上 下
94 / 574
第二章 反撃のサナフ教国

第九十三話 レジスタンスの現状

しおりを挟む
 リリナの正体が明らかになった直後、俺達は真剣な顔でレジスタンスの現状を聞いていた。


「さすがに戦力がなさすぎないか?」

「だが、これで精一杯だ。むしろ、あの状況下でここまで集められたのは隊長が居てこそなんだ」


 レジスタンスでの主だったメンバーは、ここにいるロッダ、ノルディ、リリナの三人以外では、ハーグ、ジルクという名の隊長と副隊長らしい。その二人に関しては、現在また別の場所で部隊を連れて待機しているという。
 部隊は全部で約二百人。ミルテナ帝国相手にクーデターを起こすには、あまりにも心許ない人数だ。

 俺は、これからどう動いたものかと考えながら、情報提示を行っておくことにする。


「一応、確認してくれ。これは、ミルテナの騎士がレジスタンスのアジト候補として挙げている場所だ」


 さすがにその二人が居る場所までは教えてもらえなかったため、俺はあのミルテナ帝国の騎士達が詰めていた場所から得た地図を取り出し、テーブルに広げる。


「こんなものどこでっ! ……いや、不味いわね。これは……まさか、内通者でも居るんじゃ……」


 最初はその地図の存在そのものに驚いた様子を見せていたリリナだったが、地図を確認するにつれ、その顔を強ばらせる。しかも、小声ながら『内通者』などという物騒な言葉まで聞こえてきた。内通者に関しては、俺達は全く関知し得ないことではあるものの、そう言うということは、この印をつけられている場所のどこかが、本当にハーグやジルクの隠れ家になっているのだろう。


「この地図の信憑性はいかほどのものなのかの?」

「ディアムが騎士達の詰めている場所へ忍び込んで調べたものだ。調べてから時間もまだほとんど経っていない。それなりの信憑性はあると思うぞ」


 そう言えば、ノルディは真剣に地図を読み込む。


「そういえば、聞いていませんでしたが、ロッダは何者ですか? ノルディやリリナはレジスタンスの構成員ということでも納得できますが、ロッダは構成員というには幼すぎますわ」

「あぁ、言ってなかったわね。ロッダは、サナフ教国教皇の息子よ」

「教皇の息子、だと?」


 ラーミアが発したものと同じ疑問は抱いていたものの、まさか教皇の息子だとは思わなかった。てっきり、教皇一家はミルテナ帝国に攻め入られた際に殺されたものだと思っていたのだ。しかし、それなら確かに、旗頭としてロッダの存在は申し分ない。


「僕は……」


 ただ、ロッダの表情は優れない。もっとミルテナ帝国に恨みを抱いているものだと思ってみれば、そうでもなさそうだった。


「さぁ、ひとまずはこれからのことを決めるわよ。夜になれば、行動できるんでしょう?」

「そうだの。夜になれば、そちらの仲間が助けてくれたというワシらの仲間の救出ができる。後は、できるだけ早く、この地図にある場所以外を確保して、ハーグ達を連れ出さねばならぬの」


 『どこか心当たりはないか』と聞かれはしたものの、俺達はこの国に来たばかりだ。土地勘も何もない中では、首を横に振るしかない。

 ハーグ達のことはひとまず場所を確保できるまで保留とし、今夜に向けての迎えに行く人員構成についての話を終える頃には、迎えに行くのにちょうど良さそうな時間になっていた。


「なら、迎えに行くのはバルディスとリリナ、後は、向こうで燻っている奴らの中から体力のある男二人で良いな」


 ノルディの確認の言葉に俺とリリナはうなずく。


「あぁ、充分だ。むしろ、俺一人でも問題なさそうだがな」

「それはダメよ。まだ、あんた達のことは信用できてないんだから」

「分かってる。だから、その人数で承知したんだ」


 本当なら、俺一人で迎えに行く方が楽ではあるが、仕方ない。
 今、考えるべきは、タロのことをどう説明するかということくらいだろう。

 そうこうしている内に、タロから念話が入り、これから出発することを伝える。タロは食料調達をすると言っていたが、きっと怪我人の安全くらいは考えてくれているだろう。


「っと、忘れるところだった。何か、俺の仲間に食べさせてやれる美味いものってないか?」


 タロのために忘れてはならない事柄を思い出した俺は、そう告げて、タロのご褒美を探すのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


これで一旦バルディス視点はしばらくなし……になるはず?

