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第二章 反撃のサナフ教国

第八十八話 リリナのバーにて(八)

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 『引き上げろ』と言われて、簡単にはできないのが現状だった。まだ、生きている民間人が居るのだ。怪我で動けないだけで、ちゃんと生きている者が居るのだ。


《にゃー。にゃあ(怪我人が居るのだ。退けないのだ)》


 そう伝え、我輩、迫る剣を華麗に飛んで避ける。


《……そうか、できれば救出したいところだが、もし無理なら……いや、タロ、転移はできるか?》

《にゃ? (転移?)》

「『雷槍』っ」

「にゃ!? にゃおっ(何と!? えーっと、『悪食』なのだっ)」


 飛んで宙に浮いた我輩へ向けられた雷の槍。それを見て、我輩、一瞬にして背後の怪我人のことを認識し、それを『悪食』でパクりと食べてしまう。いや、他の者には、突如として魔法が消えてしまったようにしか見えないだろうが。


 うむ、少しピリリとしていて美味なのだ。


《あぁ、この前の仮面の魔族が逃げる時に使ったやつだ》

《にゃにゃあ? (なるほど、それで民間人をここから逃せば良いのだな?)》


 魔法を食べられて呆けたようになった甲冑の騎士に突撃しながら、我輩、考えを纏める。


「にゃー? (『サポートシステム』よ。我輩、『転移』は使えるのだろうか?)」

《『サポートシステム』起動します。質問の問いの答えは是。無属性魔法による『転移』が可能です。サポートは必要ですか?

はい/いいえ 》


 的確な答えに、我輩、すぐに『はい』を選択する。


「ちっ、変な術を使うね。でも、これならどうだっ! 『雷爆』」

「にゃっ(『悪食』っ)」


 おぉ、ピリピリ感が強くなって、濃厚な味わいになったのだ。


 何やら巨大な雷の玉が迫ってきたのを、我輩、『悪食』で食べて消し、そのままの勢いで甲冑の騎士の腹へと飛び込む。


「にゃおーんっ! (猫流奥義、クルクルアタックっ!)」

「ぐおぉぉおっ!!」

《『サポートシステム』より確認。転移の範囲と転移場所の設定を行ってください》


 甲冑の騎士の前当てを破壊し、吹き飛ばしたところで、『サポートシステム』からそんな言葉がかけられる。


 ふむ、範囲は民間人の怪我人と我輩で設定するとして……場所は、ルーグ砂漠が良いだろうか?


「大隊長!」


 素早く考えを巡らせた我輩は、他の騎士達の目が甲冑の騎士に向いている間にそれを『サポートシステム』に伝えてしまう。


《これより、無属性魔法、『転移』を行います。範囲、使用者、及び、五名の人間。場所指定、ルーグ砂漠。開始します》


 そうして我輩、騎士達の目の前で光に包まれ、『転移』したのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


やっと戦いが終わりました!

これで、『リリナのバーにて』というタイトルは終了です。

え?

肝心のリリナが出ていない?

店の名前で出してるくせに?

あぁ、リリナに関しては、追々出す予定なので、勘弁してください。

そして、気づいた方もいらっしゃるでしょうが、念話とサポートシステムの()を《》に変えました。

()だと、タロの人間の言葉の部分と被るので、変えた方が良いかと思いまして……多分、全部変えられたと思いますが、見落としていたらすみません。

それでは、また!
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