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第二章 反撃のサナフ教国
第百六十話 神界の混乱
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「報告しますっ。悪神の姿はどのエリアでも確認できませんでしたっ」
「……そうか」
天使の報告を聞き、重々しくうなずいたのは短く刈った金髪に蜂蜜色の瞳、色白でほっそりとした顔立ちの男神セイクリアだった。
今、彼は一柱の神を探している。悪神、ロンド。彼の者こそが、勇者召喚の召喚陣を書き換え、タロを呼び寄せる原因となった神だとされているのだが、いかんせん、その居場所が全く掴めない。
「いつもは、すぐに見つかるはずなのに、いったいどこに行ったんだか……」
天使を下がらせたセイクリアは、そう、一人ごちて執務室の椅子に沈む。悪神であるロンドは、別に本当に悪い神というわけではない。ただ悪戯が過ぎるだけであって、その度にセイクリアを始めとした神々に叱られて終わる。ただの、悪戯好きでやんちゃな神なのだ。
「まさか、これが関係してるとか言わないよなぁ」
そう言って取り出すのは、一つの重要な報告書。そこには、『邪神復活の予兆あり』と書かれている。
「もし、ロンドが邪神に取り込まれてたら……最悪だよなぁ」
そう言いながらも、それはあり得そうなことだと思えてしまう。
これだけ捜して見つからないとなれば、何らかの神によって討伐されたか、封じられたか、はたまた取り込まれたかという三つの可能性に分かれる。ただ、討伐された場合はその神が死んだということが神界全域に伝わるため、それがなかったことから考えにくい。となると、封印か取り込まれたか。
「あいつを封印できるような神は居るには居るが、封印する理由が弱い」
悪戯で散々他の神々に迷惑をかけているロンドだが、それ以上に愛されてもいる。だから、そんなロンドを身勝手に封印する神が居るとは思えない。
「邪神復活、ロンドが取り込まれたかもしれない。となると、勇者が必要か」
邪神を封じているのは、タロが送りこまれたナーガと呼ばれる世界だ。タロ自身、気づいてはいないが、邪神復活の予兆をその目で見ている。
「さすがに猫には荷が重い。新たな勇者をどこかの国で召喚させるしかないか」
タロにはすでに、神珠の欠片集めを頼んでいる。それに加えて、邪神復活の阻止、もしくは邪神の討伐など、頼めるわけもなかった。
「ロム」
そうと決まれば即行動とばかりに、セイクリアは誰も居ない場所でロムの名を呼ぶ。すると……。
「はい」
そこには、ロムが、現れていた。
「今回の分のタロさんへの報告はすませた?」
「はい。ちゃんと話しておきましたよ。飼い主さんが学校に銃を持って立て籠った人間を説得して、投降させたこととか、テロリストが自爆テロを起こそうとした場面に居合わせて、それを退治してしまったこととか、外国の大学に行って平和に暮らしていることとか」
「……思うんだけど、本当にそれ、ただの人間?」
「……魂は、わりと大きかったです」
「……そう」
大学のこと以外が波瀾万丈すぎると思って尋ねるものの、返ってくるのは人間で間違いないとの答え。時間の流れが違うせいで、随分と色々なことがあったように聞こえるだけ、というのとも違うはずなのに、人間で間違いないらしい。釈然とはしないものの、今はとにかく新たな勇者のことだと思い直す。
「勇者を新しく召喚させる。邪神復活の阻止を目的としたものだ。すぐに、召喚させられる国のピックアップをしてくれ」
「はいっ、了解ですっ」
そうして、運命の針は動き出す。ゆっくりと、着実に、神々を巻き込んで……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
お、終わったぁっ。
これで、『反撃のサナフ教国』は終わりです。
大きな伏線を引いての幕引きなので、回収のために頑張って続きを書いていこうと思います。
そして……もし良かったら、感想をお願いしますね~。
あっ、あと、プロット整理のために、三日ほど更新を休みますが、その後はまた毎日の更新にしますねっ。
それでは、また!
