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第五章 ルビーナ商国とボスティア海国の闇

第四百六十六話 交渉

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 ヨナの父親との交渉は、難航した。まず、ヨナは愛され過ぎているように思える。


「私のヨナが遠くに行くなど、私が耐えられんっ」

「父さん、私、将来はお嫁に行くのよ? 今からそんなことでどうするの」

「嫁になどやらんっ。可愛いヨナは、一生この家に居てくれたら良いんだっ」

「……母さんに言いつけるよ?」

「ひっ、い、いや、しかしだな……」

「とにかくっ、私はボスティア海国に行きたいのっ」


 そんな親子のやり取りを観察して分かったことは、ただ一つ。親バカ過ぎてやりづらい、だった。


「あの、一つ良いですか? ヨナさんは、別にボスティア海国から帰って来ないわけじゃありません。身の安全は、僕達が保証します」

「保証? ですが、失礼ながら、天使様はどう見ても強そうには見えませんが」


 どんなに訂正しても変わらなかった呼び方を諦めて、僕は話を進める。


「僕の仲間には、冒険者ランクAが居ます。そして、他の仲間達も、それに勝るとも劣らない実力の持ち主達です。本来なら、全員Sランクでもおかしくない者達です。……僕は、戦闘面では劣りますが、情報収集では活躍してますしね」

「なるほど、それが本当なら、確かにヨナを守ってもらえそうだ。しかし、その者達が信頼できるかどうかは別だ」

「それなら、情報屋マルームからの情報で、彼らは信用できるとあったわよ」


 そんなヨナの言葉に、もしかしたら、そのマルームという情報屋はヨナ自身なのではないかと疑ってしまう。しかし、それはおくびにも出さずに、同意するようにうなずいてみせる。


「むむ、マルーム、か……それなら、本当に信頼できるのだろうな」


 そして、どうもマルームの名前が効果的だということを知り、この交渉の席に、僕は必要なかったのではないかと疑ってしまう。


「僕達は、必ず娘さんを守ってみせましょう。それに……娘から、しっかり考えて選んでもらったお土産をもらえると考えてはどうでしょうか?」


 途中で、その親バカっぷりにつけこめないかと考えた僕は、そんな提案をしてみる。隣からヨナがこちらを見ているのは分かったが、これも交渉のためだ。


「ヨナからの、お土産……」

「いわば、プレゼントです」

「プレゼント……!」

「それを考えれば、娘さんと離れる時間も耐えられるのでは?」

「う、うぅむ、ヨナからの、プレゼント、か……そうか、そうか……」

「父さん、私、頑張ってお土産を選んで来るから、ボスティアに行く許可をちょうだい?」


 最終的には、そのおねだりを前に、ヨナの父親は陥落するのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


交渉成功!

親バカが暴走しただけとも言いますが……。

それでは、また!
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