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第二章 反撃のサナフ教国

第八十六話 リリナのバーにて(六)

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 濃厚な血臭が蔓延し始めたその場所で、我輩、近場に居た騎士へと狙いをつける。


「にゃおーんっ!! (猫流奥義、ガリガリっ!!)」

「ぎゃあっ」


 我輩のガリガリは、見事に騎士の顔面へ命中。騎士は、我輩の爪の数だけ顔に赤い線を浮かべ、悲鳴を上げる。


「猫相手に何してるんだ」

「にゃおーんっ!! (猫流奥義、ガリガリっ!!)」

「ぐぉおっ」


 我輩を猫と侮る騎士達は、最初こそ猫に引っ掻かれた不運な奴が居る、程度の認識だったのであろう。しかし、それが二度、三度と続けば……しかも、的確に民間人を救出するタイミングで行っているとなれば、話は変わってくる。


「こんのっ、デブ猫めっ!」

「ふしゃーっ(デブではないのだっ)」

「猫なんかに関わるなっ! レジスタンス制圧が優先だっ」

「にゃおーんっ!! (猫流奥義、ガリガリっ!!)」

「いぃっ!?」


 民間人に手を出そうとする者は、全てガリガリなのだっ!


 そうして暴れ回っていると、やがて、あの甲冑の騎士もこちらに気づく。


「ねぇ、君ら、何アホなことやってんの?」

「だ、大隊長っ、こ、これは……」


 狼狽える騎士に大隊長と呼ばれた甲冑の騎士は、首をかしげて我輩を見る。


「猫なんて、殺しちゃえば良いだろ?」


 予備動作などほとんどなく降り下ろされた剣に、我輩、素早く飛び退く。


「にゃあ(ううむ、あのかぶとが邪魔なのだ)」


 避けながら、我輩、甲冑の騎士の頭にあるそれがなければ、他の騎士同様、ガリガリをお見舞いできるのにと嘆息する。


「へぇ、今のを避けるか……ただの猫じゃなさそうだね。高位の魔物が擬態してるのかな?」

「にゃ? (我輩、猫なのだが?)」


 妙なことを口走る甲冑の騎士に、我輩、疑問符を浮かべる。

 民間人は、我輩の活躍である程度は逃げられたようで、残るのは怪我で動けない者や、死んでしまった者のみだ。そんな中、騎士達は全員、我輩へと狙いを定めていた。


「おい、中隊長。この魔物が擬態した猫は僕の獲物だ。上の制圧に行ってこい」

「ははっ!」


 顔に赤い線を浮かべたまま敬礼する中隊長とやらは、我輩への先程までの憎悪の視線はどこへやら、十数人を連れて、さっさと逃げた民間人を追おうとする。


「ふしゃーっ(それはさせないのだっ)」


 もちろん、我輩も見ているだけではない。きっちり妨害させてもらうのだ。

 そうして、我輩、瞬時に、風の結界を地下全体に張り巡らしたのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ガリガリ、ガリガリ、ガリガリガリガリ……キラーン。

ふむ、タロのガリガリは痛そうです。

毎日爪を研いでいるらしいので、なおさら。(上のは爪を研ぐ音です)

本日はタロが活躍、というより、猫流奥義、ガリガリの活躍になってる気がしますが、引き続き、ガリガリは活躍することになると思います。

それでは、また!
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