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第四章 騒乱のカレッタ小王国

第三百六十四話 フルルの記憶(一)

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 呆然とするフルルを連れて、我輩達はひとまず城に滞在することとなった。
 ルーデルの魔力とフルルの魔力は、明らかに似ており、親子関係でなかったとしても、近い血筋であることは確かだ。しかし、ルーデルはフルルのことを全く知らないと言う。


「これは、フルルの記憶がおかしいのか、ルーデルの記憶がおかしいのかの二択だな」

「にゃー? (フルル、大丈夫なのだろうか?)」


 バルディスと一緒にメイドに案内されて歩く我輩は、バルディスに手を引かれるがままについてくるフルルを見て、思わずそんな声を上げる。


《ショックは大きいだろうな。だが、原因が分からない以上、下手な手出しもできない。今は、ケントに任せるしかないだろう》


 メイドさんの手前、我輩と話せることを露見させるわけにはいかないバルディスは、念話で応えてくれる。


《にゃーにゃ? (飼い主は謁見の間に残って、何を話しているのだろうか?)》

《そうだな……まずは、フルルの痕跡が全くないのかどうかを探ってるんじゃないか?》

《にゃ? (痕跡?)》

《フルルが本当に第六王子なら、何らかの資料が残ってるはずだ。もし、記憶を消されただけなのだとすれば、それが解決の糸口になるかもしれない》

《にゃ(なるほど)》


 しかし、そうなってくると、誰かがフルルに関する記憶を消したことになり、そちらを探さなければならなくなってくる。これは、案外大変かもしれない。


《にゃあ(今回も、大変そうなのだ)》


 そう、一人鳴く我輩に、バルディスは返事をすることはなかった。


「どうぞ、こちらでお待ちください」


 メイドの言葉に従って、我輩達は、そのシンプルながらも豪華な部屋へと入る。ここは、客室の一つで、ケントの部屋に一番近い場所であるらしい。そこで、ひとまずフルルを椅子に座らせると、バルディスも対面の椅子へと腰かける。


「さて、フルル第六王子。あの奴隷市に行く前に何があったか教えてくれないか?」

「にゃ(うむ、確かにそれは聞かなければならないのだ)」


 記憶が消されているのだとしたら、フルルの記憶だけが頼りだ。しばらくの沈黙が室内に満ちる。そして……。


「……僕は、兄様達と……第三王子のザルト兄様と、第五王子のミアト兄様の二人と、街にお忍びで遊びに行っていたんだ」


 重い口を開いたフルルは、それからゆっくりと話し始めるのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


果たして、本当に記憶がなくなっただけなのか、それとも……。

今回は、久々にタロ視点へと戻ってのお話でした。

ただ、次回はフルルのお話がメインになるかなぁと思います。

それでは、また!
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