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第三章 セイクリア教国の歪み

第二百十六話 タロとラーミア(五)

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「改めて、お帰りなのだ。ラーミア」

「えぇ、面倒をかけたようで申し訳ありませんが、ようやく戻ってこれましたわ」


 人化した我輩は、ラーミアを見上げて話す。それに対するラーミアの表情は、とても穏やかで、憑き物が取れたように見えた。


「それで、ですが……私が居ない間に何があったか、教えていただけますか?」


 そう言われ、我輩頑張って今までのことをまとめる。

 リリナにラーミアが捕まったことを告げられ、慌ててサナフ教国を発ったこと。ラーミアの居場所が分からなくて苦労したこと。入らずの祠の調査や、教皇庁での調査のこと。マギウスのこと、神託のこと、教皇のこと……。それらを全て話終えると、ラーミアはじっと何かを考え込んでいた。


「本当なら、すぐにでもこんな国、出ていきたいところではありますが、ここでも『宵闇の一日』、ですか……。それに、マギウス・オルビリオが関わっているというのも捨て置けませんわね」


 バルディス達は、極力他の国と戦争になる事態を避けようとし続けている。そうすると、やはりマギウスのことや、『宵闇の一日』がきっかけで国の情勢が悪化したという風評被害はどうにかしたいものなのだろう。


「我輩としても、異論はないのだ。我輩も、欠片の持ち主を見つけたのだ。だから、そちらの解決もしたいと思っているのだ」


 そう言えば、ラーミアは初めて聞いた事実に目をパチパチとさせる。


「そうですか。今回の欠片の持ち主は誰なんですか?」

「……確か、グラハム・ヴェリーという名だったのだ。聖騎士長なのだ」

「せ、聖騎士長、ですか……」


 かつて、ディアムと一緒に市場を覗いた際、我輩、欠片の持ち主を見つけたのだ。あの後、迷子になったり、バルディスが説教されたりして大変だったのは良く覚えて…………。


「あっ」

「どうしました? タロ?」

「欠片の持ち主のこと、バルディス達にまだ話していなかったのだ」


 そう、何だかんだで、我輩、欠片の持ち主のことを今まですっかり忘れていたのだ。これは、もしかしたらバルディスに説教されるかもしれない。


「そうですか……。早めに伝えた方が良いでしょうね。相手が聖騎士長ならばなおのこと」

「うむ……ラーミア、我輩が説教されないように祈っててほしいのだ」

「……分かりましたわ」


 そうして、重要事項を伝えた我輩は、他には何かないかラーミアへと問いかける。


「そうですわね。では、バルに伝えてください。私はこのまま潜入調査をしますと」

「む、それは、危険なのではないのか?」


 てっきり一緒に宿屋へ帰るものだと思っていた我輩は、ラーミアのその言葉に不安を覚える。できることなら、レディに危険な真似はさせたくない。


「大丈夫ですわ。操られていた間の記憶はありますし、何とかなります。それと、遅くなりましたが、蹴ってしまってごめんなさい。タロ」


 操られていた間の記憶があることは知らなかったが、我輩、操られて蹴られた程度ではへこたれないのだっ。……落ち込んでいたのは気のせいなのだっ。


「気にしなくて良いのだ。ラーミアは操られていた、それだけなのだ」

「本当に、すみません」


 申し訳なさそうなラーミアに、我輩テシテシと肩を叩いて励ます。


「大丈夫なのだ。怪我もしていないのだ。我輩のプリティなボディには傷一つなかったのだ」

「プ、プリティな、ボディ……ふふっ、そうですわね。ならば、『操術』を解いてくださり、ありがとうございました」

「うむ、当然のことをしたまでなのだ」


 やはり、レディたるラーミアには笑顔が似合う。そうして、バルディスへの伝言を預かった我輩は、『人化』を解いて、ブチを呼び寄せると、宿屋へ向かうのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ここからは、セイクリア教国の問題がメインになる予定。

泥沼の展開を、果たして上手く書けるだろうかと思いながらも、全力を尽くしたいと思います。

それでは、また!
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