380 / 574
第四章 騒乱のカレッタ小王国
第三百七十九話 フルルという存在
しおりを挟む
何が何だか分からないうちに、退出するよう促された私達は、ひとまず談話室に固まって大人しくする。
「ねぇ、ザルト兄様? あのフルルという少年のことはご存知ですの?」
沈黙が漂う中、最初に声を上げたのは、第三王女、ミリアーナだ。
「いや、知らんな。少なくとも俺は会ったことがない」
「では、バルト兄様とロデック兄様、キルトはいかが?」
私と第二王子ロデック、第四王子キルトに向けられた問いに、私も少し思い返して、心当たりはないと答える。
「俺も、知らない子……」
「僕も」
ロデックもキルトもフルフルと首を横に振って答えたため、普段、ミアトと接する機会が多い者は軒並み知らない相手ということになる。
「ミアトのお友達、でしょうか?」
「ですが、ミアトが外に出る機会など、そこまで多いわけではありませんわ」
「隠れて外に出ている、とか?」
「そんな、リリアス姉様じゃないのですし……」
フィリアル、第一王女シェリア、第二王女リリアスの順に発言をし、最後にミリアーナが頭が痛いとでも言うかのように発言する。
「何にせよ、素性を調べる必要がありそうだ。父上の許可が取れ次第、私は動くこととしよう」
大切な弟王子が、どこの誰とも知れない相手と仲良くなることは、あまり褒められたことではない。我々王族は、側仕えさえ素性を調べ、厳選しているのだ。友人も選ばなければならないのは当然のことだった。
「後は、勇者殿と一緒に居た男も気になりますわね」
「あぁ、そちらも、すぐに調査しよう。勇者殿には、長くこの国を守ってもらわねばならないからな」
最近は、ミルテナ帝国がやたらとキナ臭い。竜の森があるとはいえ、近隣の国であるあの場所で、戦を仕掛けられたら堪ったものではない。水源の復活はもちろんのことではあったが、それが叶った今、勇者殿に求められるのは他国を牽制できるだけの力だ。だから、勇者殿の周りは綺麗でなくてはならない。
「失礼します。宰相様がお越しです」
「ルバートが? 分かった。入れ」
入室を促せば、我が国で最も優秀な宰相、ルバート・ニーロが肩をいからせて入ってくる。
「王妃様、並びに王太子殿下、王子様、王女様方、本日はご機嫌麗しく」
「前置きは良い。何用だ?」
まずは母のフィリアルに、そして、私、他の王子と王女達に挨拶したのは、やたらと体格の良い、いかつい顔の人間の男だ。
ニーロ家は代々宰相の家系で、少し前まではルバート自身にも妻や子供が居たのだが、夜中の不審火によって、ルバート以外の全員が焼死してしまっている。現在は、事実上、ルバートがニーロ家最後の生き残りであるため、今は見合いのための釣書が連日届いているのだとぼやいていた。
そんな彼が、主に自分自身に関することから発生した忙しさを放り出してまでここに来たのは、何か理由があるに違いない。
「フルル様のことについて、ご報告がございます」
そして、その報告を聞いた直後、私は青ざめ、すぐにでも父上やミアトの元へ駆けつけようと走るのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
やたらと眠い中、一生懸命書いております。
今回は、王太子、バルト視点でした。
それでは、また!
「ねぇ、ザルト兄様? あのフルルという少年のことはご存知ですの?」
沈黙が漂う中、最初に声を上げたのは、第三王女、ミリアーナだ。
「いや、知らんな。少なくとも俺は会ったことがない」
「では、バルト兄様とロデック兄様、キルトはいかが?」
私と第二王子ロデック、第四王子キルトに向けられた問いに、私も少し思い返して、心当たりはないと答える。
「俺も、知らない子……」
「僕も」
ロデックもキルトもフルフルと首を横に振って答えたため、普段、ミアトと接する機会が多い者は軒並み知らない相手ということになる。
「ミアトのお友達、でしょうか?」
「ですが、ミアトが外に出る機会など、そこまで多いわけではありませんわ」
「隠れて外に出ている、とか?」
「そんな、リリアス姉様じゃないのですし……」
フィリアル、第一王女シェリア、第二王女リリアスの順に発言をし、最後にミリアーナが頭が痛いとでも言うかのように発言する。
「何にせよ、素性を調べる必要がありそうだ。父上の許可が取れ次第、私は動くこととしよう」
大切な弟王子が、どこの誰とも知れない相手と仲良くなることは、あまり褒められたことではない。我々王族は、側仕えさえ素性を調べ、厳選しているのだ。友人も選ばなければならないのは当然のことだった。
「後は、勇者殿と一緒に居た男も気になりますわね」
「あぁ、そちらも、すぐに調査しよう。勇者殿には、長くこの国を守ってもらわねばならないからな」
最近は、ミルテナ帝国がやたらとキナ臭い。竜の森があるとはいえ、近隣の国であるあの場所で、戦を仕掛けられたら堪ったものではない。水源の復活はもちろんのことではあったが、それが叶った今、勇者殿に求められるのは他国を牽制できるだけの力だ。だから、勇者殿の周りは綺麗でなくてはならない。
「失礼します。宰相様がお越しです」
「ルバートが? 分かった。入れ」
入室を促せば、我が国で最も優秀な宰相、ルバート・ニーロが肩をいからせて入ってくる。
「王妃様、並びに王太子殿下、王子様、王女様方、本日はご機嫌麗しく」
「前置きは良い。何用だ?」
まずは母のフィリアルに、そして、私、他の王子と王女達に挨拶したのは、やたらと体格の良い、いかつい顔の人間の男だ。
ニーロ家は代々宰相の家系で、少し前まではルバート自身にも妻や子供が居たのだが、夜中の不審火によって、ルバート以外の全員が焼死してしまっている。現在は、事実上、ルバートがニーロ家最後の生き残りであるため、今は見合いのための釣書が連日届いているのだとぼやいていた。
そんな彼が、主に自分自身に関することから発生した忙しさを放り出してまでここに来たのは、何か理由があるに違いない。
「フルル様のことについて、ご報告がございます」
そして、その報告を聞いた直後、私は青ざめ、すぐにでも父上やミアトの元へ駆けつけようと走るのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
やたらと眠い中、一生懸命書いております。
今回は、王太子、バルト視点でした。
それでは、また!
0
お気に入りに追加
324
あなたにおすすめの小説
[完結]婚約破棄されたけど、わたし、あきらめきれません
早稲 アカ
恋愛
公爵令嬢エリエルは、王太子から、突然の婚約破棄を通知されます。
原因は、最近、仲睦まじい男爵令嬢リリアナだと知り、彼女は幼なじみのアンドレに、破棄の解消を依頼するのですが……。
それぞれの人物の思惑が絡んで、物語は予期しない方向へ……。
転生して異世界の第7王子に生まれ変わったが、魔力が0で無能者と言われ、僻地に追放されたので自由に生きる。
黒ハット
ファンタジー
ヤクザだった大宅宗一35歳は死んで記憶を持ったまま異世界の第7王子に転生する。魔力が0で魔法を使えないので、無能者と言われて王族の籍を抜かれ僻地の領主に追放される。魔法を使える事が分かって2回目の人生は前世の知識と魔法を使って領地を発展させながら自由に生きるつもりだったが、波乱万丈の人生を送る事になる
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
千技の魔剣士 器用貧乏と蔑まれた少年はスキルを千個覚えて無双する
大豆茶
ファンタジー
とある男爵家にて、神童と呼ばれる少年がいた。
少年の名はユーリ・グランマード。
剣の強さを信条とするグランマード家において、ユーリは常人なら十年はかかる【剣術】のスキルレベルを、わずか三ヶ月、しかも若干六歳という若さで『レベル3』まで上げてみせた。
先に修練を始めていた兄をあっという間に超え、父ミゲルから大きな期待を寄せられるが、ある日に転機が訪れる。
生まれ持つ【加護】を明らかにする儀式を受けたユーリが持っていたのは、【器用貧乏】という、極めて珍しい加護だった。
その効果は、スキルの習得・成長に大幅なプラス補正がかかるというもの。
しかし、その代わりにスキルレベルの最大値が『レベル3』になってしまうというデメリットがあった。
ユーリの加護の正体を知ったミゲルは、大きな期待から一転、失望する。何故ならば、ユーリの剣は既に成長限界を向かえていたことが判明したからだ。
有力な騎士を排出することで地位を保ってきたグランマード家において、ユーリの加護は無価値だった。
【剣術】スキルレベル3というのは、剣を生業とする者にとっては、せいぜい平均値がいいところ。王都の騎士団に入るための最低条件すら満たしていない。
そんなユーリを疎んだミゲルは、ユーリが妾の子だったこともあり、軟禁生活の後に家から追放する。
ふらふらの状態で追放されたユーリは、食料を求めて森の中へ入る。
そこで出会ったのは、自らを魔女と名乗る妙齢の女性だった。
魔女に命を救われたユーリは、彼女の『実験』の手伝いをすることを決断する。
その内容が、想像を絶するものだとは知らずに――
ある平凡な女、転生する
眼鏡から鱗
ファンタジー
平々凡々な暮らしをしていた私。
しかし、会社帰りに事故ってお陀仏。
次に、気がついたらとっても良い部屋でした。
えっ、なんで?
※ゆる〜く、頭空っぽにして読んで下さい(笑)
※大変更新が遅いので申し訳ないですが、気長にお待ちください。
★作品の中にある画像は、全てAI生成にて貼り付けたものとなります。イメージですので顔や服装については、皆様のご想像で脳内変換を宜しくお願いします。★
SRPGの雑魚キャラに転生してしまったのですが、いっぱしを目指したいと思います。
月見ひろっさん
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
異世界道中ゆめうつつ! 転生したら虚弱令嬢でした。チート能力なしでたのしい健康スローライフ!
マーニー
ファンタジー
※ほのぼの日常系です
病弱で閉鎖的な生活を送る、伯爵令嬢の美少女ニコル(10歳)。対して、亡くなった両親が残した借金地獄から抜け出すため、忙殺状態の限界社会人サラ(22歳)。
ある日、同日同時刻に、体力の限界で息を引き取った2人だったが、なんとサラはニコルの体に転生していたのだった。
「こういうときって、神様のチート能力とかあるんじゃないのぉ?涙」
異世界転生お約束の神様登場も特別スキルもなく、ただただ、不健康でひ弱な美少女に転生してしまったサラ。
「せっかく忙殺の日々から解放されたんだから…楽しむしかない。ぜっっったいにスローライフを満喫する!」
―――異世界と健康への不安が募りつつ
憧れのスローライフ実現のためまずは健康体になることを決意したが、果たしてどうなるのか?
魔法に魔物、お貴族様。
夢と現実の狭間のような日々の中で、
転生者サラが自身の夢を叶えるために
新ニコルとして我が道をつきすすむ!
『目指せ健康体!美味しいご飯と楽しい仲間たちと夢のスローライフを叶えていくお話』
※はじめは健康生活。そのうちお料理したり、旅に出たりもします。日常ほのぼの系です。
※非現実色強めな内容です。
※溺愛親バカと、あたおか要素があるのでご注意です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる