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第一章 アルトルム王国の病

第三十六話 手紙(二)

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 途中途中で休憩を挟みながら、猫に着いていく僕は、街の様子に愕然としていた。

 普段は賑やかに客を呼び込む声が飛び交う大通りは、見る影もなく静まり返っていた。たまに出歩いている人は、しきりに怯えていたり、泣いていたり、無表情だったり……かつての活気は、全く感じられない。
 僕は、病を収束させるためにひたすら城に籠っていたせいで、この現状を知らなかったのだ。


 早く、何とかしないと、この国は終わりだっ。


 そんな危機感を募らせるものの、病のせいで城から追い出された僕にできることなど限られてくる。とてもではないが、この病の特効薬の開発などできない。


 僕は、祈ることしかできないのかっ。


 自分の力不足で、歯痒い思いに駆られながら、僕はひたすら猫に着いていく。今は、猫が案内する場所へ向かうことが先決だ。

 そうして、辿り着いたのは……。


「教、会?」


 色褪せ、朽ちた教会。誰にも見向きされなくなって久しいであろうそこに、二匹の猫は躊躇うことなく入っていく。


「こんな所に、誰が?」


 ゆっくり歩いていたおかげか、吐き気が少し収まってきた僕は、慎重に歩を進める。少しばかりすっきりとしてきた頭で、僕は、もしかしたらとんだ勘違いをしていたかもしれないと考える。


 こんなご時世だから助けを求めていると思い込んでいたけど……こんなご時世だからこそ、僕を邪魔に思う人間が排除に動くこともあり得るんだよな。


 残念ながら、僕に戦う能力はない。しかも、この教会は大通りから随分と離れた場所にあるため、助けも呼べそうにない。とはいえ、大通りが近かったとしても、今は皆が自分のことで手一杯で、助けなんて望めないだろうが。


「ふぅ」


 相手が何者か分からないし、その真意も不明。このままノコノコと教会に入れば、殺されるかもしれないし、当初考えていたように、誰かが助けを求めているかもしれない。


「にゃあ」


 いつまでたっても教会に入らない僕に、白猫は鳴き声を上げて抗議する。

 どうやら、覚悟を決めるしかなさそうだ。


「お、お邪魔します?」


 何となく、そんな挨拶を告げながら、僕は教会の中に入っていく。

 その教会は、外観こそ朽ちていたものの、中は案外しっかりとした造りのままだった。作り付けの机や椅子が立ち並ぶその場所を、猫に導かれながら一歩一歩、慎重に歩く。


「にゃあ」


 すると、二匹の猫は、途中で椅子に飛び移り、そのまま机にまで飛ぶ。


「にゃーにゃっ」


 その机の上には、鉛色の液体が入った小瓶がいくつもあり、その下に、手紙らしきものがあった。


「これは……?」


 てっきり誰かが居るものだと思っていたが、どうやらそうではなかったらしい。しかし、それでも呼び出した真意が分からないままなので、僕はとりあえず、その手紙を開いてみることにしたのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

な、何とか、更新できました。

とりあえず、ここまででしがない宮廷薬師さん視点は終了です。

次からはタロ視点に戻ります。

さぁ、ここからまた、タロが活躍してくれる、はず?

それではまた、明日か明後日に更新しますね~。
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