次からはタロ視点で話を進めていきますね。

タロはささみをゲットできたのでしょうか(笑)

それでは、また!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

追放令嬢は隣国で幸せになります。

あくび。
ファンタジー
婚約者の第一王子から一方的に婚約を破棄され、冤罪によって国外追放を言い渡された公爵令嬢のリディアは、あっさりとそれを受け入れた。そして、状況的判断から、護衛を買って出てくれた伯爵令息のラディンベルにプロポーズをして翌日には国を出てしまう。 仮夫婦になったふたりが向かったのは隣国。 南部の港町で、リディアが人脈やチートを炸裂させたり、実はハイスペックなラディンベルがフォローをしたりして、なんだかんだと幸せに暮らすお話。 ※リディア(リディ)とラディンベル(ラディ)の交互視点です。 ※ざまぁっぽいものはありますが、二章に入ってからです。 ※そこかしこがご都合主義で、すみません。

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

異世界道中ゆめうつつ! 転生したら虚弱令嬢でした。チート能力なしでたのしい健康スローライフ!

マーニー
ファンタジー
※ほのぼの日常系です 病弱で閉鎖的な生活を送る、伯爵令嬢の美少女ニコル(10歳)。対して、亡くなった両親が残した借金地獄から抜け出すため、忙殺状態の限界社会人サラ(22歳)。 ある日、同日同時刻に、体力の限界で息を引き取った2人だったが、なんとサラはニコルの体に転生していたのだった。 「こういうときって、神様のチート能力とかあるんじゃないのぉ?涙」 異世界転生お約束の神様登場も特別スキルもなく、ただただ、不健康でひ弱な美少女に転生してしまったサラ。 「せっかく忙殺の日々から解放されたんだから…楽しむしかない。ぜっっったいにスローライフを満喫する!」 ―――異世界と健康への不安が募りつつ 憧れのスローライフ実現のためまずは健康体になることを決意したが、果たしてどうなるのか? 魔法に魔物、お貴族様。 夢と現実の狭間のような日々の中で、 転生者サラが自身の夢を叶えるために 新ニコルとして我が道をつきすすむ! 『目指せ健康体!美味しいご飯と楽しい仲間たちと夢のスローライフを叶えていくお話』 ※はじめは健康生活。そのうちお料理したり、旅に出たりもします。日常ほのぼの系です。 ※非現実色強めな内容です。 ※溺愛親バカと、あたおか要素があるのでご注意です。

ある平凡な女、転生する

眼鏡から鱗
ファンタジー
平々凡々な暮らしをしていた私。 しかし、会社帰りに事故ってお陀仏。 次に、気がついたらとっても良い部屋でした。 えっ、なんで? ※ゆる〜く、頭空っぽにして読んで下さい(笑) ※大変更新が遅いので申し訳ないですが、気長にお待ちください。 ★作品の中にある画像は、全てAI生成にて貼り付けたものとなります。イメージですので顔や服装については、皆様のご想像で脳内変換を宜しくお願いします。★

SRPGの雑魚キャラに転生してしまったのですが、いっぱしを目指したいと思います。

月見ひろっさん
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。

黒聖女の成り上がり~髪が黒いだけで国から追放されたので、隣の国で聖女やります~【完結】

小平ニコ
ファンタジー
大学生の黒木真理矢は、ある日突然、聖女として異世界に召喚されてしまう。だが、異世界人たちは真理矢を見て、開口一番「なんだあの黒い髪は」と言い、嫌悪の眼差しを向けてきた。 この国では、黒い髪の人間は忌まわしき存在として嫌われており、真理矢は、婚約者となるはずであった王太子からも徹底的に罵倒され、国を追い出されてしまう。 (勝手に召喚して、髪が黒いから出てけって、ふざけるんじゃないわよ――) 怒りを胸に秘め、真理矢は隣国に向かった。どうやら隣国では、黒髪の人間でも比較的まともな扱いを受けられるそうだからだ。 (元の世界には戻れないみたいだし、こうなったら聖女の力を使って、隣の国で成り上がってやるわ) 真理矢はそう決心し、見慣れぬ世界で生きていく覚悟を固めたのだった。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

処理中です...