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第五章 ルビーナ商国とボスティア海国の闇

第四百九十三話 ダブルコンボ

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「ピィちゃんっ!?」


 その声が聞こえたのは、我輩が走り出した直後だった。


「にゃっ!? (緑のレディっ!?)」


 声がした上を見上げれば、緑の鱗を持つレディが上から泳いでこちらに来るところだった。


 捕まるわけにはいかないのだっ!


 今は、バルディス達の情報を得るのが先決。そう思って、我輩、レディを振り切るために改めて走り出す。


「あっ、待ってくださいっ、ピィちゃんっ!」


 待てと言われても待てないのだ。


 我輩、『結界』に負担がかかるのは怖いため、ある程度加減した速度で必死に走る。とりあえずは、あの噂話しをしていたレディ達の元へ向かい、『探索能力』を行使するという役目を果たすため、我輩、その方向へ一直線に向かおうとして……。


「『水流壁』」

「にゃおっ!? (にゃにごとっ!?)」


 我輩、なぜか前に向かって走っているのに、体が垂直に押し上げられてしまう。


「にゃっ、にゃっ(わっ、わわっ)」


 宙に浮いたことにより、ここが水の中だと強く自覚してしまった我輩は、涙目でどうにか地面へ降りようとして……。


「ふにゃあぁぁぁあっ! (高いのだぁぁぁあっ!)」


 水の恐怖と高さの恐怖というダブルコンボに、我輩、レディの前だというのに悲鳴をあげてしまう。


「捕まえましたっ、ピィちゃんっ」


 そして、そんな我輩の背中に、何やら柔らかいものが押しつけられ、緑のレディの声が届く。


「ふー、ふー、ふー、ふー……(我輩は紳士、我輩は紳士、我輩は紳士、我輩は紳士……)」


 どうしようもない恐怖をごまかすために、我輩、懸命に自分がどういう存在なのかを頭に刻み込む。


 レディの前で、醜態をさらすわけには……あぁあっ、でも、怖いのだぁっ!


「何事ですの? フィフィー」

「まぁ、その腕に持っているものは何ですか?」

「あっ、これはミルフィーユ様、ベリー様。その……」


 恐怖に震えているところで、何やら美味しそうなものの名前を聞いた気がした我輩は、恐る恐る、いつの間にか閉じていた目を開ける。


「にゃ……(た、『探索能力』)」


 薄茶色の鱗のレディと、苺のように全体的に赤く、腰の辺りが少し白っぽい色の鱗のレディの二人に、我輩、とりあえず『探索能力』を使用して……。


「も、申し訳ありません。こちらは少々特殊な生き物でして、現在保護観察中だったところを脱走してしまったらしい」

「あら、まさか、地上の生き物だとでもいうのではありませんよね?」

「まぁっ、穢らわしいですわっ」

「っ」

「せいぜい、しっかりと保護しておくことですわね。いつの間にか、死んでいたなんてことにならないように」

「肝に、命じます」


 そんな頭上の会話があったことにも気づかず、我輩、出てきた情報に頭を悩ませるのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


お待たせしました。

今日は更新できるぞっ、と思いながら、しっかり書けました。

さてさて、タロはようやく、バルディス達の情報を少し掴めたらしいですね。

それでは、また!
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