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第五章 ルビーナ商国とボスティア海国の闇

第五百十七話 クラクラ

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 クルクルと目を回しながら、我輩、どこかにモフン、モフンッと打ち付けられる。


「にゃ、にゃあ(目、目が、回るのだぁ)」


 何となく水流が収まったことは理解できたものの、しばらく立てそうにない。


 やっぱり、水の中は嫌いなのだっ。


 改めて、水の中の恐怖を実感していると、どこか遠くで、レディが我輩を呼ぶ声がする。


「……ロ、タロっ」

「に、にゃー(う、うむぅ)」


 頭の中がグワングワンとする中、どうにか目を開けてみれば、誰かの靴が見える。


 ……どこか、見覚えがあるような……?


「タロ、大丈夫ですか?」


 あぁ、そうだ。これは、ラーミアの声…………ラーミア!?


「にゃあっ!? (ラーミアっ!?)」


 我輩がしっかりとした声を上げれば、ラーミアは我輩を抱き上げてくれる。


「に、にゃあ。にゃ……(ち、ちょっと待ってほしいのだ。まだクラクラが……)」

「このもっちりモフモフ感。まさしくタロですね」

「にゃ……(もっちり……)」


 なぜだろう? 我輩、誰かに我輩自身の確認を取らせる度に、もっちりとか、ずっしりとか言われている気がするのだ。

 そこはかとなくショックを受ける我輩をものともせず、ラーミアは我輩に告げる。


「このままでは話になりませんわ。タロ、さっさと人型を取ってくださいっ」

「に、にゃ(わ、分かったのだ)」


 まだクラクラは治まっていないものの、ラーミアの言葉に逆らうべきではない。我輩、すぐさま飼い主の幼い頃の姿を取って、座り込む。


「うぅ、クラクラなのだ……」

「クラクラ? あぁ、そういえば回っていましたわね」


 そう言いながらも、ラーミアは我輩に話しかけてくる。


「さて、タロ。説教をしたいのは山々ですが、ひとまずは外の状況を教えてください。バル達は一緒ではなかったんですか?」


 『説教』と聞いて、我輩、ビクッとしながらも、どうも今は、お説教されることはないと分かり、今まで見聞きしたことを話そうとして……。


「その前に、彼らは大丈夫なのか?」


 まずは、ラーミアから、背後に控える魚人達のことを聞くこととなったのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


よし、やっと、タロとラーミアがお話できる状態に!

そろそろ、フィリアちゃんのことも情報を提示していかないとですしね。

それでは、また!
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