飛びながら彼女を掴んだ。
やがて、呆然としている彼女を翼にのっている少女が見下ろしながら、
「おねえちゃん、もうすぐだよ」
怪鳥は利香を掴んでいる足を開いた。
彼女は絶叫と共に、深い深い谷底へと落ちていった。
キャー!!
「おねぇちゃん、一緒に遊ぼうね」
その夕方、課長が企画課を訪れると、デスクの前に、奇妙な枝が無数に刺さり血だらけになった利香が倒れていた。
彼は愕然としながらも、警察に通報した。
科捜研で調べた結果、国内に生息するどの樹木にも属さない枝であることが判明した。
また利香の体は、そうとう高い所から落下した形跡があり、鑑定不能だった。
しっとりとしたアジサイが咲く木曜日の午後のこと……
「今回は、なんとしても最高の私の作品を仕上げるわよ!」
と言いながら利香は、専用パソコンとペイントパッドを前に悩んでいた。
名古屋市のR区の雑居ビルにある、総合ゲーム企画会社Qスタジオの企画課にいる彼女は、S区のワンルームマンションに住む独身のゲームクリエィターだ。
ブラウンの髪は肩あたりまであり、ほそ表でととのった顔の二十三歳の娘だった。
土曜日の社内会議で、新作のアドベンチャーゲームを発表しなければならないのだが、十二面の内の八面までしか出来ていなかったのだ。
「おおまかな内容だけでも決めておけよ」
と、今朝も課長に、そう言われていた。
彼女は、アイディアが詰まった時はあるサイトを覗いてみることにしていた。
それは「不思議サイト」で、利香のお気に入りの一つだった。
黒や赤や紫を基調色に使った、不気味な表紙のホームページだ。
利香は、そのホームページの右端にあるメニューの『動画』をクリックした。
すると画面が替わり、『新着投稿動画』が表示された。
彼女は一番目の動画をクリックした。
画面は暗くなり、モヤモヤー……とした煙のようなものが現れた。
「なーんか面白そう……」
やがてその中に、顔のようなものが現れ……笑顔の少女になった。
銀色の髪が長く美しく、同性から見ても可愛い少女だった。
『おねえちゃん、見付けたー』
「えっ、何これ……?」
少女の顔が消えると、どこかの山脈の光景が現れた。
利香は興味深げに見詰め、
「あれ? これって……私が作ったゲーム……」
さらに顔をぐっと近付けると、寒くなって風が吹きだした。
「えっ?」
ふと周りを見ると、利香はその光景が見える山の頂上にいたのだった。
彼女はふらふらと歩きまわっているうちに、足をすべらせて急速に下りていった。
やがて下り立つと、美しい池があった。
「この池、いい感じ……」
しかし良く見ると、何体もの死体が沈んでいた。
利香は驚いてその場に倒れた。
すると池が、ゴー! と渦まきそれらの死体が池から上がって、彼女に迫ってきた。
利香は血相を変えて逃げた。
森を抜け、川を渡り、洞窟を抜け、また森を抜けて、必死に逃げた。
ふと気がつくと高山の頂上にいた。
死体たちの姿は、諦めたらしく見えなかった。
その状況を見ながら利香がホッとした時、背中を誰かに叩かれた。
振り向くと、あの少女がいた。
「おねえちゃん、あれ見て」
「えっ、何?」
少女は笑顔で前方を指さした。
利香がその方を振り向くと、遥か向こうの山頂から、黒いものが飛んできていた。
それは大きな怪鳥だった。
「そうか……このアイディアだ……。だけど、どうやって帰れば……」
次の瞬間、巨大な怪鳥は飛びながら彼女を掴んだ。
やがて、呆然としている彼女を翼にのっている少女が見下ろしながら、
「おねえちゃん、もうすぐだよ」
怪鳥は利香を掴んでいる足を開いた。
彼女は絶叫と共に、深い深い谷底へと落ちていった。
キャー!!
「おねぇちゃん、一緒に遊ぼうね」
その夕方、課長が企画課を訪れると、デスクの前に、奇妙な枝が無数に刺さり血だらけになった利香が倒れていた。
彼は愕然としながらも、警察に通報した。
科捜研で調べた結果、国内に生息するどの樹木にも属さない枝であることが判明した。
また利香の体は、そうとう高い所から落下した形跡があり、鑑定不能だった。
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