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第五章 ルビーナ商国とボスティア海国の闇

第五百五話 前進

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 魚人の姿に変装した俺達は、すぐに海へと飛び込んだ。あのまま空気に満ちた場所に潜んでいれば、すぐに見つかってしまうため、そうするしかなかった。


「くっ、ばた足ができないと、進みが遅い」

「それでも進むしかないだろう」


 実質、腕のみで海中を進む俺達は、酷く遅い進行しかできない。それでも、その状態でなければこの包囲網は抜け出せないのだから、頑張るしかない。


「タロが居れば、『幻術』で何とかなったんだろうがな……」


 タロさえ近くに居てくれれば、『幻術』で魚人姿となり、ばた足で泳ぐこともできたはずだ。しかし、居ないものは仕方ない。


「これっ、腕、結構、疲れるんだけど!?」


 泳ぐというより、地面を手で押して進んでいるマギウス。海中に入って、一時間近くが経過した今、マギウスはもう、クタクタのようだった。


「だが、あまり進んでいないぞ?」

「僕は、四天王の中でも、頭脳中心で、働いてきたんだっ。そんなに、体は、鍛えて、ないんだよっ」


 情けなくもそう言い募るマギウスに、俺は休憩を入れる決断をする。少し休めば、またある程度は進めるだろう。


「分かった。なら、少し休憩だ」


 残念ながら、俺は『治癒』を使えない。だから、本来ならマギウスの腕の回復は、自然治癒に任せるしかない……のだが、俺は、一つだけ、良いものを持っていた。


「やっと、休めるー」


 腕の力を抜いて、地面に突っ伏したマギウスの側に、俺はゆっくりと地面を手で押して近づく。


「おい、マギウス、とりあえず体を起こせ」

「うぅ……腕が痛いんだけど……」


 そう言いながらも、何とか体を起こしたマギウス。そして、俺はそんな風に文句を言う口に……ソレを突っ込んだ。


「むぎゅっ!?」


 口に入れた瞬間、マギウスは悲鳴を上げる。


「気絶する前に飲み込め。筋肉の痛みを治す薬だ」

「むー、むぅぅうっ!」


 真っ青な顔で涙をボロボロと流すマギウス。俺が、マギウスの口に突っ込んだのは、ラーミアお手製の丸薬だ。その味は……マギウスの様子を見て分かる通り、筆舌に尽くしがたいものだった。


「むぅぅうっ! ごきゅんっ、んんっ! んーっ!」


 どうにか飲み込んだのを確認して、俺はマギウスの口から手を離してやる。


「おえっ、苦甘すっぱ辛いっ!」

「残念ながら、水はない」


 その一言で、絶望の表情を浮かべるマギウス。しかし、この薬さえ飲んでおけば、まだ移動ができるのだから、飲まない手はない。


「さぁ、落ち着いたら、また出発を……ん?」


 言いかけた俺は、どこからか聞こえた、ゴォォォオッという音に首をかしげる。そして……。


「行くのだーっ!」


 どこかで聞き覚えのある声がしたかと思ったら、わけも分からないうちに、激流に呑まれるのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


知らず知らずのうちに接触していたタロとバルディス達。

タロへのお説教が長引くことが、これで確定しましたね。

それでは、また!
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