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第二章 反撃のサナフ教国

第百三十二話 帰ってきた者

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 その日は、朝からバタバタとしていた。ラーミアとリリナを送り出したことで、クーデターの日が間近に迫ることとなったからだ。二人が戦力を連れて帰ってくるまでに、こちらの準備を整えなくてはならない。そのための指示がノルディから出され、レジスタンスのメンバーが動いていたのだ。

 ちなみに、ここに居ないタロは、今頃はロッダにまとわりついて護衛をしてくれているはずだ。タロなら、よほどのことがない限り、ロッダを守れるだろう。


「うむ、ここから先は、ハーグとジルクが帰ってきてからでないと難しいの」


 ノルディは、中々動こうとしないレジスタンスのメンバーを手八丁口八丁で丸め込み、中々に高い士気にまで上げてみせていた。しかし、それでも戦いに参加する者の大半が街に出ている現状では戦いに関するアレコレを動かすことはできないようだった。

 ただ……ノルディのその手法に、ラーミアを彷彿とさせるものを感じ、冷や汗が出たのは、今のところ誰にもバレたくない秘密だ。


「ノルディは、敵に回したくないな」


 完璧でないとはいえ、話術でこれだけ人の心を動かす力を持つノルディが、もしも敵であった場合、かなりの苦戦を強いられるだろう。クーデターは必ず成功させてみせるとは思っているものの、苦戦したいわけではない。どうかノルディが裏切り者ではないようにと、自身の心の平安のためにも祈っていると、ふいに、前方に集まっていた者達がざわついた。


「? 何だ?」


 何があったのかと進んでみると、そこには、今、最大に警戒すべき人物が居た。


「お帰り、ジルク副隊長!」

「副隊長が無事で良かった。リリナさんは見つかりましたよっ」

「えっ? そうなんですか?」

「何でも、あの猫が連れ帰ったそうです」

「……僕も、連れて帰ってほしかったですよ」


 レジスタンスのメンバーに囲まれて話すジルクは、帰ってきて早々にリリナの状態を知ったらしい。ただ、リリナがセイクリアへと向かったことは、一部を除いて知らせていないため、もう少し時間稼ぎはできるだろう。ガックリとうなだれるジルクを横目にそう結論づけた俺は、ひとまずジルクに話しかけてみる。


「悪かったな。タロは、リリナの居場所は知っていても、ジルクの居場所は知らなかったからどうにもできなかったらしいんだ」

「ん? あっ、バルディスさん? 聞いてたんですかっ?」

「あぁ」

「いやぁ、お恥ずかしい。その、そちらの猫さんが僕の居場所を知らないことは分かってたんですけどね? ついさっきまで必死に捜していたことを思うと……こう、ね?」


 どうやら、ジルクは俺の嘘を信じて本気で捜していたらしい。眠っていないせいなのか、目の下には隈ができている。


「報せる手段があれば良かったんだがな……すまない」

「いえいえー。怒ってるわけじゃないんで。って、それどころじゃなかった! 早くノルディさんに話さなきゃならないことがあるんでしたっ」


 のんびり、飄々と言ってのけたかと思いきや、ジルクはいきなり慌て出す。その慌てようは、本当に余裕がない様子に見受けられ、すぐに何があったのかと頭を回す。


「バルディスさんもっ、行きますよ!」

「あ、あぁ」


 そうして、なぜか俺はジルクに手を引かれてノルディの居る場所へと向かうことになった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


今日はちょっと早くに更新できそうなので、更新です!

さてさて、今回は……ジルクが、帰ってきました。

今のところ、リリナからもたらされた情報を知っているのはバルディス、ディアム、ラーミア、タロといういつものメンバーだけですからねぇ。

これからどう転ぶか、楽しく読んでもらえると嬉しいです。

それでは、また!
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