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第二章 反撃のサナフ教国

第八十五話 リリナのバーにて(五)

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 悲鳴が聞こえた直後、地下からは断続的に別々の悲鳴が上がりはじめる。


「くそったれっ! どうしろってんだ!」


 赤髪の青年は瞬時に状況を理解し、悪態を吐く。

 そんな中、バルディス達はというと……怒濤の勢いで騎士達を駆逐していた。時折、『タロには負けられない』といった内容のことを叫びながら。そして、それを見た青年は、すぐさま決断を下す。


「二人ともっ、こっちに戻れっ! 他の奴らにも、極力こっちに来るよう伝えろっ」


 騎士達が数を減らし、ほとんどが逃げ腰になっている様子を見れば、こちらに来た方が安全だと判断できるというものだ。ノルじいとやらが大声を張り上げてこっちに来るように地下に居る者達へ呼び掛けるのが聞こえる。しかし、地下の悲鳴が止むことはない。

 我輩、いてもたってもいられなくなり、地下へと走り出そうとする。が、その瞬間、我輩の視界は高くなった。


「にゃ? (何?)」

「大人しくしてろよ」


 ……どうやら我輩、青年に捕まったのだ。


 しかし、大人しくしていろと言われたものの、我輩、そうするつもりは全くない。早く行かなければ、罪のない者達が殺されてしまうのだ。だから、申し訳ないと思いつつも、我輩、爪を立ててガリッと青年を引っ掻く。


「いっ!?」


 力が緩んだ隙に、我輩、飛び出していた。


「タロっ、そっちは任せる」

「にゃっ(任されたのだっ)」


 バルディスの言葉に返事をしながら、我輩、全速力で地下へと駆け下りる。


「ロッダ様っ! 早くお逃げくださいっ」

「だが、僕は……」


 途中、ノルじいとあの男の子を見たが、二人は我輩に気づくことはなかった。ただ、あの男の子がロッダという名前なのだということだけ頭に置いて、我輩、走る。


「教皇様万歳! 死ねぇっ、帝国のいぬどもっ! ぐ、がぁぁぁっ」

「きゃあぁぁあっ! いやっ、いやぁぁあっ」

「た、助けてくれぇっ」

「おぉ、神よっ」


 地下の様子は、凄惨なものだった。騎士と民間人との殺し合い。とはいえ、騎士の力の方が圧倒的で、一方的な虐殺になっている。血しぶきが舞い、いくつもの血だまりが生成される。


「あはははっ、異教徒どもめっ! 死に絶えろっ」


 そして、その騎士達の中でひときわ目立つ黒い甲冑の男。そいつは、笑いながら民間人を虐殺していた。


「にゃあっ! (許せんっ!)」


 この光景は、到底許しがたい。紳士道にも人道にも反する行いだ。我輩、魔力をたぎらせ、戦いの中に突入するのであった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


いよいよタロの戦いっ!

えっ?

最初にプレスしただろうって?

いや、あれは戦いではありません。

ただのプレスです。

と、いうわけで、次回はタロが大活躍、になる予定です。

それでは、また!
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