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第二章 反撃のサナフ教国

第百四十三話 異常な場所(一)

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 リリナとラーミアを送り出して五日。ハーグを捕まえてから三日が経った今日。我輩は、ディアムとともに街を歩いていた。
 目的は一つ。あの時のレディに聞いた、異常な場所とやらに行くためだ。一応、『騎士の詰め所の奥にある建物』であり、『地下』であることまでは分かっているものの、どうやら、『騎士の詰め所の奥』というのが具体的にどこなのか分かりにくいとのことで、我輩、再度詳しく情報を聞き、ディアムをそこに案内する役割を申し付けられたのだった。


「にゃあ(むむ、マウマウはやはり多いのだ)」


 マウマウを素早く撃退しながら、我輩、前にレディとミィに出会った場所へと向かう。しかし……。


「にゃ……(都合良く居るわけがなかったのだ……)」


 そこには、あのレディの姿も、ミィの姿もなかった。


 確か、あの時、レディは上に同胞達が住んでいると言っていたな……。


 そう考え、我輩、上を見上げる。


「にゃ(高いのだ)」

「? タロ?」


 さすがに、この高さの建物を、何の足場もなく一気に飛ぶのは無理だ。……無理、のはずだ。


 我輩、自分の身体能力を詳しく知らないのだ。


 この世界に来てから、我輩、自分の身体能力が上がったことだけは知っている。ただ、それがどれほどのものなのか、全て確認できたわけではない。とりわけ、ジャンプ力となると、ついつい高いところが怖いと加減してしまうため、自分でどれだけ飛べるのかが分からない。


「にゃ……(ここは、試すべきか……)」


 立ち止まって鳴く我輩を不思議そうに見るディアムの視線に、我輩、とりあえずバルディスへと連絡を入れることにする。


《にゃにゃ(バルディス、これから我輩、自分の限界に挑戦してみるのだ)》

《は? なんだ? 藪から棒に》

《にゃーにゃ(ディアムには、もし我輩が登れたら、ここで待っていてほしいと伝えてほしいのだ)》

《……変なことをするんじゃないよな?》

《にゃ(ただ同胞に会いに行くだけなのだ)》

《分かった。伝えておく》


 そんな言葉を聞き終えると、我輩、助走をつけるため、少し後ろに下がる。そして……。


「にゃっ(行くのだっ)」


 おもむろに走り出した我輩は、日本に居た頃では考えられない、地面から建物の屋上へのジャンプを決行したのだった。


「にゃっ(ほっ)」

「……え?」


 ディアムの呆けたような声が聞こえる中、景色はどんどん下に流れていき、とうとう建物のてっぺんを…………悠然と追い越していく。


「……にゃ? (……う、む?)」


 下を見れば、辿り着く予定だった屋上は、少し小さく見える。……それどころか、この勢いだと、屋上を飛び越えて別の場所に行ってしまいそうだ。


「ふにゃあぁぁぁぁぁあっ!!! (ひゃあぁぁぁぁぁあっ!!!)」


 我輩、あまりの高さに悲鳴を上げながら、落ちて行くのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


いやぁ、タロの身体能力が上がったとなった時から、一度、この場面を描いてみたかったんです。

自分の身体能力の高さに頭が追い付かず、悲鳴を上げるタロ。

間抜けで可哀想で可愛いタロを書けて、作者は大満足です。

それでは、また!
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