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第二章 反撃のサナフ教国

第七十四話 嫌なデジャブ

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「にゃー……(これは、どうしたものか……)」


 真っ暗な元サナフ教国の街で、我輩、すっかり途方に暮れていた。


「にゃにゃあ(デジャブというやつなのだな、きっと)」


 そう言いながら、我輩、一匹で黄昏る。そう、一匹・・で、だ。つまりは…………。


「にゃあっ、にゃーっ、にゃっ、にゃにゃーっ!! (バルディスっ、ラーミアっ、ディアムっ、どこなのだーっ!!)」


 今の我輩、迷子なのであった。


「にゃあぁ(うぅ、迷子は嫌なのだー)」


 我輩、ちょっと前までは、ちゃんとバルディス達に着いていっていた。皆と同じように、気配を消して、素早く、着いていっていた。しかし、その途中で我輩、見たのだ。マウマウの軍団を。見てしまったが最後、我輩、無視はできない。あのマウマウには同胞が困らされているのだから、少しでも減らすべきなのだ。

 しかし、運の悪いことに、我輩、今は静かに行動しなければならない時であって、必殺技の名前を声高に宣言することができない。
 『必殺技は男のロマン』だと、『必殺技は名前を叫んでから使うもの』だと教えてくれた飼い主には悪いが、今はそれができなかった。ゆえに、心の中で『ガリガリ』だとか、『クルクルアタック』だとかを叫びながらやっつけたのだが……その頃には、すでに、バルディス達の姿が見えなくなっていた。きっと、鳴き声を上げていればバルディス達も気づいてくれただろうと気づいたのは、一匹で取り残された後だった。


「にゃーん(どこなのだー)」


 尻尾をヘニャリと垂らして、我輩、鳴き声を上げる。ことここに至っては、静かにするなんてことが無意味なことくらい、我輩にも分かる。

 トボトボと歩いて、我輩、バルディス達を見つけるために耳をすませ、鼻を利かせて、注意深く観察する。すると、どこからか、足音が聞こえてきた。


「にゃっ(誰か居るのだっ)」


 それは、バルディスかもしれないし、ラーミアやディアムかもしれない。しかし、この時の我輩は、誰でも良かった。とにかく心細くて、不安な我輩は、バルディス達のうちの誰かが見つかりさえすれば安心だったのだ。だから、我輩、相手が一人であることに疑問すら抱かず、見失う前にと慌てて走り出す。そして……。


「にゃー? (うむ?)」


 そこには、年端もいかない、金髪碧眼の男の子が呆然と立ち尽くしていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


タロ、また迷子です。

いやはや、迷子になって不安になって奔走するタロを書くのは楽し……ゲフンゲフン、心苦しいですが、タロにはもうしばらく我慢してもらうことにしましょう。

それでは、また!
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