506 / 574
第五章 ルビーナ商国とボスティア海国の闇
第五百五話 前進
しおりを挟む
魚人の姿に変装した俺達は、すぐに海へと飛び込んだ。あのまま空気に満ちた場所に潜んでいれば、すぐに見つかってしまうため、そうするしかなかった。
「くっ、ばた足ができないと、進みが遅い」
「それでも進むしかないだろう」
実質、腕のみで海中を進む俺達は、酷く遅い進行しかできない。それでも、その状態でなければこの包囲網は抜け出せないのだから、頑張るしかない。
「タロが居れば、『幻術』で何とかなったんだろうがな……」
タロさえ近くに居てくれれば、『幻術』で魚人姿となり、ばた足で泳ぐこともできたはずだ。しかし、居ないものは仕方ない。
「これっ、腕、結構、疲れるんだけど!?」
泳ぐというより、地面を手で押して進んでいるマギウス。海中に入って、一時間近くが経過した今、マギウスはもう、クタクタのようだった。
「だが、あまり進んでいないぞ?」
「僕は、四天王の中でも、頭脳中心で、働いてきたんだっ。そんなに、体は、鍛えて、ないんだよっ」
情けなくもそう言い募るマギウスに、俺は休憩を入れる決断をする。少し休めば、またある程度は進めるだろう。
「分かった。なら、少し休憩だ」
残念ながら、俺は『治癒』を使えない。だから、本来ならマギウスの腕の回復は、自然治癒に任せるしかない……のだが、俺は、一つだけ、良いものを持っていた。
「やっと、休めるー」
腕の力を抜いて、地面に突っ伏したマギウスの側に、俺はゆっくりと地面を手で押して近づく。
「おい、マギウス、とりあえず体を起こせ」
「うぅ……腕が痛いんだけど……」
そう言いながらも、何とか体を起こしたマギウス。そして、俺はそんな風に文句を言う口に……ソレを突っ込んだ。
「むぎゅっ!?」
口に入れた瞬間、マギウスは悲鳴を上げる。
「気絶する前に飲み込め。筋肉の痛みを治す薬だ」
「むー、むぅぅうっ!」
真っ青な顔で涙をボロボロと流すマギウス。俺が、マギウスの口に突っ込んだのは、ラーミアお手製の丸薬だ。その味は……マギウスの様子を見て分かる通り、筆舌に尽くしがたいものだった。
「むぅぅうっ! ごきゅんっ、んんっ! んーっ!」
どうにか飲み込んだのを確認して、俺はマギウスの口から手を離してやる。
「おえっ、苦甘すっぱ辛いっ!」
「残念ながら、水はない」
その一言で、絶望の表情を浮かべるマギウス。しかし、この薬さえ飲んでおけば、まだ移動ができるのだから、飲まない手はない。
「さぁ、落ち着いたら、また出発を……ん?」
言いかけた俺は、どこからか聞こえた、ゴォォォオッという音に首をかしげる。そして……。
「行くのだーっ!」
どこかで聞き覚えのある声がしたかと思ったら、わけも分からないうちに、激流に呑まれるのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
知らず知らずのうちに接触していたタロとバルディス達。
タロへのお説教が長引くことが、これで確定しましたね。
それでは、また!
「くっ、ばた足ができないと、進みが遅い」
「それでも進むしかないだろう」
実質、腕のみで海中を進む俺達は、酷く遅い進行しかできない。それでも、その状態でなければこの包囲網は抜け出せないのだから、頑張るしかない。
「タロが居れば、『幻術』で何とかなったんだろうがな……」
タロさえ近くに居てくれれば、『幻術』で魚人姿となり、ばた足で泳ぐこともできたはずだ。しかし、居ないものは仕方ない。
「これっ、腕、結構、疲れるんだけど!?」
泳ぐというより、地面を手で押して進んでいるマギウス。海中に入って、一時間近くが経過した今、マギウスはもう、クタクタのようだった。
「だが、あまり進んでいないぞ?」
「僕は、四天王の中でも、頭脳中心で、働いてきたんだっ。そんなに、体は、鍛えて、ないんだよっ」
情けなくもそう言い募るマギウスに、俺は休憩を入れる決断をする。少し休めば、またある程度は進めるだろう。
「分かった。なら、少し休憩だ」
残念ながら、俺は『治癒』を使えない。だから、本来ならマギウスの腕の回復は、自然治癒に任せるしかない……のだが、俺は、一つだけ、良いものを持っていた。
「やっと、休めるー」
腕の力を抜いて、地面に突っ伏したマギウスの側に、俺はゆっくりと地面を手で押して近づく。
「おい、マギウス、とりあえず体を起こせ」
「うぅ……腕が痛いんだけど……」
そう言いながらも、何とか体を起こしたマギウス。そして、俺はそんな風に文句を言う口に……ソレを突っ込んだ。
「むぎゅっ!?」
口に入れた瞬間、マギウスは悲鳴を上げる。
「気絶する前に飲み込め。筋肉の痛みを治す薬だ」
「むー、むぅぅうっ!」
真っ青な顔で涙をボロボロと流すマギウス。俺が、マギウスの口に突っ込んだのは、ラーミアお手製の丸薬だ。その味は……マギウスの様子を見て分かる通り、筆舌に尽くしがたいものだった。
「むぅぅうっ! ごきゅんっ、んんっ! んーっ!」
どうにか飲み込んだのを確認して、俺はマギウスの口から手を離してやる。
「おえっ、苦甘すっぱ辛いっ!」
「残念ながら、水はない」
その一言で、絶望の表情を浮かべるマギウス。しかし、この薬さえ飲んでおけば、まだ移動ができるのだから、飲まない手はない。
「さぁ、落ち着いたら、また出発を……ん?」
言いかけた俺は、どこからか聞こえた、ゴォォォオッという音に首をかしげる。そして……。
「行くのだーっ!」
どこかで聞き覚えのある声がしたかと思ったら、わけも分からないうちに、激流に呑まれるのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
知らず知らずのうちに接触していたタロとバルディス達。
タロへのお説教が長引くことが、これで確定しましたね。
それでは、また!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
325
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる