上 下
454 / 574
第五章 ルビーナ商国とボスティア海国の闇

第四百五十三話 使命っ

しおりを挟む
 ラーミア達と食料調達をして、情報収集もして、宿屋に戻ってきた我輩は、バルディスもちょうど戻ってきたことを知り、とりあえず駆け寄る。しかし……。


「タロ、魚は食べられないかもしれないぞ」

「にゃっ!? (にゃんとっ!?)」


 いきなり告げられたその言葉に、我輩、耳を疑う。


 この国は美味しい魚が食べられる場所だと聞いて、我輩、とっても、とっても、とーっても楽しみにしていたのだ。それが……食べられ、ない?


「にゃにゃあっ(ど、どういうことなのだっ、バルディスっ)」


 そう尋ねれば、同胞達の異変の原因とともに、魚が獲れなくなった背景を推測で教えてくれる。


「にゃ、にゃ、にゃ……(な、な、な……)」


 ボスティア海国とやらが、魚が獲れないように邪魔している可能性。それに、我輩、絶句する。


「そんなわけで、魚は諦めた方が良いだろうな」

「……にゃ……(……ないのだ……)」

「ん?」

「ふにゃーっ! ふしゃーっ(許せないのだっ! 美味しい魚を奪うなど、鬼畜の所業なのだっ)」


 諦める? そんなことするわけないのだ。我輩、紳士として、猫として、魚を奪われた同胞達の気持ちが痛いほど良く分かる。


「にゃっ、にゃあっ(バルディスっ、必ずボスティア海国の妨害を解除するのだっ)」

「いや、お、おぅ?」

「バル、タロは何と?」

「……ものすごく、やる気満々みたいだ」


 許すまじ、ボスティア海国。我輩の、同胞の魚を奪うなど、やって良いことと悪いことがあることも分からないのであろうかっ。我輩、魚も大好きなのだ。絶対、絶対、ボスティア海国が行っているという妨害を何とかしてみせるのだっ。


「まだ、確定したわけじゃないんだけどな……」


 バルディスが何か言ってはいるが、我輩、そんなことは聞いていなかった。後から合流したロギーとマギウスも、我輩の燃えたぎる心を察知したのか、何があったのかバルディスに聞いていたが、それもどうでも良い。


「にゃっ、にゃあっ! (必ずっ、同胞達を助けてみせるのだっ!)」


 この世界に来てから、最も使命感に駆られた瞬間であった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


タロの行動原理……食欲と同胞、どっちが優先何だろうか……。

とりあえず、次回からは一気にルビーナの中心部へと向かいます。

それでは、また!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

前世の職業で異世界無双~生前SEやってた俺は、異世界で天才魔道士と呼ばれています~(原文版)

大樹寺(だいじゅうじ) ひばごん
ファンタジー
生前SEやってた俺は異世界で… の書籍化前の原文を乗せています。 書籍での変更点を鑑みて、web版と書籍版を分けた方がいいかと思い、それぞれを別に管理することにしました。 興味のある方はどうぞ。 また、「生前SEやってた俺は異世界で…」とは時間軸がかなり異なります。ほぼ別作品と思っていただいた方がいいです。 こちらも続きを上げたいとしは考えていますが、いつになるかははっきりとは分かりません。 切りのいいところまでは仕上げたいと思ってはいるのですが・・・ また、書籍化に伴い該当部分は削除して行きますので、その点はご了承ください。

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

追放令嬢は隣国で幸せになります。

あくび。
ファンタジー
婚約者の第一王子から一方的に婚約を破棄され、冤罪によって国外追放を言い渡された公爵令嬢のリディアは、あっさりとそれを受け入れた。そして、状況的判断から、護衛を買って出てくれた伯爵令息のラディンベルにプロポーズをして翌日には国を出てしまう。 仮夫婦になったふたりが向かったのは隣国。 南部の港町で、リディアが人脈やチートを炸裂させたり、実はハイスペックなラディンベルがフォローをしたりして、なんだかんだと幸せに暮らすお話。 ※リディア(リディ)とラディンベル(ラディ)の交互視点です。 ※ざまぁっぽいものはありますが、二章に入ってからです。 ※そこかしこがご都合主義で、すみません。

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

異世界道中ゆめうつつ! 転生したら虚弱令嬢でした。チート能力なしでたのしい健康スローライフ!

マーニー
ファンタジー
※ほのぼの日常系です 病弱で閉鎖的な生活を送る、伯爵令嬢の美少女ニコル(10歳)。対して、亡くなった両親が残した借金地獄から抜け出すため、忙殺状態の限界社会人サラ(22歳)。 ある日、同日同時刻に、体力の限界で息を引き取った2人だったが、なんとサラはニコルの体に転生していたのだった。 「こういうときって、神様のチート能力とかあるんじゃないのぉ?涙」 異世界転生お約束の神様登場も特別スキルもなく、ただただ、不健康でひ弱な美少女に転生してしまったサラ。 「せっかく忙殺の日々から解放されたんだから…楽しむしかない。ぜっっったいにスローライフを満喫する!」 ―――異世界と健康への不安が募りつつ 憧れのスローライフ実現のためまずは健康体になることを決意したが、果たしてどうなるのか? 魔法に魔物、お貴族様。 夢と現実の狭間のような日々の中で、 転生者サラが自身の夢を叶えるために 新ニコルとして我が道をつきすすむ! 『目指せ健康体!美味しいご飯と楽しい仲間たちと夢のスローライフを叶えていくお話』 ※はじめは健康生活。そのうちお料理したり、旅に出たりもします。日常ほのぼの系です。 ※非現実色強めな内容です。 ※溺愛親バカと、あたおか要素があるのでご注意です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

ある平凡な女、転生する

眼鏡から鱗
ファンタジー
平々凡々な暮らしをしていた私。 しかし、会社帰りに事故ってお陀仏。 次に、気がついたらとっても良い部屋でした。 えっ、なんで? ※ゆる〜く、頭空っぽにして読んで下さい(笑) ※大変更新が遅いので申し訳ないですが、気長にお待ちください。 ★作品の中にある画像は、全てAI生成にて貼り付けたものとなります。イメージですので顔や服装については、皆様のご想像で脳内変換を宜しくお願いします。★

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

処理中です...