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第三章 セイクリア教国の歪み

第二百九話 進軍開始

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 じっとりと汗ばむほどの湿度に満たされた夜の、ミルテナ帝国騎士団本部。そこでは、厳めしい顔つきの十人ほどの男達が長テーブルを間に挟み、顔をつき合わせていた。


「では、進軍を開始すると?」

「そうだ。まずは国境手前まで。その後、時期が来れば完全なる進軍を果たすべきだろう」

「しかし、そうなるとあのサナフ教国も黙ってはいまい」

「それこそ杞憂というもの。確かに独立するだけの力はあったようですが、かの国に我々を阻むほどの力はありますまい」


 男達の間で話し合われているのは、セイクリア教国への進軍に関してだ。この議題は随分と前から出ていたものの、セイクリア教国の教皇の力があまりにも強すぎて今まで進んでいなかった。
 しかし、その教皇は病に倒れた。しかも、情勢は思った以上に混乱し、今では聖騎士団の維持すらも危ういとの噂だ。噂自体は、どこまで本当のことか分からないものの、情勢の混乱が全くないというのはあり得ない。どこかで綻びが出ているはずだった。


「できることなら、教皇が崩御してくれると安心ですがね」

「さて、そろそろそんな報が入るかもしれぬぞ?」

「おや? 何かあてがあるんですかい?」

「さぁ。そこは極秘ということで」


 愉快な愉快な進軍の話し合いに、厳めしい顔つきながら、明るく弾んだ声が響く。しかし、そこにこの会議の議長らしき面長の男が声を上げる。


「静粛に。諸君、我々には大義がある。それを忘れての侵略などあってはならないことだ」


 その一声で、弛緩した空気は一気に引き締まる。


「本件は、レイグ・アルディー大隊長率いる大隊に任務を授けるものとする。異論はないか?」


 レイグ・アルディー大隊長。それは、『暗黒の死神』と呼ばれるバーサーカーの名だ。そして、元々サナフ教国の監視を役目として賜っていた人間でもある。彼の名は士気を高める上で役に立つだけでなく、彼自身の力もまた、極上のものだった。異論など、出ようはずもない。ミルテナ帝国では、もしもレイグ・アルディー大隊長をサナフ教国に残していれば、簡単に奪還されるようなことはなかっただろうというのが共通の認識だ。それだけ、レイグ・アルディー大隊長の信頼は厚い。


「では、レイグ・アルディー大隊長に任務を授けることとする」


 かの聖騎士長と同等の力を持っているとされるレイグ・アルディー大隊長。それをこの作戦に据えるということは、ミルテナ帝国が本気であることの証左だった。かくして、ミルテナ帝国はセイクリア教国へと進軍を開始するのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


プロットが、あまり上手く書けなかった……。

またすぐにガス欠を起こしそうな状態ではありますが、とりあえず、書けているだけはアップしていきますね。

あっ、ちなみに、ここに出てきてる『レイグ・アルディー大隊長』っていうのは、サナフ教国の話の中で出てきた黒甲冑の騎士のことです。

多分、一回しか名前出してないので、誰も覚えてない……。

ちょっとミルテナ帝国の事情(?)も入れたかったので、今回の話はそれです。

それでは、また!
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