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第五章 ルビーナ商国とボスティア海国の闇
第五百六十八話 誤解の利用方法
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「何の用だ?」
「本日は、リリーヌ公爵家の処遇が決まる日……だったのですが……この騒ぎは、バルさんが?」
邪神のことを伝えたタイミングでのこの騒動。確かに、そう疑われてもおかしくはない。
ここで否定をしたところで、疑いが晴れることはないだろう。それならば……。
「そうだな。水竜様に頼まれていたからな」
「っ、やはりっ! 水竜様の御使い様だったのですねっ!?」
……罪悪感が……。
キラッキラと目を輝かせて、尊敬の眼差しを向けてくるフィフィーに、思わず罪悪感が生まれる。しかし、そんな様子はおくびにも出さずに、俺は鷹揚にうなずいてみせる。
「そうだ」
「では、もしかして、ピィちゃんも?」
「タロは、水竜様そのものだ」
「っ!!?!?」
ピシリと固まったフィフィーに、俺はさすがに刺激が強かっただろうかと心配になる。
「ピィちゃんが、水竜、様……リリーヌ公爵家は滅んで当然ですねっ!」
何やら、タロを水竜ということにしてしまったせいで、リリーヌ公爵家の罰は重いものになりそうな予感がしたが、そちらには一欠片の罪悪感も感じずにすみそうだった。案外、タロを狙われたことを根に持っていたらしい。
「あぁ、これは極秘にしておいてくれ」
「はっ、はい……で、ですが、その……陛下方にお知らせする許可は、いただけないでしょうか? その、リリーヌ公爵家を断罪するために、必要でして……」
恐縮しながら、ソワソワするフィフィー。恐らくは、俺達が水竜の使いということで、一気に緊張させてしまっているのだろう。
「あぁ、それは構わない。それと、フィリア姫を助け出したのは、人間の、しかも、ルビーナ商国の姫だ。彼女が居なければ、水竜様は動かなかった」
「っ、そ、それは、まことですか?」
つい先ほどまで、フィリアが拐われたのはルビーナの人間の仕業だと思っていたところに入ったこの情報に、フィフィーは困惑しているようだったが、ここだけは譲れないところだ。実際、ヨナが居なければ、俺達は動かなかっただろう。ヨナが居たからこそ、フィリアは助かったのだ。
「真実だ。そして、このことは広く伝えることを水竜様はお望みだ」
「っ、畏まりました! 必ずや、この真実を広めてみせると誓いましょう!」
「期待している。……さて、そろそろあちらも終わるだろう。次は、人族の姿でもこの国に訪れることができるようになっていると良いがな」
「っ、必ず、必ず、お伝えしますっ!」
そっと、不法入国した人族というのは俺達のことだとバラせば、フィフィーは都合良く解釈してくれる。
「では、後始末は頼んだぞ」
「はっ! それでは、失礼しますっ!」
深く頭を下げて去っていったフィフィーに、これ以上何も言うことはない。リリーヌ公爵家の処遇を見届けられるかは分からなくなったが、これで、あとはケント達と合流すれば地上に戻れるだろう。
「上手く誤解させましたわね」
「このくらいは、な」
「あとは、ケント達と合流?」
「あぁ、そうしてルビーナに戻れば、もしかしたら欠片の回収もできるかもしれないしな」
ヨナの欠片はまだ回収されていないが、ここまで状況を整えたのだ。きっと、ルビーナに戻りさえすれば回収できるだろうという確信がある。
「とりあえず、今はタロが戻ってくるのを待っていてやろう」
そうしてしばらくすると、水竜の姿は忽然と消えて、その数秒後に、タロが俺達の元へと戻ってくるのだった。
「本日は、リリーヌ公爵家の処遇が決まる日……だったのですが……この騒ぎは、バルさんが?」
邪神のことを伝えたタイミングでのこの騒動。確かに、そう疑われてもおかしくはない。
ここで否定をしたところで、疑いが晴れることはないだろう。それならば……。
「そうだな。水竜様に頼まれていたからな」
「っ、やはりっ! 水竜様の御使い様だったのですねっ!?」
……罪悪感が……。
キラッキラと目を輝かせて、尊敬の眼差しを向けてくるフィフィーに、思わず罪悪感が生まれる。しかし、そんな様子はおくびにも出さずに、俺は鷹揚にうなずいてみせる。
「そうだ」
「では、もしかして、ピィちゃんも?」
「タロは、水竜様そのものだ」
「っ!!?!?」
ピシリと固まったフィフィーに、俺はさすがに刺激が強かっただろうかと心配になる。
「ピィちゃんが、水竜、様……リリーヌ公爵家は滅んで当然ですねっ!」
何やら、タロを水竜ということにしてしまったせいで、リリーヌ公爵家の罰は重いものになりそうな予感がしたが、そちらには一欠片の罪悪感も感じずにすみそうだった。案外、タロを狙われたことを根に持っていたらしい。
「あぁ、これは極秘にしておいてくれ」
「はっ、はい……で、ですが、その……陛下方にお知らせする許可は、いただけないでしょうか? その、リリーヌ公爵家を断罪するために、必要でして……」
恐縮しながら、ソワソワするフィフィー。恐らくは、俺達が水竜の使いということで、一気に緊張させてしまっているのだろう。
「あぁ、それは構わない。それと、フィリア姫を助け出したのは、人間の、しかも、ルビーナ商国の姫だ。彼女が居なければ、水竜様は動かなかった」
「っ、そ、それは、まことですか?」
つい先ほどまで、フィリアが拐われたのはルビーナの人間の仕業だと思っていたところに入ったこの情報に、フィフィーは困惑しているようだったが、ここだけは譲れないところだ。実際、ヨナが居なければ、俺達は動かなかっただろう。ヨナが居たからこそ、フィリアは助かったのだ。
「真実だ。そして、このことは広く伝えることを水竜様はお望みだ」
「っ、畏まりました! 必ずや、この真実を広めてみせると誓いましょう!」
「期待している。……さて、そろそろあちらも終わるだろう。次は、人族の姿でもこの国に訪れることができるようになっていると良いがな」
「っ、必ず、必ず、お伝えしますっ!」
そっと、不法入国した人族というのは俺達のことだとバラせば、フィフィーは都合良く解釈してくれる。
「では、後始末は頼んだぞ」
「はっ! それでは、失礼しますっ!」
深く頭を下げて去っていったフィフィーに、これ以上何も言うことはない。リリーヌ公爵家の処遇を見届けられるかは分からなくなったが、これで、あとはケント達と合流すれば地上に戻れるだろう。
「上手く誤解させましたわね」
「このくらいは、な」
「あとは、ケント達と合流?」
「あぁ、そうしてルビーナに戻れば、もしかしたら欠片の回収もできるかもしれないしな」
ヨナの欠片はまだ回収されていないが、ここまで状況を整えたのだ。きっと、ルビーナに戻りさえすれば回収できるだろうという確信がある。
「とりあえず、今はタロが戻ってくるのを待っていてやろう」
そうしてしばらくすると、水竜の姿は忽然と消えて、その数秒後に、タロが俺達の元へと戻ってくるのだった。
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