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第四章 騒乱のカレッタ小王国

第三百五十二話 ルトの街

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 カレッタ小王国の首都、ルトに戻ってから三日。我輩達は、奴隷市の情報収集のために駆けずりまわっていた。それというのも、ロギー自身、奴隷市があって、奴隷の売買が行われていることは知っていても、実際に奴隷を調達するメンバーが別であったため、いつ、どこで開かれるのかを知らなかったのだ。


「にゃー……(あの邪神教徒達さえ捕まえられれば……)」


 バルディスとともに薄暗いルトの街を歩きながら呟く我輩は、三日前のことを思い出す。

 マギウスが『操術』で操っていた三人の邪神教徒達のアジト。そこに、我輩達はルトに戻ってすぐに突撃したのだが、なぜかそこはもぬけの殻だった。そのアジトで奴隷市について知っている邪神教徒を捕らえるつもりで行動していた我輩達にとって、その出来事は手痛い事実だったのだ。


「タロ。あまり一人で彷徨くなよ?」

「にゃっ(分かっているのだっ)」


 この獣人が多く存在するルトの街では、情報漏洩防止のために、動物への対策が非常に厳しい。バルディス曰く、『ドジなタロなら、絶対に引っ掛かる』とのことで、信用がないことを悲しく思いながら、否定もできず、バルディスから離れないように必死についていくことしかできなかった。


「にゃあ? (飼い主はどうしているだろうか?)」

「ケントか……確か、王に報告に行くと言っていたな。ケントのことだから、もうすぐ帰ってくるとは思うが……」


 そう、飼い主は、ルトに着くなり、王に報告してくると言って我輩達と別れて行動していた。報告内容は、邪神教徒のことや『邪神の眼』のことだろうと思うが、三日経ってもまだ帰ってこないのは心配で仕方ない。


「後は、新しいロープか……タロ。行くぞ」

「にゃ(分かったのだ)」


 バルディスの買い出しに付き合っている我輩は、言われるがままにそちらに向かいかけて、ふと、覚えのある気配を感じる。


 この、気配は……っ!


「にゃあっ! (バルディスっ、ちょっと待っててほしいのだっ!)」

「はっ? おいっ、タロ!?」


 欠片の気配なのだっ。間違いないのだっ!


 この国に来て初めて感じたその気配に、我輩、全力で走る。そして、見つけたのは……。


「にゃー(にゃんと)」


 檻に入れられた、老若男女、そして、一人の獣人の男の子だった。


「う?」

「にゃあっ(必ず、助けるのだっ)」


 状況は分からないが、もしかしたら、これは奴隷にされる人達なのかもしれない。飼い主も、奴隷は檻に入れられて捕まっているものだと言っていた。

 その場からそっと離れた我輩は、『いきなりどこに行くのかと思ったぞ』と少し怒り気味のバルディスに、『念話』で事情を話してみるのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ようやく、欠片の持ち主に会えたタロ!

さぁっ、物語は進んで参りますよ。

それでは、また!
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