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第四章 騒乱のカレッタ小王国

第三百五十三話 囚われた奴隷達

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 我輩の話を聞いたバルディスは、すぐに、その場所を教えるように迫ってきたため、我輩、気配を感じる方へとゆっくり走る。


「なるほど、奴隷市は、移動型なのかもしれないな」


 少し奥まった薄暗い拓けた場所。そこにあったのは、大きな荷馬車。外観は、他の荷馬車と比べると少し大きいだろうかという程度のもので、荷馬車の中が見えないように垂らしてある布の先に、檻が大量にあることなど想像できない。そんな荷馬車は、何台か止まっていて、もしかしたら、その全てに囚われた人が居るのかもしれなかった。


「……タロ。今からディアム達に連絡して、ここに来てもらうことにするから、タロはマギウス辺りと一緒に宿屋に戻っていてくれるか?」

「にゃー? (我輩も一緒に居るのはダメなのか?)」

「あぁ、どうやって無事に帰ってきたのか知らないが、わりと猫避けの罠があるみたいだからな」

「にゃっ(にゃんとっ)」

「だから、調査の方は俺とディアムだけですませる。良いな?」

「にゃ(分かったのだ)」


 そういうことならば仕方がない。ここは、『てきざいてきしょ』とやらなのだ。
 しばらくして、『念話』で呼ばれたディアムとマギウス、そして、なぜかラーミアとロギーまでやってきて、小声で作戦会議が始まる。


「俺とディアム、ラーミアで交代であの荷馬車を見張ろう」

「奴隷、確認した?」

「一応、タロが確認しているが、俺達も確認した方が良いだろうな」

「では、マギウスとロギーはどうします?」

「マギウスとロギーには、タロと一緒に居てもらおうと思っている」

「俺達では役に立たぬと?」

「違う、タロのストッパーとして、頑張ってもらいたい」

「あぁ、なるほどね」

「ぬ?」


 こそこそと会話をするバルディス達。ただ、何やら我輩のことに話が及んで、ついでに不吉な話になっているような気がする。


「ロギー、多分、タロを止めるのは大変だよ」

「そう、なのか?」

「にゃ? (うむ?)」


 いまいち良く分かっていないロギーと我輩。しかし、そんな質問に答えてくれる者は居なかった。とにかく、今は行動するのが先だとのことで、我輩はマギウスとロギーの二人に連れられて退散する。

 ……我輩の名誉のために言っておくが、その日は特に、問題を起こすようなことはなかったのだ。絶対なのだ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


今回は、あまり話自体は進んだ感じはしませんが、着実に奴隷市へと迫っております。

次回は……タロ視点になるか、バルディス視点になるか不明です。

それでは、また!
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