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第五章 ルビーナ商国とボスティア海国の闇

第五百十六話 巨大魚の中

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 ここに来て、いったいどれだけの時が経ったのでしょう?


 食料は、なぜか定期的に供給されるため、それを食べながら、私は、仲良くなった魚人へと尋ねてみる。


「さぁ、全く分からん。そもそも、この巨大魚が人為的に作られた存在っていうのも信じがたいしな」


 そう言うのは、ここに居る魚人達を率いる隊長。ビー・ストロガノだ。赤褐色の逞しい肉体を持つ彼は、顔も厳つく、恐らくは子供を前にしたら子供に泣かれそうだと思えるくらいの形相だ。

 私は、あの日、巨大魚に呑まれて、目が覚めるとこのビーを筆頭とする魚人達に囲まれていた。
 巨大魚の腹の中は、どうにもどこかの空間に繋がっていたらしく、そこは、全体が石壁に覆われた大きな部屋だった。


「ですが、人為的でなければ、私達はこんなことにはなっていませんわよ。何か、心当たりはないんですか?」

「うーむ……ないっ!」


 堂々と答える筋肉バカを前に、私はイラっとして、つい、水を操って彼をグルグルと回転させる。


「うぉぉぉおっ! 酔うっ、酔うからやめてくれぇぇぇえっ」


 最初はお互い警戒していたものの、巨大魚に呑み込まれた者同士ということと、私が正直に、フィリアを捜しに来たことを告げれば、どうにか協力体制を築けるまでになっていた。


「はぁ、食料の心配がないのはありがたいですが、何が目的なのか分からないのは嫌なものですね」

「おー、隊長、また回されてる」

「隊長も懲りないよなぁ」

「おい、お前ら、気づかれたら終わりだぞ?」


 後ろでこそこそと言っている魚人達を察知して、私はそこにも水流を起こしておく。


「「ぎゃーっ!」」

「何で俺までーっ!」


 ちなみに、最後の一人は、ただ近くに居たせいで巻き込んだだけだ。まぁ、そこら辺を気にする必要はないだろう。


「はぁ、ここを出る手段があれば良いのですが……」


 私はここに来た初日、魚人達と和解した後、一緒になって壁や天井、床などに攻撃を加えてみたものの、どんな素材で作られているのか、傷一つつかないという事実に絶望した。この場所には、いくつかの大部屋と多数の小部屋があるのみで、それ以外は特に何もないのだ。あるとすれば、定期的に食料が届く台座がある程度で、その台座の解析も全く捗らなかった。


「はぁ、ここにディアムが……いえ、バルかタロが居てくれたなら」


 ディアムは心の支えにはなるだろうが、多分、現状の解決には向かないと思って言い直したところ、どこからかタロの鳴き声のようなものが聞こえた気がした。


「ふにゃぁぁぁぁぁぁぁあっ!!」

「って、気のせいじゃない!?」


 その直後、少し大きな水流とともに、タロがこの大部屋に排出されてくるのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ひっさびさにラーミア登場です。

さてさて、タロは現状打破の一手となりうるのか!

それでは、また!
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