「……そうか」
天使の報告を聞き、重々しくうなずいたのは短く刈った金髪に蜂蜜色の瞳、色白でほっそりとした顔立ちの男神セイクリアだった。
今、彼は一柱の神を探している。悪神、ロンド。彼の者こそが、勇者召喚の召喚陣を書き換え、タロを呼び寄せる原因となった神だとされているのだが、いかんせん、その居場所が全く掴めない。
「いつもは、すぐに見つかるはずなのに、いったいどこに行ったんだか……」
天使を下がらせたセイクリアは、そう、一人ごちて執務室の椅子に沈む。悪神であるロンドは、別に本当に悪い神というわけではない。ただ悪戯が過ぎるだけであって、その度にセイクリアを始めとした神々に叱られて終わる。ただの、悪戯好きでやんちゃな神なのだ。
「まさか、これが関係してるとか言わないよなぁ」
そう言って取り出すのは、一つの重要な報告書。そこには、『邪神復活の予兆あり』と書かれている。
「もし、ロンドが邪神に取り込まれてたら……最悪だよなぁ」
そう言いながらも、それはあり得そうなことだと思えてしまう。
これだけ捜して見つからないとなれば、何らかの神によって討伐されたか、封じられたか、はたまた取り込まれたかという三つの可能性に分かれる。ただ、討伐された場合はその神が死んだということが神界全域に伝わるため、それがなかったことから考えにくい。となると、封印か取り込まれたか。
「あいつを封印できるような神は居るには居るが、封印する理由が弱い」
悪戯で散々他の神々に迷惑をかけているロンドだが、それ以上に愛されてもいる。だから、そんなロンドを身勝手に封印する神が居るとは思えない。
「邪神復活、ロンドが取り込まれたかもしれない。となると、勇者が必要か」
邪神を封じているのは、タロが送りこまれたナーガと呼ばれる世界だ。タロ自身、気づいてはいないが、邪神復活の予兆をその目で見ている。
「さすがに猫には荷が重い。新たな勇者をどこかの国で召喚させるしかないか」
タロにはすでに、神珠の欠片集めを頼んでいる。それに加えて、邪神復活の阻止、もしくは邪神の討伐など、頼めるわけもなかった。
「ロム」
そうと決まれば即行動とばかりに、セイクリアは誰も居ない場所でロムの名を呼ぶ。すると……。
「はい」
そこには、ロムが、現れていた。
「今回の分のタロさんへの報告はすませた?」
「はい。ちゃんと話しておきましたよ。飼い主さんが学校に銃を持って立て籠った人間を説得して、投降させたこととか、テロリストが自爆テロを起こそうとした場面に居合わせて、それを退治してしまったこととか、外国の大学に行って平和に暮らしていることとか」
「……思うんだけど、本当にそれ、ただの人間?」
「……魂は、わりと大きかったです」
「……そう」
大学のこと以外が波瀾万丈すぎると思って尋ねるものの、返ってくるのは人間で間違いないとの答え。時間の流れが違うせいで、随分と色々なことがあったように聞こえるだけ、というのとも違うはずなのに、人間で間違いないらしい。釈然とはしないものの、今はとにかく新たな勇者のことだと思い直す。
「勇者を新しく召喚させる。邪神復活の阻止を目的としたものだ。すぐに、召喚させられる国のピックアップをしてくれ」
「はいっ、了解ですっ」
そうして、運命の針は動き出す。ゆっくりと、着実に、神々を巻き込んで……。
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お、終わったぁっ。
これで、『反撃のサナフ教国』は終わりです。
大きな伏線を引いての幕引きなので、回収のために頑張って続きを書いていこうと思います。
そして……もし良かったら、感想をお願いしますね~。
あっ、あと、プロット整理のために、三日ほど更新を休みますが、その後はまた毎日の更新にしますねっ。
それでは、また!
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