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第四章 騒乱のカレッタ小王国
第四百二十二話 はむはむ
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『転移』でルトに戻った直後、バルディスからの『念話』が入る。曰く、『囚われていた人間や獣人達の解放を手伝ってほしい』とのこと。
飼い主とともにその現場へと急行すれば、そこには疲れきって座り込んだバルディスとぐったりとしたラーミア。そして、事情説明をしているらしいマギウスとロギーに、誰かを捕縛して見張りをしているらしいディアムが居た。
「にゃあ? にゃ(大丈夫なのか? バルディス)」
「ん、あぁ、大丈夫だ。魔力が切れただけだからな。それよりも、彼らの帰還を手伝ってもらえないか?」
「はぁ? バルの魔力が切れるなんざ、相当なことだろう? 誰を相手にしたんだ?」
「……居たのか、アグニ」
疲れたようなため息を吐きながら、エメラルドの瞳をアグニへと向ける。
「お祖父ちゃんと呼んでくれても良いんだぞ?」
「遠慮する」
そんなやり取りをしつつ、バルディスはディアムが居る方へと視線を向けて、『敵は今、昏睡薬で昏睡中だ』と告げる。
「にゃ? (昏睡薬?)」
「うむ、随分物騒そうな薬なのだな」
「いや、事実物騒だぞ?」
そう言いながらアグニはディアムが居る方へとバルディスにつられる形で目を向けて、首を捻る。
「なぁ? この魔力って、先代魔王だったりしないか? ……いや、そんなわけないよな」
「その先代魔王で間違いない」
我輩は遠目で分からないものの、どうやら、バルディス達が相手にした敵とは先代魔王だったらしい。
「ほう、私に似ているという魔王か……どれ、見てこよう」
「いや、その前に捕まった奴等を戻してほしいんだが……」
「タロに頼むと良いのだ」
「にゃっ(うむ、分かったのだっ)」
どうやら、飼い主は先代魔王の観察に向かうらしい。我輩は、バルディスの指示に従って捕まっていた者達を帰す役割を授かり、意気揚々とマギウス達の元へと向かい……。
「ごめん、何言ってるか分からない」
「同じく」
言葉が通じない事実を忘れていた我輩は、すごすごとバルディスの元に戻り、通訳を頼む。
「いや、待て。俺は動けないから……って、おい? 何するつもりだ?」
「にゃご? (うむ?)」
バルディスの動けないという言葉に、我輩、『変化』で巨大化してみる。
「むにゃごっ(それっ)」
「うおぉっ!? ぶふっ!」
バルディスの首根っこをはむっとすると、我輩、勢い良くバルディスを上に放り投げて、背中のもっふもふでキャッチする。
五分五分であったが、上手くいったのだ。
体が大きい分、背中でのキャッチは難易度が低くなるとはいえ、難しいことに変わりはない。バルディスを上手くキャッチできたことに安心しながら、我輩は引きつったような表情のアグニに顔を近づける。
「や、やめろ。俺は、年寄りなんだ。それに、通訳はバルだけで良いだろう?」
「にゃご(アグニにも手伝ってほしいのだ)」
我輩が大きくうなずくと、アグニは安心したような表情になり……その瞬間、我輩はやはりアグニの首根っこをはむっとする。そして、背中にはすでにバルディスが居ることを考慮して、そのままマギウス達の元へと走るのだった。
……アグニの悲鳴が聞こえた気がしたのは、気のせいだろう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
いやぁ、バルディスとアグニは、タロに連れていかれちゃいましたね。
アグニは自分で歩けたはずなんですけど……タロ、はりきったんでしょうね。
それでは、また!
飼い主とともにその現場へと急行すれば、そこには疲れきって座り込んだバルディスとぐったりとしたラーミア。そして、事情説明をしているらしいマギウスとロギーに、誰かを捕縛して見張りをしているらしいディアムが居た。
「にゃあ? にゃ(大丈夫なのか? バルディス)」
「ん、あぁ、大丈夫だ。魔力が切れただけだからな。それよりも、彼らの帰還を手伝ってもらえないか?」
「はぁ? バルの魔力が切れるなんざ、相当なことだろう? 誰を相手にしたんだ?」
「……居たのか、アグニ」
疲れたようなため息を吐きながら、エメラルドの瞳をアグニへと向ける。
「お祖父ちゃんと呼んでくれても良いんだぞ?」
「遠慮する」
そんなやり取りをしつつ、バルディスはディアムが居る方へと視線を向けて、『敵は今、昏睡薬で昏睡中だ』と告げる。
「にゃ? (昏睡薬?)」
「うむ、随分物騒そうな薬なのだな」
「いや、事実物騒だぞ?」
そう言いながらアグニはディアムが居る方へとバルディスにつられる形で目を向けて、首を捻る。
「なぁ? この魔力って、先代魔王だったりしないか? ……いや、そんなわけないよな」
「その先代魔王で間違いない」
我輩は遠目で分からないものの、どうやら、バルディス達が相手にした敵とは先代魔王だったらしい。
「ほう、私に似ているという魔王か……どれ、見てこよう」
「いや、その前に捕まった奴等を戻してほしいんだが……」
「タロに頼むと良いのだ」
「にゃっ(うむ、分かったのだっ)」
どうやら、飼い主は先代魔王の観察に向かうらしい。我輩は、バルディスの指示に従って捕まっていた者達を帰す役割を授かり、意気揚々とマギウス達の元へと向かい……。
「ごめん、何言ってるか分からない」
「同じく」
言葉が通じない事実を忘れていた我輩は、すごすごとバルディスの元に戻り、通訳を頼む。
「いや、待て。俺は動けないから……って、おい? 何するつもりだ?」
「にゃご? (うむ?)」
バルディスの動けないという言葉に、我輩、『変化』で巨大化してみる。
「むにゃごっ(それっ)」
「うおぉっ!? ぶふっ!」
バルディスの首根っこをはむっとすると、我輩、勢い良くバルディスを上に放り投げて、背中のもっふもふでキャッチする。
五分五分であったが、上手くいったのだ。
体が大きい分、背中でのキャッチは難易度が低くなるとはいえ、難しいことに変わりはない。バルディスを上手くキャッチできたことに安心しながら、我輩は引きつったような表情のアグニに顔を近づける。
「や、やめろ。俺は、年寄りなんだ。それに、通訳はバルだけで良いだろう?」
「にゃご(アグニにも手伝ってほしいのだ)」
我輩が大きくうなずくと、アグニは安心したような表情になり……その瞬間、我輩はやはりアグニの首根っこをはむっとする。そして、背中にはすでにバルディスが居ることを考慮して、そのままマギウス達の元へと走るのだった。
……アグニの悲鳴が聞こえた気がしたのは、気のせいだろう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
いやぁ、バルディスとアグニは、タロに連れていかれちゃいましたね。
アグニは自分で歩けたはずなんですけど……タロ、はりきったんでしょうね。
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